この記事の要点

✔ 相続登記の書類が変わるかどうかは、相続人の「国籍」よりも「どこに住んでいるか」で決まります
✔ 海外に住む日本人の相続人は、印鑑証明書の代わりに「署名証明(サイン証明)」、住民票の代わりに「在留証明」を使います
✔ 2026年10月5日から、相続登記で新しく名義人になる方は「国籍等」を申し出ることになりました。日本人も対象です

外務省の統計によると、海外で暮らす日本人は2025年10月時点で約130万人。そのうち、期限を決めずに海外で暮らしている「永住者」は58万8千人あまりで、前年より増えています。

一方、つくば市は茨城県内で最も外国人住民の多いまちで、2025年末時点で1万5千人を超えています。

ご家族の誰かが海外に住んでいる。外国籍のご家族がいる。そうした相続は、これからますます身近になっていくはずです。

日本の相続手続きは、「日本に住んでいる日本人」を前提にできている部分が少なくありません。印鑑証明書が取れない、住民票がない。そうした相続人がいると、用意する書類が変わります。

加えて、この10月5日からは、登記の申請書そのものにも変更がありました。今回はそのお話から始めます。

1.10月5日から、申請書に「国籍」の欄ができました

2026年10月5日から、相続登記を含む所有権の移転登記などで、新しく名義人になる方は「国籍等」を申し出ることになりました。日本人も外国籍の方も対象です。

  • ✔ 日本国籍の方は「日本」、外国籍の方は国名を記載します
  • ✔ 証明する書類は、日本国籍なら本籍の記載のある住民票の写しや戸籍の附票の写し、外国籍なら国籍の記載のある住民票の写し、旅券や在留カードの写しなどです
  • ✔ 申し出た国籍は、登記簿に載って公開されるものではありません

法務省は、この制度の理由の一つとして、名義人が亡くなったときにどの国の法律で相続するかは国籍で決まるため、将来の相続登記を円滑に進めることにも役立つ、と説明しています。

国籍は、氏名のふりがな・生年月日・メールアドレスなどと一緒に「検索用情報」として申し出ます。今回の改正で、海外に住所がある方も、この検索用情報を申し出ることになりました。

なお、始まったばかりの制度で、法務局側のシステム対応は施行後に順次進むとされています。細かな運用は、今後変わる可能性があります。

2.書類を分けるのは「国籍」ではなく「住所」

相続人がどこに住んでいるかで、遺産分割協議書に添える書類(印鑑証明書にあたるもの)と、不動産を取得する方の住所を証明する書類が変わります。

相続人協議書に添えるもの住所の証明
①日本に住む日本人印鑑証明書住民票の写し
②海外に住む日本人署名証明(在外公館で取得)在留証明(在外公館で取得)
③日本に住む外国籍の方印鑑証明書(住民登録をして印鑑登録をしている場合)住民票の写し
④海外に住む外国籍の方現地の公証人による署名の証明本国または居住国の政府が作成した住所の証明、または現地の公証人が認証した宣誓供述書と旅券の写し

分かれ目は、日本に住民登録があるかどうかです。外国籍の方でも日本に住んでいれば、日本人とほぼ同じ書類で進められます。反対に、日本人でも海外に住んでいれば、別の書類が必要になります。

関連記事:[不動産登記レアケース6]在日外国人・在外日本人で迷う

3.海外に住む日本人の相続人

署名証明(サイン証明)

海外に住所を移すと、日本の印鑑登録もなくなります。そこで印鑑証明書の代わりに使うのが、現地の日本大使館・総領事館(在外公館)が発行する「署名証明」です。

  • ✔ 本人が在外公館に出向き、領事の目の前で署名します。代理での申請や郵送での申請はできません
  • ✔ 遺産分割協議書と証明書を綴じ合わせる形式と、署名だけを証明する形式があり、どちらにするかは提出先によります
  • ✔ 手数料は1通あたり1,700円相当です

在留証明

不動産を取得する方の住所を証明する書類で、住民票の代わりになります。

  • ✔ 日本国籍の方が対象で、現地に3か月以上住んでいることが条件です
  • ✔ 原則として本人が在外公館で申請します。郵送で申請できる場合も、受け取りには一度出向く必要があります。ただし、オンライン在留届(ORRネット)を使ったオンライン申請なら、一定の要件のもとで出向かずに済む場合があります
  • ✔ 手数料は1通あたり1,200円相当です

戸籍

2025年3月24日から、在外公館で証明を申請する際の戸籍謄本は、「電子戸籍パス」で代わりにできるようになりました。

時任の実例から

在外公館は、日本の市役所のように、すぐ行ける距離にあるとは限りません。実際に、大使館や総領事館まで飛行機で行かなければならない、という方もいらっしゃいました。

法務局での相続登記に限っていえば、在外公館から遠い場合などには、現地の公証人が作成した署名証明を使うことも認められています。ただし、銀行など登記以外の手続きでは、受け付けてもらえるかどうかは提出先が判断します。

相続人の方に何度も足を運んでいただかないよう、どの手続きにどの書類を使うかを、最初にまとめて把握しておくことが大切です。

4.外国籍の相続人

亡くなった方が日本人であれば、相続人が外国籍でも、日本の民法に従って相続します(法の適用に関する通則法36条)。結婚などで外国籍を取得したお子さんも、もちろん相続人です。相続分も変わりません。

  • ✔ 日本に住んでいれば、表の③のとおり、印鑑証明書と住民票で進められます
  • ✔ 海外に住んでいる場合、署名の証明は現地の公証人に依頼します。外務省も、外国籍の方は現地の公証人に依頼するよう案内しています
  • ✔ 日本国籍を離脱・喪失した元日本人の方は、遺産相続の手続きであれば、失効した日本の旅券や除籍謄本などを持参することで、在外公館で署名証明を出してもらえる場合があります
  • ✔ 外国語の書類には、日本語の訳文を付けます

外国籍の方が不動産の名義人になる場合は、申請書にローマ字の氏名も記載します。証明には、ローマ字氏名の載った住民票の写しや、旅券の写しを使います。

関連記事:[不動産登記レアケース15]外国人が日本の不動産を売却(購入)する場合(令和6年4月1日改正)

⚠ ご注意:亡くなった方が外国籍の場合は、話が変わります

相続は、亡くなった方の国籍のある国の法律によります。亡くなった方が外国籍の場合は、その国の法律で相続人や相続分が決まるため、今回ご説明した内容とは別の検討が必要です。個別にご相談ください。

5.海外に住む相続人が不動産を取得するとき

海外に住む相続人が不動産を取得する場合、2024年4月からは、日本国内の連絡先となる方の氏名・住所なども登記することになっています。

  • ✔ 連絡先になれるのは、日本国内に住所がある方です。個人でも法人でもよく、司法書士なども想定されています
  • ✔ 連絡先になる方の承諾書と印鑑証明書が必要です
  • ✔ 連絡先となる方がいない場合は、その旨を登記することもできます

もう一つ、将来のための注意点です。2026年4月から、住所や氏名が変わったときの変更登記も義務になりました(変更から2年以内)。登記官が住民基本台帳の情報をもとに職権で変更してくれる仕組みもありますが、海外に住所があるときに検索用情報を申し出た方が、その後日本に戻って住所を移した場合は、改めて申出をしないと、この職権による変更の対象になりません。帰国の予定がある方は覚えておいてください。

6.時間がかかるポイントと、期限

海外に相続人がいる相続で時間がかかるのは、主に次の3つです。

①在外公館への出向き:本人が出向く必要があり、距離によっては日程の調整が必要です
②国際郵送の往復:書類を送り、署名をして、送り返してもらうまでに時間がかかります
③翻訳:外国語の書類には訳文が必要です

書類に不備があれば、また一往復増えます。必要な書類を一度でそろえられるよう、段取りを最初に組むことがいちばんの近道です。

⚠ 期限に注意

相続登記は、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります。相続人が海外に住んでいても同じです。

書類がそろわず期限に間に合いそうにない場合は、自分が相続人であることを法務局に申し出る「相続人申告登記」で、ひとまず義務を果たすこともできます。

7.司法書士事務所TOKITOでできること

  • ✔ 海外にお住まいの相続人の方とは、郵送・メール・オンラインでやり取りできます
  • ✔ 署名証明・在留証明など、どの手続きにどの書類が必要かを整理し、取得の段取りをご案内します
  • ✔ 遺産分割協議書の作成から相続登記の申請まで、一貫してお手伝いします
  • ✔ 国内連絡先は、ケースによっては当事務所がお引き受けします

※当事務所では英語での対応はしておりません。日本語でのやり取り(日本にいるご家族を通じてのやり取りも含みます)をお願いしております。

相続人が遠く離れて暮らしていると、それだけで話を切り出しにくくなるものです。「長く連絡を取っていない」「どう声をかければいいか分からない」――そうした、争いになる手前の段階での連絡や調整、書類の段取りは、司法書士がお手伝いできる部分です。

海外在住・外国籍の相続人がいる相続登記は、司法書士事務所TOKITOへ

つくば市を中心に、相続・遺言・家族信託から不動産・法人登記までワンストップでサポートします。キャリア21年・相談実績2,000件以上。

お電話でのご相談 029-875-5991
受付時間:8:30〜18:00(月〜金)

【参考】
法務省「不動産登記規則の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」(令和8年9月4日付け法務省民二第872号通達)
法務省「外国に居住しているため印鑑証明書を取得することができない場合の取扱いについて」
法務省「令和6年4月1日以降にする所有権に関する登記の申請について」
法務省「外国居住の外国人や外国法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の住所証明情報について」
外務省「在外公館における証明」
外務省「海外在留邦人数調査統計(令和7年10月1日現在)」
茨城県「在留外国人の状況等(2025年12月末現在)」

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