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[不動産登記レアケース15] 外国人が日本の不動産を売却(購入)する場合

1853年「黒船が来た!」から時は流れ、外国人の方が日本国の不動産を売買する場面も増えてきました。安全保障上の議論は別として、我々司法書士が外国人の不動産売買登記に当たり、様々な問題に直面することも珍しくありません。外国人が売る場合、買う場合、または海外居住日本人が売る場合、買う場合についてまとめています。ここでご紹介するのは私見もあり、皆様におかれましては事前に法務局へ照会をされることを前提としております。

A日本に居住している外国人が売主の場合

中長期在留者、特別永住者は住民登録がなされている市町村において印鑑登録することができ、当該印鑑に係る印鑑証明書の交付を受けることができる。この印鑑証明書をもって登記義務者の印鑑証明書として用いることができる。

外国人が印鑑証明書を添付した場合、別途、署名証明書の添付は不要。印鑑を使用している外国人が、申請書又は委任状等に署名捺印の上、日本における居住地市町村発行の印鑑証明書を添付して登記の申請があった場合、署名証明書の提出がなくても受理するのが相当である。(昭和35・4・2民甲787号民事局長回答)

B海外に居住している外国人又は外国企業が売主の場合

問題になるのは印鑑証明書の代替措置(印鑑登録制度がある国は、ほぼない)

先例(前提)
(ア)外国人が登記義務者として登記を申請する場合には印鑑証明書に代えて, 申請書又は 委任状の署名が本人のものであることの本邦の所属国大使館等の発行した証明書を提出 して差し支えない。(昭和59年8月6日民三3992号民事局第三課長依命通知)
(イ)所有権移転登記の義務者が外国人の場合,印鑑証明書に代えて委任状の署名が本人の 者である旨の外国の官憲 (在日公館, 本国の官公署等)の署名証明書を提出させるのが 相当である。(昭和34年11月24日民事甲2542号民事局長回答 )

B(a) 海外居住売主が来日する場合

海外居住の外国人売主が来日していれば、当該外国の在日大使館(売主母国を管轄する日本にある大使館)は、日本国内で使用する目的であればサイン証明書を発行に応じてくれる。 事前に登記委任状を作成して外国人売主に渡し、 外国人売主はこれを当該国在日大使館で認証を受け印鑑証明書の代替とすることができる。

売主が外国企業の場合、事前に登記委任の内容と法人の資格証明書の内容を一体として宣誓供述書の形式で作成しておき、そのひな形を予め当該会社代表者に渡しておき,当該代表者が会社準拠法国の在日大使館で認証してもらうことにより,会社資格証明書, 会社代表者印鑑証明書,登記委任状全てがこの宣誓供述書でまかなうことができる。

B(b) 海外居住売主が来日しない場合

外国人売主が売却の際に来日しない場合、事前に宣誓供述書素案を作成してEメールで委任状等を送り、 現地の公証人の面前で署名を認証してもらったものを返送してもらう。通常、売買日付を空白にして認証してもらうのが登記実務上一般的だと思われるが、事前に必ず管轄法務局へ確認して下さい。

B(c) 海外居住売主が外国法人の場合

外国法人が設立されている国の公証人の面前で当該会社代表者が1当該会社内容2自分に代表権があること3登記申請を司法書士に委任することを宣誓供述してその認証を受けることによって、資格証明書と印鑑証明書, 代理権限証書並びに登記申請委任状を兼ねることができる。

代表者の国籍が当該法人準拠法国以外の国籍である場合に、例えば、 ケイマン(イギリス領)を準拠法とする会社の代表者がアメリカに居住するイギリス人(イギリス国籍)であった場合の宣誓供述書は?

上記123を盛り込んだ宣誓供述書を作成し、ケイマンの公証人の認証があれば当該国(イギリス)の権限ある官公庁又は官憲の認証があるということで適格性を有する。

一方代表者のイギリス人がケイマンまで行けない場合には?

アメリカ在住の代表者たるイギリス人は、上記123を盛り込んだ宣誓供述書をイギリス国公証人又はソリシターの面前で認証すれば,これを会社代表者の印鑑証明書を代替するものとして適格性を有する(ただソリシターが認証権限を持っているのかどうかは諸説あるため、管轄法務局へご確認ください。)

代表者たるイギリス人が、アメリカ国内の公証人 (ノータリーパブリック) の面前で認証したときに、代表者としての印鑑証明書の代替として適格性があるか?
→法務局により適格性ありというケースと適格性がありと判断されたケースがある模様。 日本人がアメリカで印鑑証明書の代替としての宣誓供述書についてアメリカの公証人の面前で認証した場合には認める旨の先例があるが, 外国人が当該国以外の公証人の認証は原則的に否定的なようである。その理由として当該国の官公庁又は官憲の証明又は認証を要求しているため。

「 参考先例」
外国人が、本国の法制上の理由等のやむを得ない事情から、署名証明書を取得できない場合は、その旨の登記の申請書に押印すべき者の作成した上申書及び当該署名が本人のものであることの日本の公証人又は当該外国人が現に居住している国の官憲の作成した証明書の添付をもって、市町村長の作成した印鑑証明書の添付に代えることができる。

なお署名が本人のものであることの証明書を日本における領事若しくは日本における権限がある官憲が発行していないため当該証明書を取得することができない場合又は日本に当該外国人の本国官憲がない場合には、日本以外の国における本国官憲において当該証明書を取得することが可能であっても、やむを得ない事情があるものとして取り扱ってよい。(平成28年6月28日付け法務省民商第100号民事局長通達 改正平成29年2月10日法務省民商第15号 抜粋)

外国在住の日本人が登記義務者として登記を申請する場合の委任状については,本人の署名であり、かつ自己の面前で宣誓した旨の現地公証人の証明があれば,領事その他日本の出先機関の証明がなくても、受理してよい。( 昭和33年8月27日民事甲1738号民事局長通達)

外国人が印鑑証明書を添付できないときは、印鑑証明書に代えて、申請書又は委任状の署名が本人のものであることを証する、当該外国官公署の署名証明書又は当該外国の公証人による署名証明書を添付する。なお、印鑑証明書と違い、署名証明書には作成後3か月以内の有効期限の制限は受けない。

「帰化した元日本人の場合」
元日本人である外国人が登記義務者として登記を申請する場合において本人の自署であることについて所属国駐在の日本大使館又は領事館において証明した場合は、その証明書を印鑑証明書に代えることができる。

「参考実例(ドイツ在住の日本人が売主)」
ドイツ在住の日本人が売主→在ドイツの日本領事館にて、委任事項を詳細に記載した委任状にサイン証明書をもらう。
・委任事項中の売買日付は空欄でOK
・委任状の委任日が、売買日より前でもOK
・委任者の住所は当然ドイツ語になるため訳文をつける

「参考実例(中国人と未成年者)」
前提 
:売買による所有権移転登記を申請する
:所有者は、未成年者(日本国籍)、親権者は中国籍の母親、父親は日本人で他界している
:所有者も親権者も中国在住

所有者 日本名 畑野禎芳(仮称):中国名 王禎芳(仮称)

所有者も親権者も中国在住であるため、親権を証する書面を公証書で作成を依頼したところ、公証書では家族関係書類(戸口簿)の記載に基づく為、日本名の「畑野禎芳(仮称)」の記載が出来ず、中国名の「王禎芳(仮称)」の記載しか出来ないとのこと。理由は、出生証明書には日本人である父親の氏名の記載はあるが、戸口簿に日本名である「畑野禎芳(仮称)」の氏名を登録しなかったためとのことでした。法務局との調整の結果、中国名の「王禎芳」での公証書と畑野禎芳の日本の戸籍(母として中国籍の母親の氏名の記載有)の二つで親権を証する書面として添付しました。もちろん翻訳文もです。

「翻訳文」
外国語で書かれた添付書類がある場合、訳文を添付する。誰が訳しても差し支えなく、翻訳者が訳文に「相違ない」旨を記載して署名押印するか登記権利者・登記義務者が訳文に相違ない旨を記載して署名押印すればよい。翻訳者の印鑑証明書は必要ない。当然、申請代理人でもさしつかえない。(昭和33.8.27民事甲第1738)(昭和40.6.18民事甲第1096号)

買主(登記権利者)は登記申請の添付書類として市町村等の作成に係る住所を証する情報(住所証明情報)を提供する必要がある。

①日本に住所を有する外国人の場合
長期在留者、特別永住者は住民登録がなされている市町村において、外国人住民票の発行を受けることができ、当該書面が住所を証する情報になる。

②日本に住所を有しない外国人の場合
当該所属国の公証人、在日領事館の認証がある住所に関する宣誓供述書

・韓国籍の場合
韓国住民登録証明書が住所証明情報になる。

・台湾籍の場合
戸政事務所(公的機関)発行の戸籍謄本が住所証明情報になる。

ア 事前通知 (不登法23条1項)
申請人が外国に居住しているときは、その外国の住所に宛てて発送することになる。本人が航空郵便の郵送料を納付した場合に限り、航空郵便による (昭和35年6月2日民事甲1369号民事局長通達)。 法人が申請人である場合、 法人の主たる事務所に宛てて送付すること を原則とするが,申請人から法人の代表者の個人の住所宛に送付されたい旨の申し出があったときは、代表者個人の住所に宛てて送付すること になる(現準則43条2項)。

イ 海外など遠隔地居住者が登記義務者である場合
管理処分等一切の権限を授権された者が存し, かつその授権が公正証書等によって明らかにされており,その者からの申出があるときは, 保証通知を当該代理人に対して発して差し支えないとしている (昭和35年 6月16日民事甲1411号民事局長通達)。

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