[不動産登記レアケース14] 不備がある遺産分割調停調書を使用した相続登記

今回は、不備がある遺産分割調停調書を使用した相続登記についてご紹介します。

前提

  • 既に法定相続分で相続登記がされている
  • 遺産分割調停調書には、具体的な登記手続きについて書かれていない。(いわゆる登記手続条項の記載がない)
  • 相続人間でガチでもめているので共同申請は現実的ではない。

弁護士さんが介入した遺産分割調停の案件です。

相続人全員であるABC名義で法定相続登記がされている不動産(甲とします)について、遺産分割調停でAが単独で取得するという内容で調停が成立しました。

登記申請の局面になりましたが遺産分割調停調書には「甲不動産をAは単独で取得する」という記載しかありません。

→このままではBCを登記義務者、Aを登記権利者とするBC持分全部移転登記は申請できません。そこで担当された弁護士さん経由で裁判所にお願いをして更正決定を出してもらいました。はたして裁判所が更正決定で対応してくれるかドキドキでしたが、事前に裁判所の担当書記官の方にこのままでは登記申請ができないため、対応してもらいたい旨を説明しておきました。

無事に、こんな内容の更正決定を出してもらいました。

「年月日遺産分割を原因とするBC持分全部移転登記手続きをする」

念のため、更正決定の確定証明書も添付しましたが

何事もなく登記完了に至りました。

[不動産登記レアケース13] 数次相続と代襲相続が繰り返されている

不動産登記

相続登記義務化に伴い、過去の手つかずの相続が掘り起こされる中で増えてくるかと思います。
相続登記をしないままに次々と相続が発生する。代襲相続と数次相続の連続。
このようなケースに遭遇される方もいるのではないでしょうか。

今回ご紹介するケースがご参考になれば幸いです。

登場人物

被相続人Aは昭和48年に他界された後、被相続人Aの配偶者がB、子がD。Dの配偶者はC、子がEとF、Cには養子Gがいます。GはDとは縁組をしていません。FGは夫婦です。FGには、子HとIがいます。

ご依頼者様の要望は、A名義の不動産をG名義にしたい。

相続関係

Aは、昭和48年に他界
Bは、昭和63年に他界
Dは、昭和54年に他界
Fは、平成27年に他界
Cは、令和5年に他界

各相続での相続人

それぞれの相続を整理すると、
被相続人Aの相続人 BとD
被相続人Bの相続人 EとF
被相続人Dの相続人 CとEとF
被相続人Fの相続人 GとHとI
被相続人Cの相続人 EとGとHとI
この5つの相続に分けられます。

問題点

厳密に、登記手続きを行うとすると
Aにつき、亡B亡Dへの相続登記
亡Bにつき、E亡Fへの相続登記
亡Dにつき、亡CE亡Fへの相続登記、、、、。
このように続けていく形かと思います。
これはあまりにご依頼者様への負担が大きく現実的ではないと考えました。

解決

そこで相続人全員の方から聞き取りさせて頂いた結果、
それぞれの相続に関して、生前に遺産分割協議があったことが判明しました。

その結果、遺産分割証明書を作成して、過去に遺産分割協議は成立していたが
相続登記に至ることなく、現在に至ってしまったという事実を証明する書類を作成しました。

具体的には
被相続人Aが他界した時、Dが単独で相続する旨の協議が成立していた。
またDが他界した時、Cが単独で相続する旨の協議が成立していた。
Cが他界した時、Gが単独で相続する旨の協議が成立していた。

こういう内容の遺産分割証明書を作成し、現在生存しているEGHIに署名捺印を頂きました。

遺産分割証明書も公開しておりますので、ご参考にして下さい。