[不動産登記レアケース17]特別委任方式について

本レポートは、令和8年3月1日より施行される「特別委任方式」について、法務省の依命通知、事務連絡、および日本司法書士会連合会が策定した実務指針に基づき、現場の司法書士が直面する実務上の論点を整理したものである。本方式の導入は、司法書士が登記原因証明情報の作成名義人となる法的転換点であり、フルオンライン申請の促進に向けた極めて重要な制度である。
目次
  1. 制度の概要と基本的考え方
  2. 対象となる登記申請と作成者の範囲
  3. 委任状(代理権限証書)への記載と特別の委任
  4. 登記原因証明情報の作成・確認実務
  5. 登記申請手続とシステム上の対応
  6. 特殊な実務事案への対応
  7. 実務チェックリスト(まとめ)

1. 制度の概要と基本的考え方

制度の定義と根拠

「特別委任方式」とは、司法書士(司法書士法人を含む。以下「司法書士等」)が代理人として電子申請を行う際、司法書士等が作成名義人となった「報告形式」の登記原因証明情報について、登記義務者の電子署名を省略して適式な添付情報として取り扱う制度である。

根拠通知

  • 「司法書士等が電子申請の方法により権利に関する登記の申請をする場合における電磁的記録で作成する登記原因証明情報の取扱いについて(依命通知)」(令和7年12月9日付法務省民二第1578号)
  • 「司法書士等が電子申請の方法により権利に関する登記の申請をする場合における電磁的記録で作成する登記原因証明情報の取扱いの留意事項について(事務連絡)」(令和7年12月9日付法務省民二第1579号/補佐官通知)

施行日:令和8年3月1日

従来の取扱いとの決定的な違い

最大の違いは、電磁的記録としての登記原因証明情報の作成名義そのものが登記義務者から司法書士等に移行する点にある。

従来
登記義務者の電子署名

必須であった

特別委任方式
登記義務者の電子署名

不要となる

特別委任方式
作成名義人

司法書士等が自らの職責において作成名義人となり、電子署名を付与する

特別委任方式
報告形式への限定

「報告形式」の登記原因証明情報に限定。遺言書などの既存書面(証書)には適用されない

📌 制度の目的:登記義務者の電子署名環境の有無にかかわらず、司法書士の関与によって証明力を担保し、「フルオンライン申請の促進」を図ることにある。

2. 対象となる登記申請と作成者の範囲

Q

特別委任方式を利用できる「登記の目的」を具体的に教えてください。

A

実務上の混乱を防ぐため、対象となる登記の目的は以下のものに限定列挙されている(依命通知2(1))。

  • 売買または贈与を原因とする所有権移転登記(共有持分移転を含む)
  • 抵当権または根抵当権の設定・抹消の登記
Q

一見、設定や抹消に準じるように見える「抵当権の変更」などは対象になりますか?

A

対象外である。以下の登記については、現時点では本方式を利用できない。

  • 交換、寄付を原因とする所有権移転
  • 登記名義人の住所・氏名変更登記
  • 抵当権の変更(抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更、利息の元本組入れ、一部弁済による変更、根抵当権の極度額の減額等)
  • 所有権移転仮登記、設定仮登記、およびそれらの仮登記の本登記
Q

司法書士法人の場合、社員以外の司法書士が作成者となれますか?

A

作成者(登記申請の代理人)は司法書士法人となるが、実際に事実を確認したのが代表社員以外の社員または使用人司法書士である場合、「法人の電子署名」に加えて「事実を確認した社員または使用人の電子署名」の両方が必須となる(後述「4」参照)。なお、復代理人や使者は、登記義務者との直接の委任関係がないため、本方式の作成者には含まれない。

Q

合同事務所形態における取扱いはどうなりますか?

A

司法書士法人のような組織としての同一性は認められない。合同事務所の各司法書士は独立して業務を執行しているため、「確認を行った司法書士」と「作成名義人として署名する司法書士」は同一でなければならず、法人のような「組織としての署名」は認められない(質疑事項集 問12)。

3. 委任状(代理権限証書)への記載と特別の委任

Q

「特別の委任」として委任状に記載すべき具体的な文言を教えてください。

A

単なる「登記申請に関する一切の件」という包括的な文言では不十分である。登記義務者が、司法書士を作成名義人とすることを確認し、これを委任した旨を明示する必要がある。

記載例:「司法書士何某が作成名義人となって登記原因証明情報を作成することに関する一切の件」

Q

委任状に記載する登記原因の日付について、注意点はありますか?

A

正確な日付(または予定日)の記載が必須である。法務局による形式的審査において、特別の委任が明確になされたかを判断するため、「令和〇年〇月中」といった概括的な表記は受理されない(質疑事項集 問9)。

Q

委任情報の作成日から登記原因日までの期間制限について詳しく教えてください。

A

原則として、「委任情報の作成日」から「登記原因が生じた日」までの期間が1か月以内である必要がある。

例外と立証資料

  • 海外居住者:パスポートの写し等の添付により、やり取りに相応の期間を要することが確認できる場合。
  • 農地法許可:転用許可証の記載(申請日や許可日)により、原因発生まで時間を要することが確認できる場合(質疑事項集 問6)。

4. 登記原因証明情報の作成・確認実務

Q

司法書士自らが行う「事実の確認」は、どのように記録すべきですか?

A

登記義務者に不利益が生じないよう、職責に基づき相当な方法で確認し、その態様を具体的に記録する。

記載例

  • 「契約への立会いおよび契約書の確認により売買の事実を現認した」
  • 「決済への立会いにより代金支払の事実を現認した」
  • 「登記義務者からの聴取および提供資料により契約等の事実を確認した」

⚠ 注意:登記権利者(買主等)側からのみの聴取や資料提示に基づく確認は、相当な方法とは認められない。

Q

作成時期および電子署名のタイミングに関する厳格なルールはありますか?

A

登記原因証明情報は、原則として「登記原因が生じた後」に作成しなければならない。

  • 署名日:電子署名が付与された日付が、登記原因日よりも前であってはならない(質疑事項集 問11)。
  • 代理権不消滅:登記原因が生じる前に「特別の委任」を受けていれば、不登法第17条の規定により、原因発生後に委任者が死亡した場合でも、司法書士は有効に原因証明情報を作成できる。ただし、農地法許可前など、原因自体が生じる前に死亡した場合は、改めて相続人から特別の委任を受ける必要がある。
Q

司法書士法人の署名ルールを整理してください。

A

以下の二重の署名体制が求められる(QIII3-5)。

  • 司法書士法人の電子署名(法人の代表権に基づく署名)
  • 事実を確認した社員または使用人司法書士の電子署名

※法人の電子証明書だけでは、「誰が事実を確認したか」という個人責任の所在が不明確になるため、個人の署名も必須となる。

【実務指針】

司法書士は、依命通知の要件を満たすだけでなく、リスクベースアプローチの観点から、本人確認および犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認を併せて行い、不正登記を防止する高い倫理観が求められる(QIII4-2参照)。

5. 登記申請手続とシステム上の対応

Q

オンライン申請時、添付情報欄にはどのように記載しますか?

A

以下のように記録する。

記載内容:「登記原因証明情報(特別委任方式)」

Q

登録免許税の電子納付ができない場合、申請は却下されますか?

A

却下されない。電子納付はフルオンライン促進のための要件であるが、金融機関の限度額設定等により電子納付が困難な「特段の事情」がある場合は、書面等での納付も認められる。この場合、特段の証明資料や理由の記載も不要である(質疑事項集 問15)。

Q

本方式によるPDFファイル提供において、なぜ補正が認められるのですか?

A

従来の特例方式(書面をスキャンしたPDF)では、原本との同一性担保および不正申請防止の観点からPDFの補正は一切不可であった。しかし、特別委任方式は「司法書士自身が作成名義人」であり、自らが受けた「特別の委任」の範囲内であれば、自ら作成した内容を修正する権限を有するため、論理的に補正が可能となる(質疑事項集 問4)。

6. 特殊な実務事案への対応

Q

「わかれ取引」における対応の違いを教えてください。

A

申請方式により可否が分かれる(QIII5-2)。

  • 利用可能 共同代理方式:義務者代理人が申請代理人となるため、特別委任方式による原因証明情報を提供できる。
  • 利用不可 復代理方式:本方式は「作成名義人である司法書士等が自ら代理人として申請する」ことが要件であり、義務者から直接の委任を受けていない復代理人による申請は認められない。
Q

三者間契約(三為取引)における委任状の取扱いは?

A

中間者(第三者のためにする契約の売主等)も登記義務者に準じた作成名義人となるため、中間者からも「特別の委任」を受ける必要がある。

ただし、中間者は「不動産登記法上の登記義務者」ではないため、法理上、中間者からの委任状を法務局へ提出する必要はない(質疑事項集 問8)。

Q

本人確認情報(不登法23条4項)との関係を整理してください。

A

本人確認情報と特別委任方式の登記原因証明情報は、法的性質が全く異なるため、一体化や兼用はできない。

  • 理由:本人確認情報は「本人の同一性」を確認する情報であり、「登記義務者が登記原因を自認する性質のものではない」ためである(質疑事項集 問13)。
  • ただし、両者を別個の情報として作成し、併用することは可能である。

7. 実務チェックリスト(まとめ)

本方式を利用する際は、以下の要件をすべて満たしているか最終確認すること。

  • 司法書士等が代理人として電子申請(特例方式を含む)すること
  • 登記の目的が次のいずれかであること
    ① 売買または贈与を登記原因とする所有権(共有持分を含む)の移転の登記 ② 抵当権(根抵当権を含む)の設定または抹消の登記
  • 司法書士等が、登記義務者から、登記原因証明情報の作成名義人となることについて具体的な内容まで含めた特別の委任を受け、その旨が委任情報に記録されていること
  • 司法書士等が、委任に基づいて自らが確認した登記原因となる事実等を記録した登記原因証明情報を電磁的記録で作成し、電子署名をしていること
  • 確認方法が、契約の締結や金銭の授受の現認、登記義務者からの聴取その他の相当と認められる方法であること
  • 登記原因証明情報を作成した司法書士等が、代理人としてその登記原因に基づく登記を申請し、その添付情報として当該登記原因証明情報を提供していること
  • 申請情報の添付情報欄に「登記原因証明情報(特別委任方式)」と記録されていること
  • 登録免許税が電子納付の方式により納付されていること(電子納付金額の上限超過等、納付できない正当な理由がある場合を除く)
根拠通知・関係法令
  • 法務省民二第1578号(令和7年12月9日付・依命通知)
  • 法務省民二第1579号(令和7年12月9日付・補佐官通知)
  • 日本司法書士会連合会策定・実務指針(QIII各項)
  • 不動産登記法第17条(代理権の不消滅)、第23条第4項(本人確認情報)

[不動産登記レアケース16]職権による住所等変更登記 自然人と法人について

レアケース:ご利用にあたって
令和8年4月1日から開始した「職権による住所等変更登記(スマート変更登記)」は、実務上迷いやすいポイントが多い制度です。本記事は法務省通達・日司連通知をもとに、実務で生じやすい疑問をQ&A形式でまとめています。あくまでご参考程度にお読みいただき、各登記所への照会を前提としております。誤っている点や先例変更等のご指摘は大歓迎です。

制度の概要

令和8年4月1日より、不動産の所有権登記名義人の住所・氏名(法人の場合は名称・住所)に変更があった場合、登記官が職権で変更登記を行う「スマート変更登記」が開始されました。

この制度が機能するためには、所有権の登記名義人があらかじめ「検索用情報」を法務局に申し出ておく必要があります。検索用情報の申出制度は令和7年4月21日から先行して施行されています。

令和7年4月21日 施行
検索用情報の申出

所有権の保存・移転等の登記申請時に検索用情報を併せて申し出ることが原則必要となる。既存の登記名義人も単独申出が可能。

令和8年4月1日 施行
職権による住所等変更登記

登記官が住基ネット・商業登記情報を定期照会し、変更があれば登記名義人に意思確認の上、職権で変更登記を実行する。

目次
  1. 検索用情報の申出が必要な登記の種類
  2. 検索用情報の具体的な内容と記載方法
  3. メールアドレスがない場合の取扱い
  4. 法人名義の不動産に関するQ&A
  5. 職権変更登記と申請登記が競合した場合
  6. 実務上の注意点まとめ

1. 検索用情報の申出が必要な登記の種類

Q1

検索用情報の申出が必要な登記申請はどれか?

A

国内に住所を有する自然人が所有権の登記名義人となる以下の登記申請が対象です(新規則第158条の39第1項)。

  • (1)所有権の保存の登記
  • (2)所有権の移転の登記
  • (3)合体による登記等(不動産登記法第49条第1項後段の規定により併せて申請をする所有権の登記があるときに限る)
  • (4)所有権の更正の登記(その登記によって所有権の登記名義人となる者があるときに限る)

申出ができない者:法人・海外居住者・登記の申請人でない場合(代位者等による申請)。ただし代位登記完了後に単独申出は可能。

Q2

令和7年4月21日以前から既に登記名義人である者はどうすればいいか?

A

登記申請とは別に「単独申出」をすることで、所有不動産を職権による住所等変更登記の対象とすることができます(新規則第158条の40第1項)。申出の際は押印・電子署名不要、身分証明書の写しのみで手続き可能です。登録免許税等の費用もかかりません。

2. 検索用情報の具体的な内容と記載方法

Q3

検索用情報として申し出る項目は何か?

A

以下の5項目です(新規則第158条の39第1項第1号〜第5号)。

  • 氏名
  • 氏名の振り仮名(外国人の場合はローマ字氏名)※ローマ字氏名は登記記録に記録・公示される
  • 住所
  • 生年月日(公示されない)
  • メールアドレス(公示されない)※登記官が職権変更登記の可否を確認する際の連絡先

📌 実務上のポイント:振り仮名(ローマ字氏名)は登記記録に公示されます。通称名で登記申請する場合や、外国人住民票にローマ字氏名の記載がない場合は申請情報の内容とする必要がないケースもあります。 詳しくはレアケース15「外国人が日本の不動産を売却・購入する場合」をご参照ください

3. メールアドレスがない場合の取扱い

Q4

依頼者がメールアドレスを持っていない場合、申請書にはどう記載するか?

A

メールアドレスがない場合、その旨を申請情報の内容として記載します。

  • オンライン申請の場合:「その他事項欄」に「権利者Aにつきメールアドレスなし」と入力
  • 書面申請の場合:権利者のメールアドレス欄に「なし」と記載

この場合、登記官が職権で住所等変更登記を行うことの可否を確認する際は、登記名義人の住所に書面を送付することが想定されています。

Q5

代理人(司法書士)のメールアドレスを記載してもよいか?

A

不可です。メールアドレスは登記官が職権変更登記の可否を登記名義人本人に確認するための連絡先です。代理人による申請の場合を含め、登記名義人となる者本人のみが利用しているメールアドレスを記載する必要があります。依頼者に確認の上、本人のメールアドレスを記載してください。

Q6

DV被害者など、最新の住所を公示されたくない場合はどうなるか?

A

職権による住所等変更登記は、登記名義人の了解を得た上で実行する仕組みになっています。登記官から意思確認の連絡があった際に了解しなければ、職権登記は行われません。DV被害者等、最新の住所を公示することに支障がある方については、この仕組みで対応することが想定されています。

4. 法人名義の不動産に関するQ&A

法人の場合、住基ネットではなく商業登記情報(会社法人異動情報)を利用して名称・住所の変更を検知し、職権変更登記が行われます。

Q7

法人登記簿の名称等の「更正登記」がされた場合も職権変更登記の対象となるか?

A

対象となります(規則第158条の44第1項第2号)。法人登記簿に記録された法人の名称等の更正の登記(職権による登記の更正を含む)がされた場合も「変更があった」場合に含まれます。また、商号・名称に使用されている文字コードを更正する登記(例:マイナス「-」をハイフン「‐」に更正)がされた場合も同様に会社法人異動情報が送信され、職権変更登記の対象となります。

Q8

会社法人等番号の登記がされていない法人から職権変更登記の求めがあった場合はどうか?

A

スポット的な求めには応じる必要はありません。当該法人に対して、別途法人識別事項の申出を促すことが相当です。

📌 会社法人等番号が不動産の所有権の登記事項として記録されていることが、職権変更登記の前提となります。

Q9

同一法人が同一不動産の持分を数回に分けて取得し、一部に会社法人等番号の登記がない場合はどうか?

A

同一人が所有権の登記名義人であることが登記記録上明らか(複数登記事項の名称・住所の表示が同一)であれば、会社法人等番号の登記がない持分も含めて全て職権変更登記の対象となります。

5. 職権変更登記と申請登記が競合した場合

Q10

会社法人異動情報の受付後に、同内容の名称・住所変更の登記申請がされた場合はどうなるか?

A

受付番号の順に登記を処理します。

  • 前件:会社法人異動情報→職権による住所等変更登記を実行
  • 後件:登記申請→法第25条第3号により却下

なお、後件の申請については、申請人または申請代理人に対して前件で職権変更登記を行った旨を伝え、適宜取下げまたは一部取下げを促すことも考えられます

Q11

逆に、申請登記の後に同内容の会社法人異動情報が到達した場合はどうなるか?

A

前件の申請による登記を実行した後、後件の会社法人異動情報による登記については「物件不要」として処理を終了します。申請代理人が特別な対応をとる必要はありませんが、こうした競合が生じた場合の登記所の処理を把握しておくことが実務上有用です。

Q12

会社法人異動情報の受付後に、法人から「登記事項証明書を取りたいので職権変更登記を却下してほしい」と求められた場合はどうか?

A

その求めに応じる必要はありません。職権変更登記は法定の手続であり、法人側の事情による却下要求には対応しないこととされています。

6. 実務上の注意点まとめ

  • 令和7年4月21日以降の所有権申請には検索用情報の記載が原則必要。記載漏れがないよう申請書作成時にチェックリストに加えることを推奨。
  • メールアドレスは必ず本人のものを記載。メールアドレス「なし」でもOK。
  • 振り仮名は提供は必要だが登記記録に公示されない。依頼者への確認が必要。外国人・通称名使用者は記載が不要なケースあり。
  • 法人名義の不動産は会社法人等番号の登記が職権変更の前提。番号が登記されていない場合は法人識別事項の申出を促す。
  • 職権変更登記と申請登記の競合に注意。法人の住所・名称変更登記を申請しようとする際は、既に職権変更登記が先行していないか確認することが望ましい。
参考・関係法令等
  • 民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)
  • 不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和7年法務省令第1号)
  • 法務省民二第373号通達(令和7年3月3日付)
  • 法務省民二第525号通達(令和8年3月27日付・施行通達)
  • 日司連常発第27号(令和8年5月8日付・法人Q&A集)
  • 法務省HP「検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)」(令和7年4月30日更新)

[不動産登記レアケース15] 外国人が日本の不動産を売却(購入)する場合(令和6年4月1日改正)

1853年「黒船が来た!」から時は流れ、外国人の方が日本国の不動産を売買する場面も増えてきました。安全保障上の議論は別として、我々司法書士が外国人の不動産売買登記に当たり、様々な問題に直面することも珍しくありません。外国人が売る場合、買う場合、または海外居住日本人が売る場合、買う場合についてまとめています。ここでご紹介するのは私見もあり、皆様におかれましては事前に法務局へ照会をされることを前提としております。

A日本に居住している外国人が売主の場合

中長期在留者、特別永住者は住民登録がなされている市町村において印鑑登録することができ、当該印鑑に係る印鑑証明書の交付を受けることができる。この印鑑証明書をもって登記義務者の印鑑証明書として用いることができる。

外国人が印鑑証明書を添付した場合、別途、署名証明書の添付は不要。印鑑を使用している外国人が、申請書又は委任状等に署名捺印の上、日本における居住地市町村発行の印鑑証明書を添付して登記の申請があった場合、署名証明書の提出がなくても受理するのが相当である。(昭和35・4・2民甲787号民事局長回答)

B海外に居住している外国人又は外国企業が売主の場合

問題になるのは印鑑証明書の代替措置(印鑑登録制度がある国は、ほぼない)

先例(前提)
(ア)外国人が登記義務者として登記を申請する場合には印鑑証明書に代えて, 申請書又は 委任状の署名が本人のものであることの本邦の所属国大使館等の発行した証明書を提出 して差し支えない。(昭和59年8月6日民三3992号民事局第三課長依命通知)
(イ)所有権移転登記の義務者が外国人の場合,印鑑証明書に代えて委任状の署名が本人の 者である旨の外国の官憲 (在日公館, 本国の官公署等)の署名証明書を提出させるのが 相当である。(昭和34年11月24日民事甲2542号民事局長回答 )

B(a) 海外居住売主が来日する場合

海外居住の外国人売主が来日していれば、当該外国の在日大使館(売主母国を管轄する日本にある大使館)は、日本国内で使用する目的であればサイン証明書を発行に応じてくれる。 事前に登記委任状を作成して外国人売主に渡し、 外国人売主はこれを当該国在日大使館で認証を受け印鑑証明書の代替とすることができる。

売主が外国企業の場合、事前に登記委任の内容と法人の資格証明書の内容を一体として宣誓供述書の形式で作成しておき、そのひな形を予め当該会社代表者に渡しておき,当該代表者が会社準拠法国の在日大使館で認証してもらうことにより,会社資格証明書, 会社代表者印鑑証明書,登記委任状全てがこの宣誓供述書でまかなうことができる。

B(b) 海外居住売主が来日しない場合

外国人売主が売却の際に来日しない場合、事前に宣誓供述書素案を作成してEメールで委任状等を送り、 現地の公証人の面前で署名を認証してもらったものを返送してもらう。通常、売買日付を空白にして認証してもらうのが登記実務上一般的だと思われるが、事前に必ず管轄法務局へ確認して下さい。

B(c) 海外居住売主が外国法人の場合

外国法人が設立されている国の公証人の面前で当該会社代表者が1当該会社内容2自分に代表権があること3登記申請を司法書士に委任することを宣誓供述してその認証を受けることによって、資格証明書と印鑑証明書, 代理権限証書並びに登記申請委任状を兼ねることができる。

代表者の国籍が当該法人準拠法国以外の国籍である場合に、例えば、 ケイマン(イギリス領)を準拠法とする会社の代表者がアメリカに居住するイギリス人(イギリス国籍)であった場合の宣誓供述書は?

上記123を盛り込んだ宣誓供述書を作成し、ケイマンの公証人の認証があれば当該国(イギリス)の権限ある官公庁又は官憲の認証があるということで適格性を有する。

一方代表者のイギリス人がケイマンまで行けない場合には?

アメリカ在住の代表者たるイギリス人は、上記123を盛り込んだ宣誓供述書をイギリス国公証人又はソリシターの面前で認証すれば,これを会社代表者の印鑑証明書を代替するものとして適格性を有する(ただソリシターが認証権限を持っているのかどうかは諸説あるため、管轄法務局へご確認ください。)

代表者たるイギリス人が、アメリカ国内の公証人 (ノータリーパブリック) の面前で認証したときに、代表者としての印鑑証明書の代替として適格性があるか?
→法務局により適格性ありというケースと適格性がありと判断されたケースがある模様。 日本人がアメリカで印鑑証明書の代替としての宣誓供述書についてアメリカの公証人の面前で認証した場合には認める旨の先例があるが, 外国人が当該国以外の公証人の認証は原則的に否定的なようである。その理由として当該国の官公庁又は官憲の証明又は認証を要求しているため。

「 参考先例」
外国人が、本国の法制上の理由等のやむを得ない事情から、署名証明書を取得できない場合は、その旨の登記の申請書に押印すべき者の作成した上申書及び当該署名が本人のものであることの日本の公証人又は当該外国人が現に居住している国の官憲の作成した証明書の添付をもって、市町村長の作成した印鑑証明書の添付に代えることができる。

なお署名が本人のものであることの証明書を日本における領事若しくは日本における権限がある官憲が発行していないため当該証明書を取得することができない場合又は日本に当該外国人の本国官憲がない場合には、日本以外の国における本国官憲において当該証明書を取得することが可能であっても、やむを得ない事情があるものとして取り扱ってよい。(平成28年6月28日付け法務省民商第100号民事局長通達 改正平成29年2月10日法務省民商第15号 抜粋)

外国在住の日本人が登記義務者として登記を申請する場合の委任状については,本人の署名であり、かつ自己の面前で宣誓した旨の現地公証人の証明があれば,領事その他日本の出先機関の証明がなくても、受理してよい。( 昭和33年8月27日民事甲1738号民事局長通達)

外国人が印鑑証明書を添付できないときは、印鑑証明書に代えて、申請書又は委任状の署名が本人のものであることを証する、当該外国官公署の署名証明書又は当該外国の公証人による署名証明書を添付する。なお、印鑑証明書と違い、署名証明書には作成後3か月以内の有効期限の制限は受けない。

「帰化した元日本人の場合」
元日本人である外国人が登記義務者として登記を申請する場合において本人の自署であることについて所属国駐在の日本大使館又は領事館において証明した場合は、その証明書を印鑑証明書に代えることができる。

「参考実例(ドイツ在住の日本人が売主)」
ドイツ在住の日本人が売主→在ドイツの日本領事館にて、委任事項を詳細に記載した委任状にサイン証明書をもらう。
・委任事項中の売買日付は空欄でOK
・委任状の委任日が、売買日より前でもOK
・委任者の住所は当然ドイツ語になるため訳文をつける

「参考実例(中国人と未成年者)」
前提 
:売買による所有権移転登記を申請する
:所有者は、未成年者(日本国籍)、親権者は中国籍の母親、父親は日本人で他界している
:所有者も親権者も中国在住

所有者 日本名 畑野禎芳(仮称):中国名 王禎芳(仮称)

所有者も親権者も中国在住であるため、親権を証する書面を公証書で作成を依頼したところ、公証書では家族関係書類(戸口簿)の記載に基づく為、日本名の「畑野禎芳(仮称)」の記載が出来ず、中国名の「王禎芳(仮称)」の記載しか出来ないとのこと。理由は、出生証明書には日本人である父親の氏名の記載はあるが、戸口簿に日本名である「畑野禎芳(仮称)」の氏名を登録しなかったためとのことでした。法務局との調整の結果、中国名の「王禎芳」での公証書と畑野禎芳の日本の戸籍(母として中国籍の母親の氏名の記載有)の二つで親権を証する書面として添付しました。もちろん翻訳文もです。

「翻訳文」
外国語で書かれた添付書類がある場合、訳文を添付する。誰が訳しても差し支えなく、翻訳者が訳文に「相違ない」旨を記載して署名押印するか登記権利者・登記義務者が訳文に相違ない旨を記載して署名押印すればよい。翻訳者の印鑑証明書は必要ない。当然、申請代理人でもさしつかえない。(昭和33.8.27民事甲第1738)(昭和40.6.18民事甲第1096号)

買主(登記権利者)は登記申請の添付書類として市町村等の作成に係る住所を証する情報(住所証明情報)を提供する必要がある。

①日本に住所を有する外国人の場合
長期在留者、特別永住者は住民登録がなされている市町村において、外国人住民票の発行を受けることができ、当該書面が住所を証する情報になる。

②日本に住所を有しない外国人の場合
当該所属国の公証人、在日領事館の認証がある住所に関する宣誓供述書

・韓国籍の場合
韓国住民登録証明書が住所証明情報になる。

・台湾籍の場合
戸政事務所(公的機関)発行の戸籍謄本が住所証明情報になる。

・漢字圏の場合

住民票に、本名(本国での名前)と通称名が併記されている場合で、ローマ字氏名の記載がない場合、

→本名(本国での名前)で登記する場合には、ローマ字氏名の登記が必須のため、住民票にローマ字氏名を入れてもらう必要がある。市役所にローマ字氏名を届けていなければ、別途本人にローマ字氏名を届けてもらい、その後住民票を再取得してもらう必要がある。

→通称名での登記する場合には、ローマ字氏名の登記は不要

外国人による所有権移転登記の新しいルールについて

令和6年4月1日から不動産登記法が改正され、外国にお住まいの方や外国籍の方が日本の不動産を購入して所有権移転登記(名義変更)をする際のルールが大きく変わりました。新しいルールの主なポイントは以下の3つです。

1. 国内の連絡先を登記すること

2. 氏名にローマ字を併記すること

3. 住所を証明する書類のルールが変わったこと

「国内連絡先の登録」

これまで、海外にお住まいの方が日本の不動産を買うと、税金や管理の面で連絡が取りにくくなる問題がありました。そこで、外国に住所がある方が不動産の持ち主になる場合は、日本国内での連絡窓口となる人や会社の名前、住所などを登記簿に記録することが義務付けられました。

・連絡窓口になれるのは誰か 日本国内に住所がある個人や、日本の会社などが連絡先になれますが、登録できるのは1名(または1社)のみです。

・どのような書類が必要か 連絡先となる人には「私が国内の連絡先になります」という承諾書を書いてもらう必要があります。この承諾書には実印を押し、印鑑証明書を一緒に提出します。また、連絡先となる人の住民票なども必要になります。

・頼める人が誰もいない場合 もし日本国内に連絡窓口を頼める人がいない場合は、「国内連絡先となる者がない」という上申書(認印可能、サイン証明書不要)を提出することで、「連絡先なし」として登記することも可能です。

このように、海外にお住まいでも日本の不動産に関する連絡がスムーズに取れるような仕組みが作られました。

氏名への「ローマ字氏名」の併記

令和6年4月1日の改正により、外国籍の方が所有権の登記名義人になる場合、本来の氏名と一緒にローマ字で氏名を併記するよう申し出ることができるようになりました。

・ローマ字の表記ルール

ローマ字の書き方には、いくつかの細かな決まりがあります。

1.すべて「大文字」で表記します。

2.「氏」と「名」の間にはスペース(空白)を入れます。中点(・)などの記号は使えません。

3.ミドルネームは、本来の氏名として登記される場合のみローマ字でも併記できます。

・漢字圏の方とそれ以外の方の表記 アメリカやイギリスなど、漢字を使わない国の方の場合は、「カタカナの氏名」にローマ字を併記します(例:シャーロック ホームズ/SHERLOCK HOLMES)。 中国や韓国など、漢字圏の方で日本の漢字を使って氏名を表示できる場合は、「漢字の氏名」にローマ字を併記します。もし日本の漢字で表示できない文字が含まれている場合は、カタカナの氏名にローマ字を併記することになります。

・添付書類について

ローマ字のつづりが正しいことを証明するために、以下のいずれかの書類を提出する必要があります。

1.ローマ字氏名が記載された日本の住民票の写し

2.パスポートのコピー(有効期限内で、顔写真とローマ字氏名があるページ。本人が「原本と相違ない」と記入し、署名やサインをしたもの)

3.パスポートがない場合は、自分で「このローマ字氏名に間違いありません」と書いた申告書(上申書)

・注意点 日本で「通称名」を使って生活しており、その通称名で登記をする場合には、ローマ字氏名を併記することはできません。

住所を証明する書類のルールの見直し

日本にお住まいの方が不動産の登記をする場合、住所を証明する書類として「住民票の写し」や「印鑑証明書」などを提出します。しかし、海外にお住まいの外国籍の方の場合、国によっては日本のような住民登録の制度がないため、住所の証明が難しいケースがありました。

これまでも、本国の公証人(事実を証明する公的な権限を持つ人)が作成した「宣誓供述書」などを提出する実務がありましたが、令和6年4月1日の改正により、どのような書類を出せばよいかのルールがより明確になりました。なお、このルール変更は「外国にお住まいの外国籍の方」が対象であり、外国にお住まいでも日本国籍の方(日本人)のルールはこれまで通りです。

主なルールは以下の通りです。

1.原則となる書類 韓国やドイツの一部など、日本のように住民登録の制度がある国の場合は、その国の政府(領事館を含みますが、公証人は除きます)が作成した、住所を証明する書類を提出します。

2.政府の証明書が取れない場合(公証人の書類とパスポート) 住民登録制度がないなど、政府発行の証明書が取れない場合は、以下の2点セットを提出します。 ・本国の公証人が作成した住所を証明する書類(宣誓供述書など) ・本人のパスポートのコピー

3.パスポートのコピーの注意点 提出するパスポートのコピーには、以下の条件があります。 ・登記を申請する日、または住所証明書が作成された日の時点で有効なものであること ・氏名、有効期間、顔写真のページが含まれていること ・公証人の書類とパスポートのコピーが「つづり合わさって一体」になっていない場合は、パスポートのコピーの余白に「原本と相違ありません」と記入し、本人が署名(サイン)または記名押印をすること

4.パスポートを持っていない場合 パスポートがない場合は、公証人が作成した住所証明書に加えて、「パスポートを持っていないことを本人が書いた申告書(上申書)」と、「本国の政府が作成した氏名が分かる書類のコピー(原本と相違ない旨の記入と署名が必要)」を提出します。

5.その他の救済措置 やむを得ない事情で、本国の公証人から書類をもらうこともできない場合は、日本の公証人に「この住所で間違いありません」と宣誓して作ってもらった書類と、パスポートのコピー、そして「本国の公証人の書類が取れないことの申告書(上申書)」を提出する方法も認められています。

6.外国語の書類についての注意 これら海外で作成された書類が外国語で書かれている場合は、必ず日本語の「訳文(翻訳)」を一緒に提出する必要があります。

具体例 外国人が所有権移転登記の権利者になる場合 ドバイに在住しているカナダ国籍の方が権利者。国籍はカナダですが、ドバイに永住権があります。カナダ大使館が閉鎖されており、カナダ大使館発行の書類が取得できません。アラブ首長国連邦が発行する何らかの書類で大丈夫ですか?

アラブ首長国連邦(現在お住まいの居住国)で発行される書類で可能

方法1:居住国(アラブ首長国連邦)の政府が発行した住所証明書

アラブ首長国連邦の政府機関が作成した、氏名と現在の住所が記載されている公的な証明書(日本の住民票に相当するもの)を取得する方法

方法2:居住国(アラブ首長国連邦)の公証人が認証した「宣誓供述書」+「パスポートのコピー」

アラブ首長国連邦の公証人(ノータリー)の面前で、本人が「自分の氏名・住所に間違いない」旨を宣誓して署名し、認証を受けた「宣誓供述書」を作成します。これに加えて、以下の要件を満たすパスポートのコピーをセットで提出します。

・宣誓供述書が作成された日、または登記申請の受付日において有効なパスポートであること。

・氏名、有効期間の記載、および写真の表示があるページのコピーが含まれていること。

・宣誓供述書とパスポートのコピーが一体(ホチキス等で合綴して契印)となっていない場合は、パスポートのコピーの余白に「原本と相違ない旨」を記載し、ご本人が署名(または記名押印)する必要があります。

ア 事前通知 (不登法23条1項)
申請人が外国に居住しているときは、その外国の住所に宛てて発送することになる。本人が航空郵便の郵送料を納付した場合に限り、航空郵便による (昭和35年6月2日民事甲1369号民事局長通達)。 法人が申請人である場合、 法人の主たる事務所に宛てて送付すること を原則とするが,申請人から法人の代表者の個人の住所宛に送付されたい旨の申し出があったときは、代表者個人の住所に宛てて送付すること になる(現準則43条2項)。

イ 海外など遠隔地居住者が登記義務者である場合
管理処分等一切の権限を授権された者が存し, かつその授権が公正証書等によって明らかにされており,その者からの申出があるときは, 保証通知を当該代理人に対して発して差し支えないとしている (昭和35年 6月16日民事甲1411号民事局長通達)。

外国に住所を有する外国人についての住所証明情報の見直し
2024年(令和6年)4月1日施行

・従前の実務 外国に住所を有する外国人が所有権登記名義人となる場合に提出する住所証明情報としては、同国の官公署の証明に係る書面又は同国の公証人の証明に係る書面等を提供することとされている(昭和40年6月18日付法務省民事甲第1096号民事局長回答参照)。
・従前の実務の問題点 登記先例による実務上の取扱いにとどまり、実際にどのような書面が必要になるか、またその正確性がどの程度のものであるかについては必ずしも明確でない部分があり、運用上の幅が広くなっている(中間試案の補足説明)。
・見直しの対象は外国に住所を有する「外国人」‐日本人は対象外‐ 外国に住所を有する日本人が所有権の登記名義人となる場合には、住所証明情報として、住所地を管轄する在外公館から発給された在留証明書等を提供することとされている(昭和33年1月22日付法務省民事甲第205号民事局長心得回答)。在留証明書は、在外公館が発給するものであり、住所は正確であると考えられ、かつ、その者が実在することを証明するに足りるものと考えられるため、外国に住所を有する日本人に関する取扱いは従来どおりである(部会資料35参照)。
・令和5年12月15日法務省民二第1596号(通達) 「外国に住所を有する外国人又は法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の住所証明情報の取扱いについて(通達)」が発出された。この通達による取扱いは、令和6年4月1日以後にされる登記の申請について実施される。通達では、「第1」において外国に住所を有する外国人(自然人)が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合について解説したのち、「第2」において法人のパターンについて解説されている。

・自然人の場合

第1 外国に住所を有する外国人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合
1 外国に住所を有する外国人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の当該登記名義人となる者の住所証明情報については、次の(1)又は(2)のいずれかと
するものとする。
(1) 登記名義人となる者の本国又は居住国(本国又は居住国の州その他の地域を含む。以下「本国等」という。)の政府(本国等の領事を含み、公証人を除く。以下「本国等政府」という。)の作成に係る住所を証明する書面(これと同視できるものを含む。)
(2) 登記名義人となる者の本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面及び次のア又はイに掲げる区分に応じ当該ア又はイに定める書面
ア 登記名義人となる者が旅券を所持しているとき次の要件を満たす旅券の写し(ア) 当該住所を証明する書面が作成された日又は当該申請の受付の日において有効な旅券の写しであること。
(イ) 登記名義人となる者の氏名並びに有効期間の記載及び写真の表示のあるページの写しが含まれていること。
(ウ) 当該住所を証明する書面と一体となっていない旅券の写しにあっては、原本と相違がない旨の記載及び登記名義人となる者の署名又は記名押印がされていること。
イ 登記名義人となる者が旅券を所持していないとき登記名義人となる者の作成に係る旅券を所持していない旨の上申書及び登記名義人となる者の本国等政府の作成に係る書面又は電磁的記録(以下「書面等」という。)の写し等(写し又は電磁的記録の内容を書面に出力したものをいう。以下同じ。)であって、次の要件を満たすもの
(ア) 登記名義人となる者の氏名の記載又は記録がある書面等の写し等であること。
(イ) 当該住所を証明する書面が作成された日又は当該申請の受付の日において有効な書面等の写し等であること。
(ウ) 当該住所を証明する書面と一体となっていない書面等の写し等にあっては、原本と相違がない旨の記載及び登記名義人となる者の署名又は記名押印がされていること。

2 前記1(2)にかかわらず、所有権の登記名義人となる者の本国等の法制上の理由等のやむを得ない事情から、登記名義人となる者の本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面を取得することができないときは、日本の公証人の作成に係る住所を証明する書面等(登記名義人となる者がその住所が真実であることを宣誓した書面等について、公証人法(明治41年法律第53号)第58条ノ2第1項又は第62条ノ6第2項(令和5年法律第53号による改正後の公証人法第53条第1項又は第59条第3項)の規定に基づく認証がされたものをいう。)並びに次のア及びイに掲げる書面を住所証明情報とすることができるものとする。
ア 前記1(2)アに定める書面
イ 登記名義人となる者の作成に係る本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面を取得することができない旨の上申書
3 登記所に提供する前記1又は2の情報のうち、外国語で作成されたものについては、その訳文を添付しなければならない。

・【第1‐1(1)】本国等政府の作成に係る住所を証明する書面 住民登録法等の根拠法令が存在する国に住所を有する外国人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合には、通達に基づき「本国等の政府の作成に係る住所を証明する書面」を提供することが考えられる。韓国、スウェーデン、フィンランド、ドイツ(ベルリン州)
では住民登録法等の根拠法令が存在する。
・【第1‐1(2)ア】本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面等 従来から、本国等の政府作成に係る住所証明情報の提供が困難な国に住所を有する外国人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合には、本国政府ではなく、本国公証人
(ノータリー、ノータリーパブリックオフィス)による宣誓供述書
を住所を証する情報として提供することが実務上許容されてきた。上記の通達の発出により、従来の実務上の取扱いが追認されたともいえる。もっとも、通達では「登記名義人となる者の本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面」に加えて、登記名義人となる者が旅券を所持しているときには、前記ア(ア)(イ)(ウ)の要件を満たす旅券の写しが必要となるなど、従来の登記実務とは異なる点があるため注意を要する。
最大のポイントは、旅券の写しが公証人作成の住所証明書と一体となっていない場合には、原本と相違がない旨の記載及び登記名義人となる者の署名又は記名押印がされている旅券の写しを用意しなければならない点である。

・【第1‐1(2)イ】登記名義人となる者が旅券を所持していないとき この場合は、

①「本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面」、②「旅券を所持していない旨の上申書」、③「登記名義人となる者の本国等政府の作成に係る書面の写し等」が必要になる。
③は公証人作成の住所証明書と一体となっていない場合には、原本と相違がない旨の記載及び登記名義人となる者の署名又は記名押印がなされた当該写し等を用意しなければならない。
・【第1‐2】やむを得ない事情により本国等の公証人作成書面を取得できない場合の救済措置 一定の要件を満たせば、日本の公証人の作成に係る住所を証明する書面でも良いものとされた。この場合、登記名義人となる者の旅券、上申書が必要となる。

・法人の場合

第2 外国に住所を有する法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合
1 外国に住所を有する法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の当該登記名義人となる者の住所証明情報については、次の(1)又は(2)のいずれかとするものとする。
(1) 登記名義人となる者の設立に当たって準拠した法令を制定した国(州その他の地域を含む。以下「設立準拠法国」という。)の政府(設立準拠法国の領事を含み、公証人を除く。以下「設立準拠法国政府」という。)の作成に係る住所を証明する書面(これと同視できるものを含む。)
(2) 登記名義人となる者の設立準拠法国の公証人の作成に係る住所を証明する書面及び登記名義人となる者の設立準拠法国政府の作成に係る書面等の写し等であって、次の要件を満たすもの
ア 登記名義人となる者の名称の記載又は記録がある書面等の写し等であること。
イ 当該住所を証明する書面が作成された日又は当該申請の受付の日において有効な書面等の写し等であること。
ウ 当該住所を証明する書面と一体となっていない書面等の写し等にあって
は、原本と相違がない旨の記載及び登記名義人となる者の代表者その他の当該住所を証明する書面の作成に当たって宣誓供述を行う権限のある者(以下「代表者等」という。)の署名又は記名押印がされていること。

2 前記1(2)にかかわらず、所有権の登記名義人となる者の設立準拠法国の法制上の理由等のやむを得ない事情から、登記名義人となる者の設立準拠法国の公証人の作成に係る住所を証明する書面を取得することができないときは、登記名義人となる者の代表者等の本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面又は日本の公証人の作成に係る住所を証明する書面等(当該代表者等がその住所が真実であることを宣誓した書面等について、公証人法第58条ノ2第1項又は第62条ノ6第2項(令和5年法律第53号による改正後の公証人法第53条第1項又は第59条第3項)の規定に基づく認証がされたものをいう。)並びに次のア及びイに掲げる書面を住所証明情報とすることができるものとする。
ア 登記名義人となる者の設立準拠法国政府の作成に係る書面等の写し等であって、前記1(2)アからウまでの要件を満たすもの
イ 当該代表者等の作成に係る設立準拠法国の公証人の作成に係る住所を証明する書面を取得することができない旨の上申書
3 登記所に提供する前記1又は2の情報のうち、外国語で作成されたものについては、その訳文を添付しなければならない。

・【第2‐1(1)】設立準拠法国政府作成に係る住所を証明する書面 外国に住所を有する法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合、当該登記名義人となる者の住所証明情報として、設立準拠法国の政府(設立準拠法国の領事を含み、公証人を除く)作成に係る住所を証明する書面(これと同視できるものを含む)を用いることができるものとされた。なお、設立準拠法国以外の政府が作成した証明書では要件を満たさない。
・【第2‐1(2)】登記名義人となる者の設立準拠法国の公証人の作成に係る住所を証明する書面等 ➊「登記名義人となる者の設立準拠法国の公証人の作成に係る住所を証明する書面」に加えて、➋「登記名義人となる者の設立準拠法国政府の作成に係る書面等の写し等」であって、通達第2‐1(2)アイウの要件を満たすものが必要となる。
具体的には、➊に該当するものとして「宣誓供述書等」、➋に該当するものとして「日本の商業登記事項証明書に相当する内容が記載されているが、住所の記載や記載事項を証明する旨の記載のない政府作成の書面等」が該当すると解説されている(月報司法書士・第626号 日本司法書士会連合会理事齋藤毅「相続登記の実務−近年の改正を中心に」31頁)。
・【第2‐2】やむを得ない事情により設立準拠法国の公証人作成書面を取得することができないの救済措置 一定の要件を満たせば、登記名義人となる者の代表者等の本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面又は日本の公証人の作成に係る住所を証明する書面等でも良いものとされた。この場合、「登記名義人となる者の設立準拠法国政府の作成に係る書面等の写し等」であって、通達第2‐1(2)アイウの要件を満たすもの、上申書が必要となる。

[不動産登記レアケース14] 不備がある遺産分割調停調書を使用した相続登記

今回は、不備がある遺産分割調停調書を使用した相続登記についてご紹介します。

前提

  • 既に法定相続分で相続登記がされている
  • 遺産分割調停調書には、具体的な登記手続きについて書かれていない。(いわゆる登記手続条項の記載がない)
  • 相続人間でガチでもめているので共同申請は現実的ではない。

弁護士さんが介入した遺産分割調停の案件です。

相続人全員であるABC名義で法定相続登記がされている不動産(甲とします)について、遺産分割調停でAが単独で取得するという内容で調停が成立しました。

登記申請の局面になりましたが遺産分割調停調書には「甲不動産をAは単独で取得する」という記載しかありません。

→このままではBCを登記義務者、Aを登記権利者とするBC持分全部移転登記は申請できません。そこで担当された弁護士さん経由で裁判所にお願いをして更正決定を出してもらいました。はたして裁判所が更正決定で対応してくれるかドキドキでしたが、事前に裁判所の担当書記官の方にこのままでは登記申請ができないため、対応してもらいたい旨を説明しておきました。

無事に、こんな内容の更正決定を出してもらいました。

「年月日遺産分割を原因とするBC持分全部移転登記手続きをする」

念のため、更正決定の確定証明書も添付しましたが

何事もなく登記完了に至りました。

[不動産登記レアケース13] 数次相続と代襲相続が繰り返されている

不動産登記

相続登記義務化に伴い、過去の手つかずの相続が掘り起こされる中で増えてくるかと思います。
相続登記をしないままに次々と相続が発生する。代襲相続と数次相続の連続。
このようなケースに遭遇される方もいるのではないでしょうか。

今回ご紹介するケースがご参考になれば幸いです。

登場人物

被相続人Aは昭和48年に他界された後、被相続人Aの配偶者がB、子がD。Dの配偶者はC、子がEとF、Cには養子Gがいます。GはDとは縁組をしていません。FGは夫婦です。FGには、子HとIがいます。

ご依頼者様の要望は、A名義の不動産をG名義にしたい。

相続関係

Aは、昭和48年に他界
Bは、昭和63年に他界
Dは、昭和54年に他界
Fは、平成27年に他界
Cは、令和5年に他界

各相続での相続人

それぞれの相続を整理すると、
被相続人Aの相続人 BとD
被相続人Bの相続人 EとF
被相続人Dの相続人 CとEとF
被相続人Fの相続人 GとHとI
被相続人Cの相続人 EとGとHとI
この5つの相続に分けられます。

問題点

厳密に、登記手続きを行うとすると
Aにつき、亡B亡Dへの相続登記
亡Bにつき、E亡Fへの相続登記
亡Dにつき、亡CE亡Fへの相続登記、、、、。
このように続けていく形かと思います。
これはあまりにご依頼者様への負担が大きく現実的ではないと考えました。

解決

そこで相続人全員の方から聞き取りさせて頂いた結果、
それぞれの相続に関して、生前に遺産分割協議があったことが判明しました。

その結果、遺産分割証明書を作成して、過去に遺産分割協議は成立していたが
相続登記に至ることなく、現在に至ってしまったという事実を証明する書類を作成しました。

具体的には
被相続人Aが他界した時、Dが単独で相続する旨の協議が成立していた。
またDが他界した時、Cが単独で相続する旨の協議が成立していた。
Cが他界した時、Gが単独で相続する旨の協議が成立していた。

こういう内容の遺産分割証明書を作成し、現在生存しているEGHIに署名捺印を頂きました。

遺産分割証明書も公開しておりますので、ご参考にして下さい。

[不動産登記レアケース12] 表示登記と名変

こんな内容を掲載しています
不動産の表示に関する登記と住所変更・/土地・建物の表示変更の登記/建物滅失/地目変更/相続

レアケース:ご利用にあたって
司法書士として必ず当たる壁が名変だと思います。いざ調べると中々ピンポイントで出てこない。名変の情報が集約されていて、ここをチェックすれば大体の知識は得られる、そんなWEBが欲しくて立ち上げました。あくまでご参考程度にお読み頂き、皆様にて裏を取ったり、法務局へ照会されることを前提としております。誤っている、先例変更がある等のご指摘は大歓迎です。ただ上記趣旨から、この時はどうなるの?というご質問や却下になったじゃないか!という苦情には対応しておりません。皆様の業務が円滑に進むことを願います。

代表司法書士 時任裕

土地家屋調査士さんの分野になりますが知っておいて損はないと思います。ご参考までに。

※土地・建物の表示変更の登記は、その所有者に不動産登記法による申請義務が課せられて
おり、所有者の表示が登記簿上のそれと符合しない場合でも、原則として所有者の表示の
変更(更正)証明書を添付すれば、前提としての登記名義人の表示変更 (更正) 登記をす
ることなく、土地・建物の表示変更の登記申請をすることができる。

※地目変更の登記を申請するに当たって、 申請者の住所が登記簿上のそれと異なる場合でも、
申請者は名義人の表示変更または更正の登記をすることなく、変更(更正)を証する書面
を添付して地目変更の登記をすることができる。
(302 71, 394 253)

※建物滅失(または土地滅失)の登記を申請する場合に、所有者の住所が変更して登記簿と
符合しないときでも、その変更または更正を証する書面を添付すれば、直接、滅失の登記
ができる。
(登研13・28)

※表題部に記載された所有者または所有権の登記名義人から “住所の変更を証する書面”を
添付して、(名変) 登記を省略して直接分筆の登記の申請があった場合、 便宜、受理して
差し支えない。
(登研581・146)
◎従来は登記必要説(登研429124) が有力であったが、 後掲示する最近の論説等は、かな
り“名変更登記省略肯定” の傾向にあり、しかも、上記質疑応答がその直後に発表され
たことからしても、当局の実務取扱は当該質疑応答のとおり変更されたものと判断して差
し支えないと思う。
民事法務 「登記のページ」 平成3年11月号
登記研究「カウンター相談」 平成7年10月号
登記研究「実務座談会 (1)」 平成8年1月号
【実務取扱】
変更を証する書面を添付すれば、 新住所を記載した委任状を以って直接、分筆の登記の申
請をすることができる。
ただし、分筆した土地への転写事項としては、あくまでも分筆される土地=元番に記載さ
れている住所【旧住所】が転写される。
名義人の表示変更 (更正) の登記と土地分筆の登記とを併せて申請する場合には、名義人
の表示変更(更正) 登記を先にすべきである。

※不動産の合併合筆の登記を申請する場合に、当該登記名義人の表示が住所移転等により
変更しているときは、 前提として、 登記名義人の表示変更の登記をすべきである。
(登研364・79、380・80)

※被相続人名義の土地で、登記簿上の住所の表示がそれぞれ異なる土地の 『合筆』 の登記申 請をする場合には、その前提として、 相続人全員からの被相続人の表示変更 (更正) 登記
を省略できない。
(登研423・127)

※土地の合筆の登記申請を行う際に添付する(印鑑証明書)の住所が、合筆する土地の所有
権の登記名義人の住所と異なる場合
【事例】: H市からW市へ平成3年4月10日住所移転による登記名義人の表示変更の登記を 完了している甲氏所有のA及びBの土地について合筆の登記申請がなされたとき
H市の住所が記載されているH市発給の印鑑証明書(発行年月日/平成3年4月1日) ・H市からW市への住所の変更を証する書面が一緒に添付書類として添付されれば、 受理して差し支えない。
(登研523・137)

[不動産登記レアケース11] 商業登記と名変

こんな内容を掲載しています
商業登記、法人登記で役員の氏名変更や住所変更は必要か/取締役が死亡した場合、死亡を証する書面上の住所と登記簿上の住所が相違/商号に使える文字/

レアケース:ご利用にあたって
司法書士として必ず当たる壁が名変だと思います。いざ調べると中々ピンポイントで出てこない。名変の情報が集約されていて、ここをチェックすれば大体の知識は得られる、そんなWEBが欲しくて立ち上げました。あくまでご参考程度にお読み頂き、皆様にて裏を取ったり、法務局へ照会されることを前提としております。誤っている、先例変更がある等のご指摘は大歓迎です。ただ上記趣旨から、この時はどうなるの?というご質問や却下になったじゃないか!という苦情には対応しておりません。皆様の業務が円滑に進むことを願います。

代表司法書士 時任裕

商業登記、法人登記の場面で、前提としての名変(役員の氏名変更や住所変更)は必要か?
※従前の取り扱いについては、名変 (名更)に関する先例等は見当たらず、(登記研究)の
質疑応答によると、【株式会社】 代表取締役の再任に際して、登記簿上の 「住所」と議事 録記載のそれとが相違していても、 “同一人であることを証する書面”の添付すら要せず (登研254・73、25169、329・67、375・82) 【有限会社】の場合も同様に、その差異が 軽微で同一人と認められる限り、変更・更正を証する書面の添付も不要 (登研25269、 33974、34778) で、 再任の登記申請を受理して差し支えないとしていた。

※重任の登記の前提として取締役の住所の変更(または更正) の登記がなされなくとも、実
体に符合する住所で取締役の重任の登記がなされるのであるから、 公示上はこれをもって足りるとする考えによるものと解せられ、 仮に住所変更の登記をするとしても、住所の変更・更正を証する書面の添付を要しないのであるから、 前提の登記を省略する場合でも、 これらの添付を必要とする規定上の根拠・理由がないと考えられる。
「改正商業登記規則の施行による事務取扱いについて」
〈民事局第四課 平野・吉田 両課長補佐/昭48年 (登研第306号抜粋)〉

ただし、このような先例もあるので注意!
※株式会社の役員が重任した場合において、当該役員の登記してある氏名が新たに登記すべ き氏名と相違しているときは、議事録その他の書類により同一人であることが明らかでも、
重任の登記の前提として、氏名の変更または更正の登記をしなければならないと、 当該質疑応答により従来の取扱いを変更した。
(登研390・94 / 昭和55年6月)

※株式会社の役員が重任した場合において、当該役員の登記をしてある氏名が新たに登記す べき氏名と相違している場合に、議事録その他の書類により同一人であることが明らかで あり、かつ、登記用紙と同一の用紙に登記すべき事項を記載する場合 [全員改選時] に限り、氏名の変更または更正の登記をしないまま、 直接改名後の氏名で重任の登記をすることができる。
(実務)議事録にその旨を記載している例が多い。
[有限会社の場合の取扱い]
(登研409・86)

※株式会社の役員全員の変更で役員欄の用紙と同一の用紙に登記すべき事項を記載する場合 に限り、住所等の変更または更正の登記を省略することができるとする質疑応答が前述の
とおりなされた (登研40986) 、 有限会社については監査役がないことが多く、 その 場合には、取締役の全員について変更されることが一般的であるが、 この場合にも改正前 の商登法規則第80条第2項の「取締役および監査役の全員につき変更の登記を申請する場 合」に該当するとして、 従来から役員欄の用紙と同一の用紙を用いて申請されており、この取扱いに変更はないとしている。
(民事月報/平成6年3月号 「平成5年商法等の改正に伴う商業登記事務の取扱いについて:17頁」)

※代表取締役の住所変更等も同様の取扱いで差し支えない。

一方で役員の死亡の場合、前提として変更登記が必要なようです。
※登記簿に住所の登記のある役員の死亡による変更登記の申請に当たり、死亡を証する書面
と登記上の住所または氏名の記載が異なる場合には、表示変更または更正の登記をしない
限り、当該申請は受理されない。
(登研412・167)

※有限会社の取締役が死亡した場合に、死亡を証する書面上の住所と登記簿上の住所が相違
するときは、上記同様、 まず、当該取締役の表示の変更 (更正) の登記をすることを前提
としない限り、住所の移転を証する書面を添付しても本件変更登記は受理されない。
(登研427・106)

※株式会社(有限会社)の取締役、監査役の氏名の更正または代表取締役(取締役・監査役)
の住所・氏名の更正等の表示の (更正) の登記の登録免許税は、 金2万円である。
(登研365・79、415・121)
※更正を証する書面の添付は不要である。
(商登法第107条ただし書)〈現行:第132条第2項ただし書〉

※有限会社を株式会社に組織変更し、有限会社の取締役が株式会社の代表取締役に就任した
場合に、有限会社の取締役の住所が変更していたときは、 その変更後の住所により直接代
表取締役就任の登記ができる。
(登研421・109)

※商業登記簿の本店の所在として 『A市B町1番地 Cビル』 と登記している会社が、この
うち「Cビル」 だけを削除する変更登記を完了した後に、 当該変更登記前に取得した不動
産(当然「Cビル」の記載有り)を売却し、その所有権移転登記をする際には、その本店
の表示の変更による登記名義人の表示変更登記をする必要はない。
(登研453125)

※有限会社の社員総会議事録を添付しなければならない不動産登記申請において、議事録に
添付する取締役の印鑑証明書の住所と商業登記簿のそれとが相違する場合には、当該議事
録に変更(更正)を証する書面を添付するれば足りる。
(登研531・121)

※日本電信電話株式会社の再編成に伴い、 本店移転に伴う所有権登記名義人表示変更登記と
各承継会社への所有権移転登記は、同時申請により行うことを要する。
[会社(法人)登記と住居表示実施 ]
(平11・8・23民三1740依命通知)(登研626・177)

※住居表示実施地区に支店を移転した場合において、 住居番号の付定を受けずに建物の所在地番を支店所在地としてその移転登記を行ったときは、その後住居番号の付定を受けても、 それは住居表示に関する法律第4条の変更に該当せず、これによる変更登記について、登 録免許税法第5条第4号の規定の適用はない。
(昭45・3・4民甲930回答)
※株式会社の本店を移転した後または代表取締役が住所を移転した後、その登記前に移転後 の本店所在地または住所につき住居表示が実施された場合には、その本店所在地または住所の変更の登記申請は非課税とはならない。(中間省略登記は認められない)
(昭39.4.21民甲1590回答)

※本店において住居表示実施による変更登記をなし、 その抄本を添付して支店において住居表示実施による変更登記をする場合には、この抄本をもって非課税証明書に代えることが できる。 (昭37・9・11民甲2609通達)

※株式会社の代表取締役の住所について住居表示の実施があったが、 その事実を看過ごして 旧住所のまま重任の登記がなされた後その住所を住居表示実施後の住所に更正する場合には、登録免許税法第5条第4号の適用はない。
(昭42・11・16民甲3434通達)

※市区町村長の誤った証明書に基づいて住居表示の実施による株式会社の本店の変更登記を した後、改めて当該市区町村長の証明書を添付して、 その登記の更正の申請があったとき は、登録免許税を免除して差し支えない。
(昭40・9・24民四294回答)

商号に使える文字についてまとめています。
※商業登記において、 商号中に外国語を片仮名で表示する場合だけではなく、 漢字や平仮名
を用いる場合であっても、誤読を防止するため、 商号中に「なかてん (・)」 を用いて差
し支えない。
(昭54・2・9民四837回答) (登研655・175)

※平仮名で表記した商号に長音符号 「一(オンビキ)」 を用いることについて、 これを認め
ても差し支えない。
(登研658・203)

※商業登記規則等の一部を改正する省令(平成14年法務省令第47号。以下「改正省令」という)
及び商業登記規則第51条の2第1項 〈現行: 第50条〉の規定に基づき商号の登記に用いる
ことのできる符号に関する件(平成14年法務省告示第315号。以下「告示」という)の施
行に伴う登記事務の取扱いについては以下のとおり。

1 商号の登記に、 (1) ローマ字(大文字及び小文字)、 (2) アラビア数字、 (3) 「&」 (アンパサンド)、「’」(アポストロフィー)、「,」 (コンマ)、「-」 (ハイフン)、 「.」(ピリオド)、及び「・」 (中点) を用いることができる。
→(3)の符号は、字句(日本文字を含む)を区切る際の符号として使用する場合に限り用
いることができる。 したがって、会社の種類を表す部分を除いた商号の先頭又は末尾
に使用することはできない。
→ピリオドについては、省略を表すものとして会社の種類を表す部分を除いた商号の末
尾にも用いることができる。
なお、ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り、単語間の間を区切るために空白(スペース)を用いることもできる。
数字だけの商号を登記することも可能。
「株式会社」を「k.k.」「company incorporated」「Co.,Inc.」「Co.,Ltd.」等に変えることはできない。株式会社や合同会社などの種類を表す文字は使用が義務付けられている。

2改正省令の施行前から定款上の商号にローマ字その他の符号を用いている場合には、登
記の更正の手続(商業登記法(昭和38年法律第125号) 第107条 〈現行: 第132条〉)に準
じて、当事者の申請により登記上の商号を訂正することができる
→この場合の更正の申請書には、 定款 (同条第2項本文 〈現行:第132条第2項本文〉)
及び代理人により申請をする場合にはその権限を証する書面(同法第18条)を添付し
なければならない。

3会社を除くその他の法人等の名称の登記に関する取扱いについても、 1、2の取扱いと
同様とする。(法人登記規則(昭和39年法務省令第46号)第9条 〈現行: 第7条〉、特定
目的会社登記規則 (平成10年法務省令第37号) 第4条 (現行: 第3条〉、 中小企業等投
資事業有限責任組合契約登記規則(平成10年法務省令第47号) 第9条、 投資法人登記規
則(平成10年法務省令第51号)第4条(現行:第3条〉
(登研656・241)

会社(法人)本店と行政区画等の変更についてまとめています。
原則として、登記官が職権で変更の登記をする。
(商登法第26条、 同規則第42条、 同準則第69条)
〈準則につき現行: 商業登記等事務取扱手続準則第56条〉
※行政区画等の変更で本店所在の表示が変更された会社(法人)
登記官に対して、これらの記載の変更を促す申出をすることができる。
(昭39926民四308回答)
この申出による登記の記載は、職権に準ずる。
支店所在地および代表取締役等の住所の場合にも適用される。

登記記載例です。
A. 行政区画変更またはそれらの名称変更の場合
申請のとき「年月日町名変更」「年月日登記」
・職権のとき「年月日変更」「年月日修正」
Bこれらの変更に伴い地番号の変更もある場合
「年月日町名地番号変更」「年月日登記」
必ず、その変更の登記をしなければならない。
(昭4・9・18民8379回答)
C 土地改良事業または土地区画整理事業の施行に伴う地番号の変更の場合
「年月日土地改良(または区画整理)による地番号変更」「年月日登記」
(以上、昭42・10・17民甲2676通達)
(民四5661依命通知、平6・11・30民三8198通達)

[不動産登記レアケース10] 区分建物と名変

レアケース:ご利用にあたって
司法書士として必ず当たる壁が名変だと思います。
いざ調べると中々ピンポイントで出てこない。
名変の情報が集約されていて、ここをチェックすれば大体の知識は得られる、
そんなWEBを自分自身が欲しくて立ち上げました。
あくまでご参考程度にお読み頂き、皆様にて裏を取ったり、
法務局へ照会されることを前提としております。
誤っている、先例変更がある等のご指摘は大歓迎です。
ただ上記趣旨から、この時はどうなるの?
というご質問や却下になったじゃないか!
という苦情には対応しておりません。
皆様の業務が円滑に進むことを願います。

目次

敷地権付区分建物と名変・登録免許税

敷地権付区分建物と名変

※不動産登記法第100条第2項 〈現行: 第74条第2項〉 の規定により転得者が所有権保存の 登記を申請する場合には、 原始取得者の氏名・住所等の表示の変更または更正登記は省略することができる。 ただし、 変更または更正を証する書面の添付を要求している。(昭58年度全国首席登記官会同協議問題に対する本省回答No.73)

※同一棟内の二戸の敷地権付区分建物(敷地権の目的の土地:2筆)を所有している者が、 これらにつき登記名義人表示変更(更正)の登記を1件の申請書で申請する場合の登録免許稅(区分建物専有部分の個数2 + 敷地権の目的となっている土地の筆数2) × 1,000円 = 4,000円 (昭58・11・10民三6400通達第15第2項3号)権利の抹消登記の場合も同様の取扱である。数回に分けて取得された敷地権の共有持分権についても、 全体として1個の共有持分権として解釈すべきであるとする。

※既存の区分建物で、一体化作業により敷地権化されたものにつき、その後、所有権移転登記をする前提として、住所移転等の原因による表示変更(更正)の登記をする場合の「登記の目的」 の判断基準は、 あくまでも区分建物を基準として判断すればよい。(昭59年神戸地方法務局首席登記官電話回答)

※所有権が敷地権である区分建物所有者が住所を変更した場合、 敷地権が生じた日以前の日 を登記原因の日とする土地または建物のみの所有権に関する仮登記、 質権または抵当権設 定の登記を申請するときには、その前提として所有権登記名義人表示変更登記を要する。(登研454・132)

[不動産登記レアケース9] 抵当権、根抵当権と名変

レアケース:ご利用にあたって
司法書士として必ず当たる壁が名変だと思います。
いざ調べると中々ピンポイントで出てこない。
名変の情報が集約されていて、ここをチェックすれば大体の知識は得られる、
そんなWEBを自分自身が欲しくて立ち上げました。
あくまでご参考程度にお読み頂き、皆様にて裏を取ったり、
法務局へ照会されることを前提としております。
誤っている、先例変更がある等のご指摘は大歓迎です。
ただ上記趣旨から、この時はどうなるの?
というご質問や却下になったじゃないか!
という苦情には対応しておりません。
皆様の業務が円滑に進むことを願います。

目次

・債権者と債務者を互い違いにしてしまった場合の更正・取扱店の追加、変更、更正・抵当権(根抵当権)の追加設定の局面で表示変更登記を省略できるか否か・抵当権者(根抵当権者)、債務者の表示の変更・抵当権の債務者AとBが、異なる日に住所移転した場合・債務者の住所変更登記の一括申請

債権者と債務者を互い違いにしてしまった場合

「債権者を乙・債務者を甲」とする抵当権設定登記の申請書に添付された登記原因証書には、『債権者甲・債務者乙』と記載ミスがあったがそれを看過して登記を完了し、後日当該登記につき錯誤を原因として抵当権登記名義人の更正登記の申請があった場合には、申請を受理して差し支えない(昭35・6・3民甲1355回答)

(根)抵当権設定登記の登記義務者 (設定者)の表示に変更を生じているため、その表示が登記簿上の表示と異なっている場合には、予め登記名義人の表示変更の登記を申請する必要がある。(登研269・73)

取扱店の表示について

※住宅金融公庫の代理人である銀行を取扱店とする場合、 取扱店の表示を「○○銀行 本店営業部」とすることはできない。 (注: 平成19年4月に住宅金融公庫から独立行政法人住 宅金融支援機構へ権利義務承継)(登研453124)

※抵当権の移転登記の際に、 新抵当権者の表示に取扱支店を記載することは差し支えない。(登研370・74)

※委任状に取扱店の表示があれば、 登記原因証書に取扱店の記載がない場合でも、申請書に取扱店の表示をすることができる。(登研535・177)

各金融機関の取扱店

※労働金庫が抵当権者の場合も、 取扱店名 (取扱事務所何支店) の併記が認められている。(昭36・9・18民甲2320通達)(登研6355)

※全国信用金庫連合会が抵当権者でその貸付業務を信用金庫に委託する場合、 取扱店名を併記してその登記をも受けることができる。 (昭37.9.29民甲2781通達)(登研6355) (注:「全国信用金庫連合会」 は、 平成12年10月1日より 「信金中央金庫」に名称変更)

※全国信用協同組合連合会が抵当権者でその貸付業務を信用組合に委託する場合、 取扱店名 を併記してその登記をも受けることができる。(昭62・2・27民三896通達)(登研6355) (注:「全国信用協同組合連合会 (全信組連)」は、 平成19年1月1日現在もその名称で存続)

※中小企業金融公庫を抵当権者とする取扱店の表示について、 「営業第一部」として申請することができる。(昭57.4.28民三3238回答) (登研688265)

※外国会社を抵当権者とする抵当権設定登記を申請する場合に、 申請書及び登記原因証明情報に外国会社の取扱店として日本における営業所が記載されている時でも、当該営業所が登記されていることを証する登記簿謄本等の提供は要しない。(登研633・175)

取扱店の表示の追加について

※既存の(根)抵当権の設定登記に取扱支店の表示がない場合に、これにつき取扱支店を表示する登記は、(根) 抵当権登記名義人の表示変更の登記に準じ、便宜認めて差し支えない。(昭36・9・14民甲2277回答)

※取扱店の記載のない担保権の登記に取扱店を付記する登記は、当該抵当権等の担保権の変更(更正を含む 但し処分の登記を除く) の登記の申請をする場合に限り、併せて申請することができる。(昭36・11・30民甲2983通達)

  • 登記の目的:「昭和○年○月○日受付第何号順位×番抵当権に次の取扱支店の附記」と記載し、取扱支店の名称を記載する。(昭36・11・30民甲2983通達)
  • 登記原因およびその日付 : 何らの記載を要しない。
  • 登録免許税:抵当権の変更と併せて申請する場合には、取扱店の付記の分を改めて徴収することを要しない。

※登記名義人(抵当権者)のみによる単独申請で、登記済証をはじめ印鑑証明書、そしてその存在を証する会社の支店に関する登記簿謄抄本の添付を要しない。 (登研182・162)
→登記原因証明情報の添付は必要(登研689・291)

取扱店自体の変更について

※取扱支店等若しくはその表示の変更、又は取扱支店等を登記する抵当権の変更登記を申請する場合には、登記原因証明情報を提供する必要がある。(登研689・291)

※抵当権者の取扱支店を甲支店から乙支店に変更した場合は、抵当権登記名義人表示変更登記に準じて単独で、抵当権の変更登記申請ができる。(登研352・101385・80)

  • 登記の目的:「抵当権変更登記」
  • 登記の原因:何らの記載を要しない。
  • 変更後の事項 : 「取扱店 乙支店」
取扱店の表示の変更・更正・抹消について

登記の目的:「抵当権変更(または更正)」

登記の原因
 a.遺漏の場合:「遺漏」 / 「追加すべき事項」
 b. 誤記の場合:「錯誤」/「更正すべき事項」
 c. 取扱支店の名称の変更の場合: 「年月日 取扱店名称変更」 / 「変更後の名称」

取扱店の表示の抹消について
登記の目的: 「抵当権変更」
変更後の事項: 取扱店の表示抹消
(登研595・135)

【取扱支店として登記できる例】

金融機関の支店名等を取扱店として登記することが可能なケースです。

  • 「取扱店 東京営業部」 金融機関が自ら「東京営業部」を支店であるとして申請すれば、登記可能です。「支店」という文字が付されていなくても問題ありません。
  • 「取扱店 何信用金庫」 信金中央金庫が貸付業務を信用金庫に委託して行った場合の抵当権設定登記において、取り扱いをした信用金庫を取扱支店として登記することができます(例:信金中央金庫(取扱店 何信用金庫))。

【取扱支店として登記できない例】

以下のケースでは取扱支店として登記(または申請)することができません。

  • 「取扱店 本店営業部」「取扱店 首都圏」「取扱店 東京公務部」「取扱店 本店不動産課」など 名称から判断して明らかに業務分野の1つにすぎず、支店の名称として付したのではないことが明白である場合は登記できません。
  • 信用金庫の支店 信用金庫の支店を取扱店として登記することはできません。
  • 信用保証協会・信用組合の支店 信用保証協会や信用組合の支店を取扱店として登記することはできません。また、信用保証協会を抵当権者とする登記で、取扱店を「○○銀行○○支店」とすることも認められません。
  • 本店の支配人からの申請(他支店扱い) 「A銀行本店」の支配人から、「取扱店 B支店」とする抵当権設定登記の申請は受理されません。本店の支配人は、B支店の営業に関する代理権限を有しないためです。
  • 支店の支配人からの申請(他支店扱い) 「甲銀行A支店」の支配人は、取扱店を「同銀行B支店」とする抵当権設定登記申請の委任をすることはできません。A支店の支配人は、B支店の営業に関する代理権限を有していないためです。
追加設定について

※根抵当権者の表示変更があった後に当該根抵当権について他の不動産を『追加担保』とす る登記の申請をするときは、前提として根抵当権者の表示変更の登記を省略することはできない。 (411 84, 422 104, 475 131)

→たとえその不一致の原因が 『行政区画の変更等』 であっても、不動産登記法第59条 〈現行: 不動産登記規則第92条第1項〉 [変更看做規定] の適用はなく、 従って、 先に設定登記 がされている根抵当権と追加する根抵当権とが形式的に同一性を欠くことになるため

根抵当権の登記名義人の表示変更登記の一括申請

※登記名義人の本店の表示に関して、

●甲土地については 「平成元年2月1日 住居表示実施」
●乙土地については 「昭和59年○月○日 本店移転」 および 「平成元年2月1日住居表示実施」

を登記原因とする甲・乙両不動産についての根抵当権の登記名義人の表示変更登記は、同 一の申請書で申請することはできない。(登記原因が異なるから / 登研516・197)

※根抵当権につき共同担保として追加担保の設定登記を申請する場合に、 根抵当権者の「取扱店の表示」 が既登記根抵当権のそれと異なる場合でも受理される。(377 141, 382 81、 383 · 93)

  • 既登記 : 取扱店の表示なし、 追加設定/取扱店の表示あり。
  • 既登記 : 取扱店の表示あり、 追加設定/取扱店の表示なし。
  • 既登記 : 取扱店Aの表示、 追加設定/取扱店B の表示。

(以上、 いずれの場合も受理される。 / 登研548166)

抵当権追加設定の局面で、表示変更登記の省略の可否

※既登記抵当権の抵当権者の氏名または本店等の表示が変更されている場合には、変更を証する書面を申請書に添付すれば、 前提たる抵当権者の表示の変更登記を省略しても、追加設定の登記申請は受理される。(登研547146、560・136)

※根抵当権設定または変更登記の利害関係人等の表示が登記簿のそれらと相違する場合で も、その者の承諾書に表示の変更(更正)を証する書面を添付すれば、利害関係人の表示 の変更(更正) 登記は省略することができる。(登研36283、419.87)

※有限会社の社員総会議事録や株式会社の取締役会議事録を添付するときにこれに添付する 印鑑証明書の住所または氏名と当該会社の商業登記簿謄本のそれらの記載とが一致しない 場合でも、当該議事録に変更証明書を添付すれば足りる。(登研531・121)

(根)抵当権追加設定の局面で、表示変更登記の省略の可否

※追加設定登記申請書に記載すべき債務者の住所が、 従前の登記以後の住所移転等により既登記における債務者の住所と一致しない場合に、前提としての 『債務者の表示の変更登記』 の申請を

  • 根抵当権の場合→要する。 (登研32572、422105)
  • 普通抵当権の場合→要しない。 (登研425125、643・177)
債務者の住所変更登記の一括申請

※根抵当権者・債務者および設定者を同じくする数個の根抵当権が同一不動産上に設定されている場合の『債務者の住所変更の登記』は一括して申請することができる。(登研357・81)

※行政区画の変更または名称変更による債務者の住所の不一致の場合は、 不動産登記法第59 条 〈現行: 不動産登記規則第92条第1項〉 の規定により、 新住所に変更したものとみなさ れるので、 追加設定の際、 住所の変更を証する書面を添付すれば、 根抵当権の変更の登記を省略することができる。(従来の登記省略否定説 (登研422105、44285)から変更された (登研536177))

※行政区画の変更または名称変更に伴い地番号も変更されたときは、 変更の登記を省略できないものと解される。(昭4・9・18民8379回答参照)

※根抵当権の追加設定においては、住居表示実施による不一致の場合には、債務者の住所変更の登記を省略することは認められない。(登研545・154)

※既登記抵当権の債務者の住所が住居表示実施により変更されている場合に、 住居表示実施証明書を添付してする変更後の債務者の住所を表示した抵当権の追加設定の登記は受理さ れる。(登研572・152)

※債務者兼設定者の住所が変更して登記簿上の表示と異なるときには、 (根) 抵当権の債務者の表示変更の登記の前提として所有権登記名義人の表示変更の登記を申請しなければな らない。(登研425・126)

※既登記の(根) 抵当権者が代位によって所有権登記名義人の表示変更登記をする場合にお ける〈代位原因〉は、「年月日変更契約に基づく〇番抵当権変更登記請求権」と記載す れば足りる。(登研376・38)

※抵当権の登記における債務者の表示の変更の登記を債権者代位によるものとして抵当権者が単独で申請することはできない。(昭36・8・30民三717回答)

債務者の表示の変更の登記について

申請人:(根)抵当権者と設定者による共同申請
登記の目的: 「(根) 抵当権変更」
登記の原因: 「年月日住所移転」「年月日氏名変更」「年月日住居表示実施」
変更後の事項

○根抵当権の場合
「A市B町C 番地 債務者 甲野一郎」
○普通抵当権の場合
「債務者 何某の住所 ○×△」
◎添付書類の特例
A 設定者の権利の登記済証を添付することを要する。
(登研178・70、397.84) (登研456・128) (登研214・71)
B 原則としては、変更を証する書面の添付を要しないが、 ただし、 住居表示実施に伴う住所変更の場合にその実施証明書を添付すれば、登録免許税法第5条第4項の規定により非課税となる。
C設定者の印鑑証明書
○根抵当権の場合→添付を要する。
○普通抵当権の場合→添付を要しない。
(登研432・129)
(登研334・73、36481)

※抵当権の債務者AおよびBが、 それぞれ異なる日に住所移転した場合でも、同一の申請書で申請することができる。
登記の原因 「年月日 A 住所移転」「年月日 B 住所移転」(登研507・198)

抵当権の債務者(A・B・C・D)のうち、 AおよびBについて住所移転による変更があった場合、根抵当権変更の登記の事項は、住所移転したAおよびBのほか、 CおよびDをも記載することを要する。(登研530・148)

  • 登記原因 「年月日 変更」
  • 変更後の事項 債務者 住所 A 住所 B 住所 C 住所 D

※債務者が二人の根抵当権につき、その一人につき 「住所移転」、他の一人につき「本店移転」がなされた場合に、この根抵当権の変更登記を一括して申請することはできない。(大阪法務局決議)

※(根) 抵当権の債務者の表示変更・ 更正(例:債務者の氏名の更正および住所移転)による根抵当権設定登記の変更および更正の登記は、[登記の目的および登記原因を異にするが]便宜、同一の申請書で申請することができる。

登録免許税:不動産1個につき金2,000円
(登研41396) (登研391・111)

※根抵当権の債務者 『A会社』 が下記のごとく変更した場合、当該根抵当権の変更登記を一件で申請することはできない。(登研363・167)

  • A会社→B会社に吸収合併される。
  • B会社→ 『C会社』と商号変更

→不動産登記法第57条 〈現行: 不動産登記規則第150条〉 には、 「権利ノ変更ノ登記ヲ為ストキハ変更シタル登記事項ヲ朱抹スルコトヲ要ス」と規定しているが、 先例には『合併により債務者が変更した場合における根抵当権の変更登記については従前の債務者の表
示は朱抹しない。』 とされ (昭46・12・27民三960通知)、 その取り扱いを異にすることになるからである。

※抵当権の債務引受等による債務者変更登記を申請するに当たり、登記簿上の変更前の債務 者の住所氏名に変更が生じている場合は、その表示変更登記を省略する扱いは認められな い。 なお、 根抵当権の債務者の変更登記を申請する場合も同様に考えて差し支えない。(登研452・115)

※住宅金融公庫等の非課税法人が抵当権者である場合の債務者表示変更登記の登録免許税は、登録免許税法の規定により非課税とされる。(注:住宅金融公庫は平成19年4月に独立行政法人住宅金融支援機構へ権利義務承継がな されている)(登研360・94)

※抵当権の債務者が所有権の登記名義人と同一人で当該所有権の登記名義人につき、 住居表 示実施による住所変更の登記がされている場合であっても、 住居表示実施による根抵当権 の債務者の住所の変更登記申請書には、 非課税証明書を添付しなければならない。(登研421・108)

根抵当権元本確定

※根抵当権の変更の一種であり、登記権利者 (根抵当権設定者) および登記義務者(根抵当 権者)ともに、その表示に変更または更正の事由が生じているときは、 前提としての登記 名義人の表示変更 (更正) の登記を省略することはできない。(根) 抵当権の抹消

※抵当権抹消登記申請書の登記権利者 [抵当権設定者である所有権登記名義人] の表示 (住所等)が、登記簿の所有者の表示と一致しない場合

  • 表示の変更を証する書面を添付しても、受理されない。不動産登記法第49条第4号 〈現行: 第25条第5号〉により却下される。(355 90. 371 · 76, 512 · 157)
  • 住居表示実施による変更で既に不動産の所在欄は変更されているときでも、表示変更 の登記を省略できない。(登研430・173)

※抵当権者の表示の変更(更正)証明書を添付すれば、抵当権の抹消を前提とする抵当権の登記名義人の表示変更 (更正) 登記は省略できる。(昭28・12・17民甲2407、 昭31・9・20民甲2202各通達) (登研360・91)(登研445・109)

→申請書には、変更後の表示を記載する。

改正民法における債務引受(「併存的債務引受」と「免責的債務引受」)があった場合の担保権(抵当権・根抵当権)の登記手続

1. 併存的債務引受(旧:重畳的債務引受)の場合

第三者(引受人)が元の債務者と連帯して同一の債務を負担する引受です。

  • 登記の目的と登記原因 引受人が負担する新債務をも担保するための担保権の変更登記を行います。登記原因は新たに定められた「併存的債務引受」とします(従来の「重畳的債務引受」として申請された場合でも受理されます)。
  • 登記原因証明情報と日付 被担保債権の変更について、担保権の設定者と債権者との「合意」があったことを証する情報を提供します。 登記原因の日付は、原則として当該合意の効力が生じた日です。ただし、債務者と引受人との契約による場合は、債権者が引受人に対して承諾をした時に効力が生じるため、承諾の意思表示が引受人に到達した日となります。
  • 根抵当権の場合の特則
    • 元本確定前:引受人が引き受けた債務は当然には根抵当権で担保されません。そのため、引受人を債務者に追加するだけでなく、「債権の範囲」も変更して引受に係る債務を加える必要があります。申請書の債務者欄には新旧債務者を並記し(連帯債務者とはしません)、債権の範囲には従前の範囲に加えて「令和〇年〇月〇日債務引受(旧債務者乙某)に係る債権」のように記載します。
    • 元本確定後:引受人の債務も担保されるため、債務者を追加する変更登記のみで足ります。

2. 免責的債務引受の場合

第三者(引受人)が債務を引き受け、元の債務者が自己の債務を免れる引受です。

  • 登記の目的と登記原因 旧債務者の債務を担保していた担保権を新債務に移転するための登記は、担保権の移転登記ではなく「抵当権変更」又は「根抵当権変更」として行います。登記原因は「免責的債務引受」です。
  • 登記原因証明情報と要件 免責的債務引受と担保権移転の要件を満たすことを証する情報が必要です。具体的には以下の内容が含まれている必要があります。
    1. 免責的債務引受契約が成立したこと
    2. 債権者からの通知(債権者・引受人間で契約した場合)または債権者の承諾(債務者・引受人間で契約した場合)があったこと
    3. 債権者が、引受人に対して担保権移転の意思表示(あらかじめ又は同時)をしたこと
    4. 引受人以外の担保権設定者(物上保証人など)がいる場合は、その者の承諾があったこと
  • 登記原因の日付 担保の移転は免責的債務引受の効力発生と同時に生じるため、当事者に別段の意思表示がなければ、債権者と引受人の契約の場合は「債権者による通知が債務者に到達した時」、債務者と引受人の契約の場合は「債権者の承諾通知が引受人に到達した時」の日付となります。担保権移転に設定者の承諾を条件とするなどの特約があれば、全ての条件が満たされた日が日付となります。
  • 根抵当権の場合の特則
    • 元本確定前:確定前に免責的債務引受があった場合、法律上、根抵当権を引受人の債務に移すことができません。引受債務を担保させるためには、債務者の変更(旧債務者から引受人へ)と併せて「債権の範囲」の変更を行う必要があります。申請書の債権の範囲には、従前の範囲に加えて「令和〇年〇月〇日債務引受(旧債務者乙某)に係る債権」のように記載します。
    • 元本確定後:引受人の債務も当然に担保されるため、債務者を変更する根抵当権の変更登記のみで足ります。

相続による抵当権の債務者の変更

【質問】 抵当権の債務者がお亡くなりになり、相続人のうちの1人がその相続債務を引き受けることになりました。この場合、抵当権の変更登記はどのような方法で進めればよいでしょうか。

【回答】 相続人全員で遺産分割協議を行い、特定の相続人が債務を引き継ぐ旨を定め、さらに抵当権者(金融機関等の債権者)の同意を得ている場合は、最初から「その債務を引き継ぐ相続人のみ」を債務者とする変更登記を行うことができます。いったん共同相続人全員を債務者とする変更登記を挟む必要はありません。

一方で、債務を引き継ぐ者を定める遺産分割協議がまだ行われていない段階で登記を進める場合は、原則どおり「共同相続人全員」を債務者とする変更登記を最初に行います。その後、引き継ぐ者が決まった段階で、改めて「債務引受」を原因とする変更登記を行うという2段階の手順になります。

【実務上の解説】 手続きの進め方は、遺産分割協議の有無やタイミングによって以下の区分に応じて判断されます。

1. 遺産分割協議によって特定の相続人が債務を引き受けた場合 まだ共同相続人全員への債務者変更登記がされていない状態であれば、債務を引き受ける相続人(例えばAさん)が抵当権者の同意を得ることで、直接Aさん単独を債務者とする抵当権変更登記を申請することが実務上認められています。この方法は、登記費用や手続きの手間を省くことができるため合理的です。

2. 遺産分割協議がされていない場合 まだ誰が債務を引き継ぐか決まっていない場合は、共同相続人全員が債務を引き継いだものとして登記を行います。その後、特定の相続人が債務を引き受けることになった際に、後述する免責的債務引受等の手続きへ移行します。

相続による債務者変更登記の具体的な申請情報と添付書類

【質問】 抵当権の債務者が死亡し、相続による債務者の変更登記を申請する場合、申請書の記載方法や必要となる添付書類はどのようになりますか。

【回答】 債務者の死亡に伴い、共同相続人全員を債務者とする変更登記を行う場合の基本的な申請情報と添付書類は以下のとおりです。

1.申請情報の主な記載事項

登記の目的:何番抵当権変更 登記原因:令和何年何月何日(債務者の死亡日)相続

変更後の事項: 債務者 何市何町何番地 A(相続人) 何市何町何番地 B(相続人)

権利者:抵当権者(金融機関等)

義務者:抵当権設定者(不動産の所有者)

2.必要となる添付書類

(1)登記原因証明情報 債務者が死亡した事実および相続人が誰であるかを証明するため、被相続人の出生から死亡までの除籍謄本等、および相続人の戸籍謄本(または法定相続情報一覧図の写し)を提供します。

(2)登記識別情報または登記済証 登記義務者である抵当権設定者(不動産所有者)の所有権取得時のものを提供します。

(3)代理権限証明情報 抵当権者および抵当権設定者からの委任状を提供します。

3.登録免許税 不動産1個につき1,000円を納付します。

【解説】 債務者の相続による抵当権変更登記におけるポイントは、登記の申請人が「権利者である抵当権者」と「義務者である抵当権設定者」の共同申請になるという点です。亡くなった債務者の相続人自身は、抵当権設定者(不動産の所有者)を兼ねていない限り、この変更登記の申請当事者にはなりません。

したがって、登記原因証明情報として必要となる債務者の戸籍謄本等の収集にあたっても、申請人である抵当権設定者や抵当権者側で準備して手続を進めることになります。また、登記義務者である抵当権設定者の印鑑証明書は、原則として提供を要しません(登記識別情報を提供できない場合などを除きます)。

遺産分割協議等により特定の相続人が債務を引き受けた場合の実務対応(免責的債務引受)

【質問】 共同相続人全員を債務者とする抵当権の変更登記をした後、遺産分割協議などにより特定の相続人が他の相続人の債務を引き受けることになりました。この場合、どのような登記手続きが必要になりますか。

【回答】 「免責的債務引受」を原因とする抵当権の変更登記を行います。これにより、債務を引き受けた特定の相続人のみを新たな債務者とする登記手続が完了します。

【実務上の解説】 共同相続人全員への債務者変更登記がすでに完了している状態で、債権者(抵当権者である金融機関等)の同意を得て、特定の相続人(例えば相続人A)が他の相続人(例えば相続人B)の債務を免責的に引き受けた場合、以下の要領で登記を申請します。

1.申請情報の主な記載事項

登記の目的:何番抵当権変更

登記原因:令和何年何月何日(債務引受契約の日) Bの債務引受

変更後の事項:債務者 何市何町何番地 A

権利者:抵当権者 義務者:抵当権設定者

2.手続きのポイントと必要書類 この登記は、抵当権者(登記権利者)と抵当権設定者(登記義務者)の共同申請によって行います。免責的債務引受の契約が成立したことにより、以降、債権者は債務を引き受けたAのみに対して相続債務の履行を請求できるようになります。

申請に必要な主な添付情報は以下のとおりです。

(1)登記原因証明情報 免責的債務引受契約書など、債務引受の事実を証明する書類を提供します。

(2)登記識別情報または登記済証 登記義務者である抵当権設定者のものを提供します。

(3)代理権限証明情報 当事者双方からの委任状などを提供します。

なお、この変更手続においても、登記義務者の印鑑証明書の提供は原則として不要とされています。

【相続による根抵当権の債務者変更】相続開始から6か月経過後、特定の相続人が債務を承継する登記手続き

【質問】 根抵当権の設定者兼債務者が死亡し、何もせず6か月が経過した。法定相続人は4人(A・B・C・D)いるが、そのうち2人(A・B)が対象不動産の所有権を相続し、今後の被担保債務もこの2人で弁済していきたいという意向である。 この場合、実体上どのような契約を締結し、どのような登記手続きを行えばよいか。

【回答】

根抵当権の債務者に相続が開始し、何もしないまま6か月が経過すると、担保すべき元本は法律上当然に確定する。 被担保債務については、法定相続割合に応じて4人の相続人に分割して承継されることになり、債権者は各相続人に対して承継した金額の範囲内でしか請求ができなくなる。

これを特定の2人(A・B)の連帯債務とするためには、実体法上の契約と、それに伴う3段階の根抵当権変更登記が必要となる。

1. 締結すべき契約の内容

AとBが連帯して被担保債務の全額を負担し、債権者がA・Bのいずれに対しても全額を請求できるようにするためには、以下の2段階の契約を締結する。

  1. 免責的債務引受契約 債務を承継するA・Bが、債務を承継しないC・Dの債務を免責的に引き受ける契約。
  2. 重畳的(併存的)債務引受契約 債務を承継するA・B間で、相互に負担する債務を重畳的(併存的)に引き受ける契約。

2. 登記手続きの具体的な流れ

前提として、対象不動産についてA・Bへの「相続による所有権移転登記」を完了させておく必要がある。 なお、次に申請する相続による債務者変更登記の登記原因日付から、相続開始後6か月が経過して元本が確定していることが明白であるため、事前に「元本確定の登記」を申請する必要はない。

具体的な根抵当権変更登記は、以下の「3連件」で申請する。

① 1件目:相続による債務者の変更登記

特定の相続人2人へ直接債務者を変更する登記は受理されないため、まずは法定相続分どおりに共同相続人全員が債務を承継した状態を登記する。

  • 登記の目的:何番根抵当権変更
  • 登記原因:〇年○月○日相続(※被相続人の死亡日)
  • 変更後の事項: 債務者 A、B、C、D(※4名全員の住所・氏名を記載)
  • 申請人:権利者(金融機関等)、義務者(設定者A・B)
  • 添付情報:登記原因証明情報(戸籍謄本等一式)、登記識別情報、代理権限証書など

② 2件目:免責的債務引受による債務者の変更登記

次に、CとDが法定相続により負担した債務を、AとBが免責的に引き受けた登記を行う。

  • 登記の目的:何番根抵当権変更
  • 登記原因:〇年○月○日 AはC及びDの、BはC及びDの債務引受 (※免責的債務引受契約の日)
  • 変更後の事項: 債務者 A、B
  • 申請人:権利者(金融機関等)、義務者(設定者A・B)
  • 添付情報:登記原因証明情報(免責的債務引受契約書等)、登記識別情報、代理権限証書など

③ 3件目:重畳的(併存的)債務引受による債務者の変更登記

最後に、AとBが連帯債務者となるための登記を行う。

  • 登記の目的:何番根抵当権変更
  • 登記原因:〇年○月○日 AはBの、BはAの債務を重畳的債務引受 (※重畳的債務引受契約の日。なお現行民法下では「併存的債務引受」と記載することも可)
  • 変更後の事項: 連帯債務者 A、B
  • 申請人:権利者(金融機関等)、義務者(設定者A・B)
  • 添付情報:登記原因証明情報(重畳的債務引受契約書等)、登記識別情報、代理権限証書など

3. 実務上の留意点

  • 登記義務者の印鑑証明書:根抵当権の変更登記においては、原則として登記義務者(設定者)の印鑑証明書の提供は不要である(ただし、事前通知等を利用する場合を除く)。
  • 登記原因証明情報:2件目および3件目の登記原因証明情報(各債務引受契約書)には、戸籍等の相続証明書一式のコピーを合綴して提供する実務上の扱いがある。

管轄を異にする根抵当権追加設定と極度額変更の同日申請 について

先日、売買・融資決済案件において実務上の重要論点が生じましたので、事前に管轄法務局へ書面照会を行い、認められる旨の回答を得ましたのでご報告します。


案件の概要

同一の決済日に、以下の登記を異なる2つの法務局管轄に対して同時に申請する必要がありました。

【先行申請:A法務局】

  • 既存根抵当権の極度額変更登記(増額:7,000万円 → 2億4,000万円)

【同日申請:B法務局(後登記)】

  • 抵当権抹消登記
  • 所有権移転登記
  • 共同根抵当権追加設定登記(上記の変更後の根抵当権に基づく)

実務上の問題点

共同根抵当権の追加設定登記を申請する際には、前登記の登記事項証明書を添付書類として提出する必要があります。

ところが本件では、A局とB局への申請を同日に行う構造のため、B局への申請時点ではA局での極度額変更登記がまだ完了していません

そのため、変更後の内容が反映された登記事項証明書を取得して添付することができないという問題が生じました。


照会した内容

追加設定申請書に「前登記(極度額変更)の受付年月日・受付番号」をあらかじめ明記した上で同日申請を行い、前登記完了後に速やかに登記事項証明書を追完(補正提出)する取扱いは可能か?


法務局の回答

→ 可能である旨の回答を得ました。

すなわち、

  1. B局への追加設定申請書に、A局での極度額変更登記の受付情報(受付日・受付番号)を明記する
  2. A局での登記完了後、速やかに登記事項証明書を追完提出(補正)する

という手順で申請を進めることが、実務上認められるとの確認が取れました。ただし、必ず事前に管轄法務局に確認されることをお勧めします。

[不動産登記レアケース8] 添付書類で迷う

レアケース:ご利用にあたって
司法書士として必ず当たる壁が名変だと思います。
いざ調べると中々ピンポイントで出てこない。
名変の情報が集約されていて、ここをチェックすれば大体の知識は得られる、
そんなWEBを自分自身が欲しくて立ち上げました。
あくまでご参考程度にお読み頂き、皆様にて裏を取ったり、
法務局へ照会されることを前提としております。
誤っている、先例変更がある等のご指摘は大歓迎です。
ただ上記趣旨から、この時はどうなるの?
というご質問や却下になったじゃないか!
という苦情には対応しておりません。
皆様の業務が円滑に進むことを願います。

目次

・名変の添付書類・住民票の除票と現住所の印鑑証明書・氏名変更・住民票の記載だけで氏名変更の事実が分かる・相続財産管理人選任審判書の記載では、不十分な場合・取扱店・国民金融公庫から国民生活金融公庫への変更・登記名義人の住所が誤って本籍地をもって登記されている場合・誤って旧住所で登記を受けた後、更正登記をする・更正の前後で町名が異なる場合・名変の非課税証明書・外何名という記載で共同人名票が不存在の場合・区画整理・土地改良事業による場合の非課税証明書・換地処分による登記前に既に住所移転していた場合・

住居表示や町名地番変更

住居表示実施や町名地番変更により住所が変わった場合の住所変更の登記には、市区町村役場で発行された、住居表示実施証明書、町名地番変更証明書などを添付することにより、登録免許税が非課税となる(登録免許税法5条4号)。

個人の場合の住所移転の変更証明

※登記名義人が個人の場合の住所移転の変更証明

  • 住民票の謄抄本
  • 戸籍の附票の写しを変更を証する書面とすることもできる。 (登研86・40)
  • 旧住所地の住民票除票の謄抄本 [転居先として現在の住所地が記載されているもの]ではなく、現住所地の住民票謄抄本の提出を要する。 (登研146.42、494122)
  • 住民票の写しに代えて前住所地の住民票除票および現住地の市区町村長の発給する印鑑証明書を添付しても差し支えない。 (登研375・80)
複数回移転している場合の変更証明書

※登記上の所有者の住所をA地からB地、 B地からA地、 A地からC地と移転している場合には、その間の各変更を証する書面全部の添付を要する。(登研470・98)

※所有者の登記記録上の住所Aから、その後B→A→Cと住所を移転した場合、A→Cへの変更証明書では足りず、A→B→A→Cの変更証明書を添付する必要がある(「登記研究」第470号)。

※中間省略→中間の変更を省略した登記名義人の住所変更の登記を申請する場合に、 申請書に 添付した書面をもって中間の各変更の事実が推認でき、 登記名義人の同一性が認められると きは、中間の変更を証する書面の添付を省略して差し支えない。 (登研175・66、179・67)

※自己所有の他の不動産における登記名義人表示変更登記の登記簿謄本→変更を証する書面にはならない(登研476・141)

氏名変更(婚姻または離婚を原因とする)の「変更証明書」

※氏名変更(婚姻または離婚を原因とする)の「変更証明書」
戸籍謄抄本+ 住民票の写し [本籍の表示のあるもの]
→住民票の記載の氏名・住所・生年月日および本籍の表示により、 登記簿上の登記名義人と氏名を変更する者との同一性を明らかにするため(登研490・145、536・175)

※氏名の変更(更正)の登記申請につき、住民票の記載で変更(更正)事項が明らかである場合は、戸籍謄抄本の添付は要せず、住民票だけで足りる。(昭40・9・24民甲2824回答) (登研490・146)

※住所を移転した後、婚姻により氏を変更した場合の登記名義人の表示変更登記申請につき、住民票の写しで氏の変更が明らかな場合には、住所および氏の変更を証する書面として住民票の写しを提出するのみでよい。(登研374・84、392・105)

添付書類の援用の可否

※不動産および申請人を異にする登記名義人の表示変更の登記に添付する変更を証する書面(住民票謄本)は、仮にその申請が連件でなされた場合でも、 援用できない。
(事例):甲物件の所有者Aと乙物件の所有者Bが同一世帯員であり、同時に住所移転している理由から所有権登記名義人の表示変更登記を連件で申請するとき
→前件に添付し、それを原本還付し後件に添付すれば足りる。 (登研506149、514・193)

※相続財産管理人選任審判書〔変更証明書兼代理権限証書〕の記載によって、該当相続財産管理人の選任が相続人不存在の場合であることおよび死亡者の死亡年月日が明らかでないときは、これらを証する戸籍(除籍)の謄抄本の添付を要する。 (昭39.2.28民甲422通達)

住民票の除票及び戸籍の附票もない

※登記名義人が住所を数次移転した後に、登記名義人の表示変更の登記を申請する場合、住民票の除票及び戸籍の附票もないときは、従前地における不在を証明する書面あるいは登記済証等を提出するなど、可能な限り登記官において変更の事実を推認し得るに足りる資料を添付すべきである。(「登記研究」第366号85頁)上申書(印鑑証明書付)を添付することも有効。

登記名義人が会社(法人)である場合の商号・本店所在地の変更証明書
○会社(法人)の登記簿謄抄本
当該会社(法人) の登記の管轄登記所と不動産の管轄登記所とが同一であるとき (法務大臣が指定した登記所を除く) は、変更を証する書面としての会社(法人)の登記簿謄抄本の添付を省略することができる。(昭38・12・17民甲3237通達)

取扱支店変更、追加の際の登記原因証明情報

登記原因証明情報の要否
※抵当権の取扱支店等もしくはその表示の変更または取扱支店等を登記する場合、抵当権の変更登記には登記原因証明情報を提供する必要がある。(登研689・291)

国民生活金融公庫への名称変更

※国民金融公庫と環境衛生金融公庫との統合により国民金融公庫から国民生活金融公庫への名称変更を証する書面は、名称変更の事実が国民金融公庫法の一部を改正する法律(平成11年法律第56号) 附則第2条の規定により明らかであるので添付を省略できる。
(注:国民金融公庫と環境衛生金融公庫は、 平成11年10月1日をもって統合され、国民生活金融公庫となった)(平11.9.14民三1965依命通知)(登研625・169)

登記名義人の住所が誤って本籍地をもって登記されている場合

A. 当該登記が、 住民票に記載された住定日 (住所を定めた日) 以前になされたものであるとき

  • 登記名義人の表示変更登記として申請すべきである。
  • 登記原因およびその日付「(住民票記載の住定日) 年月日住所移転」

B,住定日以後になされたものであるとき

  • →登記名義人の表示更正登記として申請することになる。『更正証明書』/不在証明書不要
  • →現在の住所を証する書面(本籍地記載ある住民票の写し 戸籍附票の謄本) に記載されている本籍地と符合しているときは、当該書面のみを添付すれば足りる。
  • →もし本籍地の記載が符合しないときは、 本籍地の変更を証する戸籍(除籍) の謄抄本を添付してすることになる。(昭32・10・4民三882回答)現在のように、登記の申請書に登記権利者の 『住所を証する書面』を添付するようになっ たのは、【昭和32年4月1日】 からである。

※登記名義人の表示更正の登記を嘱託する場合でも、その更正を証する書面の添付を要する。(昭36・7・22民甲1752回答)

誤って旧住所で登記をした後の更正登記

※誤って旧住所で登記を受けた後の登記名義人の住所更正の登記に添付すべき書面は、登記簿上の住所(旧住所)に登記名義人がいない旨の不在証明書および旧住所から新住所に移転した旨の住所証明書である。(登研428・135)(実務取扱) : 添付されている住所証明書に、旧住所・旧住所から新住所へ移動した旨、 移動年月日および新住所が明記されているときは、不在証明書の添付を要しないとされている。

※登記名義人の表示更正登記の申請書に添付する不在証明書の内 「住民票除票に記載のないこと」の証明書が入手できないときは、 戸籍の附票を添付しなければならず、いずれの添付もないときは却下事由に該当する。
(昭32・10・4民三881回答)

更正の前後で町名が異なる住所更正登記

※更正の前後で町名の異なる登記名義人の住所更正登記の申請書には、住民票・不在証明書の他、戸籍またはその附票の謄抄本、および、 更正すべき登記が “権利の移転の登記”であるときは、その登記義務者の証明書または登記済証(原本還付) 等その同一性を認め得る書面を添付させるのが相当である。(登研170・86)

※売買により所有権を取得した所有権登記名義人の住所の更正登記申請書に、売主(前所有者)が、「その者は登記名義人と同一人であること」を証明した書面〔印鑑証明書付〕 およびその者の住民票抄本を添付したときは、これを受理して差し支えない。(登研253.69)

錯誤を証する書面として登記済証を添付

※登記名義人の表示更正の登記を申請するには、申請書に錯誤を証する書面を添付するべきであるが、登記済証によって錯誤が明らかな場合には、代用した 「登記済証」を添付してすることができる。(登研127・45、15249)

※住所を更正する書面として印鑑証明書のみを添付した申請書は受理すべきでない。(登研414・75)

共同人名票不存在、共有者の一人から更正の登記申請

※共有不動産の登記名義人が「何某外何名」とのみ記載 (共同人名票不存在)とされている物件につき、当該物件の登記済証の写しを添付して共有者の一人から登記名義人の表示更正の登記申請がなされた場合に、その写しにより錯誤が明らかであることが確認できるときは、そのままこれを受理して差し支えない。(登研373・86)

※所有権移転登記申請の際に、 正しい氏名の住民票を添付しながら申請書に誤った氏名を記載したために、そのまま登記を受けた後の氏名更正登記

  • →登録免許税法第5条第12号 (職権更正登記による非課税)の適用は受けられない。
  • 『更正を証する書面』としては、現住民票の他、不在証明書、 登記済証、上申書および所有權移転契約書等(登研434148)

※売買による所有権移転登記申請書に添付した印鑑証明書
→その前提たる登記名義人の表示変更 (更正) 登記の住所証明書として援用することができる。

※登記名義人の表示変更(更正)を関連づける市区町村長の証明が得られない場合

  • →可能な限り、登記官が変更(更正)の事実を推認し得る資料を添付すべきである。
  • 具体的には勤務先の証明書・その他の登記の登記済証・地区の公職者(自治会長・民生委員・警察官)の証明書・源泉徴収票・納税証明書・公的機関からの郵便 公証人の認証を受けた定款(発起人)等
非課税の場合

1 住居表示実施等による場合(登録免許税法第5条第4号)
※住居表示が実施された場合
→登記原因 「年月日住居表示実施」
※住居表示が一旦実施された後、 その表示が変更された場合
→登記原因 「年月日住居表示変更」
(登研289・65)

※登記名義人の表示変更の最終の登記原因が 「住居表示実施等」 である場合には、登録免許税は登録免許税法第5条第4号の規定により非課税となる。(昭40・10・11民甲2915回答)

※住所移転(転入届出) と住居表示実施とが同一日付でなされた場合

  • 登記の原因→「年月日住所移転」
  • 変更後の事項→ 「変更後の住所」として “住居表示実施後の表示” をもって記載することになる。
  • 登録免許税→免除されず、課税されることになる(あたかも実施後の住所に移転したものと解される。)

※住居表示実施に伴う変更登記または実施された住居表示の変更に伴う変更登記がなされた後に、その登記が誤っていたことを理由とする「更正」の登記の場合に、当該変更登記が市区町村の変更証明書の錯誤により生じたものであることが確認できる限り非課税となる (昭40・12・9民甲3410、 昭41414民甲1112各回答)「民事月報号外283頁」(昭42年全国登記課長会同決議)

※所有権取得時には既に住居表示が実施されていたにもかかわらず、住居表示実施前の住所 で所有権取得の登記を受けた登記名義人の住所を、住居表示実施後の住所に更正する登記 には、登録免許税が課せられる。(登研425・129)

※住居表示実施後において、 (商業登記簿の本店変更が未登記であったため) 実施前の本店 所在地で登記した事項を住居表示実施後による本店所在地に改める場合の原因は錯誤と し、登録免許税を必要とする。(登研452・113)

※住居表示の実施により、 登記簿表題部の不動産の所在地欄は変更されているが、 所有権登記名義人の表示が変更されていない場合には、その前提としての所有権登記名義人の表示変更登記を省略して当該不動産に設定されている抵当権の抹消登記を申請することは許されない。(登研430・173、512157)

非課税証明書について

※市町村の長発行の「住居表示実施通知書」または関係人の申請による 「住居表示実施証明書」を添付すれば足り、他に現在の住民票の写しを添付することは要しない。(昭37・10・9民甲2854通達) (登研401・160)

※住民票の写しの備考欄に住居表示実施により変更した旨およびその実施年月日が記載されている場合は、これを “非課税証明書” として取り扱って差し支えない。(昭37・8・29民甲2470通達)

※住所欄の旧住所が棒線で抹消され、次の行に新住所とともに「年月日住居表示実施(または変更)」と記載されている市区町村長発行の印鑑証明書を、便宜、「住所の変更証明書兼 非課税証明書」として取り扱うことが認められた。(登研516・196)

行政区画等の名称の変更の場合

◎行政区画・字またはその名称
「行政区画」
都・道・府・県・市・区・町・村のような行政機関が、その権限を及ぼし得る行政上の単位である一定範囲の地域
「字」
大字小字のような行政区画内の一定範囲の地域
→これらの管轄範囲の拡大・縮小による変更またはこれらの名称自体のみの変更があった場合でも、登記簿に記載されたそれらの表示は当然にこれを変更したとみなされる。 (不動産登記規則第92条第1項)ただし、変更前の住所に「甲・乙・丙」の表記があり、大字小字の変更とともに「甲・乙・丙」の表記が外れる場合、表示変更登記が省略できない場合がある(甲乙丙は地番の一部とみなされるため)。

※不動産の表示に関するものであると、 登記名義人の表示に関するものであるとを問わず同様の取り扱いであり特に変更の登記をすることを要しないが、 形式的に現在の表示と一致させるために変更の登記を申請することもできる。(明38・5・8民刑局長回答) (登研464・117)

住所移転した後に行政区画のみ変更

※登記名義人の住所移転の登記の申請をする場合において、 住所移転した後に当該地の行政区画のみ変更が行われていたとしても、 同一の申請書で申請する限り

  • 申請書に記載すべき登記原因
    →「(住所移転の年月日)住所移転」のみで足り、行政区画変更の旨を併記する必要はない。
    ・変更後の事項として記載すべき住所
    →行政区画変更後のもの (新住所)を記載する。
  • 登録免許税
    →登録免許税法第5条第5号に該当せず、非課税とされない。
    (昭48・11・1民三8187、 昭50・3・23民三2692、 昭56・3・5民三1433各回答)

※政令指定都市の区制施行に伴い登記名義人の表示中 「住所」について変更を生じた場合には、その変更の登記をすることなく、他の登記を申請し得る。(登研301・69)

※登録免許税法第5条第5号の字には『小字』も含まれる。 (昭43・4・18民三354回答)

※『小字』名追記による登記名義人表示変更の登記には、登録免許税法第5条第5項の適用がある。(昭43・6・27名古屋直轄管轄内所長会決議 )

行政区画等の変更に伴い、地番の変更が行われた場合

※登記名義人の表示変更の登記を申請しないと、「住所」は当然には変更されない。

※町村合併に伴い地番変更があっても、所有権の登記名義人の表示について変更されたもの とはみなされず、 その表示変更の登記をしなければならないが、 登記官は、一定の要件の 下に職権で登記名義人の表示の変更の登記をすることができる。(昭31・12・14民事三1421回答) (登研6289)

※A地からB地に住所移転した後、 B地が行政区画の変更に伴い地番も変更された場合
登記原因 : 「年月日住所移転」「年月日町名変更および地番変更」 と併記することになる。 登録免許税:登録免許税法第5条第5号の規定が適用される。 (大阪法務局決議)

※字地域の変更に伴う地番変更による登記名義人の表示変更の登記は、登録免許税法第5条第5号の条項に該当する。(昭46.2.9民三34回答)

土地改良事業または土地区画整理事業の施行に伴って地番の変更がなされた場合

※区画整理により町名のみが変更された後、住所移転がなされた場合の登記名義人表示変更登記の申請書に記載する登記原因は、「年月日住所移転」 のみである。 (登研38393)

※土地区画整理登記令第13条第3項 〈現行: 第11条第1項〉〔従前の土地が数筆で換地が一筆の場合に関する規定〕 による所有権登記の登記名義人の住所地番が当該登記前既に区画整理事業の施行に伴い変更されていた場合に、変更後の住所地番に是正するには、登記名義人表示変更として取り扱われる。 登録免許税法第5条5号の規定が適用される。(昭44・5・12民三562回答)

※土地区画整理により住所地番が変更されたが、 住民票の記載が修正されていなかったため従前換地前の住所地で所有権取得の登記を受けた登記名義人の住所を変更後の住所に是正する登記は、登記名義人表示更正の登記による。登録免許税法第5条第5号の規定が適用され、非課税である。(昭49・12・28民三6678回答)

※換地処分による単一の登記前に既に住所移転していた場合の所有権登記名義人の住所の是正は、更正の登記によるべきである。(登研599・167)により(同44081) が変更

※土地改良法による換地処分により地番が変更した場合に、 土地改良区が組合員たる登記名義人に代位してその名義人表示の変更登記を申請することはできない。

  • 登記原因「年月日土地改良法換地処分による地番変更」
  • 登録免許税法第5条5号の規定が適用される。
    (昭34・1 • 19民甲56回答)
    ※重複地番の解消等のために登記官が職権により地番を変更した場合の、当該地番変更を原因としてする登記名義人の表示変更の登録免許税は、登録免許税法第5条第5号の規定による取り扱いに準じて非課税とされる。「非課税証明書」として、 不動産登記法第62条 〈現行:不動産登記規則第183条第1項第1号、 同条第2項〉の通知書または地番変更された登記簿謄抄本を添付すれば足りる。
行政区画等の変更およびその名称変更の場合の非課税証明書や当該変更に係る市区町村等の行政機関の長の証明書
(登録免許税法施行規則第1条第2号)
  • ※その備考欄に、次のとおり記載された住民票の写し
  •  「年月日土地の名称 (行政区画等)および地番変更により年月日記載」
  •  「年月日土地の名称 (または地番) 変更につき年月日住所更正」
  • →地番の変更が行政区画等の変更に伴わないものであることが明白でない限り、「非課税証明書」として取り扱って差し支えない。(昭42・7・26民三794通知) (登研28273、396・107)
  • ※行政区画の変更の旨の記載のある市区町村等発行に係る広報をもって代用することはできない。
土地区画整理または土地改良事業による場合 の非課税証明書

イ. 施行者の書類
当該施行者発行の証明書
当該事業に係る換地処分通知書
ロ.知事の証明
・知事発行の証明書
・土地区画整理法第4条または第14条による知事の許可書の写し(昭42・12・14民甲3484通達)

※払下げによる所有権移転の登記の嘱託書の誤記に基づき所有者の住所・氏名を誤って登記された後の、本人からの表示更正登記についての登録免許税は、 免除されない。(登研427・105)

※国土調査の実施の際に土地の番号を変更したことによる登記名義人の表示変更登記については、登録免許税を徴収すべきである。(昭43・3・12民三235回答)

会社(法人)と非課税証明書

その変更を証する書面および代表者の資格を証する書面として添付した会社の登記簿謄抄本等において、 住居表示実施・行政区画等変更またはその名称変更により本店(主たる事務所)の表示が変更されていることが明らかである場合には、住居表示実施または行政区画等の変更による登記名義人たる会社 (法人)の本店 (主たる事務所)の表示変更の登記申請書に添付する 「非課税証明書」として代用できる。(住居:昭38・9・13民甲2608通達、昭42.9行政 : 昭42・10・17民甲2676通達、 昭56 37民三850回答/ 5民三1433回答)

商業登記簿記載例

住居表示実施の場合
「年月日住居表示実施」「年月日登記」

行政区画等の変更の場合
登記官により職権でなされるが、 申請して変更しても差し支えない。
「年月日変更」「年月日修正」

※不動産の登記義務者たる会社の住居表示実施または行政区画等の変更による本店の表示変更による登記名義人表示変更の登記を申請する場合に会社の登記管轄登記所と不動産登記の管轄登記所が同一であるときには、変更を証する書面 「非課税証明書」 の添付を基本的には省略す ることができる。(上記昭42年、昭56年各回答) (登研230・71)

被相続人の同一性を証する情報として住民票の写し等が提供された場合

※被相続人の同一性を証する情報として住民票の写し等が提供された場合における相続による所有権の移転の登記の可否 (平29・3・23 民二175)
[照会] 「相続による所有権の移転の登記(以下「相続登記」と いう。)の申請において、所有権の登記名義人である被相続人の登記記録上の住所戸籍の謄本に記載された本籍と異なる場合 には、相続を証する市区町村長が職務上作成した情報 (不動産 登記令(平成16年政令第379号) 別表の22の項添付情報欄) の一 部として、被相続人の同一性を証する情報の提出が必要である ところ、当該情報として、住民票の写し (住民基本台帳法 (昭 和42年法律第81号) 第7条第5号 第12条。 ただし、本籍及び登記記録上の住所が記載されているものに限る。)、戸籍の附票の写し(同法第17条、第20条。 ただし、登記記録上の住所が記載されているものに限る。)又は所有権に関する被相続人名義の登記済証 (改正前の不動産登記法 (明治32年法律第24号) 第60 条第1項) の提供があれば、不在籍証明書及び不在住証明書など 他の添付情報の提供を求めることなく被相続人の同一性を確認 ることができ、当該申請に係る登記をすることができると考 えますが、いささか疑義がありますので照会します。」
[回答] 「本月7日付け不登第51号をもって照会のありました標 記の件については、貴見のとおり取り扱われて差し支えありま せん。」

相続人不存在

※相続財産清算人選任の審判に基づき、不動産の所有者を「相続財産」法人名義にするための登記をする場合の添付書類

相続財産清算人選任審判書を登記原因証明情報とすることができる(ただし、次の場合は相続人不存在を明らかにする戸籍等が必要)。相続財産清算人選任書の記載によって、当該相続財産清算人の選任が相続人不存在の場合であること及び死亡者の死亡年月日が明らかでないときは、右事項を証する書面として戸籍(除籍)の謄本若しくは抄本の添付を要する(昭和39年2月28日 民事甲422)。

審判書に「相続人が不存在である場合」とは明記されていないが、「民法952条1項により次のとおり審判する」旨が書かれていた場合に、審判書のみで受理されました(筆者個人的経験なので確認をおすすめします)。