レアケース:ご利用にあたって
司法書士として必ず当たる壁が名変だと思います。
いざ調べると中々ピンポイントで出てこない。
名変の情報が集約されていて、ここをチェックすれば大体の知識は得られる、
そんなWEBを自分自身が欲しくて立ち上げました。
あくまでご参考程度にお読み頂き、皆様にて裏を取ったり、
法務局へ照会されることを前提としております。
誤っている、先例変更がある等のご指摘は大歓迎です。
ただ上記趣旨から、この時はどうなるの?
というご質問や却下になったじゃないか!
という苦情には対応しておりません。
皆様の業務が円滑に進むことを願います。
目次
・債権者と債務者を互い違いにしてしまった場合の更正・取扱店の追加、変更、更正・抵当権(根抵当権)の追加設定の局面で表示変更登記を省略できるか否か・抵当権者(根抵当権者)、債務者の表示の変更・抵当権の債務者AとBが、異なる日に住所移転した場合・債務者の住所変更登記の一括申請
債権者と債務者を互い違いにしてしまった場合
「債権者を乙・債務者を甲」とする抵当権設定登記の申請書に添付された登記原因証書には、『債権者甲・債務者乙』と記載ミスがあったがそれを看過して登記を完了し、後日当該登記につき錯誤を原因として抵当権登記名義人の更正登記の申請があった場合には、申請を受理して差し支えない(昭35・6・3民甲1355回答)
(根)抵当権設定登記の登記義務者 (設定者)の表示に変更を生じているため、その表示が登記簿上の表示と異なっている場合には、予め登記名義人の表示変更の登記を申請する必要がある。(登研269・73)
取扱店の表示について
※住宅金融公庫の代理人である銀行を取扱店とする場合、 取扱店の表示を「○○銀行 本店営業部」とすることはできない。 (注: 平成19年4月に住宅金融公庫から独立行政法人住 宅金融支援機構へ権利義務承継)(登研453124)
※抵当権の移転登記の際に、 新抵当権者の表示に取扱支店を記載することは差し支えない。(登研370・74)
※委任状に取扱店の表示があれば、 登記原因証書に取扱店の記載がない場合でも、申請書に取扱店の表示をすることができる。(登研535・177)
各金融機関の取扱店
※労働金庫が抵当権者の場合も、 取扱店名 (取扱事務所何支店) の併記が認められている。(昭36・9・18民甲2320通達)(登研6355)
※全国信用金庫連合会が抵当権者でその貸付業務を信用金庫に委託する場合、 取扱店名を併記してその登記をも受けることができる。 (昭37.9.29民甲2781通達)(登研6355) (注:「全国信用金庫連合会」 は、 平成12年10月1日より 「信金中央金庫」に名称変更)
※全国信用協同組合連合会が抵当権者でその貸付業務を信用組合に委託する場合、 取扱店名 を併記してその登記をも受けることができる。(昭62・2・27民三896通達)(登研6355) (注:「全国信用協同組合連合会 (全信組連)」は、 平成19年1月1日現在もその名称で存続)
※中小企業金融公庫を抵当権者とする取扱店の表示について、 「営業第一部」として申請することができる。(昭57.4.28民三3238回答) (登研688265)
※外国会社を抵当権者とする抵当権設定登記を申請する場合に、 申請書及び登記原因証明情報に外国会社の取扱店として日本における営業所が記載されている時でも、当該営業所が登記されていることを証する登記簿謄本等の提供は要しない。(登研633・175)
取扱店の表示の追加について
※既存の(根)抵当権の設定登記に取扱支店の表示がない場合に、これにつき取扱支店を表示する登記は、(根) 抵当権登記名義人の表示変更の登記に準じ、便宜認めて差し支えない。(昭36・9・14民甲2277回答)
※取扱店の記載のない担保権の登記に取扱店を付記する登記は、当該抵当権等の担保権の変更(更正を含む 但し処分の登記を除く) の登記の申請をする場合に限り、併せて申請することができる。(昭36・11・30民甲2983通達)
- 登記の目的:「昭和○年○月○日受付第何号順位×番抵当権に次の取扱支店の附記」と記載し、取扱支店の名称を記載する。(昭36・11・30民甲2983通達)
- 登記原因およびその日付 : 何らの記載を要しない。
- 登録免許税:抵当権の変更と併せて申請する場合には、取扱店の付記の分を改めて徴収することを要しない。
※登記名義人(抵当権者)のみによる単独申請で、登記済証をはじめ印鑑証明書、そしてその存在を証する会社の支店に関する登記簿謄抄本の添付を要しない。 (登研182・162)
→登記原因証明情報の添付は必要(登研689・291)
取扱店自体の変更について
※取扱支店等若しくはその表示の変更、又は取扱支店等を登記する抵当権の変更登記を申請する場合には、登記原因証明情報を提供する必要がある。(登研689・291)
※抵当権者の取扱支店を甲支店から乙支店に変更した場合は、抵当権登記名義人表示変更登記に準じて単独で、抵当権の変更登記申請ができる。(登研352・101385・80)
- 登記の目的:「抵当権変更登記」
- 登記の原因:何らの記載を要しない。
- 変更後の事項 : 「取扱店 乙支店」
取扱店の表示の変更・更正・抹消について
登記の目的:「抵当権変更(または更正)」
登記の原因
a.遺漏の場合:「遺漏」 / 「追加すべき事項」
b. 誤記の場合:「錯誤」/「更正すべき事項」
c. 取扱支店の名称の変更の場合: 「年月日 取扱店名称変更」 / 「変更後の名称」
取扱店の表示の抹消について
登記の目的: 「抵当権変更」
変更後の事項: 取扱店の表示抹消
(登研595・135)
【取扱支店として登記できる例】
金融機関の支店名等を取扱店として登記することが可能なケースです。
- 「取扱店 東京営業部」 金融機関が自ら「東京営業部」を支店であるとして申請すれば、登記可能です。「支店」という文字が付されていなくても問題ありません。
- 「取扱店 何信用金庫」 信金中央金庫が貸付業務を信用金庫に委託して行った場合の抵当権設定登記において、取り扱いをした信用金庫を取扱支店として登記することができます(例:信金中央金庫(取扱店 何信用金庫))。
【取扱支店として登記できない例】
以下のケースでは取扱支店として登記(または申請)することができません。
- 「取扱店 本店営業部」「取扱店 首都圏」「取扱店 東京公務部」「取扱店 本店不動産課」など 名称から判断して明らかに業務分野の1つにすぎず、支店の名称として付したのではないことが明白である場合は登記できません。
- 信用金庫の支店 信用金庫の支店を取扱店として登記することはできません。
- 信用保証協会・信用組合の支店 信用保証協会や信用組合の支店を取扱店として登記することはできません。また、信用保証協会を抵当権者とする登記で、取扱店を「○○銀行○○支店」とすることも認められません。
- 本店の支配人からの申請(他支店扱い) 「A銀行本店」の支配人から、「取扱店 B支店」とする抵当権設定登記の申請は受理されません。本店の支配人は、B支店の営業に関する代理権限を有しないためです。
- 支店の支配人からの申請(他支店扱い) 「甲銀行A支店」の支配人は、取扱店を「同銀行B支店」とする抵当権設定登記申請の委任をすることはできません。A支店の支配人は、B支店の営業に関する代理権限を有していないためです。
追加設定について
※根抵当権者の表示変更があった後に当該根抵当権について他の不動産を『追加担保』とす る登記の申請をするときは、前提として根抵当権者の表示変更の登記を省略することはできない。 (411 84, 422 104, 475 131)
→たとえその不一致の原因が 『行政区画の変更等』 であっても、不動産登記法第59条 〈現行: 不動産登記規則第92条第1項〉 [変更看做規定] の適用はなく、 従って、 先に設定登記 がされている根抵当権と追加する根抵当権とが形式的に同一性を欠くことになるため
根抵当権の登記名義人の表示変更登記の一括申請
※登記名義人の本店の表示に関して、
●甲土地については 「平成元年2月1日 住居表示実施」
●乙土地については 「昭和59年○月○日 本店移転」 および 「平成元年2月1日住居表示実施」
を登記原因とする甲・乙両不動産についての根抵当権の登記名義人の表示変更登記は、同 一の申請書で申請することはできない。(登記原因が異なるから / 登研516・197)
※根抵当権につき共同担保として追加担保の設定登記を申請する場合に、 根抵当権者の「取扱店の表示」 が既登記根抵当権のそれと異なる場合でも受理される。(377 141, 382 81、 383 · 93)
- 既登記 : 取扱店の表示なし、 追加設定/取扱店の表示あり。
- 既登記 : 取扱店の表示あり、 追加設定/取扱店の表示なし。
- 既登記 : 取扱店Aの表示、 追加設定/取扱店B の表示。
(以上、 いずれの場合も受理される。 / 登研548166)
抵当権追加設定の局面で、表示変更登記の省略の可否
※既登記抵当権の抵当権者の氏名または本店等の表示が変更されている場合には、変更を証する書面を申請書に添付すれば、 前提たる抵当権者の表示の変更登記を省略しても、追加設定の登記申請は受理される。(登研547146、560・136)
※根抵当権設定または変更登記の利害関係人等の表示が登記簿のそれらと相違する場合で も、その者の承諾書に表示の変更(更正)を証する書面を添付すれば、利害関係人の表示 の変更(更正) 登記は省略することができる。(登研36283、419.87)
※有限会社の社員総会議事録や株式会社の取締役会議事録を添付するときにこれに添付する 印鑑証明書の住所または氏名と当該会社の商業登記簿謄本のそれらの記載とが一致しない 場合でも、当該議事録に変更証明書を添付すれば足りる。(登研531・121)
(根)抵当権追加設定の局面で、表示変更登記の省略の可否
※追加設定登記申請書に記載すべき債務者の住所が、 従前の登記以後の住所移転等により既登記における債務者の住所と一致しない場合に、前提としての 『債務者の表示の変更登記』 の申請を
- 根抵当権の場合→要する。 (登研32572、422105)
- 普通抵当権の場合→要しない。 (登研425125、643・177)
債務者の住所変更登記の一括申請
※根抵当権者・債務者および設定者を同じくする数個の根抵当権が同一不動産上に設定されている場合の『債務者の住所変更の登記』は一括して申請することができる。(登研357・81)
※行政区画の変更または名称変更による債務者の住所の不一致の場合は、 不動産登記法第59 条 〈現行: 不動産登記規則第92条第1項〉 の規定により、 新住所に変更したものとみなさ れるので、 追加設定の際、 住所の変更を証する書面を添付すれば、 根抵当権の変更の登記を省略することができる。(従来の登記省略否定説 (登研422105、44285)から変更された (登研536177))
※行政区画の変更または名称変更に伴い地番号も変更されたときは、 変更の登記を省略できないものと解される。(昭4・9・18民8379回答参照)
※根抵当権の追加設定においては、住居表示実施による不一致の場合には、債務者の住所変更の登記を省略することは認められない。(登研545・154)
※既登記抵当権の債務者の住所が住居表示実施により変更されている場合に、 住居表示実施証明書を添付してする変更後の債務者の住所を表示した抵当権の追加設定の登記は受理さ れる。(登研572・152)
※債務者兼設定者の住所が変更して登記簿上の表示と異なるときには、 (根) 抵当権の債務者の表示変更の登記の前提として所有権登記名義人の表示変更の登記を申請しなければな らない。(登研425・126)
※既登記の(根) 抵当権者が代位によって所有権登記名義人の表示変更登記をする場合にお ける〈代位原因〉は、「年月日変更契約に基づく〇番抵当権変更登記請求権」と記載す れば足りる。(登研376・38)
※抵当権の登記における債務者の表示の変更の登記を債権者代位によるものとして抵当権者が単独で申請することはできない。(昭36・8・30民三717回答)
債務者の表示の変更の登記について
申請人:(根)抵当権者と設定者による共同申請
登記の目的: 「(根) 抵当権変更」
登記の原因: 「年月日住所移転」「年月日氏名変更」「年月日住居表示実施」
変更後の事項
○根抵当権の場合
「A市B町C 番地 債務者 甲野一郎」
○普通抵当権の場合
「債務者 何某の住所 ○×△」
◎添付書類の特例
A 設定者の権利の登記済証を添付することを要する。
(登研178・70、397.84) (登研456・128) (登研214・71)
B 原則としては、変更を証する書面の添付を要しないが、 ただし、 住居表示実施に伴う住所変更の場合にその実施証明書を添付すれば、登録免許税法第5条第4項の規定により非課税となる。
C設定者の印鑑証明書
○根抵当権の場合→添付を要する。
○普通抵当権の場合→添付を要しない。
(登研432・129)
(登研334・73、36481)
※抵当権の債務者AおよびBが、 それぞれ異なる日に住所移転した場合でも、同一の申請書で申請することができる。
登記の原因 「年月日 A 住所移転」「年月日 B 住所移転」(登研507・198)
※根抵当権の債務者(A・B・C・D)のうち、 AおよびBについて住所移転による変更があった場合、根抵当権変更の登記の事項は、住所移転したAおよびBのほか、 CおよびDをも記載することを要する。(登研530・148)
- 登記原因 「年月日 変更」
- 変更後の事項 債務者 住所 A 住所 B 住所 C 住所 D
※債務者が二人の根抵当権につき、その一人につき 「住所移転」、他の一人につき「本店移転」がなされた場合に、この根抵当権の変更登記を一括して申請することはできない。(大阪法務局決議)
※(根) 抵当権の債務者の表示変更・ 更正(例:債務者の氏名の更正および住所移転)による根抵当権設定登記の変更および更正の登記は、[登記の目的および登記原因を異にするが]便宜、同一の申請書で申請することができる。
登録免許税:不動産1個につき金2,000円
(登研41396) (登研391・111)
※根抵当権の債務者 『A会社』 が下記のごとく変更した場合、当該根抵当権の変更登記を一件で申請することはできない。(登研363・167)
- A会社→B会社に吸収合併される。
- B会社→ 『C会社』と商号変更
→不動産登記法第57条 〈現行: 不動産登記規則第150条〉 には、 「権利ノ変更ノ登記ヲ為ストキハ変更シタル登記事項ヲ朱抹スルコトヲ要ス」と規定しているが、 先例には『合併により債務者が変更した場合における根抵当権の変更登記については従前の債務者の表
示は朱抹しない。』 とされ (昭46・12・27民三960通知)、 その取り扱いを異にすることになるからである。
※抵当権の債務引受等による債務者変更登記を申請するに当たり、登記簿上の変更前の債務 者の住所氏名に変更が生じている場合は、その表示変更登記を省略する扱いは認められな い。 なお、 根抵当権の債務者の変更登記を申請する場合も同様に考えて差し支えない。(登研452・115)
※住宅金融公庫等の非課税法人が抵当権者である場合の債務者表示変更登記の登録免許税は、登録免許税法の規定により非課税とされる。(注:住宅金融公庫は平成19年4月に独立行政法人住宅金融支援機構へ権利義務承継がな されている)(登研360・94)
※抵当権の債務者が所有権の登記名義人と同一人で当該所有権の登記名義人につき、 住居表 示実施による住所変更の登記がされている場合であっても、 住居表示実施による根抵当権 の債務者の住所の変更登記申請書には、 非課税証明書を添付しなければならない。(登研421・108)
根抵当権元本確定
※根抵当権の変更の一種であり、登記権利者 (根抵当権設定者) および登記義務者(根抵当 権者)ともに、その表示に変更または更正の事由が生じているときは、 前提としての登記 名義人の表示変更 (更正) の登記を省略することはできない。(根) 抵当権の抹消
※抵当権抹消登記申請書の登記権利者 [抵当権設定者である所有権登記名義人] の表示 (住所等)が、登記簿の所有者の表示と一致しない場合
- 表示の変更を証する書面を添付しても、受理されない。不動産登記法第49条第4号 〈現行: 第25条第5号〉により却下される。(355 90. 371 · 76, 512 · 157)
- 住居表示実施による変更で既に不動産の所在欄は変更されているときでも、表示変更 の登記を省略できない。(登研430・173)
※抵当権者の表示の変更(更正)証明書を添付すれば、抵当権の抹消を前提とする抵当権の登記名義人の表示変更 (更正) 登記は省略できる。(昭28・12・17民甲2407、 昭31・9・20民甲2202各通達) (登研360・91)(登研445・109)
→申請書には、変更後の表示を記載する。
改正民法における債務引受(「併存的債務引受」と「免責的債務引受」)があった場合の担保権(抵当権・根抵当権)の登記手続
1. 併存的債務引受(旧:重畳的債務引受)の場合
第三者(引受人)が元の債務者と連帯して同一の債務を負担する引受です。
- 登記の目的と登記原因 引受人が負担する新債務をも担保するための担保権の変更登記を行います。登記原因は新たに定められた「併存的債務引受」とします(従来の「重畳的債務引受」として申請された場合でも受理されます)。
- 登記原因証明情報と日付 被担保債権の変更について、担保権の設定者と債権者との「合意」があったことを証する情報を提供します。 登記原因の日付は、原則として当該合意の効力が生じた日です。ただし、債務者と引受人との契約による場合は、債権者が引受人に対して承諾をした時に効力が生じるため、承諾の意思表示が引受人に到達した日となります。
- 根抵当権の場合の特則
- 元本確定前:引受人が引き受けた債務は当然には根抵当権で担保されません。そのため、引受人を債務者に追加するだけでなく、「債権の範囲」も変更して引受に係る債務を加える必要があります。申請書の債務者欄には新旧債務者を並記し(連帯債務者とはしません)、債権の範囲には従前の範囲に加えて「令和〇年〇月〇日債務引受(旧債務者乙某)に係る債権」のように記載します。
- 元本確定後:引受人の債務も担保されるため、債務者を追加する変更登記のみで足ります。
2. 免責的債務引受の場合
第三者(引受人)が債務を引き受け、元の債務者が自己の債務を免れる引受です。
- 登記の目的と登記原因 旧債務者の債務を担保していた担保権を新債務に移転するための登記は、担保権の移転登記ではなく「抵当権変更」又は「根抵当権変更」として行います。登記原因は「免責的債務引受」です。
- 登記原因証明情報と要件 免責的債務引受と担保権移転の要件を満たすことを証する情報が必要です。具体的には以下の内容が含まれている必要があります。
- 免責的債務引受契約が成立したこと
- 債権者からの通知(債権者・引受人間で契約した場合)または債権者の承諾(債務者・引受人間で契約した場合)があったこと
- 債権者が、引受人に対して担保権移転の意思表示(あらかじめ又は同時)をしたこと
- 引受人以外の担保権設定者(物上保証人など)がいる場合は、その者の承諾があったこと
- 登記原因の日付 担保の移転は免責的債務引受の効力発生と同時に生じるため、当事者に別段の意思表示がなければ、債権者と引受人の契約の場合は「債権者による通知が債務者に到達した時」、債務者と引受人の契約の場合は「債権者の承諾通知が引受人に到達した時」の日付となります。担保権移転に設定者の承諾を条件とするなどの特約があれば、全ての条件が満たされた日が日付となります。
- 根抵当権の場合の特則
- 元本確定前:確定前に免責的債務引受があった場合、法律上、根抵当権を引受人の債務に移すことができません。引受債務を担保させるためには、債務者の変更(旧債務者から引受人へ)と併せて「債権の範囲」の変更を行う必要があります。申請書の債権の範囲には、従前の範囲に加えて「令和〇年〇月〇日債務引受(旧債務者乙某)に係る債権」のように記載します。
- 元本確定後:引受人の債務も当然に担保されるため、債務者を変更する根抵当権の変更登記のみで足ります。
相続による抵当権の債務者の変更
【質問】 抵当権の債務者がお亡くなりになり、相続人のうちの1人がその相続債務を引き受けることになりました。この場合、抵当権の変更登記はどのような方法で進めればよいでしょうか。
【回答】 相続人全員で遺産分割協議を行い、特定の相続人が債務を引き継ぐ旨を定め、さらに抵当権者(金融機関等の債権者)の同意を得ている場合は、最初から「その債務を引き継ぐ相続人のみ」を債務者とする変更登記を行うことができます。いったん共同相続人全員を債務者とする変更登記を挟む必要はありません。
一方で、債務を引き継ぐ者を定める遺産分割協議がまだ行われていない段階で登記を進める場合は、原則どおり「共同相続人全員」を債務者とする変更登記を最初に行います。その後、引き継ぐ者が決まった段階で、改めて「債務引受」を原因とする変更登記を行うという2段階の手順になります。
【実務上の解説】 手続きの進め方は、遺産分割協議の有無やタイミングによって以下の区分に応じて判断されます。
1. 遺産分割協議によって特定の相続人が債務を引き受けた場合 まだ共同相続人全員への債務者変更登記がされていない状態であれば、債務を引き受ける相続人(例えばAさん)が抵当権者の同意を得ることで、直接Aさん単独を債務者とする抵当権変更登記を申請することが実務上認められています。この方法は、登記費用や手続きの手間を省くことができるため合理的です。
2. 遺産分割協議がされていない場合 まだ誰が債務を引き継ぐか決まっていない場合は、共同相続人全員が債務を引き継いだものとして登記を行います。その後、特定の相続人が債務を引き受けることになった際に、後述する免責的債務引受等の手続きへ移行します。
相続による債務者変更登記の具体的な申請情報と添付書類
【質問】 抵当権の債務者が死亡し、相続による債務者の変更登記を申請する場合、申請書の記載方法や必要となる添付書類はどのようになりますか。
【回答】 債務者の死亡に伴い、共同相続人全員を債務者とする変更登記を行う場合の基本的な申請情報と添付書類は以下のとおりです。
1.申請情報の主な記載事項
登記の目的:何番抵当権変更 登記原因:令和何年何月何日(債務者の死亡日)相続
変更後の事項: 債務者 何市何町何番地 A(相続人) 何市何町何番地 B(相続人)
権利者:抵当権者(金融機関等)
義務者:抵当権設定者(不動産の所有者)
2.必要となる添付書類
(1)登記原因証明情報 債務者が死亡した事実および相続人が誰であるかを証明するため、被相続人の出生から死亡までの除籍謄本等、および相続人の戸籍謄本(または法定相続情報一覧図の写し)を提供します。
(2)登記識別情報または登記済証 登記義務者である抵当権設定者(不動産所有者)の所有権取得時のものを提供します。
(3)代理権限証明情報 抵当権者および抵当権設定者からの委任状を提供します。
3.登録免許税 不動産1個につき1,000円を納付します。
【解説】 債務者の相続による抵当権変更登記におけるポイントは、登記の申請人が「権利者である抵当権者」と「義務者である抵当権設定者」の共同申請になるという点です。亡くなった債務者の相続人自身は、抵当権設定者(不動産の所有者)を兼ねていない限り、この変更登記の申請当事者にはなりません。
したがって、登記原因証明情報として必要となる債務者の戸籍謄本等の収集にあたっても、申請人である抵当権設定者や抵当権者側で準備して手続を進めることになります。また、登記義務者である抵当権設定者の印鑑証明書は、原則として提供を要しません(登記識別情報を提供できない場合などを除きます)。
遺産分割協議等により特定の相続人が債務を引き受けた場合の実務対応(免責的債務引受)
【質問】 共同相続人全員を債務者とする抵当権の変更登記をした後、遺産分割協議などにより特定の相続人が他の相続人の債務を引き受けることになりました。この場合、どのような登記手続きが必要になりますか。
【回答】 「免責的債務引受」を原因とする抵当権の変更登記を行います。これにより、債務を引き受けた特定の相続人のみを新たな債務者とする登記手続が完了します。
【実務上の解説】 共同相続人全員への債務者変更登記がすでに完了している状態で、債権者(抵当権者である金融機関等)の同意を得て、特定の相続人(例えば相続人A)が他の相続人(例えば相続人B)の債務を免責的に引き受けた場合、以下の要領で登記を申請します。
1.申請情報の主な記載事項
登記の目的:何番抵当権変更
登記原因:令和何年何月何日(債務引受契約の日) Bの債務引受
変更後の事項:債務者 何市何町何番地 A
権利者:抵当権者 義務者:抵当権設定者
2.手続きのポイントと必要書類 この登記は、抵当権者(登記権利者)と抵当権設定者(登記義務者)の共同申請によって行います。免責的債務引受の契約が成立したことにより、以降、債権者は債務を引き受けたAのみに対して相続債務の履行を請求できるようになります。
申請に必要な主な添付情報は以下のとおりです。
(1)登記原因証明情報 免責的債務引受契約書など、債務引受の事実を証明する書類を提供します。
(2)登記識別情報または登記済証 登記義務者である抵当権設定者のものを提供します。
(3)代理権限証明情報 当事者双方からの委任状などを提供します。
なお、この変更手続においても、登記義務者の印鑑証明書の提供は原則として不要とされています。
【相続による根抵当権の債務者変更】相続開始から6か月経過後、特定の相続人が債務を承継する登記手続き
【質問】 根抵当権の設定者兼債務者が死亡し、何もせず6か月が経過した。法定相続人は4人(A・B・C・D)いるが、そのうち2人(A・B)が対象不動産の所有権を相続し、今後の被担保債務もこの2人で弁済していきたいという意向である。 この場合、実体上どのような契約を締結し、どのような登記手続きを行えばよいか。
【回答】
根抵当権の債務者に相続が開始し、何もしないまま6か月が経過すると、担保すべき元本は法律上当然に確定する。 被担保債務については、法定相続割合に応じて4人の相続人に分割して承継されることになり、債権者は各相続人に対して承継した金額の範囲内でしか請求ができなくなる。
これを特定の2人(A・B)の連帯債務とするためには、実体法上の契約と、それに伴う3段階の根抵当権変更登記が必要となる。
1. 締結すべき契約の内容
AとBが連帯して被担保債務の全額を負担し、債権者がA・Bのいずれに対しても全額を請求できるようにするためには、以下の2段階の契約を締結する。
- 免責的債務引受契約 債務を承継するA・Bが、債務を承継しないC・Dの債務を免責的に引き受ける契約。
- 重畳的(併存的)債務引受契約 債務を承継するA・B間で、相互に負担する債務を重畳的(併存的)に引き受ける契約。
2. 登記手続きの具体的な流れ
前提として、対象不動産についてA・Bへの「相続による所有権移転登記」を完了させておく必要がある。 なお、次に申請する相続による債務者変更登記の登記原因日付から、相続開始後6か月が経過して元本が確定していることが明白であるため、事前に「元本確定の登記」を申請する必要はない。
具体的な根抵当権変更登記は、以下の「3連件」で申請する。
① 1件目:相続による債務者の変更登記
特定の相続人2人へ直接債務者を変更する登記は受理されないため、まずは法定相続分どおりに共同相続人全員が債務を承継した状態を登記する。
- 登記の目的:何番根抵当権変更
- 登記原因:〇年○月○日相続(※被相続人の死亡日)
- 変更後の事項: 債務者 A、B、C、D(※4名全員の住所・氏名を記載)
- 申請人:権利者(金融機関等)、義務者(設定者A・B)
- 添付情報:登記原因証明情報(戸籍謄本等一式)、登記識別情報、代理権限証書など
② 2件目:免責的債務引受による債務者の変更登記
次に、CとDが法定相続により負担した債務を、AとBが免責的に引き受けた登記を行う。
- 登記の目的:何番根抵当権変更
- 登記原因:〇年○月○日 AはC及びDの、BはC及びDの債務引受 (※免責的債務引受契約の日)
- 変更後の事項: 債務者 A、B
- 申請人:権利者(金融機関等)、義務者(設定者A・B)
- 添付情報:登記原因証明情報(免責的債務引受契約書等)、登記識別情報、代理権限証書など
③ 3件目:重畳的(併存的)債務引受による債務者の変更登記
最後に、AとBが連帯債務者となるための登記を行う。
- 登記の目的:何番根抵当権変更
- 登記原因:〇年○月○日 AはBの、BはAの債務を重畳的債務引受 (※重畳的債務引受契約の日。なお現行民法下では「併存的債務引受」と記載することも可)
- 変更後の事項: 連帯債務者 A、B
- 申請人:権利者(金融機関等)、義務者(設定者A・B)
- 添付情報:登記原因証明情報(重畳的債務引受契約書等)、登記識別情報、代理権限証書など
3. 実務上の留意点
- 登記義務者の印鑑証明書:根抵当権の変更登記においては、原則として登記義務者(設定者)の印鑑証明書の提供は不要である(ただし、事前通知等を利用する場合を除く)。
- 登記原因証明情報:2件目および3件目の登記原因証明情報(各債務引受契約書)には、戸籍等の相続証明書一式のコピーを合綴して提供する実務上の扱いがある。
管轄を異にする根抵当権追加設定と極度額変更の同日申請 について
先日、売買・融資決済案件において実務上の重要論点が生じましたので、事前に管轄法務局へ書面照会を行い、認められる旨の回答を得ましたのでご報告します。
案件の概要
同一の決済日に、以下の登記を異なる2つの法務局管轄に対して同時に申請する必要がありました。
【先行申請:A法務局】
- 既存根抵当権の極度額変更登記(増額:7,000万円 → 2億4,000万円)
【同日申請:B法務局(後登記)】
- 抵当権抹消登記
- 所有権移転登記
- 共同根抵当権追加設定登記(上記の変更後の根抵当権に基づく)
実務上の問題点
共同根抵当権の追加設定登記を申請する際には、前登記の登記事項証明書を添付書類として提出する必要があります。
ところが本件では、A局とB局への申請を同日に行う構造のため、B局への申請時点ではA局での極度額変更登記がまだ完了していません。
そのため、変更後の内容が反映された登記事項証明書を取得して添付することができないという問題が生じました。
照会した内容
追加設定申請書に「前登記(極度額変更)の受付年月日・受付番号」をあらかじめ明記した上で同日申請を行い、前登記完了後に速やかに登記事項証明書を追完(補正提出)する取扱いは可能か?
法務局の回答
→ 可能である旨の回答を得ました。
すなわち、
- B局への追加設定申請書に、A局での極度額変更登記の受付情報(受付日・受付番号)を明記する
- A局での登記完了後、速やかに登記事項証明書を追完提出(補正)する
という手順で申請を進めることが、実務上認められるとの確認が取れました。ただし、必ず事前に管轄法務局に確認されることをお勧めします。