[不動産登記レアケース17]特別委任方式について

本レポートは、令和8年3月1日より施行される「特別委任方式」について、法務省の依命通知、事務連絡、および日本司法書士会連合会が策定した実務指針に基づき、現場の司法書士が直面する実務上の論点を整理したものである。本方式の導入は、司法書士が登記原因証明情報の作成名義人となる法的転換点であり、フルオンライン申請の促進に向けた極めて重要な制度である。
目次
  1. 制度の概要と基本的考え方
  2. 対象となる登記申請と作成者の範囲
  3. 委任状(代理権限証書)への記載と特別の委任
  4. 登記原因証明情報の作成・確認実務
  5. 登記申請手続とシステム上の対応
  6. 特殊な実務事案への対応
  7. 実務チェックリスト(まとめ)

1. 制度の概要と基本的考え方

制度の定義と根拠

「特別委任方式」とは、司法書士(司法書士法人を含む。以下「司法書士等」)が代理人として電子申請を行う際、司法書士等が作成名義人となった「報告形式」の登記原因証明情報について、登記義務者の電子署名を省略して適式な添付情報として取り扱う制度である。

根拠通知

  • 「司法書士等が電子申請の方法により権利に関する登記の申請をする場合における電磁的記録で作成する登記原因証明情報の取扱いについて(依命通知)」(令和7年12月9日付法務省民二第1578号)
  • 「司法書士等が電子申請の方法により権利に関する登記の申請をする場合における電磁的記録で作成する登記原因証明情報の取扱いの留意事項について(事務連絡)」(令和7年12月9日付法務省民二第1579号/補佐官通知)

施行日:令和8年3月1日

従来の取扱いとの決定的な違い

最大の違いは、電磁的記録としての登記原因証明情報の作成名義そのものが登記義務者から司法書士等に移行する点にある。

従来
登記義務者の電子署名

必須であった

特別委任方式
登記義務者の電子署名

不要となる

特別委任方式
作成名義人

司法書士等が自らの職責において作成名義人となり、電子署名を付与する

特別委任方式
報告形式への限定

「報告形式」の登記原因証明情報に限定。遺言書などの既存書面(証書)には適用されない

📌 制度の目的:登記義務者の電子署名環境の有無にかかわらず、司法書士の関与によって証明力を担保し、「フルオンライン申請の促進」を図ることにある。

2. 対象となる登記申請と作成者の範囲

Q

特別委任方式を利用できる「登記の目的」を具体的に教えてください。

A

実務上の混乱を防ぐため、対象となる登記の目的は以下のものに限定列挙されている(依命通知2(1))。

  • 売買または贈与を原因とする所有権移転登記(共有持分移転を含む)
  • 抵当権または根抵当権の設定・抹消の登記
Q

一見、設定や抹消に準じるように見える「抵当権の変更」などは対象になりますか?

A

対象外である。以下の登記については、現時点では本方式を利用できない。

  • 交換、寄付を原因とする所有権移転
  • 登記名義人の住所・氏名変更登記
  • 抵当権の変更(抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更、利息の元本組入れ、一部弁済による変更、根抵当権の極度額の減額等)
  • 所有権移転仮登記、設定仮登記、およびそれらの仮登記の本登記
Q

司法書士法人の場合、社員以外の司法書士が作成者となれますか?

A

作成者(登記申請の代理人)は司法書士法人となるが、実際に事実を確認したのが代表社員以外の社員または使用人司法書士である場合、「法人の電子署名」に加えて「事実を確認した社員または使用人の電子署名」の両方が必須となる(後述「4」参照)。なお、復代理人や使者は、登記義務者との直接の委任関係がないため、本方式の作成者には含まれない。

Q

合同事務所形態における取扱いはどうなりますか?

A

司法書士法人のような組織としての同一性は認められない。合同事務所の各司法書士は独立して業務を執行しているため、「確認を行った司法書士」と「作成名義人として署名する司法書士」は同一でなければならず、法人のような「組織としての署名」は認められない(質疑事項集 問12)。

3. 委任状(代理権限証書)への記載と特別の委任

Q

「特別の委任」として委任状に記載すべき具体的な文言を教えてください。

A

単なる「登記申請に関する一切の件」という包括的な文言では不十分である。登記義務者が、司法書士を作成名義人とすることを確認し、これを委任した旨を明示する必要がある。

記載例:「司法書士何某が作成名義人となって登記原因証明情報を作成することに関する一切の件」

Q

委任状に記載する登記原因の日付について、注意点はありますか?

A

正確な日付(または予定日)の記載が必須である。法務局による形式的審査において、特別の委任が明確になされたかを判断するため、「令和〇年〇月中」といった概括的な表記は受理されない(質疑事項集 問9)。

Q

委任情報の作成日から登記原因日までの期間制限について詳しく教えてください。

A

原則として、「委任情報の作成日」から「登記原因が生じた日」までの期間が1か月以内である必要がある。

例外と立証資料

  • 海外居住者:パスポートの写し等の添付により、やり取りに相応の期間を要することが確認できる場合。
  • 農地法許可:転用許可証の記載(申請日や許可日)により、原因発生まで時間を要することが確認できる場合(質疑事項集 問6)。

4. 登記原因証明情報の作成・確認実務

Q

司法書士自らが行う「事実の確認」は、どのように記録すべきですか?

A

登記義務者に不利益が生じないよう、職責に基づき相当な方法で確認し、その態様を具体的に記録する。

記載例

  • 「契約への立会いおよび契約書の確認により売買の事実を現認した」
  • 「決済への立会いにより代金支払の事実を現認した」
  • 「登記義務者からの聴取および提供資料により契約等の事実を確認した」

⚠ 注意:登記権利者(買主等)側からのみの聴取や資料提示に基づく確認は、相当な方法とは認められない。

Q

作成時期および電子署名のタイミングに関する厳格なルールはありますか?

A

登記原因証明情報は、原則として「登記原因が生じた後」に作成しなければならない。

  • 署名日:電子署名が付与された日付が、登記原因日よりも前であってはならない(質疑事項集 問11)。
  • 代理権不消滅:登記原因が生じる前に「特別の委任」を受けていれば、不登法第17条の規定により、原因発生後に委任者が死亡した場合でも、司法書士は有効に原因証明情報を作成できる。ただし、農地法許可前など、原因自体が生じる前に死亡した場合は、改めて相続人から特別の委任を受ける必要がある。
Q

司法書士法人の署名ルールを整理してください。

A

以下の二重の署名体制が求められる(QIII3-5)。

  • 司法書士法人の電子署名(法人の代表権に基づく署名)
  • 事実を確認した社員または使用人司法書士の電子署名

※法人の電子証明書だけでは、「誰が事実を確認したか」という個人責任の所在が不明確になるため、個人の署名も必須となる。

【実務指針】

司法書士は、依命通知の要件を満たすだけでなく、リスクベースアプローチの観点から、本人確認および犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認を併せて行い、不正登記を防止する高い倫理観が求められる(QIII4-2参照)。

5. 登記申請手続とシステム上の対応

Q

オンライン申請時、添付情報欄にはどのように記載しますか?

A

以下のように記録する。

記載内容:「登記原因証明情報(特別委任方式)」

Q

登録免許税の電子納付ができない場合、申請は却下されますか?

A

却下されない。電子納付はフルオンライン促進のための要件であるが、金融機関の限度額設定等により電子納付が困難な「特段の事情」がある場合は、書面等での納付も認められる。この場合、特段の証明資料や理由の記載も不要である(質疑事項集 問15)。

Q

本方式によるPDFファイル提供において、なぜ補正が認められるのですか?

A

従来の特例方式(書面をスキャンしたPDF)では、原本との同一性担保および不正申請防止の観点からPDFの補正は一切不可であった。しかし、特別委任方式は「司法書士自身が作成名義人」であり、自らが受けた「特別の委任」の範囲内であれば、自ら作成した内容を修正する権限を有するため、論理的に補正が可能となる(質疑事項集 問4)。

6. 特殊な実務事案への対応

Q

「わかれ取引」における対応の違いを教えてください。

A

申請方式により可否が分かれる(QIII5-2)。

  • 利用可能 共同代理方式:義務者代理人が申請代理人となるため、特別委任方式による原因証明情報を提供できる。
  • 利用不可 復代理方式:本方式は「作成名義人である司法書士等が自ら代理人として申請する」ことが要件であり、義務者から直接の委任を受けていない復代理人による申請は認められない。
Q

三者間契約(三為取引)における委任状の取扱いは?

A

中間者(第三者のためにする契約の売主等)も登記義務者に準じた作成名義人となるため、中間者からも「特別の委任」を受ける必要がある。

ただし、中間者は「不動産登記法上の登記義務者」ではないため、法理上、中間者からの委任状を法務局へ提出する必要はない(質疑事項集 問8)。

Q

本人確認情報(不登法23条4項)との関係を整理してください。

A

本人確認情報と特別委任方式の登記原因証明情報は、法的性質が全く異なるため、一体化や兼用はできない。

  • 理由:本人確認情報は「本人の同一性」を確認する情報であり、「登記義務者が登記原因を自認する性質のものではない」ためである(質疑事項集 問13)。
  • ただし、両者を別個の情報として作成し、併用することは可能である。

7. 実務チェックリスト(まとめ)

本方式を利用する際は、以下の要件をすべて満たしているか最終確認すること。

  • 司法書士等が代理人として電子申請(特例方式を含む)すること
  • 登記の目的が次のいずれかであること
    ① 売買または贈与を登記原因とする所有権(共有持分を含む)の移転の登記 ② 抵当権(根抵当権を含む)の設定または抹消の登記
  • 司法書士等が、登記義務者から、登記原因証明情報の作成名義人となることについて具体的な内容まで含めた特別の委任を受け、その旨が委任情報に記録されていること
  • 司法書士等が、委任に基づいて自らが確認した登記原因となる事実等を記録した登記原因証明情報を電磁的記録で作成し、電子署名をしていること
  • 確認方法が、契約の締結や金銭の授受の現認、登記義務者からの聴取その他の相当と認められる方法であること
  • 登記原因証明情報を作成した司法書士等が、代理人としてその登記原因に基づく登記を申請し、その添付情報として当該登記原因証明情報を提供していること
  • 申請情報の添付情報欄に「登記原因証明情報(特別委任方式)」と記録されていること
  • 登録免許税が電子納付の方式により納付されていること(電子納付金額の上限超過等、納付できない正当な理由がある場合を除く)
根拠通知・関係法令
  • 法務省民二第1578号(令和7年12月9日付・依命通知)
  • 法務省民二第1579号(令和7年12月9日付・補佐官通知)
  • 日本司法書士会連合会策定・実務指針(QIII各項)
  • 不動産登記法第17条(代理権の不消滅)、第23条第4項(本人確認情報)

[不動産登記レアケース16]職権による住所等変更登記 自然人と法人について

レアケース:ご利用にあたって
令和8年4月1日から開始した「職権による住所等変更登記(スマート変更登記)」は、実務上迷いやすいポイントが多い制度です。本記事は法務省通達・日司連通知をもとに、実務で生じやすい疑問をQ&A形式でまとめています。あくまでご参考程度にお読みいただき、各登記所への照会を前提としております。誤っている点や先例変更等のご指摘は大歓迎です。

制度の概要

令和8年4月1日より、不動産の所有権登記名義人の住所・氏名(法人の場合は名称・住所)に変更があった場合、登記官が職権で変更登記を行う「スマート変更登記」が開始されました。

この制度が機能するためには、所有権の登記名義人があらかじめ「検索用情報」を法務局に申し出ておく必要があります。検索用情報の申出制度は令和7年4月21日から先行して施行されています。

令和7年4月21日 施行
検索用情報の申出

所有権の保存・移転等の登記申請時に検索用情報を併せて申し出ることが原則必要となる。既存の登記名義人も単独申出が可能。

令和8年4月1日 施行
職権による住所等変更登記

登記官が住基ネット・商業登記情報を定期照会し、変更があれば登記名義人に意思確認の上、職権で変更登記を実行する。

目次
  1. 検索用情報の申出が必要な登記の種類
  2. 検索用情報の具体的な内容と記載方法
  3. メールアドレスがない場合の取扱い
  4. 法人名義の不動産に関するQ&A
  5. 職権変更登記と申請登記が競合した場合
  6. 実務上の注意点まとめ

1. 検索用情報の申出が必要な登記の種類

Q1

検索用情報の申出が必要な登記申請はどれか?

A

国内に住所を有する自然人が所有権の登記名義人となる以下の登記申請が対象です(新規則第158条の39第1項)。

  • (1)所有権の保存の登記
  • (2)所有権の移転の登記
  • (3)合体による登記等(不動産登記法第49条第1項後段の規定により併せて申請をする所有権の登記があるときに限る)
  • (4)所有権の更正の登記(その登記によって所有権の登記名義人となる者があるときに限る)

申出ができない者:法人・海外居住者・登記の申請人でない場合(代位者等による申請)。ただし代位登記完了後に単独申出は可能。

Q2

令和7年4月21日以前から既に登記名義人である者はどうすればいいか?

A

登記申請とは別に「単独申出」をすることで、所有不動産を職権による住所等変更登記の対象とすることができます(新規則第158条の40第1項)。申出の際は押印・電子署名不要、身分証明書の写しのみで手続き可能です。登録免許税等の費用もかかりません。

2. 検索用情報の具体的な内容と記載方法

Q3

検索用情報として申し出る項目は何か?

A

以下の5項目です(新規則第158条の39第1項第1号〜第5号)。

  • 氏名
  • 氏名の振り仮名(外国人の場合はローマ字氏名)※ローマ字氏名は登記記録に記録・公示される
  • 住所
  • 生年月日(公示されない)
  • メールアドレス(公示されない)※登記官が職権変更登記の可否を確認する際の連絡先

📌 実務上のポイント:振り仮名(ローマ字氏名)は登記記録に公示されます。通称名で登記申請する場合や、外国人住民票にローマ字氏名の記載がない場合は申請情報の内容とする必要がないケースもあります。 詳しくはレアケース15「外国人が日本の不動産を売却・購入する場合」をご参照ください

3. メールアドレスがない場合の取扱い

Q4

依頼者がメールアドレスを持っていない場合、申請書にはどう記載するか?

A

メールアドレスがない場合、その旨を申請情報の内容として記載します。

  • オンライン申請の場合:「その他事項欄」に「権利者Aにつきメールアドレスなし」と入力
  • 書面申請の場合:権利者のメールアドレス欄に「なし」と記載

この場合、登記官が職権で住所等変更登記を行うことの可否を確認する際は、登記名義人の住所に書面を送付することが想定されています。

Q5

代理人(司法書士)のメールアドレスを記載してもよいか?

A

不可です。メールアドレスは登記官が職権変更登記の可否を登記名義人本人に確認するための連絡先です。代理人による申請の場合を含め、登記名義人となる者本人のみが利用しているメールアドレスを記載する必要があります。依頼者に確認の上、本人のメールアドレスを記載してください。

Q6

DV被害者など、最新の住所を公示されたくない場合はどうなるか?

A

職権による住所等変更登記は、登記名義人の了解を得た上で実行する仕組みになっています。登記官から意思確認の連絡があった際に了解しなければ、職権登記は行われません。DV被害者等、最新の住所を公示することに支障がある方については、この仕組みで対応することが想定されています。

4. 法人名義の不動産に関するQ&A

法人の場合、住基ネットではなく商業登記情報(会社法人異動情報)を利用して名称・住所の変更を検知し、職権変更登記が行われます。

Q7

法人登記簿の名称等の「更正登記」がされた場合も職権変更登記の対象となるか?

A

対象となります(規則第158条の44第1項第2号)。法人登記簿に記録された法人の名称等の更正の登記(職権による登記の更正を含む)がされた場合も「変更があった」場合に含まれます。また、商号・名称に使用されている文字コードを更正する登記(例:マイナス「-」をハイフン「‐」に更正)がされた場合も同様に会社法人異動情報が送信され、職権変更登記の対象となります。

Q8

会社法人等番号の登記がされていない法人から職権変更登記の求めがあった場合はどうか?

A

スポット的な求めには応じる必要はありません。当該法人に対して、別途法人識別事項の申出を促すことが相当です。

📌 会社法人等番号が不動産の所有権の登記事項として記録されていることが、職権変更登記の前提となります。

Q9

同一法人が同一不動産の持分を数回に分けて取得し、一部に会社法人等番号の登記がない場合はどうか?

A

同一人が所有権の登記名義人であることが登記記録上明らか(複数登記事項の名称・住所の表示が同一)であれば、会社法人等番号の登記がない持分も含めて全て職権変更登記の対象となります。

5. 職権変更登記と申請登記が競合した場合

Q10

会社法人異動情報の受付後に、同内容の名称・住所変更の登記申請がされた場合はどうなるか?

A

受付番号の順に登記を処理します。

  • 前件:会社法人異動情報→職権による住所等変更登記を実行
  • 後件:登記申請→法第25条第3号により却下

なお、後件の申請については、申請人または申請代理人に対して前件で職権変更登記を行った旨を伝え、適宜取下げまたは一部取下げを促すことも考えられます

Q11

逆に、申請登記の後に同内容の会社法人異動情報が到達した場合はどうなるか?

A

前件の申請による登記を実行した後、後件の会社法人異動情報による登記については「物件不要」として処理を終了します。申請代理人が特別な対応をとる必要はありませんが、こうした競合が生じた場合の登記所の処理を把握しておくことが実務上有用です。

Q12

会社法人異動情報の受付後に、法人から「登記事項証明書を取りたいので職権変更登記を却下してほしい」と求められた場合はどうか?

A

その求めに応じる必要はありません。職権変更登記は法定の手続であり、法人側の事情による却下要求には対応しないこととされています。

6. 実務上の注意点まとめ

  • 令和7年4月21日以降の所有権申請には検索用情報の記載が原則必要。記載漏れがないよう申請書作成時にチェックリストに加えることを推奨。
  • メールアドレスは必ず本人のものを記載。メールアドレス「なし」でもOK。
  • 振り仮名は提供は必要だが登記記録に公示されない。依頼者への確認が必要。外国人・通称名使用者は記載が不要なケースあり。
  • 法人名義の不動産は会社法人等番号の登記が職権変更の前提。番号が登記されていない場合は法人識別事項の申出を促す。
  • 職権変更登記と申請登記の競合に注意。法人の住所・名称変更登記を申請しようとする際は、既に職権変更登記が先行していないか確認することが望ましい。
参考・関係法令等
  • 民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)
  • 不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和7年法務省令第1号)
  • 法務省民二第373号通達(令和7年3月3日付)
  • 法務省民二第525号通達(令和8年3月27日付・施行通達)
  • 日司連常発第27号(令和8年5月8日付・法人Q&A集)
  • 法務省HP「検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)」(令和7年4月30日更新)

住宅ローン完済!自分でできる「抵当権抹消登記」のやり方をゼロから徹底解説【第2回・準備編】

第1回では、抵当権抹消登記の基本知識と「自分でやるか・司法書士に頼むか」の判断基準をお伝えしました。

今回はいよいよ実際の準備に入ります。「何を確認して、何を揃えればいいのか」を順番に解説します。また、「銀行からの書類をなくしてしまった!」という方向けの対処法も紹介します。

ステップ①:まずは対象不動産の「登記情報」を確認しよう!

登記申請の第一歩は、現在の正確な情報を把握すること

抵当権抹消登記の申請書を作成するには、対象となる不動産の正確な情報が必要です。具体的には以下の内容を確認します。

  • 不動産の所在・地番・家屋番号(住所とは異なる場合があります)
  • 現在の登記名義人(所有者)の氏名・住所
  • 登記簿に記録されている抵当権の内容(債権者名・受付番号など)

これらの情報は、登記申請書に正確に記載する必要があります。記憶や古い書類だけで判断せず、必ず最新の登記情報を確認しましょう。

法務局に行かなくてもOK!自宅から確認できる「登記情報提供サービス」

登記情報を確認する方法はいくつかありますが、一番手軽なのが「登記情報提供サービス」(https://www1.touki.or.jp/)というオンラインサービスです。法務省が運営する公式サービスで、自宅のパソコンから24時間確認できます。

📌 登記情報提供サービスの特徴

  • 法務局の窓口に行かずに、自宅から確認できる
  • 土地・建物それぞれ330円(税込)で閲覧可能
  • クレジットカードで即時支払いができる
  • ただし、取得できるのは「PDFの閲覧データ」のみ(公的な証明書とはならない)

クレジットカードですぐに見られる「一時利用」の使い方

登記情報提供サービスは、利用者登録をしなくても「一時利用」として使えます。手順は以下のとおりです。

1
サイトにアクセスし「一時利用」を選択

トップページの「一時利用の方はこちら」をクリックします。利用者登録は不要です。

2
不動産の種類と所在地を入力

「土地」または「建物」を選び、都道府県・市区町村・地番(または家屋番号)を入力して検索します。

3
クレジットカードで支払い

1件330円をクレジットカードで支払います。土地と建物が別々の場合は2件分(660円)かかります。

4
PDFを確認・印刷して情報をメモする

表示されたPDFに「所在・地番」「抵当権の受付番号」などが記載されています。申請書作成に使うので印刷またはメモしておきましょう。

⚠ 「登記情報提供サービス」で取得したPDFは証明書ではありません

あくまで「情報確認用」の閲覧データです。登記申請の添付書類としては使えません。公的な証明書が必要な場合は、法務局の窓口またはオンライン申請で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得してください(600円程度)。

ステップ②:銀行からの書類など、必要書類を準備しよう

銀行(金融機関)から送られてくる書類一覧

住宅ローン完済後、銀行から書類が郵送されてきます。封筒の中に入っているのは主に以下の3種類です。

書類①
登記原因証明情報

「解除証書」「弁済証書」「放棄証書」などとも呼ばれます。「ローンが完済されたので抵当権を解除します」という内容が書かれた書類です。抹消登記に必ず必要な最重要書類です。

必須
書類②
登記済証 または 登記識別情報通知

抵当権を設定したときに法務局から銀行に交付されたものです。古い書類の場合は「登記済証(朱色の印のある書類)」、平成17年以降は「登記識別情報通知(12桁の英数字が記載された書類)」の形式です。

必須
書類③
銀行の委任状

「あなた(所有者)が代わりに抹消登記の手続きをしてよい」と銀行が委任する書類です。抵当権者(銀行)の代わりに申請するために必要です。有効期限が設けられている場合があるので必ず確認してください。

必須

自分で用意しなければならない書類

銀行からの書類に加えて、自分で準備するものもあります。

  • 登記申請書(法務局のホームページからダウンロード・自分で作成)
  • 登録免許税分の収入印紙(不動産1個につき1,000円・郵便局やコンビニで購入可能)
  • 返信用封筒(郵送で申請する場合・完了書類の返送に使用)
⚠ 銀行からの書類には「有効期限」があるものも!

特に「委任状」は、銀行によって有効期限(3ヶ月〜1年程度)が設定されていることがあります。書類が届いたら、まず有効期限を確認し、期限内に手続きを完了させましょう。期限が切れてしまった場合は銀行に再発行を依頼する必要があります。

【重要】銀行からの書類を紛失した場合はどうする?

「完済後に書類が届いたけど、どこかにしまい込んで見つからない」というご相談は非常に多いです。書類の種類によって対応が異なります。

登記原因証明情報・委任状を紛失した場合

銀行に連絡して再発行を依頼してください。多くの銀行では再発行に応じてもらえますが、手数料がかかる場合があります。また再発行に数週間かかることもあるため、早めに連絡することが大切です。

登記済証・登記識別情報を紛失した場合

こちらは再発行ができません。ただし、紛失していても登記申請は可能です。「事前通知制度」または「資格者代理人による本人確認情報の提供」という方法で代替できます。ただし手続きが複雑になるため、この場合は司法書士への相談をおすすめします。

💡 まず銀行に電話を 書類が見つからない場合は、まず完済した銀行のローン担当窓口に電話してみましょう。どの書類が必要で、再発行できるかどうかをその場で確認できます。

ステップ③:要注意!申請前の落とし穴チェック

書類が揃ったからといって、すぐに申請できるとは限りません。申請前に必ず以下の2点を確認してください。見落とすと申請が却下されてしまう重要なポイントです。

落とし穴①:あなたの住所・氏名は登記簿と一致していますか?

登記情報提供サービスで確認した登記簿の「所有者の住所・氏名」と、現在のあなたの住所・氏名を照らし合わせてください。

⚠ 引っ越し・結婚などで変わっている場合は要注意!

ローンを組んだときから住所や氏名が変わっている場合、抵当権抹消登記の前提として「所有権登記名義人の住所・氏名変更登記」が必要になります。

この変更登記を先に行わないと、抵当権抹消の申請が受け付けられません。変更登記は別途申請が必要で、住民票や戸籍謄本などの書類も追加で必要になります。

📌 確認方法 登記情報提供サービスで取得したPDFの「所有者」欄の住所・氏名と、現在の住民票の住所・氏名を比較してください。一字一句同じであればOKです。

落とし穴②:銀行の社名・住所が変わっていませんか?

次に、登記簿に記録されている「抵当権者(銀行)の名称・住所」と、現在の銀行の名称・住所を確認します。

⚠ 銀行が合併・社名変更している場合は複雑な手続きが必要に!

たとえば、ローンを借りた当時の銀行名が合併などで変わっている場合、登記簿上の抵当権者名と現在の銀行名が異なります。この場合、抵当権抹消登記の前提として「抵当権移転登記」や「抵当権者の名称・住所変更登記」が必要になることがあります。

この手続きは一般の方には難易度が高いため、このケースに該当する場合は無理をせず司法書士へのご相談をおすすめします。

📌 よくある例 「〇〇銀行」が「△△銀行」に合併・統合されたケースや、銀行の本店所在地が移転しているケースがこれに当てはまります。銀行から届いた書類の名称と、登記簿上の抵当権者名を必ず照合してください。

次回予告:実践編

第2回では、登記情報の確認方法・必要書類の準備・申請前の落とし穴チェックをお伝えしました。

次回の第3回「実践編」では、いよいよ登記申請書の具体的な書き方から、法務局への提出方法、完了後の確認作業まで、実際の手順をステップごとに解説します。

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連載:自分でできる「抵当権抹消登記」完全ガイド
  1. 第1回|知識編:抵当権抹消登記の基本と、自分でやるかの判断
  2. 第2回|準備編:登記情報の確認・必要書類の準備・落とし穴チェック(この記事)
  3. 第3回|実践編:申請書の書き方・法務局への提出・完了確認