第66回 親名義の実家をそのままにしていませんか?相続登記義務化で今すぐ確認したいポイント

「親が亡くなってから何年も経つけれど、実家の名義はそのまま……。」

「固定資産税は払っているから問題ないと思っていた。」

このようなケースは、決して珍しいことではありません。これまでは、相続した不動産の名義変更(相続登記)を後回しにしてしまう方も少なくありませんでした。

しかし、2024年4月1日から相続登記が義務化されたことで、「いつかやろう」が通用しなくなりました。今回は、相続を考え始める40代から70代の皆さまに向けて、相続登記の義務化の内容と、今すぐ確認しておきたいポイントをわかりやすく解説します。

1.相続登記が義務化!2024年4月から何が変わったの?

相続登記とは、亡くなった方が所有していた土地や建物の名義を、相続人へ変更する手続きのことです。

これまでは申請の期限や罰則がなかったため、「手続きが面倒だから」「急いで困ることがないから」と、長年放置されている不動産も多くありました。

⚠ 2024年4月1日からの変更点

相続登記の申請が法律上の義務となり、正当な理由なく期限内に手続きをしなかった場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。「知らなかった」では済まされない制度になったことを、まず知っておきましょう。

2.なぜ今、相続登記が必要なのか?

相続登記が義務化された背景には、「所有者不明土地問題」があります。所有者不明土地とは、登記簿を見ても現在の所有者がわからない土地のことです。実は、その大きな原因の約3分の2が「相続登記の未了」といわれています。

所有者がわからない土地は、以下のような社会問題につながっています。

  • 災害時の復旧工事が進まない
  • 空き家の解体ができない
  • 土地の売買や有効活用ができない

📌 東日本大震災や熊本地震、能登半島地震などでも、所有者不明の不動産が復旧の妨げになったことが指摘されています。相続登記の義務化は、個人の問題だけではなく、社会全体の課題を解決するための制度でもあるのです。

3.「親名義の実家」のまま放置していると起こるリスクとは?

「親が亡くなっても、兄弟で話がまとまっているから大丈夫。」そう思っている方も多いかもしれません。しかし、相続登記をしないまま年月が経つと、思わぬトラブルにつながることがあります。

リスク①

相続人の一人が亡くなり、さらに相続人が増えてしまった

リスク②

実家を売却したいのに手続きができない

リスク③

相続人全員の協力が必要になり、話し合いがまとまらない

リスク④

相続関係が複雑になり、手続きの負担が大きくなる

📌 相続の手続きは、時間が経てば経つほど複雑になる傾向があります。「まだ大丈夫」と思っているうちに、家族に大きな負担を残してしまうこともあるのです。

4.相続登記とは?不動産の名義変更をわかりやすく解説

相続登記は、法務局に申請して不動産の名義を変更する手続きです。一般的には、以下の流れで進めます。

1
戸籍謄本などの必要書類を集める
2
相続人を確認する
3
遺産分割協議を行う
4
登記申請書を作成する
5
法務局へ申請する

📌 不動産の数や相続人の人数によって必要な書類も異なるため、早めに確認しておくことが大切です。

5.相続登記の期限は3年!いつから数えるの?

相続登記には期限があります。

2024年4月1日以降に相続した場合

不動産を相続したことを知った日から
3年以内

2024年4月1日より前に相続した場合

2027年3月31日
までに手続きが必要

⚠ 例えば、2021年に親が亡くなり、実家を相続していたにもかかわらず、まだ名義変更をしていない場合でも、義務化の対象になります。「昔の相続だから関係ない」というわけではありませんので注意しましょう。

6.2024年4月以前の相続も義務化の対象です

実は、「何十年も前の相続」がそのままになっているケースも少なくありません。祖父名義のままの土地を、父が相続し、その後さらに子どもが相続するというように、相続が何代にもわたって発生していることもあります。

このような場合は以下のような問題が生じます。

  • 戸籍の収集に時間がかかる
  • 相続人が全国に散らばっている
  • 面識のない親族との話し合いが必要になる

📌 だからこそ、早めに確認し、必要な手続きを進めることが大切なのです。

7.相続登記をしないとどうなる?10万円以下の過料について

期限内に相続登記を行わなかった場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。過料は刑事罰ではありませんので前科にはなりませんが、法律上の義務違反に対する行政上の制裁です。

⚠ 不動産ごとに過料が科される可能性があります

例えば、土地1筆・建物1棟の場合は、それぞれ対象となります。土地が複数に分かれている場合には、その分だけ対象となることもありますので注意が必要です。

8.実家の土地や建物が複数ある場合の注意点

地方の実家などでは、以下のような複数の不動産を所有していることがあります。

宅地 山林 駐車場 建物

「実家はひとつ」と思っていても、登記上は複数の不動産として扱われているケースも少なくありません。

📌 まずは、固定資産税の納税通知書などを確認し、ご家族がどのような不動産を所有しているのか把握することが重要です。

9.今すぐできる!ご家庭で確認しておきたい3つのポイント

相続登記の準備として、次の3つを確認してみてください。

1
不動産の名義は誰になっていますか?

親名義なのか、祖父母名義なのかを確認しましょう。

2
相続人は誰になりますか?

配偶者や子どもだけでなく、場合によっては兄弟姉妹や甥・姪が相続人になることもあります。

3
固定資産税の納税通知書は誰宛ですか?

納税通知書の宛名と登記名義人が異なるケースもあります。固定資産税を払っているからといって、名義変更が済んでいるとは限りません。

10.家族が困らないために、今から始める相続準備

相続は、「その時が来たら考えるもの」ではありません。元気なうちから家族で話し合い、不動産の名義を確認しておくことで、将来のトラブルを防ぐことができます。

👨‍👩‍👧
40代・50代の方へ

ご両親の実家について確認する良いタイミングです。

🏡
60代・70代の方へ

ご自身の不動産をどのように次の世代へ引き継ぐかを考えてみてください。

まとめ

相続登記の義務化によって、不動産の名義変更は「後回しにしてもよい手続き」ではなくなりました。親名義の実家をそのままにしている場合は、まず名義を確認し、いつ相続が発生したのかを整理することから始めましょう。

相続は、早めに準備をしておくことで、ご自身の負担を減らし、大切なご家族を守ることにつながります。

「うちは大丈夫かな?」と思った今が、確認を始めるベストタイミングです。
小さな一歩が、将来の安心につながります。

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第65回 相続で見落としがちな「サブスク」の落とし穴

司法書士が解説するデジタル終活

「相続対策」と聞くと、多くの方が不動産や預貯金、株式、生命保険などを思い浮かべるのではないでしょうか。

しかし近年、相続手続きの現場で見落とされがちなものがあります。それが動画配信や音楽配信、クラウドサービスなどの「サブスクリプション(サブスク)」契約です。

月額数百円から数千円の契約だからと軽く考えられがちですが、契約者が亡くなった後、その解約手続きに遺族が多くの時間と労力を費やすケースが増えています。

今回は、司法書士の視点から、相続時に知っておきたいサブスクの注意点と、今からできるデジタル終活について解説します。

サブスクは亡くなっても自動では解約されない

NetflixやAmazonプライム、Spotify、Appleの各種サービス、新聞の電子版、クラウドストレージなど、多くのサブスク契約は契約者が亡くなっても自動的には終了しません。

銀行口座やクレジットカードが止まるまでの間は利用料金が発生し続けることもあり、口座が停止された後でも未払い料金の請求が相続人に届くことがあります。

⚠ 注意

「もう使っていないはずだから大丈夫」と思っていても、契約そのものが残っているケースは珍しくありません。

相続人はサブスクを解約できる?

原則として、相続人は故人が契約していたサブスクを解約できます。

これは、新たな利用料金の発生を防ぎ、相続財産が減少することを防ぐための「保存行為」と考えられており、多くの場合、相続人が単独で手続きを行えます。

ただし、解約までに発生した利用料金や契約内容によっては解約料についても、相続人が負担することになります。

📌 「契約も負債も相続の対象になる」という点は、知っておく必要があります。

相続放棄を考えている方は要注意

ここで注意したいのが相続放棄です。

相続放棄を予定しているにもかかわらず、契約内容や手続きによっては「相続財産を処分した」と判断される可能性があります。

⚠ 専門家への相談をおすすめするケース
  • 負債が多い可能性がある場合
  • 相続放棄を検討している場合

ケースによっては相続放棄に影響することもあるため、安易に手続きを進めず、専門家へ相談することをおすすめします。

最大の壁は「スマホが開けない」

実際の相続手続きでは、法律よりも困ることがあります。

それはスマートフォンのロック解除ができないことです。

近年のサブスクは、契約情報も解約手続きもスマートフォンのアプリから行うことが多く、IDやパスワードが分からないと、どのサービスを契約しているのかさえ確認できません。

事業者によっては郵送での手続きに応じてくれますが、戸籍や本人確認書類など多くの資料が必要となり、遺族の負担は決して小さくありません。

🔒
スマホが開けない

パスコード・Face IDが分からず中身を確認できない

何を契約しているか不明

アプリやIDが確認できず、契約数すら把握できない

📮
郵送手続きは手間がかかる

戸籍・本人確認書類など多くの書類が必要になる

💸
料金が発生し続ける

解約できない間も課金が続く場合がある

デジタル終活という新しい相続対策

こうしたトラブルを防ぐため、最近では「デジタル終活」という考え方が広まっています。

デジタル終活とは、以下のような取り組みです。

  • 利用しているサブスクを一覧にする
  • ネット銀行や証券口座を整理する
  • スマートフォンやパソコンのパスワード管理を行う
  • 家族が必要な情報を確認できるよう準備する

📌 特に資産をお持ちの方ほど、ネット証券やネット銀行、ポイント、暗号資産なども含めて整理しておくことで、ご家族の負担を大きく減らすことができます。

司法書士として感じること

相続相談を受けていると、「財産が分からない」という相談以上に、「何を契約していたのか分からない」という相談が年々増えています。

サブスクは一件ごとの金額こそ大きくありません。

しかし、それが10件、20件と積み重なると、金銭的な負担だけでなく、解約手続きに費やす時間や精神的な負担も決して軽くありません。

ご家族が悲しみの中で複雑な手続きに追われないよう、生前から情報を整理しておくことも、大切な相続対策の一つだと感じています。

まとめ|「分かるように残す」ことも財産です

相続対策は、財産を増やすことや節税だけではありません。

「家族が困らないように情報を残すこと」も、これからの時代には欠かせない相続対策です。

遺言書や財産目録を準備される際には、ぜひサブスクやネットサービス、デジタル資産についても一緒に整理してみてください。

その少しの準備が、ご家族への大きな思いやりとなり、円滑な相続手続きにつながります。

相続は、財産を「残す」だけでなく、
家族に安心を「残す」ことでもあります。

今こそ、デジタル終活を始めてみてはいかがでしょうか。
相続・遺言・デジタル終活のご相談は、つくば市の司法書士事務所TOKITOへ。

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第64回 紙が大好きな司法書士がAIツールを使ってみた話|スーパーウィスパー+ワイヤレスマイクで業務が変わった

司法書士という仕事は、良くも悪くもアナログな部分が多い業界だと思います。書類は正確さが命ですし、依頼者様の情報を扱う以上、慎重になるのは当然のこと。正直、AIツールにはどこか苦手意識がありました。「便利そうだけど、士業には合わないのでは」と、食わず嫌いをしていた自覚もあります。

ただ、日々の書類作成やメール対応に追われる中で、「このままでは業務時間がいくらあっても足りない」と限界を感じる場面が増えてきました。そこで一念発起し、思い切って評判を耳にしていたAIツールを試してみることにしました。

■ きっかけになった「スーパーウィスパー」

最初に導入したのは、音声入力AIツール「スーパーウィスパー」です。OpenAIのWhisper技術をベースにしたアプリで、ショートカットキーを押すだけで、話した内容がそのままテキストとして入力されます。驚いたのは、その精度とスピード。タイピングの3倍近い速さで、しかも「えー」「あの」といった言い淀みや言い直しを自動でカットし、句読点まで整えた自然な文章に変換してくれます。

使い方の幅も広く、「モード」機能で用途ごとに変換ルールをカスタマイズできるのが便利です。自分がよく使っているのは、言い淀みや言い直しをすべて取り除き、一文ごとに適度な改行を入れて整形してくれる「言い直し修正モード」。打ち合わせの内容をそのまま話しかけるだけで、そのまま議事録の下書きとして使える形に整うので、面談後にメモを取り直す手間がかなり減りました。メール作成用のモードも作っており、「丁寧語のメール文にして」という指示をあらかじめ登録しておけば、依頼者様への連絡文もその場で仕上がります。

主な機能・特徴

  • 言語・モデルの選択が可能:日本語はもちろん他の言語にも対応。使用するAIモデルも選択でき、自分は文章生成の精度を重視してSonnet 4.5、音声認識にはウルトラV3ターボという組み合わせで使用。
  • ログ機能付き:過去に話した内容がログとして残り、音声を聞き直すことも可能。依頼内容の確認にも便利。
  • 時間節約の可視化:「今週何時間節約できたか」という目安が表示されるため、業務効率化の実感を数字で確認でき、続けるモチベーションになる。
  • ローカルモード搭載:音声データを外部サーバーに送らずに処理できる。依頼者様の個人情報や案件の詳細を扱う士業にとって、導入の後押しになるポイント。

対応OS・料金プラン

プラン 料金
無料プラン 無料
Proプラン 月額 8.49ドル
買い切り(ライフタイム) 249.99ドル(一括払い)
Enterpriseプラン 法人向け(要問い合わせ)

📌 対応OS:Mac・iPhone・iPad・Windows と幅広く対応。Mac版で購入したライセンスのままiPhoneアプリにもログインして使用可能。
自分はサブスクリプションを増やしたくなかったこともあり、ライフタイムプランを選択しました。

■ 事務所ならではの悩みと、もう一つの工夫

とはいえ、実際に使ってみると一つ壁がありました。事務所は個室ではないため、内蔵マイクで音声入力しようとすると、周囲に聞こえる声量で話す必要があり、依頼者様に関わる内容を口にすること自体に抵抗があったのです。かといって声を潜めると、今度はマイクが拾ってくれない。

そこで組み合わせて使い始めたのが、ワイヤレスピンマイク「BOYA mini2」です。USB-C接続で受信機を挿すだけとセットアップが簡単な上、口元に近い位置で音を拾う設計のため、小さな声でもしっかり認識してくれます。周囲がざわついているオフィスでも、抑えた声のままスーパーウィスパーへ正確に音声を届けられるようになり、結果として声を張らずに済むようになりました。守秘義務を意識する場面が多い司法書士業務との相性は、想像以上に良かったです。

🎤
スーパーウィスパー

音声→テキスト変換AIツール
話すだけで文章が整う

📎
BOYA mini2

ワイヤレスピンマイク
小声でも正確に認識

声を張らずに済む

守秘義務を守りながら
業務効率化を実現

■ まとめ

正直なところ、ここまで業務が変わるとは思っていませんでした。AIツールというと構えてしまいがちですが、「話すだけ」で書類やメールの下書きが整うという体験は、想像以上に大きな時間短縮につながっています。同じように多忙な士業の方や、AIに苦手意識のある方にこそ、一度試していただきたいと感じています。

今後も不定期にAI情報を発信していきたいと考えています。ご期待ください。

司法書士事務所TOKITOでは、相続・登記・家族信託に関するご相談を承っております。
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