第58回 親の認知症で銀行口座が使えなくなる?「資産凍結」の不安を解消する家族信託と成年後見の活用法

■はじめに 「最近、親の物忘れが少し増えてきたかもしれない……」 そんなとき、多くの方が真っ先に心配されるのは健康のことでしょう。しかし、それと同じくらい、あるいはそれ以上に切実な問題となるのが「お金の管理」です。

もし親御さんの判断能力が低下し、認知症と診断されると、銀行口座が凍結されたり、実家の売却ができなくなったりすることをご存知でしょうか。これを「資産凍結」と呼びます。

今回は、生前対策と相続の専門家である司法書士の視点から、この資産凍結を防ぐための2つの大きな柱、「家族信託」と「成年後見制度」について、分かりやすく解説していきます。

■1.親が認知症になると直面する「お金の壁」とは

認知症になると、なぜお金が動かせなくなるのでしょうか。それは、銀行や不動産会社が「本人の意思確認ができない」と判断するためです。

銀行口座が凍結される仕組み

銀行は、名義人本人の判断能力が不十分だと知ると、預金の引き出しを制限します。たとえ子が「親の介護費用や入院費に使いたい」と申し出ても、本人の意思が確認できなければ、原則として応じてもらえません。さらに見落としがちなのが、口座振替(引き落とし)への影響です。口座が凍結されると、公共料金や施設への支払い、医療費などの自動引き落としも止まってしまう恐れがあります。そうなると、ご家族が立替払いをするなどの対応に追われ、精神的・経済的な負担がさらに増してしまうのです。

自宅の修繕や売却もできなくなるリスク

空き家になった実家をどうするかという問題も深刻です。親御さんが施設に入所し、誰も住まなくなった実家の屋根が壊れたり、庭木が隣家に迷惑をかけたりした場合、修繕や伐採が必要になります。

しかし、たとえ子が「親のために実家を直したい(あるいは解体したい)」と思っても、家主である親御さんに判断能力がなければ、工事契約を結ぶ権限がありません。

特に深刻なのは「解体」や「売却」です。これらは財産価値を大きく変える行為であるため、法律上、所有者本人の明確な意思確認が厳格に求められます。 「実家を売って、そのお金を親の介護費用に充てよう」と家族で話し合っていても、いざ不動産会社や司法書士が親御さんの意思を確認できないと判断すれば、売買契約は成立せず、手続きはストップしてしまいます。結果として、誰も住まない家を高い固定資産税を払いながら放置せざるを得ない「負の不動産」となってしまうリスクがあるのです

■2.「元気なうち」だからこそ選べる家族信託 こうした事態を防ぐために、今もっとも注目されているのが「家族信託」です。

家族信託とは何か。分かりやすく解説 一言でいえば、「信頼できる家族に、財産の管理を託す契約」のことです。親(委託者)が元気なうちに、子(受託者)との間で「将来、自分の判断力が落ちたら、このお金や不動産はあなたが管理してね」と約束し、あらかじめ管理権限を移しておきます。

・ご本人の意思を尊重しつつ、子が財産を管理する仕組み 家族信託の大きな特徴は、親御さんが元気なうちからスタートできる点です。万が一認知症になっても、管理権限はすでに子に移っているため、子の判断で預金を引き出したり、実家を売却したりすることがスムーズに行えます。

家族信託で「できること」と「できないこと」

家族信託は「財産管理」には非常に強力ですが、身の回りの手続き(身上保護といいます)、例えば施設の入所契約や入院手続きの代理人としての権限は持ちません。これらは、後述する成年後見制度が得意とする分野です。

■3.もう一つの備え「任意後見制度」とは

家族信託が「財産の管理」に特化した制度であるのに対し、もう一つの有力な選択肢が「任意後見制度」です。

・「誰に、どんな生活をサポートしてほしいか」を予約する制度

任意後見とは、親御さんが元気なうちに「将来、もし自分の判断能力が落ちたら、この人に自分の代理人になってほしい」とあらかじめ契約しておく制度です。

・家族信託ではカバーしきれない「身上保護」の役割

家族信託の弱点は、施設への入所契約や入院の手続きといった「身の回りの法律行為(身上保護)」ができない点にあります。任意後見はこの部分を補うためのもので、いわば「生活全般のサポート役」を予約しておくイメージです。

■4.【比較】家族信託と任意後見、どちらを選ぶ?

どちらか一方を選ぶというよりは、それぞれの「得意分野」を組み合わせて活用するのが、現在の生前対策のスタンダードとなっています。

・財産活用の「家族信託」 vs 契約代行の「任意後見」 【家族信託】は、空き家になった実家を貸し出して施設代に充てたり、必要な時に柔軟に売却したりといった「財産の運用・処分」に非常に強いのがメリットです。 一方の【任意後見】は、施設との契約や医療の同意(身上保護)において、公的な代理人としての強い権限を持ちます。

・コストの比較(初期費用とランニングコスト) 【家族信託】は、最初にコンサルティング費用や公正証書作成などの「初期費用(数十万円〜)」がかかりますが、その後の月々の報酬は基本的に不要です。

【任意後見】は、契約時点での費用は数万円程度と安価ですが、実際に制度がスタート(判断能力が低下)した後は、家庭裁判所が選ぶ「任意後見監督人」への報酬(月額1万〜3万円程度)が、ご本人が亡くなるまで一生涯続きます。

・【重要】対策をしなかった場合の「法定後見」のリスク もし、家族信託も任意後見も準備しないまま認知症が進行してしまったらどうなるでしょうか。その場合は「法定後見」を利用せざるを得ません。 法定後見では、家族が希望しても「見ず知らずの専門家(司法書士や弁護士)」が後見人に選ばれるケースが多く、その場合は月額2万〜6万円程度の高い報酬が発生し続けます。また、実家の売却や賃貸といった柔軟な資産運用も、家庭裁判所の厳しい制限により、ほとんど認められなくなってしまいます。

■5.司法書士事務所TOKITOと一緒に「家族のこれから」をデザインする

生前対策で最も大切なのは、「どのような老後を送り、どのような形で資産を家族に繋いでいきたいか」というご本人とご家族の想いです。

・まずは家族で話し合うきっかけ作りから 家族信託や任意後見は、いわば「家族の絆を形にする契約」です。親御さんが元気な今だからこそ、将来の不安をオープンに話し合い、最適な組み合わせを見つけることができます。

・手続きの複雑さを解消し、円満な相続へつなげる 司法書士事務所TOKITOは、単に書類を作成するだけでなく、ご家族の状況に合わせたオーダーメイドの対策をご提案します。将来、ご家族が「あの時準備しておいて良かった」と思えるよう、しっかりとサポートいたします。

第57回 実家が「負の遺産」になる前に。相続登記の義務化と、負担を減らす「相続人申告登記」を専門家が解説

「実家の名義が亡くなった父のままだけど、急いで変えなくても大丈夫だよね?」 「兄弟で話し合いがまとまらないから、名義変更は後回しにしたい……」

これまで、そんなふうに考えていた方は少なくありませんでした。しかし、2024年4月から、私たちの暮らしに関わる大きなルール変更がありました。それが「相続登記の義務化」です。

「難しそう」「罰金があるって本当?」と不安を感じている方も多いはず。 今回は、相続の専門家である司法書士の視点から、新しく始まったルールと、どうしてもすぐに名義が決まらない時の「お助け制度」について、分かりやすくお話しします。

■ 1.【他人事ではない「相続登記の義務化」とは?】

これまでは、亡くなった方の土地や建物の名義を変える(相続登記をする)かどうかは、個人の自由でした。しかし、持ち主が分からない「所有者不明土地」が全国で増え、公共事業や災害復興の妨げになったことから、国はついに義務化に踏み切ったのです。

・放置するとどうなる?過料(罰金)のリスク 相続によって不動産を取得したことを知った日から「3年以内」に登記をしなければなりません。正当な理由なく放置していると、10万円以下の過料(行政罰)を科される可能性があります。

・新救済策「相続人申告登記」とは?

「義務化は分かったけれど、親族間で揉めていて3年以内に名義が決まらない!」という場合もありますよね。そんな時に活用できるのが、この新しい制度です。 これは、法務局に対して「私が相続人の一人です」と届け出をするだけで、ひとまず「登記の義務を果たした」と認めてもらえる仕組みです。 遺産分割の話し合いが長引きそうな場合でも、この申告をしておけば罰金を心配する必要がなくなります。自分一人の判断で、他の親族の同意なく行えるのも大きなメリットです。

■ 2.【「実家を相続したくない」と悩む人が増えている理由】

近年、相談者様から「実家を継ぎたくない、どうすればいいか」という切実な声をよく耳にします。かつては大切な資産だった家が、今や「負動産」として重荷になってしまうケースがあるのです。

・空き家が引き起こすトラブル 誰も住まなくなった実家を放置すると、固定資産税という維持費がかかり続けるだけでなく、建物の老朽化によって瓦が落ちたり、雑草が近隣に迷惑をかけたりといったリスクが生じます。万が一、通行人に怪我をさせてしまえば、所有者の管理責任を問われることにもなりかねません。

・ネットや遠方では把握しきれない「実家のリアル」 「たまに帰るだけだから大丈夫」と思っていても、実際にはシロアリの被害が進んでいたり、不法投棄の場所になっていたりと、現場の状況は想像以上に深刻なことが多いものです。

■ 3.新制度「相続土地国庫帰属制度」は救世主になるか?

「どうしても使い道がない土地を、国が引き取ってくれたらいいのに……」 そんな切実な願いに応える形で2023年に始まったのが「相続土地国庫帰属制度」です。

・国に土地を返せる?制度の概要 この制度を一言で言うと、「相続したけれど、どうしても管理しきれない土地を国に引き渡すことができる」というものです。これまで「捨てる」ことができなかった不動産を、適正な手続きを経て手放せるようになったのは画期的なことです。

・知っておきたい「引き取りが認められない土地」の条件 国が引き取るということは、その後の管理を国民の税金で行うということでもあります。そのため、管理に過度な手間や費用がかかる土地は、対象外となってしまいます。具体的には、以下のような土地は申請が通りません。

・建物が建っている土地(更地にする必要があります) ・担保権(抵当権など)が設定されている土地 ・他人の使用権(通路として使われているなど)が設定されている土地 ・土壌汚染がある土地 ・境界がはっきりしていない土地、所有権を巡る争いがある土地 ・埋設物(ガラ、瓦礫、古い水道管など)がある土地 ・危険な崖(勾配や高さが基準を超えるもの)がある土地

「実家を壊して更地にしたけれど、境界が曖昧だった」というケースなどは、事前の整備が必要になります。

・利用するための「負担金」の話 また、国に引き取ってもらう際には、将来の管理費用(10年分程度)として「負担金」を納める必要があります。金額は土地の種目によって異なりますが、最低でも20万円からとなっています。決して「タダで手放せる」わけではありませんが、子世代にずっと管理の苦労を負わせるよりは、安心を買うための必要経費と考えることもできるでしょう。

■ 4.司法書士が教える、生前にやっておくべき「実家の終活」

相続が始まってから慌てるよりも、親御さんがお元気なうちに家族で話し合っておくことが、何よりの解決策になります。

・「遺言書」で名義変更をスムーズにする

あらかじめ「この家は長男に」「その代わり預貯金は長女に」といった遺言を残しておくことで、後の手続きがスムーズになります。前述した「相続登記」の義務化にも、迅速に対応できるようになります。

・「売却」を視野に入れた家族会議の進め方

「誰も住む予定がないなら、早めに売却して現金化し、親御さんの介護費用に充てる」というのも賢い選択です。不動産は、時間が経つほど価値が下がったり、管理が難しくなったりします。「まだ早い」と思わずに、一度ご家族で「これからの実家をどうするか」という将来像を共有してみてください。

■ 5.まとめ:一人で悩まず、家族のために専門家へ相談を

不動産を巡るルールは大きく変わり、放置することのリスクは年々高まっています。しかし、それは決して「怖いこと」ではありません。正しい知識を持ち、早めに準備をすることで、大切な実家を「負の遺産」にしない方法は必ず見つかります。

私たちは、登記のプロであると同時に、ご家族の想いを形にお手伝いもさせていただきます。

「実家の名義が昔のままだ」 「将来、この家をどうすればいいか分からない」

そんな小さな不安でも、どうぞお気軽にご相談ください。

第56回 疎遠だった親族の借金が発覚!突然の手紙に慌てないための「相続放棄」ガイド NG行動も解説

■はじめに 「亡くなったお父様の借金を支払ってください」 ある日突然、見知らぬ会社から届いた一通の手紙。封を開けて、心臓が止まるような思いをされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ましてや、その相手が何年も会っていない、離婚して離れ離れになったお父様だったり、長年音信不通だったご兄弟だったりした場合、驚きと困惑はなおさら深いものです。 「どうして今さら私が?」「会ってもいない人の借金を、私が払わなければいけないの?」

そんな不安で目の前が真っ暗になってしまうというご相談を、私たちはよくお受けします。 でも、まずは深呼吸をして、落ち着いてください。法律は、こうした「予期せぬトラブル」からあなたを守る仕組みをしっかりと用意しています。

今回は、生前対策と相続の専門家である司法書士の視点から、突然の借金通知が届いたときに、あなた自身を守るための正しい対処法を分かりやすくお話しさせていただきます。

■1.そもそも「相続放棄」ってなに?

相続というと、家や預貯金など「プラスの財産」をもらうイメージが強いかもしれません。しかし、実は亡くなった方の借金や未払金といった「マイナスの財産」も、放っておくと自動的に引き継がれてしまいます。

これを防ぐための唯一の手段が「相続放棄」です。 相続放棄とは、「私は最初から相続人ではありませんでした」と家庭裁判所に宣言する手続きのことです。

この手続きが受理されると、たとえお父様やご兄弟に多額の借金があったとしても、あなたが代わりに支払う義務は一切なくなります。 「長年疎遠だったのだから、関わりたくない」 「自分には今の生活があり、家族を守らなければならない」 そのお気持ちは、決して責められるものではありません。相続放棄は、あなたのこれからの生活を守るための正当な権利なのです。

■2.離婚した父や、音信不通の兄弟でも「相続人」になる理由

「うちは両親が離婚しているから、父の財産(借金)は関係ないはず」 「もう何十年も連絡を取っていない兄のことは、自分には関係ない」 そう思われる方も多いのですが、実は法律上の「血のつながり」はそう簡単には消えません。

たとえご両親が離婚していても、お子様であるあなたは、お父様にとって一生「第一順位の相続人」です。また、ご兄弟も、ご両親やお子様がいらっしゃらない場合には相続人になります。

このように、本人のあずかり知らないところで「相続人」になってしまうケースは決して珍しくありません。だからこそ、突然の手紙が届いたときは「法律上の手続き」が必要になるのです。

■3.「期限は3ヶ月」の本当の意味

手紙が届いてからでも間に合う理由 相続の手続きには「3ヶ月以内」という期限がある、と聞いたことがあるかもしれません。 「もう亡くなってから1年以上経っているから、もう手遅れだ…」と諦めてしまう方がいらっしゃいますが、実はそこが大きな誤解です。

法律では、相続放棄ができる期限を「自分が相続人になったこと、および引き継ぐべき借金があることを知った時から3ヶ月以内」と定めています。

・離婚して以来会っていなかったお父様が亡くなったことを、債権者からの手紙で初めて知った ・音信不通だったお兄様に借金があったことを、通知が届いて初めて知った

このような場合、その「手紙が届いた日(あるいは内容を知った日)」から数えて3ヶ月以内であれば、相続放棄は認められる可能性が非常に高いのです。 時間が経っているからといって諦める必要はありません。

■4.やってはいけない!相続放棄ができなくなる「NG行動」

突然の手紙に驚いて、「まずは少しでも返しておこう」とか「誠意を見せよう」と思ってしまうかもしれません。しかし、実はここに大きな落とし穴があります。

法律には「単純承認」というルールがあります。これは、亡くなった方の財産を一部でも使ったり、借金の一部を支払ったりすると、「私はすべての財産(借金も含む)を相続します」と認めたことになってしまうルールです。

一度この「単純承認」とみなされると、後から相続放棄をすることは非常に難しくなります。

・債権者から「1,000円だけでもいいから払って」と言われて支払う ・亡くなった方の銀行口座からお金を下ろして、自分のために使う ・形見分けのつもりで、価値のある遺品を勝手に持ち出す

こうした行動は、良かれと思ってやったことでも「相続を認めた」と判断されるリスクがあります。手紙が届いたら、まずは何も手をつけず、そのままの状態にしておくことが大切です。

■5.まずは専門家に相談を

「債権者にどう返事をしていいかわからない」 「裁判所に出す書類なんて、自分に書けるだろうか」 そう不安に思うのは当然のことです。特に、離婚した親や音信不通の兄弟のケースでは、相手の生前の状況がわからないため、手続きの難易度が上がることもあります。

司法書士にご相談いただくメリットは、主に2つあります。

1.債権者(督促状を送ってきた相手)への適切な対応 「現在、相続放棄を検討中である」ということを専門家から伝えることで、不当な督促を止め、手続きを進めるための時間的な余裕を作ることができます。

2.裁判所への確実な申立て 数年経ってから届いた通知の場合、裁判所に「なぜ今さら手続きをするのか」という事情を説明する書類(上申書)を添える必要があります。これを法的な根拠に基づいて作成することで、受理される可能性をぐっと高めることができます。

煩雑な書類作成や、債権者とのやり取りのストレスをプロに任せることで、あなたはいつもの日常を取り戻すことができるのです。

■おわりに 「知らない人の借金を背負わされるかもしれない」という不安は、想像以上に心に重くのしかかるものです。 しかし、正しく手続きを行えば、あなたは亡くなった方の負債を背負う必要はありません。

もし、あなたのもとに身に覚えのない請求書や督促状が届いたら、一人で抱え込まずに、まずは落ち着いて私たち専門家へご相談ください。

第55回 もしもの時、銀行口座が凍結される!?「預貯金相続」の落とし穴と、家族を困らせないための「今すぐできる」備え

こんにちは。私は日々、生前対策や相続のご相談をお受けしております。

「親が亡くなったら、銀行口座はすぐに止まってしまうんですか?」 「葬儀費用も引き出せなくなると聞いて不安で……」

このようなご相談を、40代から70代の幅広い世代の方々からよくいただきます。

大切な家族を見送った後、悲しみに暮れる間もなく押し寄せるのが、さまざまなお金の手続きです。特に銀行口座の「凍結」は、日常生活に直結する大きな問題。準備をしていないと、窓口で「お引き出しできません」と言われ、途方に暮れてしまうことも少なくありません。

でも、安心してください。 仕組みを正しく知り、元気なうちに少しだけ動いておけば、こうしたトラブルは防ぐことができます。

今回は、銀行口座が凍結される理由から、もしもの時の引き出し方、そして「思い立ったが吉日」で今日から始められる対策まで、分かりやすくお伝えします。

【1.なぜ亡くなった人の口座は「凍結」されるのか?】

・銀行が口座を止める本当の理由とタイミング 銀行は、名義人が亡くなったことを知った時点で口座を凍結します。これは、亡くなった方の預金が「相続人全員の共有財産」になるからです。勝手に誰か一人がお金を引き出し、後から他の親族とトラブルになるのを防ぐため、銀行がガードをかけて守ってくれている……というのが本来の理由です。

ちなみに、役所に死亡届を出した瞬間に銀行へ通知がいくわけではありません。多くの場合、ご家族が銀行へ連絡したり、新聞の悔やみ欄を銀行員が確認したりすることで凍結されます。

・「凍結」されると具体的に何ができなくなる? 口座が凍結されると、預金の引き出しはもちろん、公共料金やクレジットカードの引き落とし、年金の受け取りもすべてストップします。葬儀費用や当面の生活費が必要な時に、自分のお金なのに1円も動かせないという不自由さが、残されたご家族にとって大きな負担となってしまうのです。

【2.【法改正で変わった】凍結後でもお金を引き出す方法】

・遺産分割協議が終わる前でも「150万円」までは引き出せる? 以前は、相続人全員のハンコが揃うまで1円も引き出せないのが原則でした。しかし、現在は法改正により「遺産分割前でも一定額なら引き出せる制度(預貯金の仮払い制度)」がスタートしています。

具体的には、「亡くなった時の預金残高 × 3分の1 × その人の法定相続分」という計算式で算出された金額が引き出せます。ただし、一つの銀行でもらえる上限は150万円までとなっています。

・「仮払い制度」を利用する際の注意点と必要書類 「150万円までなら簡単におろせる」と思われがちですが、実は手続きには手間がかかります。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本や、引き出す人の印鑑証明書など、揃えるべき書類が山ほどあります。

悲しみの中、役所を何度も往復して書類を集めるのは、想像以上に心身の負担になります。そのため、制度に頼るよりも「凍結させない工夫」を事前にしておくことが、実は一番の近道なのです。

【3.「凍結」で慌てないために。元気なうちにできる3つの生前対策】

「万が一の時、家族が困らないようにしたい」 そう思った時が、行動すべきタイミングです。銀行口座の凍結リスクを最小限にするための、3つの賢い備えをご紹介します。

・遺言書を作成しておく 最も確実な方法は「遺言書」を残すことです。特に「公正証書遺言」を作成しておけば、亡くなった後の銀行手続きが格段にスムーズになります。遺言書があれば、銀行は「この人に預金を相続させる」という故人の意思をすぐに確認できるため、他の相続人全員のハンコを待たずに手続きを進められるケースが多いのです。

・「家族信託」を活用して、認知症による凍結も防ぐ 実は、口座が凍結されるのは「亡くなった時」だけではありません。親御さんが認知症などで判断能力を失った場合も、銀行は本人の財産を守るために口座を凍結することがあります。 これを防ぐのが「家族信託」です。お元気なうちに、信頼できるお子さんなどに預金の管理権限を託しておくことで、もし認知症になっても、あるいは亡くなった直後でも、生活費や介護費用を滞りなく支払うことが可能になります。

・ネット銀行やサブスク。見落としがちな「デジタル遺産」の整理 最近増えているのが、通帳のないネット銀行や、毎月引き落とされるサブスクリプション(定額サービス)のトラブルです。家族がその存在を知らないと、凍結の手続きすらできず、亡くなった後も会費が引き落とされ続ける……なんてことも多々あります。 まずは「どこの銀行に口座があるか」を一覧にまとめることから始めてみましょう。これだけでも、ご家族にとっては立派な「贈り物」になります。

【4.プロに頼むメリット:司法書士がサポートできること】

「手続きが大事なのはわかったけれど、何から手をつければいいのか……」 そう感じて立ち止まってしまうのは、決してあなただけではありません。私たちは、そんな時のためのパートナーです。

・煩雑な戸籍収集から銀行解約手続きまで丸ごと代行 相続の手続きには、驚くほど大量の書類が必要です。お仕事や家事で忙しい中、平日に役所や銀行を回るのは大変な重労働。司法書士にお任せいただければ、戸籍の収集から銀行への連絡、名義変更まで、すべてをワンストップで代行いたします。

・親族間の「争族」を防ぐためのアドバイス 「うちは仲が良いから大丈夫」と思っていても、お金が絡むとボタンの掛け違いが起こることもあります。公平で法的に間違いのない対策を立てることで、大切な家族が将来「争族」にならないよう、第3者の立場から寄り添い、守ります。

【5.まとめ:「いつか」ではなく「今」。思い立ったが吉日】

「終活」や「生前対策」という言葉を聞くと、少し寂しい気持ちになるかもしれません。

「いつか、そのうち」と先延ばしにするのではなく、少しでも不安を感じた「今」こそが、最善のタイミングです。

「何を聞けばいいのかわからない」という状態でも構いません。まずはその不安な気持ちを、私たちに聞かせていただけませんか?ご相談をお待ちしております。