その土地、登録免許税が0円かもしれません|相続登記の免税措置と「2027年3月末」

この記事の要点

  • 相続登記には、登録免許税がかからない「免税措置」が2種類あります
  • どちらも期限は2027年(令和9年)3月31日。義務化前の相続についての登記期限と同じ日です
  • 2026年8月31日、法務省が免税措置の2年延長を要望しました。ただし、まだ決まったわけではありません

親の名義、あるいは祖父母の名義のままになっている土地。「登記にいくらかかるのか分からないから、そのままにしている」という方もいらっしゃると思います。

実際、法務省も、相続登記がされないまま放置される原因の一つとして「費用の負担」を挙げています。

相続登記では、法務局に納める登録免許税という税金がかかります。ところが条件によっては、この税金がかかりません。0円です。知っていれば使えたのに、知らないまま払ってしまったり、費用を心配して手をつけずにいたりするのは、もったいないと思います。

今回は、この「免税措置」の話です。ちょうど8月末に、この制度をめぐって動きがありました。

1.登録免許税がかからない2つのケース

相続登記の登録免許税は、原則として土地の固定資産評価額の0.4%です。評価額1,000万円の土地なら4万円になります。

これが免税になるのは、次の2つの場合です。

ケース① 登記をしないまま、次の方が亡くなった場合

たとえば、祖父名義の土地を父が相続したものの、登記をしないまま父も亡くなった。よくあるケースです。

このとき、ケースによっては、いったん「祖父から父へ」の登記をすることになりますが、この登記の登録免許税はかかりません。こちらは土地の評価額に上限がないので、評価額の高い土地でも免税になります。

ただし、その次の「父から子へ」の登記は、通常どおり課税されます。

ケース② 評価額が100万円以下の土地

土地の評価額が100万円以下であれば、その土地の相続登記に登録免許税はかかりません。

共有の場合は、土地全体の評価額に持分の割合をかけた額で判断します。評価額の低い農地や山林、私道の持分などでは、100万円以下に収まることもあります。

どちらにも共通する注意点

  • 対象は土地だけです。建物は含まれません
  • 申請書に「租税特別措置法第84条の2の2第1項(または第2項)により非課税」と、根拠となる条文を書く必要があります。書かなければ、免税は受けられません

最後の点は、ご自身で相続登記をされる方は特に気をつけてください。条件を満たしていても、書き忘れれば税金を納めることになります。

2.8月31日、法務省が「延長」を要望しました

この免税措置は、期限つきの制度です。現在の期限は2027年(令和9年)3月31日までです。

これについて、2026年8月31日に公表された法務省の令和9年度税制改正要望で、次の2点が求められました。

  • 2つの免税措置を、2年間延長すること
  • 100万円以下という要件の緩和など、さらに対象を広げること

要望書によると、令和7年度の利用件数は、ケース①が14,015件、ケース②が311,949件でした。これだけ使われている制度です。所有者不明土地の割合も約22%と高止まりしていると書かれていて、法務省としては続けたい、広げたいという姿勢がはっきり読み取れます。

ただ、ここで注意していただきたいのは、これはあくまで「要望」だということです。延長されるかどうか、何年延びるのか、どこまで広がるのかは、例年、年末にまとまる税制改正大綱で決まります。

参考までに、前回(令和7年度)の改正では、法務省は3年の延長を要望していました。実際に認められたのは2年です。要望がそのまま通るとは限りません。

3.2027年3月31日は「二重の締切」

この日付には、もう一つ意味があります。

①相続登記の義務化(2024年4月開始)より前に発生した相続の、登記の期限
正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象になります
②登録免許税の免税措置の期限
延長されなければ、この日を過ぎた申請は課税されます

祖父母や親の名義のまま長年そのままになっている土地は、①と②の両方にかかわります。義務の期限と、費用が0円で済む期限が、同じ日に重なっているわけです。

なお、2024年4月1日以降に発生した相続は、相続と取得を知った日から3年以内が登記の期限です。

4.3代前の名義が出てきたケース

私どもで扱った事例を一つご紹介します。

きっかけは名寄帳でした。名寄帳は、市区町村がその人名義の土地や建物を一覧にしたものです。取り寄せてみると、今の相続人の方のお名前と並んで、すでに亡くなった方のお名前が記載されていました。登記を確認すると、3代前の方の名義のままになっていました。

3代前ともなると、ふつうは相続人の数がかなり膨らみます。このケースでは、途中の相続が戦前の「家督相続」でした。旧民法のもとでは、戸主が亡くなると、家の財産は原則として家督相続人お一人が引き継ぎます。そのおかげで、相続人は数人で済みました。

それでも、ご依頼者が一度も会ったことのない相続人の方が出てきました。この方には、手紙でご連絡をしました。面識のない方への最初の連絡は、その後の話し合いの空気を左右します。ご依頼者ご本人からは切り出しにくいこうした連絡も、私どもがお手伝いできる部分です。

登録免許税は、土地の評価額が低かったため、すべて免税になりました。

このケースで一つ感じたのは、「自分の家には関係ない」と思っている土地ほど、名寄帳や課税明細書を見て初めて気づくことが多いということです。

なお、2026年2月2日からは、亡くなった方が登記上の所有者になっている不動産を全国分まとめて一覧にできる「所有不動産記録証明制度」も始まっています(窓口での請求は1通1,600円)。ただしこの証明書は、登記上の氏名・住所で検索します。昔の住所のまま残っている名義は、うまく拾えないことがあります。古い名義を探すときは、名寄帳や課税明細書とあわせて確認するのが確実です。

5.「延長されるだろう」と待つ前に

⚠ 延長を前提に待つのは危険です

  • 今回の延長は、まだ要望の段階です。決まってはいません
  • 前回は、要望より短い期間しか認められませんでした
  • 時間がたつほど、相続人は増えます。相続人の方が亡くなれば、その方のお子さんたちが新たな相続人になります
  • 面識のない相続人がいる場合、連絡を取り、話し合いがまとまるまでには時間がかかります

免税になるかどうかは、評価額と名義を見れば、ある程度判断がつきます。まずは次のことを確かめてみてください。

  • ✓固定資産税の課税明細書で、土地ごとの評価額を見る(100万円以下かどうか)
  • ✓名寄帳を取り寄せ、亡くなった方の名義が残っていないか確認する
  • ✓必要に応じて、所有不動産記録証明書を請求する
  • ✓登記簿で、名義が誰になっているかを確かめる(祖父母の代のままのこともあります)
  • ✓相続人の中に、連絡を取りにくい方がいないか書き出してみる

期限までに話し合いがまとまりそうにない場合は、「相続人申告登記」という方法で、ひとまず登記の義務を果たすこともできます。ただしこれは、名義を変える手続きではありません。売却などをするには、あらためて相続登記が必要です。

おわりに

正直に申し上げると、登録免許税は評価額の0.4%ですから、評価額の低い土地一筆あたりでは、大きな金額にならないことも多いです。

それでも、この制度をご紹介したかったのは、2027年3月末が「費用が0円で済む期限」であると同時に、「義務を果たすべき期限」でもあるからです。費用の心配で止まっていたのなら、その心配はもしかすると要らないかもしれません。

そして、実際に手続きを止めているのは、費用よりも「疎遠な親族に連絡しづらい」「誰が相続人なのか分からない」といった事情であることのほうが多いように感じます。そこは司法書士がお手伝いできるところです。

延長が決まったら、このブログでもあらためてお知らせします。

相続登記・生前対策のご相談は、司法書士事務所TOKITOへ

つくば市を中心に、キャリア21年・2,000件を超えるご相談に向き合ってきました。ご相談の約6割が、生前対策・家族信託に関するものです。

「祖父母の名義のままの土地がある」
「相続人に、会ったことのない親族がいる」
「何から手をつければいいか分からない」

そうした段階のご相談こそ歓迎しています。揉めてしまう前に、整えておく。それが私たちの仕事です。

司法書士事務所TOKITO 代表司法書士 時任 裕(茨城県つくば市)

TEL:029-875-5991

受付:8:30〜18:00(月〜金)

【参考にした資料】

・財務省「令和9年度税制改正要望(法務省)」所有者不明土地・建物問題の解決のための登録免許税の特例
・財務省「令和7年度税制改正要望(法務省)」所有者不明土地等問題の解決のための登録免許税の特例
・法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」
・法務省「相続登記の申請義務化について」
・法務省「所有不動産記録証明制度について」

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