「うちは大した財産はないから、相続で揉めることなんてない」——ご相談にいらっしゃる方の多くが、最初はそうおっしゃいます。ですが実際には、家庭裁判所まで持ち込まれる相続争いのうち、遺産額5,000万円以下のケースが約4分の3を占めます。「財産が多いから揉める」のではなく、むしろ限られた財産、とりわけ「分けられない不動産」をめぐって、ごく普通のご家庭で争いが起きているのです。2026年に公表された民間の相続意識調査でも、相続を経験した人の約半数が「もっと生前に準備・対策をしておけばよかった」と後悔しています。この記事では、なぜ不動産が相続を難しくするのか、そして元気なうちにできる備えを、司法書士の立場から整理します。

なぜ「一般家庭」ほど揉めるのか

最高裁判所の司法統計を見ると、遺産分割がまとまらず家庭裁判所に持ち込まれたケースのうち、遺産額5,000万円以下が全体の約76.7%。1,000万円以下だけでも3割を超えます。相続税がかかるかどうかのボーダーライン(基礎控除)にも届かない規模で、これだけの争いが起きているわけです。

理由はシンプルです。一般的なご家庭の遺産は「実家(不動産)+わずかな預貯金」という組み合わせが多く、遺産全体に占める不動産の割合が大きい。預貯金なら1円単位できれいに分けられますが、実家はそうはいきません。この「分けにくさ」こそが、争いの火種になります。

不動産が「分けられない」3つの理由

1現物分割には限界がある
一つの土地を相続人で分筆して分ける「現物分割」は、一見公平に見えます。しかし土地の価値は間口や接道で変わり、きれいに等分できることはまれです。30坪程度の一般的な宅地では、建物を解体して分けることになり、費用面でも現実的ではありません。
2「評価額」で意見が割れる
不動産には決まった値段がありません。固定資産税評価額・路線価・実勢価格——どれを基準にするかで金額が変わり、「安く見積もって取得したい人」と「高く評価して代償金を受け取りたい人」で対立します。
3「とりあえず共有」が次の世代の火種になる
話がまとまらず「ひとまず兄弟の共有名義に」とするケースは少なくありません。ですが共有不動産は、売却も大きな修繕も共有者全員の同意が必要です。やがて共有者が亡くなればその持分は子や孫へ相続され、面識のない親族が何人もの共有者になっていきます。こうして、管理も処分もできない「所有者不明土地」が生まれます。

放置には「期限」があります——相続開始から10年

「急いで決めなくても、いつか話し合えばいい」と思われるかもしれません。ですが、令和3年の相続法改正で、遺産分割に事実上の期限が設けられました。

相続開始(お亡くなりになった時)から10年を過ぎると、遺産分割で「寄与分」や「特別受益」を主張できなくなり、原則として法定相続分だけで分けることになります(民法904条の3・令和5年4月1日施行)。「長年、親の介護をしてきた」「兄はすでに生前贈与を受けている」——こうした個別の事情を反映できるのが具体的相続分ですが、10年を過ぎるとその主張自体ができなくなるのです。

⚠ ここに注意
この10年ルールは、施行日より前に発生した相続にも適用されます。過去の相続を「そのまま」にしているご家庭も、少なくとも令和10年(2028年)4月1日までには対応が必要です(相続開始から10年を経過する時とのいずれか遅い時まで)。あわせて、相続登記も令和6年4月から義務化され、相続を知った日から3年以内の申請が求められます(正当な理由なく怠ると10万円以下の過料。過去の相続分は令和9年3月31日が期限)。「まだ大丈夫」と思っているうちに、選べる道はどんどん狭まっていきます。

元気なうちにできる、不動産の3つの備え

不動産は「きれいに分けられない」のが前提。だからこそ、遺す側が元気なうちに“行き先”を決めておくことが、いちばんの争い予防になります。

① 遺言で「誰に何を」を明確にする
実家を誰が継ぐのか、他の相続人にはどう配慮するのかを遺言で示しておけば、そもそも分割協議で揉める余地がなくなります。公正証書遺言は、司法書士事務所TOKITOを窓口に進められます。ご自身で文案を考えて公証役場へ持ち込む必要はありません。ヒアリングのうえ、ご家族に合ったオーダーメイドの文案を作成します。
② 「換価分割・代償分割」を見据えて設計する
売って現金で分ける換価分割、一人が取得して他の相続人へ現金を渡す代償分割——どちらを選ぶかで、必要な準備(納税資金や生命保険の活用など)が変わります。生前に方針を決めておくと、実際の手続きがぐっとスムーズになります。
③ 認知症で「売れなくなる」前に、家族信託を検討する
判断能力が低下すると、たとえご家族でも本人名義の不動産を売却・活用できなくなります。家族信託を使えば、信頼できるご家族に管理・処分の権限を託しておくことができます。当事務所では、生前対策のご相談のうち家族信託を含むライフプランニング関連が約6割を占めており、力を入れている分野です。なお、使い道のない土地は「相続土地国庫帰属制度」で手放す選択肢もあります(更地であることなどの要件や、10年分の管理費相当額の負担金が必要です)。

「争い」の手前なら、司法書士が動けます

相続人同士が本格的に対立し、裁判で決着をつける段階になれば、それは弁護士の領域です。一方で、その手前——「相続人が遠方で疎遠」「長年会っておらず今さら連絡しづらい」「相手が何を考えているか分からない」といった段階での連絡・調整や、遺言・家族信託による予防、名義変更などの手続きは、司法書士がお手伝いできます。

私たちが大切にしているのは、争いになってから解決することではなく、争いにならない仕組みを先に作ることです。「心配性だから」ではなく「家族思いだから」——そんな一歩を、つくばで21年、2,000件を超えるご相談とともに支えてきました。

相続の「争いになる前」のご相談は、司法書士事務所TOKITOへ
つくば市を中心に、生前対策・家族信託・遺言から不動産・法人登記までワンストップで。相談実績2,000件以上/キャリア21年。
☎ TEL 029-875-5991
受付時間:平日 8:30〜18:00

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