親が元気な今こそ、相続の話をしておく意味
「相続の話は、まだ早い気がする」
多くの方が、そう感じています。
親が元気に生活していて、大きな病気もない。
そんな状況で相続の話を切り出すのは、気が引けるものです。
ただ、司法書士として20年以上、相続や生前対策の相談を受けてきた立場から言えるのは、
“元気な今だからこそできること”が、実は一番多いという事実です。
相続対策は、「亡くなった後」の話だけではありません。
むしろ、本当に大切なのは、
生きている間の備えです。
「まだ大丈夫」が通用しなくなる瞬間
相続相談で多いのが、次のような声です。
- 「もう少し元気なうちに話しておけばよかった」
- 「判断能力が下がってからでは、何も決められなかった」
ここで重要なのが、判断能力という考え方です。
判断能力とは、
「自分の財産や契約内容を理解し、意思決定できる力」のことをいいます。
年齢に関係なく、
ある日突然、判断能力が十分とは言えない状態になることも珍しくありません。
そうなると、
- 遺言を作る
- 不動産を売る
- 預金を動かす
- 家族信託を始める
こうしたことが、
一気に難しくなる可能性があります。
相続は「家族の問題」になりやすい
相続トラブルというと、
「財産が多い家の話」と思われがちです。
しかし実際には、
- 自宅不動産しかない
- 預貯金がそれほど多くない
こうしたご家庭でも、
揉めるケースは少なくありません。
理由は、とてもシンプルです。
- 誰が実家を引き継ぐのか
- 介護をしてきた人の気持ちはどう扱うのか
- 生前に渡したお金はどう考えるのか
家族それぞれの“思い”が食い違うからです。
そして、
話し合いができないまま相続が始まると、
感情のもつれが一気に表に出てしまいます。
生前にできる代表的な相続対策
「じゃあ、具体的に何をすればいいの?」
そう感じた方も多いと思います。
ここでは、
実務でよく使われる代表的な生前対策を紹介します。
遺言書で「意思」を残す
遺言書は、
誰に何を残したいのかを明確に伝える手段です。
特に、
- 不動産がある
- 子どもが複数いる
- 再婚や相続人が複雑
こうした場合には、
遺言があるかどうかで結果が大きく変わります。
「きちんと書けば揉めない」というより、
話し合いの土台を作るというイメージが近いかもしれません。
家族信託という選択肢
最近、相談が増えているのが、家族信託です。
家族信託は、
元気なうちに信頼できる家族に、
財産管理を託す仕組みです。
- 認知症への備え
- 不動産の管理・処分
- 生活費や介護費の確保
こうした点を、
柔軟に設計できるのが特徴です。
ただし、
誰にでも必要というわけではありません。
家族関係や財産内容によって、
向き・不向きがあります。
家族で話すこと自体が最大の対策
制度以上に大切なのが、
家族で一度きちんと話すことです。
- 親は何を大切にしているのか
- 子どもたちは何を不安に感じているのか
完璧な結論が出なくても構いません。
「話したことがある」という事実そのものが、
将来のトラブルを大きく減らします。
司法書士が現場で感じる「後悔しがちなケース」
現場でよく感じるのは、
「もう少し早ければ、選択肢があったのに」という場面です。
- 判断能力が低下してから相談に来られる
- 家族の意見が対立してから初めて話し合う
- 書類を整える時間が足りない
こうなると、
できる対策は、
どうしても限られてしまいます。
逆に、
早めに相談される方ほど、穏やかに準備が進む傾向があります。
今からでも遅くありません
ここまで読んで、
「うちはまだ大丈夫かな…」
「何から始めればいいのだろう…」
そう感じている方も、
多いと思います。
大切なのは、
完璧な準備を一気にやろうとしないことです。
- 情報を知る
- 家族で話す
- 専門家に一度相談する
この一歩だけでも、
将来の安心感は大きく変わります。
相続や生前対策は、
家族を思う気持ちの延長線にあるものです。
「今から備えれば大丈夫」
その選択を、ぜひしていただきたいと思います。
司法書士としてお手伝いできること
司法書士は、
- 相続手続き
- 遺言書作成
- 家族信託
- 認知症への法的備え
こうした分野を、
中立的な立場で整理する専門家です。
「まだ具体的じゃないけど不安」
「家族にどう話せばいいか分からない」
そんな段階でも、
構いません。
一度、私たちと話すことで、
頭の中が整理され、
次の一歩が見えてくると思います。
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