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第44回 親が元気な今だから考えたい相続対策|“まだ大丈夫”が一番危ない理由を司法書士が解

親が元気な今こそ、相続の話をしておく意味

「相続の話は、まだ早い気がする」
多くの方が、そう感じています。

親が元気に生活していて、大きな病気もない。
そんな状況で相続の話を切り出すのは、気が引けるものです。

ただ、司法書士として20年以上、相続や生前対策の相談を受けてきた立場から言えるのは、
“元気な今だからこそできること”が、実は一番多いという事実です。

相続対策は、「亡くなった後」の話だけではありません。

むしろ、本当に大切なのは、
生きている間の備えです。


「まだ大丈夫」が通用しなくなる瞬間

相続相談で多いのが、次のような声です。

  • 「もう少し元気なうちに話しておけばよかった」
  • 「判断能力が下がってからでは、何も決められなかった」

ここで重要なのが、判断能力という考え方です。

判断能力とは、
「自分の財産や契約内容を理解し、意思決定できる力」のことをいいます。

年齢に関係なく、
ある日突然、判断能力が十分とは言えない状態になることも珍しくありません。

そうなると、

  • 遺言を作る
  • 不動産を売る
  • 預金を動かす
  • 家族信託を始める

こうしたことが、
一気に難しくなる可能性があります。


相続は「家族の問題」になりやすい

相続トラブルというと、
「財産が多い家の話」と思われがちです。

しかし実際には、

  • 自宅不動産しかない
  • 預貯金がそれほど多くない

こうしたご家庭でも、
揉めるケースは少なくありません。

理由は、とてもシンプルです。

  • 誰が実家を引き継ぐのか
  • 介護をしてきた人の気持ちはどう扱うのか
  • 生前に渡したお金はどう考えるのか

家族それぞれの“思い”が食い違うからです。

そして、
話し合いができないまま相続が始まると、
感情のもつれが一気に表に出てしまいます。


生前にできる代表的な相続対策

「じゃあ、具体的に何をすればいいの?」
そう感じた方も多いと思います。

ここでは、
実務でよく使われる代表的な生前対策を紹介します。


遺言書で「意思」を残す

遺言書は、
誰に何を残したいのかを明確に伝える手段です。

特に、

  • 不動産がある
  • 子どもが複数いる
  • 再婚や相続人が複雑

こうした場合には、
遺言があるかどうかで結果が大きく変わります。

「きちんと書けば揉めない」というより、
話し合いの土台を作るというイメージが近いかもしれません。


家族信託という選択肢

最近、相談が増えているのが、家族信託です。

家族信託は、
元気なうちに信頼できる家族に、
財産管理を託す仕組みです。

  • 認知症への備え
  • 不動産の管理・処分
  • 生活費や介護費の確保

こうした点を、
柔軟に設計できるのが特徴です。

ただし、
誰にでも必要というわけではありません

家族関係や財産内容によって、
向き・不向きがあります。


家族で話すこと自体が最大の対策

制度以上に大切なのが、
家族で一度きちんと話すことです。

  • 親は何を大切にしているのか
  • 子どもたちは何を不安に感じているのか

完璧な結論が出なくても構いません。

「話したことがある」という事実そのものが、
将来のトラブルを大きく減らします。


司法書士が現場で感じる「後悔しがちなケース」

現場でよく感じるのは、
「もう少し早ければ、選択肢があったのに」という場面です。

  • 判断能力が低下してから相談に来られる
  • 家族の意見が対立してから初めて話し合う
  • 書類を整える時間が足りない

こうなると、
できる対策は、
どうしても限られてしまいます。

逆に、
早めに相談される方ほど、穏やかに準備が進む傾向があります。


今からでも遅くありません

ここまで読んで、

「うちはまだ大丈夫かな…」
「何から始めればいいのだろう…」

そう感じている方も、
多いと思います。

大切なのは、
完璧な準備を一気にやろうとしないことです。

  • 情報を知る
  • 家族で話す
  • 専門家に一度相談する

この一歩だけでも、
将来の安心感は大きく変わります。

相続や生前対策は、
家族を思う気持ちの延長線にあるものです。

「今から備えれば大丈夫」
その選択を、ぜひしていただきたいと思います。


司法書士としてお手伝いできること

司法書士は、

  • 相続手続き
  • 遺言書作成
  • 家族信託
  • 認知症への法的備え

こうした分野を、
中立的な立場で整理する専門家です。

「まだ具体的じゃないけど不安」
「家族にどう話せばいいか分からない」

そんな段階でも、
構いません。

一度、私たちと話すことで、
頭の中が整理され、
次の一歩が見えてくると思います。

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