司法書士の時任です。いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
自分自身の相続、もしくはご両親からの相続に備える必要性を感じている40代から70代の皆様へ。
「家」を相続する場合、名義が変わるだけではないという事実をご存知でしょうか。特に不動産が絡む相続は金額が大きくなりやすく、また判断に迷う点も多いため、複雑に感じていらっしゃるかもしれません。
本日は、家を相続する際に必要な「手続きの全体像」と「実際にかかる費用」について、司法書士の視点から分かりやすく解説いたします。
2024年4月からは相続登記が義務化されていますので、その重要性も含め、ぜひ最後までご覧ください。
Ⅰ. まず知っておきたい!家の相続で発生する具体的な「費用」
家(不動産)を相続する際には、様々な種類の費用や税金が発生します。
あらかじめどのくらいの出費があるのかを把握しておくことが重要です。
1. 相続税と評価費用
相続財産の総額が「基礎控除額」を超える場合、相続税が課税されます。
この場合、亡くなった日から10ヶ月以内という期限内に申告と納税が必要です。
不動産の評価は複雑です。
土地は「路線価式」または「倍率方式」で、建物は「固定資産税評価額」で評価されます。
この評価によって相続税額が大きく変動するため、正確な評価を行うことが非常に重要です。
小規模宅地等の特例で最大80%減額も可能
亡くなった方が住んでいた土地を配偶者や同居の子どもなどが相続する場合、一定の条件を満たせば、最大80%の評価額減額を受けられる「小規模宅地等の特例」があります。
この特例を適用することで、相続税を大幅に軽減できる場合があります。
ただし、配偶者以外の方が適用を受けるには、
- 「同居要件」
- 「申告期限までの所有継続」
など様々な要件があり複雑です。
有利な申告につなげるためには、相続専門の税理士に相談することをお勧めします。
2. 相続登記にかかる費用(登録免許税など)
家の名義を亡くなった方から相続人へ変更する「相続登記」の手続きの際にも費用が発生します。
最も大きな費用の一つが登録免許税です。
これは、不動産の価格を基に算出される税金です。
現在、登録免許税については一部免除措置が設けられています(2027年3月31日まで)。
例えば、相続した土地の価格が100万円以下の場合は登録免許税が免除されます。
3. 家を所有し続ける限りかかる費用
相続手続きが完了し、家を所有し続ける限り、以下の費用が継続的に発生します。
- 固定資産税
- 都市計画税
これらの税率は地域によって異なる場合があります。
4. 売却を選択した場合にかかる費用
もし相続した家に住む予定がない場合、売却も選択肢の一つとなります。
売却する場合、以下の費用や税金がかかります。
費用・税金 | 概要と注意点 |
---|---|
仲介手数料 | 不動産会社に成功報酬として支払う費用で、売却価格によっては数十万から100万円以上になることがあります。 |
印紙税 | 売買契約書に課税される税金で、契約金額に応じて税額が決まっています。 |
譲渡所得税 | 売却して得た利益(譲渡所得)に対して課税される税金(所得税と住民税)です。 |
空き家特例(最大3,000万円控除)の活用
被相続人(亡くなった方)が居住していた家屋やその土地を相続した後、一定期間内に売却し、定められた要件に当てはまる場合、**譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例(通称「空き家特例」)**があります。
この特例は非常に有利ですが、適用要件が複雑です。
適用をご希望の場合は、相続専門の税理士に相談することをお勧めします。
Ⅱ. 司法書士が解説する「家の相続」で踏むべき6つのステップ
家の相続手続きは段階的に進める必要があります。
慌てないよう、順序を確認しておきましょう。
ステップ1:遺言書の確認
まず最初に行うべきことは、亡くなった方が遺言書を残していないかを確認することです。
遺言書は、自宅だけでなく、銀行の貸金庫、法務局、公正役場などにも保管されている場合があります。
遺言書の内容は、他の手続きに優先して適用されます。
万が一、後から遺言書が発見された場合は、遺産分割をやり直すことになります。
【重要】自筆証書遺言の注意点
法務局に保管されていない自筆証書遺言を発見した場合、たとえ封がされていなかったとしても、家庭裁判所の検認を受ける必要があります。
発見した状態のまま保存し、勝手に開封せず、家庭裁判所に検認の申請を行ってください。
ステップ2:遺産の全体像の把握
家などの不動産だけでなく、預貯金、株式、借金(マイナスの財産)など、すべての財産を洗い出し、プラスとマイナスの財産を整理します。
ステップ3:相続人の調査と確定
法定相続人が誰であるかを確定するために、戸籍謄本などを取り寄せ、親族関係を明らかにします。
認知している子どもや前の配偶者の子どもなど、思わぬ人が法定相続人となるケースもあります。
ここで相続人を確定しておかないと、次の手続きに進むことができません。
ステップ4:遺産分割協議と協議書の作成
相続人が確定したら、誰がどの財産を引き継ぐのかを相続人全員で話し合います(遺産分割協議)。
もちろん、この話し合いの中で、家を誰が相続するのかも決定します。
全員の合意が得られたら、その内容を明記した「遺産分割協議書」を作成し、全員の署名と押印が必要になります。
ただし、遺言書があり、その内容に従う場合は、この協議は不要です。
ステップ5:相続税の申告と納税
ステップ2で把握した財産を基に、基礎控除額を超える場合は、亡くなった日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税を行います。
申告が必要かどうか確認を必ず行ってください。
ステップ6:相続登記(名義変更)
最後に、不動産の名義を相続人の名前に変更する「相続登記」を行います。
必要書類を揃えて法務局に提出する手続きです。
相続登記の義務化にご注意ください
2024年4月からは、相続登記が義務化されました。
手続きを怠ってしまうと、過料の対象になってしまうため、忘れずに進める必要があります。
この点については、登記の専門家である司法書士にお気軽にご相談ください。
Ⅲ. まとめ:複雑な相続手続きは専門家にご相談を
相続は、法的な手続き、不動産の評価、税金の計算など、様々な専門知識が求められ、非常に時間と労力がかかるものです。
特に不動産を含む場合、評価一つで納税額が大きく変わるため、正確で有利な申告には専門家のサポートが不可欠です。
少しでも不安な点があれば、無理をしてご自身で手探りで進めるよりも、専門家に相談いただくのが最も安心です。
当事務所では、登記手続きの専門家として、相続登記はもちろん、様々な手続きをサポートしております。
必要に応じて、相続税の申告に対応する税理士や、不動産の売却や活用を支援する不動産会社など、関連する専門家との連携も可能です。
無料相談も実施しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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