こんにちは。司法書士の時任です。
ご自身やご両親の将来の相続について、「いつか備えないと」と思いつつ、何から手をつけて良いか分からないという方は多いのではないでしょうか。特に40代から70代の皆様にとって、相続は他人事ではない切実な問題です。
「相続争いなんて、お金持ちだけの話でしょう?」そう思われるかもしれません。しかし、近年の統計を見ると、遺産を巡る親族間の争い(調停や審判になったケース)は増加傾向にあり、実は遺産額が1,000万円以下のケースが相当数含まれています。
相続争いは、資産の多寡に関わらず、どの家庭にも起こり得るのです。
私たちが多くのお客様と接する中で、相続争いに発展してしまうご家庭には一つの共通点があります。
それは、生前におけるコミュニケーション不足です。
大切なご家族が相続発生後に困らないように、そして何よりも家族の絆を守るために、生前にできる具体的な対策を司法書士の視点から解説します。
家族の絆を守る!生前にできる5つの相続対策
今回は、家族間のトラブルを防ぎ、円満な相続を実現するための具体的な5つの対策を、実行しやすい順に解説します。
対策1:まず確認すべき「相続人」と「心の準備」
物理的な財産の対策を始める前に、最も重要であり、かつ根本的な対策となるのがコミュニケーションです。
- 普段から頻繁に連絡を取り合っているご家庭では、相続発生時にも協力し合い、手続きをスムーズに進めやすい
- 逆に、長年音信不通の親族がいる場合、相続時に自分の権利ばかり主張する人が現れ、手続きが滞ることが多い
相続争いを防ぐ第一歩は、推定相続人を正確に把握することです。
なかなか会う機会のない相続人がいるなら、まずはご自身から連絡を取ってみてください。焦る必要はありません。少しずつ相続について話し合う機会を増やし、お互いの考えを共有しておきましょう。
また、現在の家族以外に推定相続人となる人がいる場合(例:認知しているお子様など)は、その事実を家族に伝えておくことも非常に重要です。該当される方は、いつかは、、ではなく、直ちにすべきです。そのままに事実を伝えずにおくと、残された家族は非常に困惑するでしょう。
対策2:将来の不安を取り除く「財産目録」の作成
相続が発生すると、ご家族は故人の財産をゼロから調査する必要があります。
- 財産の調査漏れは「隠していたのでは?」という疑念を生み、トラブルの火種に
- 税務調査の対象となるリスクも
こうした事態を避けるために、生前に財産目録を作成しておきましょう。
特に近年は株式やネット銀行口座など「目に見えない財産」が増えています。専門家(司法書士・税理士など)への相談も有効です。
さらに、定額利用サービスの会員情報などもまとめておけば、ご家族がスムーズに解約できます。
対策3:あなたの意思を「確実」に伝える遺言書の作成
遺言書があれば、相続人は原則その内容に従って遺産分割を行います。
ただし注意点は遺留分です。
- 遺留分を侵害すると、相続人から訴えられるリスクがある
- 紛失や形式不備を防ぐためには、公証役場で公正証書遺言を作成するのが最善
対策4:分割しにくい財産は「整理・現金化」を検討する
不動産のように分割しにくい財産は相続争いの原因になります。
- 使用していない不動産は、生前に売却して現金化するのも有効
- 現金化すれば、遺産分割が容易になり、相続税の納税資金にも充てられる
ただし、税額が増える・安売りリスクもあるため、税理士への相談が不可欠です。
対策5:「生命保険」と「祭祀財産」を戦略的に活用する
- 生命保険を代償金に活用
- 自宅を長男に相続 → 他の相続人には死亡保険金で調整
- 死亡保険金は受取人固有の財産のため、遺産分割の対象外
- 祭祀財産を非課税で引き継ぐ
- お墓や仏壇は相続税非課税
- 生前購入で税負担を軽減できる
- 管理困難なお墓は「墓じまい」も検討
まとめ
様々な対策をお伝えしましたが、何度でも繰り返します。
最も重要な対策は、日頃のコミュニケーションです。
ご自身の意思を伝えつつ、相続人の意見も取り入れて準備を進めることが、家族が揉めないための確実な道筋です。
私たちは相続の専門家として、皆様が円満な相続を迎えられるようサポートいたします。相続に関する不安やお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
相続には税務や不動産の売却・活用といった、司法書士の専門外となる分野の課題も多く含まれます。
私たちは税理士や不動産業者など信頼できる専門家と連携し、ご相談をすべて当事務所が窓口となってお受けし、ワンストップで解決できる体制を整えています
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