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第28回 「親の農地・空き家を相続したくない!生前贈与と相続放棄の意外なリスクと備え方」

実家が遠方にあり、親が多くの農地や不動産を持っている――。
その管理に不安を感じて、

「もしもの時、自分には引き継げないかもしれない…」

こんなお悩みはありませんか?

大切な親の財産が、管理しきれない「負動産」となってしまう不安はありませんか?

そのような中で

「生前贈与と相続放棄を組み合わせることで、プラスの財産だけを受け取り、いらない土地は手放せる」

という話を聞いたことがあるでしょうか。
一見すると、非常に魅力的な解決策に思えますよね。

しかし、残念ながらこの方法は一筋縄ではいきません。
安易な判断は、後々大きなトラブルや予期せぬ負担に繋がる可能性もあります。

今回は、相続に備えたい40代から70代の皆様に向けて、
生前贈与と相続放棄を組み合わせる際の具体的な仕組み、潜むリスク、
そして何より大切な「周囲に迷惑をかけない」ための賢い対策について、
詳しく解説します。


「生前贈与」と「相続放棄」の合わせ技、その仕組みとは?

親の財産のうち、プラスになるもの(預貯金・収益を生むアパートなど)は親が生きているうちに生前贈与で受け取り、
管理が難しい農地や山林、あるいは借金といったマイナスの財産は相続放棄で引き継がない――。

これが、生前贈与と相続放棄を組み合わせる基本的な考え方です。

具体的には、

  • 親御さんが生前に預貯金や収益物件を子に贈与し、名義変更を済ませておく
  • その後、親御さんが亡くなった際に子が相続放棄を行う

このスキームにより、不要な不動産や借金を相続せずに済む仕組みです。
贈与以外にも「家族信託」を使って財産管理を任せつつ、将来の相続放棄に備えるケースも存在します。

確かに、この方法で都合の良い財産だけを受け取れるなら、これほど良い話はないように思えるかもしれません。
しかし実際には、多くの「落とし穴」と「リスク」が潜んでいるため、慎重な検討が必要です。


見落としがちな「落とし穴」と「リスク」

生前贈与と相続放棄を組み合わせる際には、以下のリスクに十分注意しなければなりません。

1. 債権者からの「取り消し」の可能性
親御さんに借金がある場合、債権者(銀行など)は返済のあてにしていた財産が生前贈与で減ることを問題視します。
法律に基づき贈与を取り消し、贈与財産の返還を求められる制度があります。
その結果、せっかく受け取った財産を手放さざるを得ない可能性があります。

2. 相続放棄が「無効」となる危険性
「プラスの財産だけ受け取り、マイナスの財産は放棄する」という行為は、
「制度の濫用」とみなされる可能性があります。
裁判となれば、相続放棄自体を無効と判断されるケースも。
そうなれば、結局は農地や空き家なども引き継がざるを得ない最悪の事態もあり得ます。

3. 贈与税の負担
生前贈与には贈与税、不動産取得税が発生します。
多額の財産を贈与すれば、その分税負担も増えます。
税金を考慮せずに進めるのは危険です。

4. 「どこまでなら許される?」明確な基準がない
「贈与を受けてから相続放棄してはいけない」という明確な法律は存在しません。
しかし「どの程度なら問題ないか」という線引きは非常に曖昧です。
極端なケース(プラス財産すべてを贈与、マイナス財産すべてを放棄)は問題視されやすいですが、
その手前の「適度なライン」については専門家でも明言できません。


「迷惑をかけない」ための具体的な準備と心構え

さらに重要なのは、「自分だけ得をする」のではなく「周囲に迷惑をかけない」視点です。

1. 財産管理の費用を確保する
相続人全員が相続放棄すると、財産は裁判所が管理します。
この手続きには一般的に50万〜100万円程度の費用が必要です。

故人の財産に費用がなければ、誰かが立て替えることになります。
結果として、近隣住民や自治体が負担する事態になれば、迷惑や反感を招く原因となります。

最低限、この費用や固定資産税などの維持費は故人の財産として残しておくべきです。

2. 次の相続人への配慮を忘れない
相続放棄をすれば、権利は次順位の親族(親・兄弟姉妹・甥姪など)に移ります。
突然、固定資産税の通知や不動産処分の連絡が来れば、多くの人が困惑・憤慨します。

トラブルを避けるため、事前に事情を説明し、必要なら一緒に相続放棄を進める配慮が大切です。

3. 親とのコミュニケーションが大切
相続は法律だけでなく「感情」が絡むデリケートな問題です。
親御さんも「子に迷惑をかけたくない」と願っています。

お盆や年末年始の帰省時に「実家の土地や山、どうする?」と自然に話題にする、
災害時に「うちの土地や田んぼは大丈夫?」と切り出す――。

こうした会話をきっかけに、早めに資産状況や親戚関係を把握することが、スムーズな相続対策の第一歩です。


今すぐ始める「早期対策」のすすめ

相続問題、特に「負動産」化する可能性のある土地の扱いは、時間が経つほど解決が難しくなります

「10年・20年前にご相談いただければ、もっと選択肢があったのに…」と感じる専門家も少なくありません。
農地は高齢化で引き取り手が減り、空き家は老朽化する一方です。

「あと5年・10年放置すれば、さらに状況は悪化する」
――これは現実的な警告です。

親との話し合いは難しいと感じても、未来のトラブルを避けるためには、できるだけ早く始めることが重要です。


まとめ:一人で抱え込まず、司法書士へご相談を

生前贈与と相続放棄の組み合わせはリスクを伴うデリケートな問題であり、単純な「裏技」ではありません。

安易な自己判断や自己流の手続きは、思わぬトラブルや大きな負担につながります。

「周囲に迷惑をかけず、円満に相続問題を解決したい」と考えるなら、
まずは私たちにご相談ください。

当事務所では、お客様一人ひとりのご状況やご希望を丁寧に伺い、最適な相続対策をご提案いたします。

皆さまからのご連絡をお待ちしております。

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