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第21回 「うちは関係ない」は危険!一般家庭に潜む遺留分トラブルとその回避策

皆様、こんにちは。司法書士の時任です。

ご自身の、あるいはご両親の財産をめぐる「相続」は、誰もがいつか向き合う大切なテーマです。

特に、「遺言書」を準備されるご家庭も増えていますが、

「うちは揉めるほどの財産はないから大丈夫」「専門家に相談するほどではない」と、

漠然と捉えていらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。

しかし、そうした思い込みが、かえって将来のトラブルの種になることがあります。

今回は、「遺留分」という制度と、それが原因で起こる相続トラブルについて、

特に「一般家庭」でこそ知っておくべき実情と、その回避策を分かりやすくお伝えします。

■「遺留分」とは?遺言書があっても「保障される権利」

「遺留分」とは、亡くなった方が遺言書で財産の配分を決めた際、

その内容が特定の人に偏っていた場合でも、一定の相続人に最低限保証される財産の割合を意味します。

たとえば、「全財産を長男に相続させる」と遺言書に書かれていても、

配偶者や子、親には「法定相続分の半分」までの金銭請求権が認められており、

遺言内容を一部是正できるのです。

■「うちには関係ない」は誤解!一般家庭でこそ遺留分トラブルが多い理由

「遺留分なんて大富豪の話」と思いがちですが、実は違います。

相続税がかからない一般家庭でこそトラブルが多発しています。

理由は以下の通りです:

・「偏りやすい」自筆証書遺言の存在:

自筆証書遺言は簡単に作れる一方で、内容が偏る傾向があります。

公正証書遺言は専門家が関与するため、公平性が保たれやすい特徴があります。

・制度の拡充による利用増:

令和2年7月10日から法務局による保管制度が開始され、

自筆証書遺言の利用が広がりましたが、形式面しかチェックされないため、

内容の偏りに対するフォローがありません。

・資産規模と利用者の実態:

法務省調査では、自筆証書遺言作成希望者の6割以上が「総財産額3,000万円未満」。

一般家庭ほど利用率が高いことがわかります。

■遺留分を請求できるのは誰?

請求権があるのは、亡くなった方の「法定相続人」のうち、以下の者です:

・配偶者

・子(または代襲相続人である孫)

・直系尊属(親や祖父母)

兄弟姉妹や甥・姪には遺留分がありません。

■遺留分が侵害されたらどうなる?

請求手続きの流れは以下の通りです:

1. 相手方への「通知」

内容証明郵便で1年以内に通知する必要があります。

2. 相続人同士の「話し合い」

金額や方法を協議し、合意すれば合意書を作成します。

3. 家庭裁判所での「調停」

解決しない場合は調停を申立てます。

4. 「訴訟」

最後の手段は訴訟。長期化・費用負担が重くなります。

■トラブルを防ぐ3つのポイント

1. 遺留分を侵害しない遺言書を作成する

法定相続分と遺留分を踏まえた配分を。感情的配慮も大切です。

2. 生命保険金を戦略的に活用する

生命保険金は受取人固有の財産となるため、遺産分割対象外にできます。

非課税枠(500万円×法定相続人)も利用できます。

3. メッセージを残す(付言事項・エンディングノート)

法的効力はなくとも、気持ちを伝えることで争いの回避につながります。

最も有効なのは生前の話し合いです。

■まとめ

遺留分は、多くの家庭にとって「無関係ではない」問題です。

自筆証書遺言の普及により、より身近な課題となっています。

遺言内容の工夫、生命保険の活用、気持ちを伝える工夫などで、

円満な相続を実現することができます。

当事務所でも、状況に応じた相続対策をご提案しています。

お気軽にご相談ください。

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