皆様、こんにちは。司法書士の時任です。
ご自身の、あるいはご両親の財産をめぐる「相続」は、誰もがいつか向き合う大切なテーマです。
特に、「遺言書」を準備されるご家庭も増えていますが、
「うちは揉めるほどの財産はないから大丈夫」「専門家に相談するほどではない」と、
漠然と捉えていらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、そうした思い込みが、かえって将来のトラブルの種になることがあります。
今回は、「遺留分」という制度と、それが原因で起こる相続トラブルについて、
特に「一般家庭」でこそ知っておくべき実情と、その回避策を分かりやすくお伝えします。
■「遺留分」とは?遺言書があっても「保障される権利」
「遺留分」とは、亡くなった方が遺言書で財産の配分を決めた際、
その内容が特定の人に偏っていた場合でも、一定の相続人に最低限保証される財産の割合を意味します。
たとえば、「全財産を長男に相続させる」と遺言書に書かれていても、
配偶者や子、親には「法定相続分の半分」までの金銭請求権が認められており、
遺言内容を一部是正できるのです。
■「うちには関係ない」は誤解!一般家庭でこそ遺留分トラブルが多い理由
「遺留分なんて大富豪の話」と思いがちですが、実は違います。
相続税がかからない一般家庭でこそトラブルが多発しています。
理由は以下の通りです:
・「偏りやすい」自筆証書遺言の存在:
自筆証書遺言は簡単に作れる一方で、内容が偏る傾向があります。
公正証書遺言は専門家が関与するため、公平性が保たれやすい特徴があります。
・制度の拡充による利用増:
令和2年7月10日から法務局による保管制度が開始され、
自筆証書遺言の利用が広がりましたが、形式面しかチェックされないため、
内容の偏りに対するフォローがありません。
・資産規模と利用者の実態:
法務省調査では、自筆証書遺言作成希望者の6割以上が「総財産額3,000万円未満」。
一般家庭ほど利用率が高いことがわかります。
■遺留分を請求できるのは誰?
請求権があるのは、亡くなった方の「法定相続人」のうち、以下の者です:
・配偶者
・子(または代襲相続人である孫)
・直系尊属(親や祖父母)
兄弟姉妹や甥・姪には遺留分がありません。
■遺留分が侵害されたらどうなる?
請求手続きの流れは以下の通りです:
1. 相手方への「通知」
内容証明郵便で1年以内に通知する必要があります。
2. 相続人同士の「話し合い」
金額や方法を協議し、合意すれば合意書を作成します。
3. 家庭裁判所での「調停」
解決しない場合は調停を申立てます。
4. 「訴訟」
最後の手段は訴訟。長期化・費用負担が重くなります。
■トラブルを防ぐ3つのポイント
1. 遺留分を侵害しない遺言書を作成する
法定相続分と遺留分を踏まえた配分を。感情的配慮も大切です。
2. 生命保険金を戦略的に活用する
生命保険金は受取人固有の財産となるため、遺産分割対象外にできます。
非課税枠(500万円×法定相続人)も利用できます。
3. メッセージを残す(付言事項・エンディングノート)
法的効力はなくとも、気持ちを伝えることで争いの回避につながります。
最も有効なのは生前の話し合いです。
■まとめ
遺留分は、多くの家庭にとって「無関係ではない」問題です。
自筆証書遺言の普及により、より身近な課題となっています。
遺言内容の工夫、生命保険の活用、気持ちを伝える工夫などで、
円満な相続を実現することができます。
当事務所でも、状況に応じた相続対策をご提案しています。
お気軽にご相談ください。
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