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第5回 認知症が進行した場合、資産管理はどうする?

第5回 認知症が進行した場合、資産管理はどうする?

認知症が進み、意思能力が低下してしまった場合、介護費用の管理や財産保護はどのように行うべきでしょうか?この記事では、成年後見制度の活用や家庭裁判所への申立て方法など、認知症進行時の具体的な対策について解説します。


成年後見制度の基礎知識

成年後見制度には、事前に準備をする任意後見と、判断能力が低下した後に利用する法定後見の2種類があります。本記事では特に法定後見制度に焦点を当てます。任意後見については、第2回を御覧頂ければと思います。

法定後見制度とは 

法定後見制度は、認知症などの精神上の障がいにより判断能力が不十分または欠如する状態になった後に利用する制度です。事前に何の対策も取らなかった場合において、資産管理や身上監護(保護)が必要になった際のセーフティーネットの一つです。身上監護(保護)とは、後見人自身がお風呂に入れたりするわけではなく、身の回りの契約ごとを代理することです。

成年後見人は、ご本人様のことが全く分からない状況で就任することになります。最終的には裁判所の判断ですが、親族が成年後見人に就任することも可能です。ただし、総資産額が1,000万円以上の場合、裁判所は、後見監督人を外部の専門家(弁護士、司法書士)から選任することが一般的です。残念ながら、親族の後見人による横領事件が相次いでしまったため、このような運用になっています。


法定後見が必要になるケース

法定後見制度を必ずしも利用しなければならないわけではありませんが、以下のようなケースで利用されることが多いです:

  1. 資産の売却が必要な場合 父親の資産を売却することになったのだけれど、父親の認知症がだいぶ進んでしまっていて売却を理解できないというケース
  2. 銀行口座の凍結 子供が、認知症の親のキャッシュカードを利用してATMから引き出していたが、使用状況が銀行に把握され、口座が凍結された場合。

また、財産管理以外にも、施設入所や入院手続き、介護認定の申請、ケアプランの策定などの身上監護(保護)に関する業務も含まれます。実際のところは、介護医療の現場では子孫甥姪の立場で実質的に対応可能なようなので、あえて成年後見制度を利用して身上監護(保護)権を持つ人を決める必要はないと思います。

身上監護(保護)権者を決める必要がある場合とは、例えば身寄りがなくてそれらの行為をする人が誰もいない場合とか、家族内で医療介護の方針に対立がある場合です。例えば、高額でも高級な施設に入ってもらいたいという家族がいる一方で、資産が目減りするのはもったいないからリーズナブルな施設でいいんじゃないかという家族もいるかもしれません。

成年後見の申し立ての流れ

書類提出先 判断能力が低下してしまった本人を住所地を管轄する裁判所

申し立てに必要な書類 多数の書類が必要になります。

・後見開始申立書

・申立事情説明書 

→本人の状況を詳細に記載します。書面が最も記入欄が多く、大変だと感じるかもしれません。例えば、本人の生活場所入退院の予定・本人の家族関係学歴、職歴・社会生活の状況・本人の認知能力や行動について・社会との交流の程度・家族(相続人)が後見申立について考え

・親族関係図

・親族の意見書

→これらの書類で、どのような相続関係か裁判所に伝えます。また、将来的に本人が亡くなった場合、相続人は何人いて、その方たちが成年後見申立てについて賛成か反対か、また財産管理・身上監護を行っていくうえで協力を得られる親族がいるのか等を裁判所に説明する形になります。

・後見人候補者事情説明書

→後見人となる人について、詳細に報告します。家族構成はもちろんのこと、学歴・職歴・借金の有無についても詳細に記載します。

・財産目録

→成年後見人は、基本的に本人の財産全てを管理することになります。そのため、どのような財産があるのか一覧を作成します。具体的には、預貯金、株式や投資信託や国債等の有価証券、生命保険や損害保険、不動産、債権、その他負債等を詳細に記載していきます。預貯金は、具体的に〇〇銀行の〇〇支店にいくらの預金があるという詳細まで記入し、有価証券も銘柄や個数、評価額まで記入します。

・相続財産目録

→こちらは、本人が相続人となっている相続について、本人が認知症のため遺産分割ができないまま放置されている遺産がある場合に記入が必要になる書類です。

 例えば、本人(女性)の夫が既に3年前に亡くなっていて、ご本人の子供とご本人で預貯金や不動産を相続したけれども、本人が認知症のため遺産分割ができていない場合に必要になります。

・収支予定表

→収入がいくらで支出がいくらか、ということを記入する書類になります。

収入としては、厚生年金、国民年金、その他の年金、給与、賃料報酬等の項目別に、それぞれいくらもらえる予定なのかを詳細に記載していきます。

支出の記載はかなり細かく記載します。例えば

  • 生活費(食費・日用品・電気ガス水道)
  • 療養費(施設費・入院費・医療費)
  • 住居費(家賃、借地の地代)
  • 税金(固定資産税・所得税・住民税等)
  • 保険料(国民健康保険料・介護保険料・生命保険損害保険料)

このように、何にいくら支出することが予定されているかを記載していきます。

また、収入も支出も根拠となる資料の添付が必要になります。2ヶ月分必要です。

以上の書式は、以下の裁判所の公式ホームページでダウンロード可能です。


https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_01/index.html

成年後見制度のデメリット

法定後見制度を利用する際には、いくつかのデメリットがあります:

  1. 裁判所による管理 家族が成年後見人に就任した場合でも、一定の資産があると裁判所から後見監督人が選任される可能性が高いです。これは不正行為を防止するための国の方針です。
  2. 途中でやめられない 一度、法定後見を開始すると、本人が亡くなるまで継続する必要があります。不動産の売却が終わったからといって、後見を終了することはできません。
  3. 費用がかかり続ける 申立て時の初期費用に加えて、成年後見制度の利用中は毎月一定の費用がかかります。成年後見人に家族が就任した場合でも、後見監督人が外部の専門家となることがほとんどで、その費用負担が重くのしかかります。裁判所の資料によると通常の後見監督事務を行った場合の報酬(基本報酬)の額は, 管理財産額が5000万円以下の場合には月額1万円~2万円,管理財産額が500 0万円を超える場合には月額2万5000円~3万円としています。 例えば、月額2万円の場合、年間24万円、10年間で240万円もの費用が発生します。

また、法定後見制度では財産の自由な処分が基本的に認められていません。本人の利益のために必要な場合に限り売却が可能となり、場合によっては裁判所の許可が必要です。。例えば、家族みんなで旅行に行く資金を出してもらうとか、子供の教育資金を贈与してもらうとか、このようなことは一切できません。


まとめ

法定後見制度は、認知症が進行した場合の最後のセーフティーネットとして重要な役割を果たしますが、その分家族に大きな負担を与える制度でもあります。これらのデメリットを考慮すると、いかに事前の備えを行い、法定後見を利用せずに対処できるかが鍵となります。

事前に任意後見制度や家族信託の活用を検討し、認知症進行時に困らない対策を講じておくことを強くお勧めします。

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