第3回
家族信託—大切な財産を守る仕組み
本日、ご説明する生前対策は家族信託という手続きになります。信託というと投資信託のように投資とか運用的な商品をイメージされる方もいるかもしれませんが全く違います。後見と対照的なのは、裁判所は関与せず基本的には家族内で完結させることができる仕組みです。
そもそも信託とは何ですか?
信託とは、信じて財産を預けることです。簡単に言うと、自分の財産を信頼できる人に預けて、その人が約束通りに管理するようにすることを指します。これには主に3人の登場人物が関わります。以下のイラストをご覧ください。
「財産を預ける人」と「財産を預かる人」、さらに「預けられた財産から利益を受け取る人」この3人が信託の登場人物であり、信託法ではそれぞれに名前が付けられています。「財産を預ける人」は「委託者」、「財産を預かる人」は「受託者」、そして「利益を受け取る人」は「受益者」と呼ばれます。
家族信託の歴史
理解を深めるために、少し昔のお話しをします。どれくらい昔かというと中世です(笑)
信託の発祥は、戦乱が絶えない中世ヨーロッパに遡ります。当時、財産を持つ者が戦争に従事する際、信頼できる人物に財産を託して戦場へと向かったことが始まりです。
例として、Aさんのケースを挙げます。Aさんは小さい子供と奥さんと平和に暮らしていました。しかし、戦争に行かなければならなくなりました。Aさんの財産は不動産や金融資産で構成されており、奥さんや子供には管理が難しい状況でした。そこでAさんは信頼する人物Bさんに財産を委ね、その収益を家族に渡すように取り決め、戦場に赴く前にその準備を整えました。
財産を預かるBさんは、Aさんの指示に従い、財産を管理します。BさんはAさんに代わり、賃貸契約や不動産の売買などを行います。財産名義がAさんのままでは、これらの取引が円滑には行えません。
契約の都度、戦場に契約書を送りAさんのサインをもらうことは現実的ではないですよね。そのため、戦争に出発する前に、財産の名義をすべてBさんに変更しました。これにより、財産の管理と契約がスムーズに行えるようになります。
Aさんの財産を預かるBさんは、その財産を誠実に管理し運用する責任があります。財産が自分の名義になっても、勝手に使うことは許されません。Aさんの指示に従い、適切に管理し家族に利益をもたらすことが信託の本質です。
生前対策の中では、最も汎用性が高い制度になります。ただ医療でいうと先進医療のようなものなので専門家ですら適切に理解している方は多くはないというのが実情です。
この受託者に金融機関等が就任するのが商事信託で、家族や身内が就任して基本的に家族内で完結するのが家族信託と呼ばれます。
親が元気なうちから始める生前の財産管理の仕組みですが、将来財産の承継先を指定できる遺言の機能もあります。
それでは家族信託を利用した具体例を見ていきたいと思います。
家族信託のポイント
・契約ですから親の認知症が進んでいると手遅れです。ただ、信託の仕組み自体は、特定の財産の管理や処分を特定の方に任せるという非常にシンプルな仕組みです。従いまして、親がある程度弱ってしまっていても「自分がどんな財産を持っていて(=信託財産)」「その財産を誰に託すか(=受託者)」「管理や処分を任せることで何が実現できるか(=信託目的)」について概要を理解して納得できていれば、契約が可能なケースもあります。
・受託者となる子は、財産の管理処分を担当するだけです。財産は引き続き親のものであることには変わりません。→贈与税や不動産取得税は基本的にはかかりません。
家族信託を活用して老後の財産管理と生活支援の仕組みを作ることは、会社経営や家業の事業承継と同じように「まだちょっと早いかな」と思うタイミングで始めて、時間をかけて徐々に後継者を育てるという気持ちを持つことが大切ですし、任せてみる覚悟も必要だと思います。
それができれば、自分の希望や方針を伝えつつ法務・税務などの煩わしい手続きは全て後継者に任せて自分は今まで通りの生活をより気楽に楽しく過ごせるのではないでしょうか。次回は家族信託のメリットとデメリットをお伝えさせていただきます。
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