第1回
「認知症が進むとどうなる?お金と資産管理の課題を知る」
このブログをお読みくださっている皆さんの中には、老後について既に考えておられ具体的に対策を取られている方もいれば、まだ漠然とされている方、様々だと思います。人間ですので当然いつかは相続を迎えます。そして、相続の直前まで健康でいること、これは誰もが望むところではありますが、残念ながらそうとは限らないのが現実なのですね。
人生100年時代といわれますが、今日は老後にまつわるリスクのご説明とその対応策のお話しをしていきたいと思います。
高齢化社会が示す現実
令和6年6月21日、内閣府から令和6年版の高齢社会白書が公表されました。
この白書は、高齢化の状況や政府が講じた高齢社会対策の実施の状況等について明らかにしているものです。
今回の白書で報告されている高齢化の状況は、次のとおりです。
・我が国の総人口は、令和5年10月1日現在、1億2,435万人です。
・65歳以上人口は、3,623万人で総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は「29.1%」。ちなみに24年前の2000年当時の高齢化率は17.2%です。
・令和52(2070)年には、2.6人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上になっていると推計。つまり38.4%です。急速に進んできています。
老後に潜む「資産凍結」のリスク
このような状況で、老後には、大きなリスクが潜んでいます。それは「資産凍結」というリスクです。言い換えると「認知症などになって、自分の財産が使えなくなってしまう」というリスクです。
平均寿命と健康寿命の差の統計表
健康寿命というのは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を表します。平均寿命と健康寿命の年齢の差部分は、誰かのお世話にならないといけない年数を表しています。男性で8.96年、女性で12.36年つまり人生の後半10年間は誰かの介助が必要になるというのが現実なのです。相続の直前まで健康でいること、これは誰もが望むところではありますが、残念ながら必ずしもそうとは限らないのが現実ということがこちらの資料からお分かりいただけると思います。
次に認知症の有病率について見ていきます。
横軸は年齢層を、縦軸は認知症の有病率を表しています。例えば、80歳から84歳の年齢層の場合、男性の認知症の有病率は16.8%、女性は24.2%になります。特に80歳代以降、認知症の発症リスクが急激に高まることがわかります。あくまで統計上のお話しです。
では認知症になった場合、どんな不自由が出てくるのでしょうか。
判断能力低下による法的行為の制限
民法という法律上、認知症を発症して判断能力が低下してしまうと法律行為が制限されてしまう可能性があります。
例えば
・不動産を売却したり、賃貸不動産のオーナーさんであれば大規模修繕が難しくなったり、銀行から多額のお金を引き出すことも難しくなります。賃貸不動産をお持ちでなかったとしても、例えば自宅を所有されていて、将来自分たちが高齢になって自宅に住むことが難しくなったきた場合にはどこか施設に入ることを考えているというケース。結構多いんじゃないかなと思いますが、その時にその自宅は、売却するとか賃貸に出して施設の費用に当てたい。このようなことも認知症になってしまうと難しくなります。つまり活用できる資産があったとしても使えなくなってしまいます。
・相続税対策をとっていくこともできなくなります。相続税対策として生命保険に加入するとか、アパートを建築して資産を圧縮するとかそのようなこともできません。
・また金融資産も凍結されてしまいますので基本的には、口座も凍結されてしまいます。基本的にと申し上げたのは、引き出す方法がないわけではないんですね。既に介護されているご家庭ではやってらっしゃる方もいるかもしれません。親の口座からキャッシュカードで引き出すという方法ですね。これは法的に正しいことなのですか?と聞かれると非常に難しいですね。私が司法書士ではなくて皆さんと同じ立場だったらやると思います。いややるかもしれませんくらいにしておきます。法的にはこの行為は無権代理という行為になり正しい行為ではないですね。民法上はアウトすれすれですが、ただ刑事罰の対象ではないです。
ただキャッシュカードというのは一定確率で磁気不良を起こすのですね。再発行手続きには本人確認が必須で、認知症が銀行にばれてしまうと凍結です。
また銀行によっては代理人届というものがあります。代理人届とは、銀行に予め代理人として親族を届けておくもので、代理人が預金の入出金や振込等一部の取引ができるようになります。ただ、この代理人届も、本人の意思確認が困難な場合には利用することができず、何かのタイミングで本人の判断能力低下が銀行に把握されてしまうと取引を継続することができなくなる可能性があります。
キャッシュカードも代理人登録もどちらも、ある日突然使えなくなるというリスクがあるということを知っておいて頂きたいと思います。
長生きの喜びと背中合わせのリスク
長生きをされるということは本当に喜ばしいことなのですが、このようなリスクをはらんでいることは事実です。それに伴い生活費や介護費、入院費も確保しなければなりません。いつお迎えが来るかということは誰にも分からないので、その費用がどれだけ必要になるか、予測することが難しくなっています。
ここで認知症になってしまうとどれくらいのお金がかかってくるのか?ということを見ていきたいと思います。
認知症になってしまった場合の、医療費と介護費の目安について
どこで介護するかによって費用は変わりますが、いくつか例をあげます。
大体の方は、親も子も自分の財産は自分のために使いたいと思っていると思います。そうした場合、 認知症で自分の意思でお金が使えなくなったときに、 自分の意思に沿った形で誰がサポートしてくれるかということは非常に重要な問題です。支える側の子供にとってみても、親の資産状況というのは何か触れてはいけないような感覚になっている方もいると思います。
けれでも先ほどの資料のようなお金が現実としてかかってくる未来があります。
そうであれば、 自分が元気なうちに老後の希望と資産をできるだけ家族(子だけでなく孫の代まで)にオープンにして、 老後の生活設計の収支シミュレーションを踏まえた財産管理の仕組みを構築する必要があります。お元気な時にこの仕組みを整えておく、これが非常に大切です。
家族全員で支える仕組みづくりの重要性
シミュレーションの結果、毎月の収入だけでは赤字になるのであれば、資産の売却を検討する必要もありますし、売却できる資産がないのであれば子の援助や公的な支援も模索していかなければなりません。
そのため、 家族一人の負担に頼るのではなく、 家族全員が結束して長生きを応援することが理想です。老後のリスクに備えるために、本人はもちろん家族の負担も軽減できる仕組みを作ることが大事だと考えます。
具体的な対策:「任意後見」と「家族信託」
ここまでで、認知症や要介護に事前に備えておかないと困ったことになるかもしれないということはお分かり頂けたかと思います。そしてお元気な間に財産を管理する仕組みを作っておくことが大事ということもお話ししました。では次回以降は、その事前の対策として具体的には、どんなことができるのか?についてお話ししていきたいと思います。ご紹介するのは「任意後見」という手続きと「家族信託」という手続きになります。はじめに任意後見からです。
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