はじめに:時代の変化とともに変わる「相続の悩み」

「通帳が見当たらない」「実家の名義が亡くなった祖父のままになっている……」 最近、このようなご相談をいただくことが増えてきました。

一昔前であれば、遺品整理といえばタンスの引き出しや金庫を確認すれば、ある程度の財産は把握できたものです。しかし、現代の相続は少し様子が違います。

お手元のスマートフォン一つで銀行振込ができ、通帳を発行しない「ネット銀行」が当たり前になりました。また、法律の改正によって、これまで「いつかやればいい」と後回しにされがちだった不動産の名義変更(相続登記)にも、明確な期限とルールが設けられました。

「何から手を付ければいいのか分からない」「知らないうちに損をしたり、家族に迷惑をかけたりしたくない」 そんな漠然とした不安を抱えているあなたへ。今回は、今、知っておくべき「令和の相続の新常識」を、専門家の視点で分かりやすく紐解いていきます。

1.気づかないうちに増えている「デジタル遺品」の落とし穴

最近よく耳にする「デジタル遺品」という言葉。これは、亡くなった方が遺したスマートフォンやパソコンの中に保存されたデータや、インターネット上のサービスのアカウントを指します。

特に注意が必要なのが、以下の「目に見えない財産」です。

・ネット銀行や証券口座(通帳や郵送物がないため、家族が気づけない) ・電子マネーやポイント(残高があっても、スマホのロックが解除できないと確認困難) ・サブスクリプション(月額制の動画配信や音楽サービス。解約しない限り月会費が発生し続ける)

もし、ご家族がこれらの存在を知らないまま放置してしまうと、せっかくの資産を受け取れなかったり、使っていないサービスの料金が口座から引き落とされ続けたりといったトラブルを招くことになります。

2.家族が困らないために今すぐできる「デジタル整理術」

「デジタル遺品」の対策と聞くと、難しく感じるかもしれません。ですが、最も大切なのは「家族に存在を知らせる」という、とてもシンプルな一歩です。

まずは以下の2点を、無理のない範囲で進めてみませんか?

・財産の「所在」をメモに残す 「〇〇銀行のネット専用口座がある」「〇〇証券で株を運用している」といった金融機関名だけでも、メモやエンディングノートに書き留めておきましょう。これだけで、ご家族の負担は劇的に減ります。

・スペアキーとしてのパスワード管理 スマートフォンのロック解除番号や、メインで使用しているメールアドレスのパスワードは、いざという時に信頼できる家族だけが確認できる場所に保管しておきましょう。最近では、自分が亡くなった後に特定の相手へデータを引き継げる「デジタル遺言」のようなスマホ機能(iPhoneの「故人アカウント連絡先」など)もありますので、これらを活用するのも一つの手です。

完璧を目指す必要はありません。「自分がもし明日入院したら、家族は困らないかな?」という視点で、少しずつ整理を始めてみましょう。

3.【重要】令和6年4月から「相続登記」が義務化されました

これまでは、亡くなった方の名義のまま不動産(土地や建物)を放置していても、法律上の罰則はありませんでした。しかし、令和6年4月1日から「相続登記の義務化」がスタートし、ルールが大きく変わりました。

新しいルールでは、不動産を相続したことを知った日から「3年以内」に名義変更の手続きを行わなければなりません。

「実家は誰も住まないし、そのままでもいいだろう」 そう思って正当な理由なく放置してしまうと、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)を科せられる可能性があります。

「昔から放置している物件があるけれど、どうすればいい?」と心配される方もいらっしゃるでしょう。実は、この義務化は「制度が始まる前に亡くなった方の不動産」にも適用されます。心当たりがある場合は、早めに専門家へ相談し、現状を確認しておくことをお勧めします。

4.「負動産」にしないために。実家の名義変更をスムーズに進めるコツ

名義変更を後回しにする最大のリスクは、罰金(過料)だけではありません。時間が経てば経つほど、本来の相続人が亡くなり、その子供たちへと「相続権」が枝分かれしてしまいます。

これを「数珠つなぎ相続」と呼んだりしますが、いざ売却しようと思った時には、面識のない遠い親戚数十人のハンコが必要になる……というケースも珍しくありません。

もし「管理が大変で、どうしても引き取り手がいない土地」がある場合は、新しく始まった「相続土地国庫帰属制度」という選択肢もあります。一定の審査や負担金は必要ですが、国に土地を返すことができる画期的な制度です。

「負の遺産」を次の世代に残さないためにも、今のうちに名義を整え、出口戦略を立てておくことが大切です。

おわりに:その「気がかり」、一つずつ紐解いていきましょう

デジタル遺品に、義務化された相続登記。 「やらなければならないこと」が山積みのように感じて、ため息が出てしまうかもしれません。

でも、ご安心ください。「何から手を付ければいいか分からない」と悩むのは、あなたがご家族のことを真剣に想っている証拠です。

私たちは、法律の知識を使って、複雑に絡まった「手続きの糸」を皆さまと一緒に解きほぐす専門家です。

まずは今の状況を、誰かに話してみる。それだけで、今夜の不安が少しだけ軽くなるはずです。当事務所では、初回のご相談を無料でお受けしております。

「こんな小さなこと、聞いてもいいのかな?」 そう思われることこそ、ぜひお話しください。あなたの「これから」を、一緒に整えていきましょう。

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