住宅ローン完済!自分でできる「抵当権抹消登記」のやり方をゼロから徹底解説【第3回・実践編】

第2回では、登記情報の確認方法・必要書類の準備・申請前の落とし穴チェックをお伝えしました。

いよいよ最終回です。「登記申請書の書き方」から「法務局への提出」「完了後の確認」まで、実際の手順をステップごとに解説します。法務省が公開している公式ガイド(令和6年4月版)をもとに、正確な情報をお届けします。

ステップ④:いざ実践!登記申請書を書いてみよう

申請書のフォーマットは法務局のHPでダウンロード

登記申請書は、法務局ホームページの「不動産登記の申請書様式について」のページから様式をダウンロードして作成できます。

📌 法務局ホームページ「不動産登記の申請書様式について」
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html

申請書作成の注意事項

申請書を作成する前に、以下の注意事項を確認してください。

  • 用紙はA4・縦置き・横書き・片面印刷で作成します。紙質は長期間保存できる丈夫なもの(上質紙等)を使用してください。
  • 文字はパソコン(またはワープロ)で入力するか、黒色インク・黒色ボールペンではっきりと記載してください。消せるインクや鉛筆は使用できません。
  • 申請書が複数枚になる場合は、各用紙のつづり目に契印(割印)をします。申請人または代理人が行います(申請人が2人以上の場合はそのうちの1人で可)。

【項目別】登記申請書の具体的な書き方

登記申請書の各項目の記載内容を順番に説明します。

登記の目的
登記の目的  抵当権抹消(順位番号後記のとおり)

「抵当権抹消(順位番号後記のとおり)」と記載します。順位番号を使わない場合は「抵当権抹消(抹消する抵当権の登記 平成○○年○月○日受付第○○○号)」と記載することもできます。

原因
原  因  令和○年○月○日解除(または「弁済」等)

抵当権が消滅した日とその原因を記載します。金融機関等から受け取った「解除証書」「弁済証書」等の内容を確認しながら記載してください。

権利者(抵当権設定者=不動産の所有者)

権利者(抵当権設定者=不動産の所有者)の住所および氏名を記載します。ご夫婦など複数人で所有されている場合は全員分を記載します。

⚠ 重要:この住所・氏名は不動産登記簿上の現在の所有者の住所・氏名と一致している必要があります。引っ越し等で住所が変わっているのに変更登記がされていない場合は、抵当権抹消の前に別途「住所変更登記」が必要になります。

義務者(抵当権者=金融機関等)

抵当権者である金融機関等の住所・名称・会社法人等番号・代表者の氏名を記載します。

⚠ 注意:金融機関等から受け取った「解除証書」「弁済証書」「委任状」に記載されている住所・名称が、不動産登記簿上の住所・名称と一致していない場合は、別途その変更の経緯が分かる書類(当該金融機関等の商業登記簿謄本等)が必要となることがあります。

添付情報

以下の4点を記載します。

  • 「登記識別情報」または「登記済証」(受け取ったものに合わせて記載)
  • 「登記原因証明情報」(解除証書・弁済証書等がこれにあたる)
  • 「会社法人等番号」(義務者欄で記載済みのため、ここでは名称のみ記載)
  • 「代理権限証明情報」(金融機関等からの委任状のこと)
申請年月日・申請先の法務局

① 登記の申請をする年月日を記載します。② 申請先の法務局(登記所)を記載します。登記の申請は、申請する不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に対して行う必要があります。

申請人兼義務者代理人

抵当権者(金融機関等)から登記申請の委任を受けた申請人(不動産の所有者)の住所・氏名を記載し、「印」の箇所に押印します(認印で可)。この住所・氏名の記載は「権利者」欄の記載と一致している必要があります。

また、提出書類に不備があった場合に法務局から連絡が来るため、平日の日中に連絡を受けることができる電話番号(携帯電話等)を記載してください。

登録免許税
登録免許税  金○,000円

登録免許税額は、不動産(土地または建物)1物件につき1,000円です。土地1物件と建物1物件の合計2物件であれば2,000円となります。

不動産の表示

登記の申請をする不動産の表示を、登記事項証明書等に記載されているとおりに正確に記載します。不動産番号(13桁の番号)を記載した場合は、土地の所在・地番・地目・地積の記載、建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積の記載を省略できます。

また、抹消する抵当権の登記の順位番号を記載します。この順位番号は登記事項証明書等で確認できます。

📌 不動産番号の記載は任意です。不動産番号が分からない場合は記載不要です。

書類の綴じ方と契印(割印)の正しい押し方

申請書が完成したら、以下の手順で書類をまとめます。

  • 登記申請書と収入印紙貼付台紙を重ね合わせ、左側の余白で2か所ホチキスどめします。
  • 添付書類(添付情報)は、ホチキスどめした「登記申請書+収入印紙貼付台紙」の後に、クリップどめなどしてください(ホチキスどめはしない)。
  • 申請書が複数枚にわたる場合は、各用紙のつづり目(ページの境目)に契印(割印)をします。登記申請書の最後のページまで同じように契印します。
⚠ 添付書面の原本還付(返還)請求について

「解除証書」「弁済証書」等の添付書面の原本を手元に残したい場合は、原本の還付(返還)を請求することができます。その場合は、還付を請求する添付書面のコピーを作成し、コピーに「原本に相違ありません」と記載の上、登記申請書に押印した申請人がコピーに署名(記名)押印したものを、登記申請書に添付して原本と一緒に提出してください。

ステップ⑤:管轄の法務局へ提出しよう

提出先はどこでもいいわけじゃない!「管轄の法務局」の調べ方

登記申請は、申請する不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に対して行う必要があります。最寄りの法務局なら何でもよいわけではありませんので注意してください。

📌 管轄法務局の調べ方
法務局ホームページ「管轄のご案内」
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html

📌 法務局での登記手続案内は予約制です。予約の申込み方法等については各法務局のホームページでご案内しています。
法務局ホームページ「各法務局のホームページ」
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kakukyoku_index.html

申請方法は「窓口持参」と「郵送」の2パターン

窓口持参

作成した登記申請書と添付書面を直接窓口に持参します。初めての方には窓口持参がおすすめです。不明な点をその場で確認できます。

郵送

封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載し、書留郵便で送付します。返信用封筒と郵便切手(書留郵便料分)も同封してください。

📌 オンライン申請も可能です
法務局ホームページ「住宅ローン等を完済した(抵当権抹消の登記をオンライン申請したい方)」
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/fudosan_online02.html

登録免許税の支払い方(収入印紙の貼り方)

登録免許税額分の収入印紙を登記申請書と併せて提出(納付)します。郵便局やコンビニで購入できます。

⚠ 収入印紙の貼り方に注意!
  • 収入印紙は登記申請書に直接貼り付けるのではなく、別の白紙(台紙)に貼り付けます。
  • 台紙を登記申請書とともにつづり(ホチキスどめ)し、登記申請書と台紙との間に契印(割印)をします。
  • 収入印紙そのものには押印をしないでください。

登記識別情報の提出方法(重要)

抵当権者(金融機関等)の登記識別情報を提出する際は、以下の方法で行います。

  • 登記識別情報を記載した書面(登記識別情報通知書のコピーでも可)を封筒に入れ、封をして提出します。
  • 封筒には抵当権者(金融機関等)の名称および登記の目的(「抵当権抹消」)を記載し、登記識別情報を記載した書面が在中する旨を明記してください。
  • 登記識別情報を記載した書面は、登記完了後も返却されません。

ステップ⑥:無事に完了!その後の確認作業

法務局から受け取る完了書類について

法務局(登記所)での登記が完了すると、「登記完了証」が交付されます。これを受領することで全ての手続が完了します。

窓口で受領する場合

登記申請書に押印したものと同じ印鑑を持参してください。

郵送で受領する場合

宛名を記載した返信用封筒書留郵便料分の郵便切手を登記申請書とともに提出してください。

最後に「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取って正しく抹消されたか確認しよう

登記完了後、念のため「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得して、抵当権の記録に下線が引かれ、正しく抹消されているかを確認することをおすすめします。登記事項証明書は法務局の窓口のほか、オンライン(登記・供託オンライン申請システム)でも取得できます。

📌 抹消が完了した状態の見え方
登記事項証明書の抵当権に関する記録部分に下線が引かれていれば、抹消登記が正しく完了しています。

登記申請書提出前のチェックリスト

法務局に提出する前に、以下の項目を全て確認してください。(法務省公式チェックリストより)

  • 登記申請書に申請人の押印を忘れていませんか?
  • 登記申請書に連絡先の電話番号の記載を忘れていませんか?
  • 登記申請書と収入印紙貼付台紙とを重ね合わせてホチキスどめ(左側の余白に2か所)していますか?
  • 登記申請書と収入印紙貼付台紙との間にする契印を忘れていませんか?
  • 登記申請書が複数枚にわたる場合、各用紙のつづり目にする契印を忘れていませんか?
  • 登録免許税の納付(収入印紙の貼付)を忘れていませんか?
  • 添付書面(解除証書・弁済証書・委任状)に日付等の記載漏れはありませんか?
  • 添付書面の添付を忘れていませんか?
  • 申請先の法務局(登記所)に誤りはありませんか?
  • 登記完了書類を郵送により受領する場合に、宛名を記載した返信用封筒と郵便切手(書留郵便料分)の提出を忘れていませんか?
  • 添付書面の原本の還付(返還)を希望する場合に、その請求手続を忘れていませんか?

まとめ:手順に沿って進めれば、自分でも確実にできる!

3回にわたって抵当権抹消登記の手順を解説してきました。改めて全体の流れを振り返りましょう。

登記情報の確認

登記情報提供サービスで現在の登記内容を確認する

必要書類の準備と落とし穴チェック

銀行から届いた書類を確認・整理し、住所・氏名・銀行名の不一致がないかチェックする

登記申請書の作成

法務局HPから様式をダウンロードし、各項目を正確に記入する

登録免許税の準備

不動産1物件につき1,000円分の収入印紙を購入する

管轄法務局へ提出

窓口持参または郵送で申請する(初心者には窓口持参がおすすめ)

登記完了の確認

登記完了証を受領し、登記事項証明書で抹消を確認する

自分でやってみたが不安になった方へ

「途中まで進めたが、住所が変わっていることに気づいた」「銀行名が合併で変わっていた」「書類の記載内容が登記簿と一致しない」——そんなケースは、途中から司法書士に引き継ぐことも可能です。

無理に進めて申請が却下されてしまうよりも、早めにご相談いただくことで、スムーズに解決できることがほとんどです。

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連載:自分でできる「抵当権抹消登記」完全ガイド
  1. 第1回|知識編:抵当権抹消登記の基本と、自分でやるかの判断
  2. 第2回|準備編:登記情報の確認・必要書類の準備・落とし穴チェック
  3. 第3回|実践編:申請書の書き方・法務局への提出・完了確認(この記事)

住宅ローン完済!自分でできる「抵当権抹消登記」のやり方をゼロから徹底解説【第2回・準備編】

第1回では、抵当権抹消登記の基本知識と「自分でやるか・司法書士に頼むか」の判断基準をお伝えしました。

今回はいよいよ実際の準備に入ります。「何を確認して、何を揃えればいいのか」を順番に解説します。また、「銀行からの書類をなくしてしまった!」という方向けの対処法も紹介します。

ステップ①:まずは対象不動産の「登記情報」を確認しよう!

登記申請の第一歩は、現在の正確な情報を把握すること

抵当権抹消登記の申請書を作成するには、対象となる不動産の正確な情報が必要です。具体的には以下の内容を確認します。

  • 不動産の所在・地番・家屋番号(住所とは異なる場合があります)
  • 現在の登記名義人(所有者)の氏名・住所
  • 登記簿に記録されている抵当権の内容(債権者名・受付番号など)

これらの情報は、登記申請書に正確に記載する必要があります。記憶や古い書類だけで判断せず、必ず最新の登記情報を確認しましょう。

法務局に行かなくてもOK!自宅から確認できる「登記情報提供サービス」

登記情報を確認する方法はいくつかありますが、一番手軽なのが「登記情報提供サービス」(https://www1.touki.or.jp/)というオンラインサービスです。法務省が運営する公式サービスで、自宅のパソコンから24時間確認できます。

📌 登記情報提供サービスの特徴

  • 法務局の窓口に行かずに、自宅から確認できる
  • 土地・建物それぞれ330円(税込)で閲覧可能
  • クレジットカードで即時支払いができる
  • ただし、取得できるのは「PDFの閲覧データ」のみ(公的な証明書とはならない)

クレジットカードですぐに見られる「一時利用」の使い方

登記情報提供サービスは、利用者登録をしなくても「一時利用」として使えます。手順は以下のとおりです。

1
サイトにアクセスし「一時利用」を選択

トップページの「一時利用の方はこちら」をクリックします。利用者登録は不要です。

2
不動産の種類と所在地を入力

「土地」または「建物」を選び、都道府県・市区町村・地番(または家屋番号)を入力して検索します。

3
クレジットカードで支払い

1件330円をクレジットカードで支払います。土地と建物が別々の場合は2件分(660円)かかります。

4
PDFを確認・印刷して情報をメモする

表示されたPDFに「所在・地番」「抵当権の受付番号」などが記載されています。申請書作成に使うので印刷またはメモしておきましょう。

⚠ 「登記情報提供サービス」で取得したPDFは証明書ではありません

あくまで「情報確認用」の閲覧データです。登記申請の添付書類としては使えません。公的な証明書が必要な場合は、法務局の窓口またはオンライン申請で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得してください(600円程度)。

ステップ②:銀行からの書類など、必要書類を準備しよう

銀行(金融機関)から送られてくる書類一覧

住宅ローン完済後、銀行から書類が郵送されてきます。封筒の中に入っているのは主に以下の3種類です。

書類①
登記原因証明情報

「解除証書」「弁済証書」「放棄証書」などとも呼ばれます。「ローンが完済されたので抵当権を解除します」という内容が書かれた書類です。抹消登記に必ず必要な最重要書類です。

必須
書類②
登記済証 または 登記識別情報通知

抵当権を設定したときに法務局から銀行に交付されたものです。古い書類の場合は「登記済証(朱色の印のある書類)」、平成17年以降は「登記識別情報通知(12桁の英数字が記載された書類)」の形式です。

必須
書類③
銀行の委任状

「あなた(所有者)が代わりに抹消登記の手続きをしてよい」と銀行が委任する書類です。抵当権者(銀行)の代わりに申請するために必要です。有効期限が設けられている場合があるので必ず確認してください。

必須

自分で用意しなければならない書類

銀行からの書類に加えて、自分で準備するものもあります。

  • 登記申請書(法務局のホームページからダウンロード・自分で作成)
  • 登録免許税分の収入印紙(不動産1個につき1,000円・郵便局やコンビニで購入可能)
  • 返信用封筒(郵送で申請する場合・完了書類の返送に使用)
⚠ 銀行からの書類には「有効期限」があるものも!

特に「委任状」は、銀行によって有効期限(3ヶ月〜1年程度)が設定されていることがあります。書類が届いたら、まず有効期限を確認し、期限内に手続きを完了させましょう。期限が切れてしまった場合は銀行に再発行を依頼する必要があります。

【重要】銀行からの書類を紛失した場合はどうする?

「完済後に書類が届いたけど、どこかにしまい込んで見つからない」というご相談は非常に多いです。書類の種類によって対応が異なります。

登記原因証明情報・委任状を紛失した場合

銀行に連絡して再発行を依頼してください。多くの銀行では再発行に応じてもらえますが、手数料がかかる場合があります。また再発行に数週間かかることもあるため、早めに連絡することが大切です。

登記済証・登記識別情報を紛失した場合

こちらは再発行ができません。ただし、紛失していても登記申請は可能です。「事前通知制度」または「資格者代理人による本人確認情報の提供」という方法で代替できます。ただし手続きが複雑になるため、この場合は司法書士への相談をおすすめします。

💡 まず銀行に電話を 書類が見つからない場合は、まず完済した銀行のローン担当窓口に電話してみましょう。どの書類が必要で、再発行できるかどうかをその場で確認できます。

ステップ③:要注意!申請前の落とし穴チェック

書類が揃ったからといって、すぐに申請できるとは限りません。申請前に必ず以下の2点を確認してください。見落とすと申請が却下されてしまう重要なポイントです。

落とし穴①:あなたの住所・氏名は登記簿と一致していますか?

登記情報提供サービスで確認した登記簿の「所有者の住所・氏名」と、現在のあなたの住所・氏名を照らし合わせてください。

⚠ 引っ越し・結婚などで変わっている場合は要注意!

ローンを組んだときから住所や氏名が変わっている場合、抵当権抹消登記の前提として「所有権登記名義人の住所・氏名変更登記」が必要になります。

この変更登記を先に行わないと、抵当権抹消の申請が受け付けられません。変更登記は別途申請が必要で、住民票や戸籍謄本などの書類も追加で必要になります。

📌 確認方法 登記情報提供サービスで取得したPDFの「所有者」欄の住所・氏名と、現在の住民票の住所・氏名を比較してください。一字一句同じであればOKです。

落とし穴②:銀行の社名・住所が変わっていませんか?

次に、登記簿に記録されている「抵当権者(銀行)の名称・住所」と、現在の銀行の名称・住所を確認します。

⚠ 銀行が合併・社名変更している場合は複雑な手続きが必要に!

たとえば、ローンを借りた当時の銀行名が合併などで変わっている場合、登記簿上の抵当権者名と現在の銀行名が異なります。この場合、抵当権抹消登記の前提として「抵当権移転登記」や「抵当権者の名称・住所変更登記」が必要になることがあります。

この手続きは一般の方には難易度が高いため、このケースに該当する場合は無理をせず司法書士へのご相談をおすすめします。

📌 よくある例 「〇〇銀行」が「△△銀行」に合併・統合されたケースや、銀行の本店所在地が移転しているケースがこれに当てはまります。銀行から届いた書類の名称と、登記簿上の抵当権者名を必ず照合してください。

次回予告:実践編

第2回では、登記情報の確認方法・必要書類の準備・申請前の落とし穴チェックをお伝えしました。

次回の第3回「実践編」では、いよいよ登記申請書の具体的な書き方から、法務局への提出方法、完了後の確認作業まで、実際の手順をステップごとに解説します。

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連載:自分でできる「抵当権抹消登記」完全ガイド
  1. 第1回|知識編:抵当権抹消登記の基本と、自分でやるかの判断
  2. 第2回|準備編:登記情報の確認・必要書類の準備・落とし穴チェック(この記事)
  3. 第3回|実践編:申請書の書き方・法務局への提出・完了確認

住宅ローン完済!自分でできる「抵当権抹消登記」のやり方をゼロから徹底解説【第1回・知識編】

住宅ローンをようやく完済!長年の努力が実を結んだ瞬間ですね。おめでとうございます。

ところで、完済後に銀行から書類が届いていませんか?実は、住宅ローンを完済しただけでは、家の登記簿に記録された「抵当権」は自動的に消えません。

この記事では、抵当権抹消登記とは何か、放置するとどうなるか、そして自分でやるべきか司法書士に頼むべきかを、わかりやすく解説します。

1. 抵当権抹消登記って何?なぜ必要なの?

住宅ローンを完済しても、抵当権は勝手には消えません!

住宅ローンを借りるとき、銀行は万が一返済できなくなった場合に備えて、あなたの家に「抵当権」を設定します。これは「もし返済できなくなったら、この家を売って回収しますよ」という権利です。

ローンを完済すれば、銀行はもうその権利を持つ必要はありません。しかし、完済しただけでは登記簿の記録は変わりません。登記簿上に抵当権が残ったままになるため、「抵当権抹消登記」という手続きを自分で行う必要があります。

📌 登記簿とは? 不動産の権利関係を記録した公の帳簿です。誰でも内容を確認できるため、売買や借り入れの際に必ず確認されます。登記簿に抵当権が残っていると、第三者から見て「まだローンが残っている家」のように見えてしまいます。

そのまま放置するとどうなる?4つのリスク

「いつかやればいいか」と後回しにしている方も多いですが、放置には具体的なリスクがあります。

リスク 1
家を売却できない

不動産を売るときは、抵当権を抹消してからでないと買主に引き渡せません。いざ売ろうとしたときに慌てることになります。

リスク 2
新たな借り入れができない

リフォームローンや事業用の融資など、家を担保に新たなローンを組もうとしても、古い抵当権が残っていると手続きが複雑になります。

リスク 3
相続時に家族が困る

将来、お子さんやご家族が家を相続するとき、古い抵当権が残っていると手続きが複雑になります。書類も年月とともに紛失しやすくなります。

リスク 4
書類の有効期限が切れる

銀行から送られてくる抹消用の書類には、有効期限があるものもあります。放置しているうちに使えなくなることも。

手続きに期限はあるの?いつまでにやるべきか

抵当権抹消登記に法律上の期限はありません。しかし、上記のリスクを考えると、銀行から書類が届いたら、できるだけ早めに手続きするのがベストです。

特に注意したいのが、銀行から送られてくる書類の有効期限です。銀行によっては「委任状」などの書類に有効期限を設けているケースがあります。届いた書類を確認し、期限が迫っているものがある場合は優先して手続きを進めましょう。

⚠ 書類を受け取ったら、まず有効期限を確認!

銀行から届いた書類をそのまま引き出しにしまってしまう方がとても多いです。届いたらすぐに中身を確認し、有効期限があるものはカレンダーにメモしておきましょう。期限が切れてしまった場合は、銀行に再発行を依頼する必要があり、手間が増えます。

2. 自分でやる?司法書士に頼む?メリット・デメリット

費用の比較

抵当権抹消登記は、自分でやる場合と司法書士に依頼する場合で、費用に大きな違いがあります。

自分で手続き 司法書士に依頼
登録免許税 不動産1個につき1,000円
(例:土地+建物=2,000円)
同じ
登記情報確認 約330円〜(オンライン) 司法書士が手配
司法書士報酬 不要 1〜2万円程度が目安
手間・時間 かかる
書類準備・法務局への足が必要
少ない
書類を渡せばあとはおまかせ
向いている人 シンプルなケース・費用を抑えたい方 複雑なケース・時間をかけたくない方

自分で手続きをすれば、実費(登録免許税など)だけで済むため、費用を大幅に抑えられます。シンプルなケースであれば、この記事の手順に沿って進めれば、初めての方でも十分に対応できます。

こんな場合は司法書士に任せた方が安心

次のいずれかに当てはまる場合は、無理に自分でやろうとせず、司法書士への相談をおすすめします。後の連載でも詳しく解説しますが、手続きが複雑になるケースがあるためです。

  • 完済後に引っ越しや結婚で住所・氏名が変わっている(前提として別の登記が必要になります)
  • ローンを借りた銀行が合併・社名変更・住所変更をしている(「抵当権移転登記」が必要になる場合があります)
  • 銀行から受け取った書類を紛失してしまった
  • 土地や建物が複数ある・権利関係が複雑
  • 手続きに時間をかけられない(売却や引き渡しの期限が迫っているなど)

💡 迷ったら相談だけでもOK 「自分でできそうか」を判断するだけでも、司法書士に相談する価値があります。TOKITOでは初回相談を無料で承っています。「自分でやってみたいが、まず状況だけ聞いてほしい」という方もお気軽にどうぞ。

次回予告:準備編

第1回では、抵当権抹消登記の基本的な知識と、自分でやるか司法書士に頼むかの判断基準をお伝えしました。

次回の第2回「準備編」では、実際に手続きを進めるための準備について解説します。登記情報の確認方法、銀行から届く書類の内容、そして「書類を紛失してしまった場合」の対処法まで、具体的に説明します。

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連載:自分でできる「抵当権抹消登記」完全ガイド
  1. 第1回|知識編:抵当権抹消登記の基本と、自分でやるかの判断(この記事)
  2. 第2回|準備編:登記情報の確認・必要書類の準備・落とし穴チェック
  3. 第3回|実践編:申請書の書き方・法務局への提出・完了確認

第59回 【完全保存版】司法書士が教える「自分でやる相続登記」全手順!ぶっちゃけ有料級のノウハウを全公開

こんにちは、司法書士の時任です。 「相続登記を自分でやりたいけれど、何だか難しそう……」と不安に思っていませんか? 今回は「詳しく丁寧に」をモットーに、一般の方でも迷わず完結できるよう、プロが現場で使っているノウハウを惜しみなく公開します。 読み終える頃には、あなたも自信を持って法務局へ向かえるはずです!

今回のケースは、亡くなられた方(被相続人)をAさん、法定相続人をBさん、Cさん、Dさんとして進めていきましょう。相続登記には全部で6つのステップがあります。順に解説していきます。

【ステップ1】書類を集める

まずは、手続きに必要な書類(A~D)を市役所等で取得します。

A:被相続人の生まれてから亡くなるまでの除籍謄本

    新制度の活用: 2024年3月より、全国どこの市区町村窓口でも、他の市区町村の戸籍を請求できるようになりました(広域交付制度)。これにより、本籍地がバラバラでも、最寄りの役所一箇所でまとめて取得することが可能です。

    本籍地が不明な場合: 従来通り、被相続人の最後の住所地で「本籍地記載」の住民票の除票を取得すれば確認できます 。

    注意点

    • 窓口での相談がおすすめ: 兄弟姉妹が相続人となるケースや、非常に古い戸籍(明治・大正時代など)が含まれる場合、またコンピュータ化されていない一部の戸籍については、広域交付では発行できない(各本籍地へ請求が必要な)ケースがあります。まずは窓口で「相続登記に使うため、出生から死亡まで揃えたい」と相談することをお勧めします。
    • 本籍地が不明な場合: 被相続人の最後の住所地の役所で「本籍地を記載した住民票の除票」を取得すれば、正確な本籍地を確認できます 。
    • 窓口での注意:広域交付を利用する場合、「本人が窓口に行くこと(郵送不可)」および「顔写真付きの身分証明書(マイナンバーカードや免許証)」が必須となります。また、発行に時間がかかる場合があるため、時間に余裕を持って行くといいと思います。

    B:最新年度の課税明細書または評価証明書 課税明細書とは、毎年4月頃に市役所から送られてくる固定資産税の納税通知書に同封されている書類です。ここには不動産の評価額が載っており、この評価額が後の登記申請書作成で必要になります。非課税で評価額の記載がない場合は、市役所で評価証明書を発行してもらいましょう。なお、毎年4月1日で年度が切り替わるため、常に最新年度のものを用意するよう注意してください(例:令和6年3月31日までに申請する場合は、令和5年度の書類が必要です)。

    C:被相続人の戸籍の附票 住所の履歴が一覧で記載されている書類で、戸籍と同じく本籍地の市役所で取れます。住所の移動を繰り返している場合、住民票の除票では記載が足りないことがあるため、戸籍の附票を取得する方がお勧めです。

    D:相続人の方々の書類 配偶者やお子さんたちの戸籍謄本、印鑑証明書、そして不動産の名義を取得する方の住民票を用意します。全く同じ戸籍謄本が重複して必要になることはなく、未婚のお子さんが親と同じ戸籍にいる場合などは1通あれば十分です。

    【ステップ2】不動産を把握する

    ステップ1で用意した評価証明書や課税明細書に記載されている不動産について、現在の「登記簿謄本」に書かれている内容を調べます。これは、後のステップで登記申請書を作る際に、登記簿の記載通りに一言一句間違えずに作らないといけないからです。

    不動産の把握には、インターネットの「登記情報提供サービス」が便利です。法務局へ行って登記簿謄本を取る方法もありますが、インターネットのほうが即座に取れて費用も安いためお勧めです(お支払いはクレジットカードになります)。登記情報提供サービス

    利用の仕方としては、インターネットで検索していただき、サイトの中ほどにある「一時利用」をクリックします。ここで2つ注意点があります。

    ●「一時利用」を選択しますが、利用時間は平日(8:30〜23:00)土日祝日(8:30〜18:00)に限られている点に注意しましょう 。

    ●初回ログインから1日しか閲覧できないため、取得したらすぐにPDFで保存または印刷をしてください 。

    【ステップ3】遺産分割協議書を作る

    ステップ1、2で集めた情報をもとに、どの不動産をどなたが相続するかをご家族で決めていただき、それを文章にまとめます。

    • 基本的な書き方:一番上に「遺産分割協議書」とタイトルを記載します。被相続人(亡くなられたAさん)の氏名と亡くなられた日付を書き、「最後の本籍」には亡くなった記載のある戸籍の通りに、「最後の住所」には戸籍の附票の通りに記載します。
    • 不動産の書き方:登記簿を見ながら、一言一句その通りに記載してください。
    • プロのワンポイントアドバイス:後から未知の財産が発見された場合に備えて、「誰が相続するか」を事前に決める一文を入れておくことをお勧めします。これにより、後から協議書を作り直す手間や、ご家族間のトラブルを回避できます。
    • 署名と押印:作成できたら、相続人全員で署名し、「実印」を押します。印鑑証明書と見比べて、もし印影がかすれたり欠けたりした場合は、重ならないように近くに押し直せば大丈夫です。2ページ以上にまたがる場合はホッチキス止めをして、またがる部分に全員の実印で「契印」をします。

    【ステップ4】登記申請書を作る

    次に、法務省が公開している登記申請書の雛形に沿って、法務局へ提出する書類を作成します。ここでは、Aさんの不動産をBさんが単独で相続するケースを想定して解説します。

    • 余白を忘れずに:申請書の一番上には、法務局が受付シールを貼るための「5〜6cm以上のスペース」を必ず空けておいてください。
    • 登記の目的と原因:Aさんが単独で所有していた場合は「所有権移転」、もし道路の持分など他の方と共有していた場合は「A持分全部移転」と記載します。原因の欄には、亡くなられた日付を和暦で書き、「相続」と記載します。
    • 相続人と連絡先:不動産を取得するBさんのお名前だけを書き、右横に「認印」を押します。書類に不備があった場合に法務局から平日日中に電話が来るため、携帯電話などの連絡先を記載してください。
    • 権利証についての大切な注意:雛形の中に「登記識別情報の通知を希望しません」というチェック項目がある場合がありますが、これは将来不動産を売却する際に必要となる「権利証」のことなので、チェックを入れず、この項目ごと削除してしまうことをお勧めします。
    • 課税価格と登録免許税の計算:ここが一番の山場です。
      1. 課税明細書や評価証明書を見ながら「評価額」や「価格」と書かれている金額(一番大きい金額)を合計し、下3桁を切り捨てた金額が「課税価格」です。
      2. その課税価格に「0.4%」を掛け、下2桁を切り捨てた金額が、収入印紙で納める税金「登録免許税」となります。
      3. ※例外として、令和9年3月31日までは評価額が100万円以下の土地は非課税となります。該当する場合は申請書にその旨を記載し、税金計算上は0円として計上してください。

    登録免許税の計算式:

    • 課税価格: 評価額の合計(1,000円未満切り捨て)
    • 税額: 課税価格 ×0.4%(100円未満切り捨て)
    • 特例: 土地の評価額が100万円以下の場合は、令和9年3月31日まで免税となります 。
    • 印刷と製本:申請書は「片面印刷」にします。収入印紙を貼り付けるための「A4の白紙の台紙」を一番後ろに付け、左側をホッチキス止めします。2ページ以上になる場合は、ページがまたがる部分に認印で契印をしてください。

    提出前の総仕上げである「付属書類の準備と印紙の貼り方」から、法務局への提出、そして完了書類の受け取りまでを解説いたします。

    【提出前の総仕上げ】添付書面の準備と収入印紙 申請書には、集めた戸籍や遺産分割協議書、印鑑証明書などを「添付書面」として一緒に提出します。

    • 原本を返してもらう方法(原本還付請求):提出した戸籍や遺産分割協議書は、希望すれば法務局から返却してもらえます。やり方は簡単で、コピーを取って余白に「原本と相違ありません」と手書きし、申請人のお名前を書いて認印を押します。複数枚になる場合は左側をホッチキス止めし、ページの間に認印で契印(割印)をしてください。「原本と相違ありません」という記載は最初のページだけで大丈夫です。なお、戸籍が大量でコピーが大変な場合は、「相続関係説明図」という書類を作れば戸籍のコピーを省略できます。
    • 収入印紙の貼り方:前回計算した「登録免許税」は、収入印紙で納めます。郵便局か法務局で購入し、申請書の一番後ろに付けた白紙の台紙にのり付けしてください。ここでの最大の注意点は「絶対に消印(ハンコなどを上から押すこと)をしない」ことです。消印をしてしまうと無効になってしまいますので十分ご注意ください。 これらをすべてクリップでまとめれば、提出書類の完成です。

    【ステップ5】書類を提出する

    完成した書類を、いよいよ管轄の法務局へ提出します。提出方法は「直接持ち込む」か「郵送する」の2通りです。

    • 郵送がお勧め:法務局は平日の午後5時15分までしか開いていないため、郵送での提出がお勧めです。郵送する場合は、無事に届いたか追跡ができる赤色の「レターパックプラス」を利用すると安心です。
    • 完了までの期間:申請後、だいたい1週間から2週間程度で登記が完了します。目安となる完了予定日は法務局のホームページで公開されています。書類に不備(訂正)がある場合にのみ電話が来ますが、無事に終わったという連絡は法務局からは来ませんのでご注意ください。

    【ステップ6】登記が完了して書類を受け取る 無事に登記が完了すると、法務局から大切な書類が発行されます。

    • 受け取る書類:手続きが無事に終わったことを報告する「登記完了証」、そして不動産を売却する際などに必要となる権利証にあたる「登記識別情報通知」の2種類です。また、原本還付請求をした戸籍なども一緒に返却されます。
    • 窓口で受け取る場合:法務局へ行く前に、念のため電話で登記が完了しているか確認することをお勧めします。受け取りの際は、申請書に押したのと同じ印鑑(認印)を必ず持参してください。
    • 郵送で受け取る場合:申請時に「返信用封筒」を一緒に提出しておく必要があります。書類が折らずに入る大きめの封筒(角2封筒など)を用意し、郵便局で書類の重さを量ってもらい、正確な切手を貼って提出してください(新しく発行される書類の分、少し重さに余裕を持たせるのがコツです)。この返送は「本人限定受取郵便」となるため、郵便局で封筒にその旨のハンコを押してもらうとスムーズです。

    【最後に】

    完了書類を受け取ったら、ステップ2で利用したインターネットの「登記情報提供サービス」を使って、ご自身の目で正しく登記がされているか確認してみるのも良いでしょう。

    なお、今回解説で使用した各書類の雛形は、当事務所のホームページ司法書士事務所TOKITOで公開しておりますので、ぜひご活用ください。 最後までご覧いただきありがとうございました。少しでもご自身での手続きの参考になれば幸いです。もし進めていく中で、「やっぱり自分では難しいかも…」と迷ったときは、無理をせずお気軽にご相談くださいね。

    あなたのスムーズな相続手続きを、心より応援しております!

    ステップ概要ポイント
    1. 書類収集戸籍や評価証明書の取得広域交付を使って最寄りの役所で一括請求!
    2. 物件把握登記情報の確認ネットサービスで一言一句違わぬよう確認
    3. 遺産分割協議書の作成と押印全員の実印と契印を忘れずに
    4. 申請書作成申請書類の製本5~6cmの余白消印禁止の印紙
    5. 提出法務局への持ち込み/郵送追跡可能なレターパックプラス
    6. 完了書類の受け取り返信用封筒は本人限定受取郵便

    第58回 親の認知症で銀行口座が使えなくなる?「資産凍結」の不安を解消する家族信託と成年後見の活用法

    ■はじめに 「最近、親の物忘れが少し増えてきたかもしれない……」 そんなとき、多くの方が真っ先に心配されるのは健康のことでしょう。しかし、それと同じくらい、あるいはそれ以上に切実な問題となるのが「お金の管理」です。

    もし親御さんの判断能力が低下し、認知症と診断されると、銀行口座が凍結されたり、実家の売却ができなくなったりすることをご存知でしょうか。これを「資産凍結」と呼びます。

    今回は、生前対策と相続の専門家である司法書士の視点から、この資産凍結を防ぐための2つの大きな柱、「家族信託」と「成年後見制度」について、分かりやすく解説していきます。

    ■1.親が認知症になると直面する「お金の壁」とは

    認知症になると、なぜお金が動かせなくなるのでしょうか。それは、銀行や不動産会社が「本人の意思確認ができない」と判断するためです。

    銀行口座が凍結される仕組み

    銀行は、名義人本人の判断能力が不十分だと知ると、預金の引き出しを制限します。たとえ子が「親の介護費用や入院費に使いたい」と申し出ても、本人の意思が確認できなければ、原則として応じてもらえません。さらに見落としがちなのが、口座振替(引き落とし)への影響です。口座が凍結されると、公共料金や施設への支払い、医療費などの自動引き落としも止まってしまう恐れがあります。そうなると、ご家族が立替払いをするなどの対応に追われ、精神的・経済的な負担がさらに増してしまうのです。

    自宅の修繕や売却もできなくなるリスク

    空き家になった実家をどうするかという問題も深刻です。親御さんが施設に入所し、誰も住まなくなった実家の屋根が壊れたり、庭木が隣家に迷惑をかけたりした場合、修繕や伐採が必要になります。

    しかし、たとえ子が「親のために実家を直したい(あるいは解体したい)」と思っても、家主である親御さんに判断能力がなければ、工事契約を結ぶ権限がありません。

    特に深刻なのは「解体」や「売却」です。これらは財産価値を大きく変える行為であるため、法律上、所有者本人の明確な意思確認が厳格に求められます。 「実家を売って、そのお金を親の介護費用に充てよう」と家族で話し合っていても、いざ不動産会社や司法書士が親御さんの意思を確認できないと判断すれば、売買契約は成立せず、手続きはストップしてしまいます。結果として、誰も住まない家を高い固定資産税を払いながら放置せざるを得ない「負の不動産」となってしまうリスクがあるのです

    ■2.「元気なうち」だからこそ選べる家族信託 こうした事態を防ぐために、今もっとも注目されているのが「家族信託」です。

    家族信託とは何か。分かりやすく解説 一言でいえば、「信頼できる家族に、財産の管理を託す契約」のことです。親(委託者)が元気なうちに、子(受託者)との間で「将来、自分の判断力が落ちたら、このお金や不動産はあなたが管理してね」と約束し、あらかじめ管理権限を移しておきます。

    ・ご本人の意思を尊重しつつ、子が財産を管理する仕組み 家族信託の大きな特徴は、親御さんが元気なうちからスタートできる点です。万が一認知症になっても、管理権限はすでに子に移っているため、子の判断で預金を引き出したり、実家を売却したりすることがスムーズに行えます。

    家族信託で「できること」と「できないこと」

    家族信託は「財産管理」には非常に強力ですが、身の回りの手続き(身上保護といいます)、例えば施設の入所契約や入院手続きの代理人としての権限は持ちません。これらは、後述する成年後見制度が得意とする分野です。

    ■3.もう一つの備え「任意後見制度」とは

    家族信託が「財産の管理」に特化した制度であるのに対し、もう一つの有力な選択肢が「任意後見制度」です。

    ・「誰に、どんな生活をサポートしてほしいか」を予約する制度

    任意後見とは、親御さんが元気なうちに「将来、もし自分の判断能力が落ちたら、この人に自分の代理人になってほしい」とあらかじめ契約しておく制度です。

    ・家族信託ではカバーしきれない「身上保護」の役割

    家族信託の弱点は、施設への入所契約や入院の手続きといった「身の回りの法律行為(身上保護)」ができない点にあります。任意後見はこの部分を補うためのもので、いわば「生活全般のサポート役」を予約しておくイメージです。

    ■4.【比較】家族信託と任意後見、どちらを選ぶ?

    どちらか一方を選ぶというよりは、それぞれの「得意分野」を組み合わせて活用するのが、現在の生前対策のスタンダードとなっています。

    ・財産活用の「家族信託」 vs 契約代行の「任意後見」 【家族信託】は、空き家になった実家を貸し出して施設代に充てたり、必要な時に柔軟に売却したりといった「財産の運用・処分」に非常に強いのがメリットです。 一方の【任意後見】は、施設との契約や医療の同意(身上保護)において、公的な代理人としての強い権限を持ちます。

    ・コストの比較(初期費用とランニングコスト) 【家族信託】は、最初にコンサルティング費用や公正証書作成などの「初期費用(数十万円〜)」がかかりますが、その後の月々の報酬は基本的に不要です。

    【任意後見】は、契約時点での費用は数万円程度と安価ですが、実際に制度がスタート(判断能力が低下)した後は、家庭裁判所が選ぶ「任意後見監督人」への報酬(月額1万〜3万円程度)が、ご本人が亡くなるまで一生涯続きます。

    ・【重要】対策をしなかった場合の「法定後見」のリスク もし、家族信託も任意後見も準備しないまま認知症が進行してしまったらどうなるでしょうか。その場合は「法定後見」を利用せざるを得ません。 法定後見では、家族が希望しても「見ず知らずの専門家(司法書士や弁護士)」が後見人に選ばれるケースが多く、その場合は月額2万〜6万円程度の高い報酬が発生し続けます。また、実家の売却や賃貸といった柔軟な資産運用も、家庭裁判所の厳しい制限により、ほとんど認められなくなってしまいます。

    ■5.司法書士事務所TOKITOと一緒に「家族のこれから」をデザインする

    生前対策で最も大切なのは、「どのような老後を送り、どのような形で資産を家族に繋いでいきたいか」というご本人とご家族の想いです。

    ・まずは家族で話し合うきっかけ作りから 家族信託や任意後見は、いわば「家族の絆を形にする契約」です。親御さんが元気な今だからこそ、将来の不安をオープンに話し合い、最適な組み合わせを見つけることができます。

    ・手続きの複雑さを解消し、円満な相続へつなげる 司法書士事務所TOKITOは、単に書類を作成するだけでなく、ご家族の状況に合わせたオーダーメイドの対策をご提案します。将来、ご家族が「あの時準備しておいて良かった」と思えるよう、しっかりとサポートいたします。

    第57回 実家が「負の遺産」になる前に。相続登記の義務化と、負担を減らす「相続人申告登記」を専門家が解説

    「実家の名義が亡くなった父のままだけど、急いで変えなくても大丈夫だよね?」 「兄弟で話し合いがまとまらないから、名義変更は後回しにしたい……」

    これまで、そんなふうに考えていた方は少なくありませんでした。しかし、2024年4月から、私たちの暮らしに関わる大きなルール変更がありました。それが「相続登記の義務化」です。

    「難しそう」「罰金があるって本当?」と不安を感じている方も多いはず。 今回は、相続の専門家である司法書士の視点から、新しく始まったルールと、どうしてもすぐに名義が決まらない時の「お助け制度」について、分かりやすくお話しします。

    ■ 1.【他人事ではない「相続登記の義務化」とは?】

    これまでは、亡くなった方の土地や建物の名義を変える(相続登記をする)かどうかは、個人の自由でした。しかし、持ち主が分からない「所有者不明土地」が全国で増え、公共事業や災害復興の妨げになったことから、国はついに義務化に踏み切ったのです。

    ・放置するとどうなる?過料(罰金)のリスク 相続によって不動産を取得したことを知った日から「3年以内」に登記をしなければなりません。正当な理由なく放置していると、10万円以下の過料(行政罰)を科される可能性があります。

    ・新救済策「相続人申告登記」とは?

    「義務化は分かったけれど、親族間で揉めていて3年以内に名義が決まらない!」という場合もありますよね。そんな時に活用できるのが、この新しい制度です。 これは、法務局に対して「私が相続人の一人です」と届け出をするだけで、ひとまず「登記の義務を果たした」と認めてもらえる仕組みです。 遺産分割の話し合いが長引きそうな場合でも、この申告をしておけば罰金を心配する必要がなくなります。自分一人の判断で、他の親族の同意なく行えるのも大きなメリットです。

    ■ 2.【「実家を相続したくない」と悩む人が増えている理由】

    近年、相談者様から「実家を継ぎたくない、どうすればいいか」という切実な声をよく耳にします。かつては大切な資産だった家が、今や「負動産」として重荷になってしまうケースがあるのです。

    ・空き家が引き起こすトラブル 誰も住まなくなった実家を放置すると、固定資産税という維持費がかかり続けるだけでなく、建物の老朽化によって瓦が落ちたり、雑草が近隣に迷惑をかけたりといったリスクが生じます。万が一、通行人に怪我をさせてしまえば、所有者の管理責任を問われることにもなりかねません。

    ・ネットや遠方では把握しきれない「実家のリアル」 「たまに帰るだけだから大丈夫」と思っていても、実際にはシロアリの被害が進んでいたり、不法投棄の場所になっていたりと、現場の状況は想像以上に深刻なことが多いものです。

    ■ 3.新制度「相続土地国庫帰属制度」は救世主になるか?

    「どうしても使い道がない土地を、国が引き取ってくれたらいいのに……」 そんな切実な願いに応える形で2023年に始まったのが「相続土地国庫帰属制度」です。

    ・国に土地を返せる?制度の概要 この制度を一言で言うと、「相続したけれど、どうしても管理しきれない土地を国に引き渡すことができる」というものです。これまで「捨てる」ことができなかった不動産を、適正な手続きを経て手放せるようになったのは画期的なことです。

    ・知っておきたい「引き取りが認められない土地」の条件 国が引き取るということは、その後の管理を国民の税金で行うということでもあります。そのため、管理に過度な手間や費用がかかる土地は、対象外となってしまいます。具体的には、以下のような土地は申請が通りません。

    ・建物が建っている土地(更地にする必要があります) ・担保権(抵当権など)が設定されている土地 ・他人の使用権(通路として使われているなど)が設定されている土地 ・土壌汚染がある土地 ・境界がはっきりしていない土地、所有権を巡る争いがある土地 ・埋設物(ガラ、瓦礫、古い水道管など)がある土地 ・危険な崖(勾配や高さが基準を超えるもの)がある土地

    「実家を壊して更地にしたけれど、境界が曖昧だった」というケースなどは、事前の整備が必要になります。

    ・利用するための「負担金」の話 また、国に引き取ってもらう際には、将来の管理費用(10年分程度)として「負担金」を納める必要があります。金額は土地の種目によって異なりますが、最低でも20万円からとなっています。決して「タダで手放せる」わけではありませんが、子世代にずっと管理の苦労を負わせるよりは、安心を買うための必要経費と考えることもできるでしょう。

    ■ 4.司法書士が教える、生前にやっておくべき「実家の終活」

    相続が始まってから慌てるよりも、親御さんがお元気なうちに家族で話し合っておくことが、何よりの解決策になります。

    ・「遺言書」で名義変更をスムーズにする

    あらかじめ「この家は長男に」「その代わり預貯金は長女に」といった遺言を残しておくことで、後の手続きがスムーズになります。前述した「相続登記」の義務化にも、迅速に対応できるようになります。

    ・「売却」を視野に入れた家族会議の進め方

    「誰も住む予定がないなら、早めに売却して現金化し、親御さんの介護費用に充てる」というのも賢い選択です。不動産は、時間が経つほど価値が下がったり、管理が難しくなったりします。「まだ早い」と思わずに、一度ご家族で「これからの実家をどうするか」という将来像を共有してみてください。

    ■ 5.まとめ:一人で悩まず、家族のために専門家へ相談を

    不動産を巡るルールは大きく変わり、放置することのリスクは年々高まっています。しかし、それは決して「怖いこと」ではありません。正しい知識を持ち、早めに準備をすることで、大切な実家を「負の遺産」にしない方法は必ず見つかります。

    私たちは、登記のプロであると同時に、ご家族の想いを形にお手伝いもさせていただきます。

    「実家の名義が昔のままだ」 「将来、この家をどうすればいいか分からない」

    そんな小さな不安でも、どうぞお気軽にご相談ください。

    第56回 疎遠だった親族の借金が発覚!突然の手紙に慌てないための「相続放棄」ガイド NG行動も解説

    ■はじめに 「亡くなったお父様の借金を支払ってください」 ある日突然、見知らぬ会社から届いた一通の手紙。封を開けて、心臓が止まるような思いをされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

    ましてや、その相手が何年も会っていない、離婚して離れ離れになったお父様だったり、長年音信不通だったご兄弟だったりした場合、驚きと困惑はなおさら深いものです。 「どうして今さら私が?」「会ってもいない人の借金を、私が払わなければいけないの?」

    そんな不安で目の前が真っ暗になってしまうというご相談を、私たちはよくお受けします。 でも、まずは深呼吸をして、落ち着いてください。法律は、こうした「予期せぬトラブル」からあなたを守る仕組みをしっかりと用意しています。

    今回は、生前対策と相続の専門家である司法書士の視点から、突然の借金通知が届いたときに、あなた自身を守るための正しい対処法を分かりやすくお話しさせていただきます。

    ■1.そもそも「相続放棄」ってなに?

    相続というと、家や預貯金など「プラスの財産」をもらうイメージが強いかもしれません。しかし、実は亡くなった方の借金や未払金といった「マイナスの財産」も、放っておくと自動的に引き継がれてしまいます。

    これを防ぐための唯一の手段が「相続放棄」です。 相続放棄とは、「私は最初から相続人ではありませんでした」と家庭裁判所に宣言する手続きのことです。

    この手続きが受理されると、たとえお父様やご兄弟に多額の借金があったとしても、あなたが代わりに支払う義務は一切なくなります。 「長年疎遠だったのだから、関わりたくない」 「自分には今の生活があり、家族を守らなければならない」 そのお気持ちは、決して責められるものではありません。相続放棄は、あなたのこれからの生活を守るための正当な権利なのです。

    ■2.離婚した父や、音信不通の兄弟でも「相続人」になる理由

    「うちは両親が離婚しているから、父の財産(借金)は関係ないはず」 「もう何十年も連絡を取っていない兄のことは、自分には関係ない」 そう思われる方も多いのですが、実は法律上の「血のつながり」はそう簡単には消えません。

    たとえご両親が離婚していても、お子様であるあなたは、お父様にとって一生「第一順位の相続人」です。また、ご兄弟も、ご両親やお子様がいらっしゃらない場合には相続人になります。

    このように、本人のあずかり知らないところで「相続人」になってしまうケースは決して珍しくありません。だからこそ、突然の手紙が届いたときは「法律上の手続き」が必要になるのです。

    ■3.「期限は3ヶ月」の本当の意味

    手紙が届いてからでも間に合う理由 相続の手続きには「3ヶ月以内」という期限がある、と聞いたことがあるかもしれません。 「もう亡くなってから1年以上経っているから、もう手遅れだ…」と諦めてしまう方がいらっしゃいますが、実はそこが大きな誤解です。

    法律では、相続放棄ができる期限を「自分が相続人になったこと、および引き継ぐべき借金があることを知った時から3ヶ月以内」と定めています。

    ・離婚して以来会っていなかったお父様が亡くなったことを、債権者からの手紙で初めて知った ・音信不通だったお兄様に借金があったことを、通知が届いて初めて知った

    このような場合、その「手紙が届いた日(あるいは内容を知った日)」から数えて3ヶ月以内であれば、相続放棄は認められる可能性が非常に高いのです。 時間が経っているからといって諦める必要はありません。

    ■4.やってはいけない!相続放棄ができなくなる「NG行動」

    突然の手紙に驚いて、「まずは少しでも返しておこう」とか「誠意を見せよう」と思ってしまうかもしれません。しかし、実はここに大きな落とし穴があります。

    法律には「単純承認」というルールがあります。これは、亡くなった方の財産を一部でも使ったり、借金の一部を支払ったりすると、「私はすべての財産(借金も含む)を相続します」と認めたことになってしまうルールです。

    一度この「単純承認」とみなされると、後から相続放棄をすることは非常に難しくなります。

    ・債権者から「1,000円だけでもいいから払って」と言われて支払う ・亡くなった方の銀行口座からお金を下ろして、自分のために使う ・形見分けのつもりで、価値のある遺品を勝手に持ち出す

    こうした行動は、良かれと思ってやったことでも「相続を認めた」と判断されるリスクがあります。手紙が届いたら、まずは何も手をつけず、そのままの状態にしておくことが大切です。

    ■5.まずは専門家に相談を

    「債権者にどう返事をしていいかわからない」 「裁判所に出す書類なんて、自分に書けるだろうか」 そう不安に思うのは当然のことです。特に、離婚した親や音信不通の兄弟のケースでは、相手の生前の状況がわからないため、手続きの難易度が上がることもあります。

    司法書士にご相談いただくメリットは、主に2つあります。

    1.債権者(督促状を送ってきた相手)への適切な対応 「現在、相続放棄を検討中である」ということを専門家から伝えることで、不当な督促を止め、手続きを進めるための時間的な余裕を作ることができます。

    2.裁判所への確実な申立て 数年経ってから届いた通知の場合、裁判所に「なぜ今さら手続きをするのか」という事情を説明する書類(上申書)を添える必要があります。これを法的な根拠に基づいて作成することで、受理される可能性をぐっと高めることができます。

    煩雑な書類作成や、債権者とのやり取りのストレスをプロに任せることで、あなたはいつもの日常を取り戻すことができるのです。

    ■おわりに 「知らない人の借金を背負わされるかもしれない」という不安は、想像以上に心に重くのしかかるものです。 しかし、正しく手続きを行えば、あなたは亡くなった方の負債を背負う必要はありません。

    もし、あなたのもとに身に覚えのない請求書や督促状が届いたら、一人で抱え込まずに、まずは落ち着いて私たち専門家へご相談ください。

    第55回 もしもの時、銀行口座が凍結される!?「預貯金相続」の落とし穴と、家族を困らせないための「今すぐできる」備え

    こんにちは。私は日々、生前対策や相続のご相談をお受けしております。

    「親が亡くなったら、銀行口座はすぐに止まってしまうんですか?」 「葬儀費用も引き出せなくなると聞いて不安で……」

    このようなご相談を、40代から70代の幅広い世代の方々からよくいただきます。

    大切な家族を見送った後、悲しみに暮れる間もなく押し寄せるのが、さまざまなお金の手続きです。特に銀行口座の「凍結」は、日常生活に直結する大きな問題。準備をしていないと、窓口で「お引き出しできません」と言われ、途方に暮れてしまうことも少なくありません。

    でも、安心してください。 仕組みを正しく知り、元気なうちに少しだけ動いておけば、こうしたトラブルは防ぐことができます。

    今回は、銀行口座が凍結される理由から、もしもの時の引き出し方、そして「思い立ったが吉日」で今日から始められる対策まで、分かりやすくお伝えします。

    【1.なぜ亡くなった人の口座は「凍結」されるのか?】

    ・銀行が口座を止める本当の理由とタイミング 銀行は、名義人が亡くなったことを知った時点で口座を凍結します。これは、亡くなった方の預金が「相続人全員の共有財産」になるからです。勝手に誰か一人がお金を引き出し、後から他の親族とトラブルになるのを防ぐため、銀行がガードをかけて守ってくれている……というのが本来の理由です。

    ちなみに、役所に死亡届を出した瞬間に銀行へ通知がいくわけではありません。多くの場合、ご家族が銀行へ連絡したり、新聞の悔やみ欄を銀行員が確認したりすることで凍結されます。

    ・「凍結」されると具体的に何ができなくなる? 口座が凍結されると、預金の引き出しはもちろん、公共料金やクレジットカードの引き落とし、年金の受け取りもすべてストップします。葬儀費用や当面の生活費が必要な時に、自分のお金なのに1円も動かせないという不自由さが、残されたご家族にとって大きな負担となってしまうのです。

    【2.【法改正で変わった】凍結後でもお金を引き出す方法】

    ・遺産分割協議が終わる前でも「150万円」までは引き出せる? 以前は、相続人全員のハンコが揃うまで1円も引き出せないのが原則でした。しかし、現在は法改正により「遺産分割前でも一定額なら引き出せる制度(預貯金の仮払い制度)」がスタートしています。

    具体的には、「亡くなった時の預金残高 × 3分の1 × その人の法定相続分」という計算式で算出された金額が引き出せます。ただし、一つの銀行でもらえる上限は150万円までとなっています。

    ・「仮払い制度」を利用する際の注意点と必要書類 「150万円までなら簡単におろせる」と思われがちですが、実は手続きには手間がかかります。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本や、引き出す人の印鑑証明書など、揃えるべき書類が山ほどあります。

    悲しみの中、役所を何度も往復して書類を集めるのは、想像以上に心身の負担になります。そのため、制度に頼るよりも「凍結させない工夫」を事前にしておくことが、実は一番の近道なのです。

    【3.「凍結」で慌てないために。元気なうちにできる3つの生前対策】

    「万が一の時、家族が困らないようにしたい」 そう思った時が、行動すべきタイミングです。銀行口座の凍結リスクを最小限にするための、3つの賢い備えをご紹介します。

    ・遺言書を作成しておく 最も確実な方法は「遺言書」を残すことです。特に「公正証書遺言」を作成しておけば、亡くなった後の銀行手続きが格段にスムーズになります。遺言書があれば、銀行は「この人に預金を相続させる」という故人の意思をすぐに確認できるため、他の相続人全員のハンコを待たずに手続きを進められるケースが多いのです。

    ・「家族信託」を活用して、認知症による凍結も防ぐ 実は、口座が凍結されるのは「亡くなった時」だけではありません。親御さんが認知症などで判断能力を失った場合も、銀行は本人の財産を守るために口座を凍結することがあります。 これを防ぐのが「家族信託」です。お元気なうちに、信頼できるお子さんなどに預金の管理権限を託しておくことで、もし認知症になっても、あるいは亡くなった直後でも、生活費や介護費用を滞りなく支払うことが可能になります。

    ・ネット銀行やサブスク。見落としがちな「デジタル遺産」の整理 最近増えているのが、通帳のないネット銀行や、毎月引き落とされるサブスクリプション(定額サービス)のトラブルです。家族がその存在を知らないと、凍結の手続きすらできず、亡くなった後も会費が引き落とされ続ける……なんてことも多々あります。 まずは「どこの銀行に口座があるか」を一覧にまとめることから始めてみましょう。これだけでも、ご家族にとっては立派な「贈り物」になります。

    【4.プロに頼むメリット:司法書士がサポートできること】

    「手続きが大事なのはわかったけれど、何から手をつければいいのか……」 そう感じて立ち止まってしまうのは、決してあなただけではありません。私たちは、そんな時のためのパートナーです。

    ・煩雑な戸籍収集から銀行解約手続きまで丸ごと代行 相続の手続きには、驚くほど大量の書類が必要です。お仕事や家事で忙しい中、平日に役所や銀行を回るのは大変な重労働。司法書士にお任せいただければ、戸籍の収集から銀行への連絡、名義変更まで、すべてをワンストップで代行いたします。

    ・親族間の「争族」を防ぐためのアドバイス 「うちは仲が良いから大丈夫」と思っていても、お金が絡むとボタンの掛け違いが起こることもあります。公平で法的に間違いのない対策を立てることで、大切な家族が将来「争族」にならないよう、第3者の立場から寄り添い、守ります。

    【5.まとめ:「いつか」ではなく「今」。思い立ったが吉日】

    「終活」や「生前対策」という言葉を聞くと、少し寂しい気持ちになるかもしれません。

    「いつか、そのうち」と先延ばしにするのではなく、少しでも不安を感じた「今」こそが、最善のタイミングです。

    「何を聞けばいいのかわからない」という状態でも構いません。まずはその不安な気持ちを、私たちに聞かせていただけませんか?ご相談をお待ちしております。

    第54回 2024年4月から相続登記が義務化。放置のリスクと「忙しいあなたのための」スムーズな進め方

    2024年4月から相続登記が義務化。放置のリスクと「忙しいあなたのための」スムーズな進め方

    「実家の名義、そういえば亡くなった父のままだったな……」 「ニュースで義務化の話は聞いたけれど、難しそうでついつい後回しにしている」

    そんな思いを抱えながら、日々お忙しく過ごされている方は少なくありません。

    実は、2024年4月から不動産の相続手続き(相続登記)が法律で義務化されました。これまでは「いつかやればいい」で済んでいたことが、これからは放置しておくと罰則の対象になるだけでなく、ご家族に予期せぬ負担をかけてしまう可能性があります。

    「仕事や家事で忙しくて、とてもそこまで手が回らない」 「何から手を付ければいいのか、考えるだけで疲れてしまう」

    そんな皆様の不安を解消するために、今回は司法書士の視点から、義務化のポイントと、できるだけ負担を減らして楽に手続きを進める方法についてお話しします。

    1.2024年4月からスタート!「相続登記の義務化」とは?

    ■ そもそも「相続登記」ってなに?

    相続登記とは、不動産の持ち主が亡くなった際に、その名義を亡くなった方から受け継いだ方(相続人)へ書き換える手続きのことです。

    これまでは期限がなく、極端な話をすれば名義を変えなくても罰せられることはありませんでした。しかし、今後は「不動産を相続したことを知った日から3年以内」に名義変更をすることが義務付けられました。

    ■ なぜ今、義務化されたのか

    現在、日本中で「誰のものか分からない土地」が増え続けており、その面積は九州全土よりも広いと言われています。名義が古いまま放置されると、公共工事が進まなかったり、災害復旧の妨げになったりします。こうした「所有者不明土地」を増やさないために、国がルールを新しくしたのです。

    ■ 「知らなかった」では済まない? 放置した場合の罰則

    もし正当な理由なく期限内に申請をしなかった場合、10万円以下の「過料(かりょう)」という罰金のようなものを科される可能性があります。「うっかり忘れていた」では済まされないため、早めの確認が必要です。

    2.「うちは大丈夫」と思っていませんか? 意外な落とし穴

    ■ 10年以上前に亡くなった祖父母の名義…これも対象になるの?

    実はここが一番の注意点です。今回の義務化は、2024年4月以前に亡くなった方の不動産にも「さかのぼって適用」されます。「父の代で終わっているはず」と思っていたら、実はさらに前の祖父の名義のままだった……というケースは意外と多いものです。

    ■ 「相続人が多すぎて連絡が取れない」そんな時の解決策

    いざ名義変更をしようと思っても、相続人が何十人もいて、面識のない親戚と連絡を取らなければならないことがあります。お忙しい皆様にとって、これは大変なストレスですよね。

    そんな時のために、相続人の一人であることを申告すれば義務を果たしたとみなされる**「相続人申告登記」**という新しい制度も作られました。

    ■ 「相続土地国庫帰属制度」の活用

    「いらない土地だから名義変更したくない」という方もいらっしゃいます。一定の条件や審査、手数料(負担金)は必要ですが、不要な土地を国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」という選択肢も新たに登場しています。

    3.放置することの「本当の怖さ」は罰金だけじゃない

    ① いざ売却したい時に売れない! 資産価値が下がるリスク

    「今は売るつもりがないから大丈夫」と思っていても、将来、実家を片付けて売却しようとしたり、リフォームして活用しようとしたりする際に、名義が亡くなった方のままだと手続きがストップしてしまいます。名義を整えるのに数ヶ月、場合によっては数年かかることもあり、その間に買い手がいなくなってしまう……というケースも少なくありません。

    ② 認知症が進むと、名義変更の手続きができなくなる?

    相続人のどなたかが認知症になり、判断能力が不十分になってしまうと、遺産分割の話し合い(遺産分割協議)を成立させることが非常に難しくなります。「まだ元気だから」と先延ばしにしている間に、手続きのハードルがぐんと上がってしまう。これが最も大きなリスクかもしれません。

    ③ 次の世代(子供たち)に重い荷物を背負わせないために

    名義変更をせずに放置していると、相続人が亡くなり、さらにお子さんへと関係する人数が数珠つなぎに増えていきます。「あの時、親がやっておいてくれれば……」と、将来お子さんに苦労をさせないためにも、今、この世代で解決しておくことが最大の優しさです。

    4.スムーズに手続きを進めるための3ステップ

    【ステップ1】まずは「登記事項証明書(登記簿)」で現状を確認 まずは、ご実家や土地の現在の名義が誰になっているかを確認しましょう。法務局で「登記事項証明書」を取得すれば分かります。

    【ステップ2】遺産分割協議書を作成し、相続人全員の合意を得る 誰がその不動産を引き継ぐのかを決め、実印を押した書類を作ります。親族が遠方にいたり、疎遠だったりする場合、この合意形成が最も時間がかかるポイントです。

    【ステップ3】法務局へ申請(自分でする? 専門家に頼む?) 書類が揃ったら法務局へ申請します。ご自身で行うことも可能ですが、何度も法務局へ足を運んだり、書類の不備を修正したりする必要があります。

    5.まとめ:面倒な手続きはプロに任せて、肩の荷を下ろしませんか

    ■ 複雑な戸籍収集や書類作成は、司法書士にお任せいただけます

    相続の手続きで一番大変なのは、「亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をすべて集める」といった、膨大な事務作業です。本籍地が遠方にある場合、郵送でのやり取りだけで何週間もかかってしまいます。こうした面倒な作業は、すべて司法書士にお任せいただけます。

    ■ お忙しい皆様に代わり、私たちが「安心」までをサポートします

    お仕事や介護、家事で毎日を忙しく過ごされている皆様が、貴重な休日を削ってまで難しい法律書類と格闘する必要はありません。専門家に任せることで、正確に、そして最短で手続きを終えることができます。

    「何が分からないのかが、分からない」という状態でも構いません。 まずは一度、当事務所の無料相談をご利用ください!

    第53回 スマホの中の財産と、実家の名義変更。令和の相続で後悔しないための「新常識」

    はじめに:時代の変化とともに変わる「相続の悩み」

    「通帳が見当たらない」「実家の名義が亡くなった祖父のままになっている……」 最近、このようなご相談をいただくことが増えてきました。

    一昔前であれば、遺品整理といえばタンスの引き出しや金庫を確認すれば、ある程度の財産は把握できたものです。しかし、現代の相続は少し様子が違います。

    お手元のスマートフォン一つで銀行振込ができ、通帳を発行しない「ネット銀行」が当たり前になりました。また、法律の改正によって、これまで「いつかやればいい」と後回しにされがちだった不動産の名義変更(相続登記)にも、明確な期限とルールが設けられました。

    「何から手を付ければいいのか分からない」「知らないうちに損をしたり、家族に迷惑をかけたりしたくない」 そんな漠然とした不安を抱えているあなたへ。今回は、今、知っておくべき「令和の相続の新常識」を、専門家の視点で分かりやすく紐解いていきます。

    1.気づかないうちに増えている「デジタル遺品」の落とし穴

    最近よく耳にする「デジタル遺品」という言葉。これは、亡くなった方が遺したスマートフォンやパソコンの中に保存されたデータや、インターネット上のサービスのアカウントを指します。

    特に注意が必要なのが、以下の「目に見えない財産」です。

    ・ネット銀行や証券口座(通帳や郵送物がないため、家族が気づけない) ・電子マネーやポイント(残高があっても、スマホのロックが解除できないと確認困難) ・サブスクリプション(月額制の動画配信や音楽サービス。解約しない限り月会費が発生し続ける)

    もし、ご家族がこれらの存在を知らないまま放置してしまうと、せっかくの資産を受け取れなかったり、使っていないサービスの料金が口座から引き落とされ続けたりといったトラブルを招くことになります。

    2.家族が困らないために今すぐできる「デジタル整理術」

    「デジタル遺品」の対策と聞くと、難しく感じるかもしれません。ですが、最も大切なのは「家族に存在を知らせる」という、とてもシンプルな一歩です。

    まずは以下の2点を、無理のない範囲で進めてみませんか?

    ・財産の「所在」をメモに残す 「〇〇銀行のネット専用口座がある」「〇〇証券で株を運用している」といった金融機関名だけでも、メモやエンディングノートに書き留めておきましょう。これだけで、ご家族の負担は劇的に減ります。

    ・スペアキーとしてのパスワード管理 スマートフォンのロック解除番号や、メインで使用しているメールアドレスのパスワードは、いざという時に信頼できる家族だけが確認できる場所に保管しておきましょう。最近では、自分が亡くなった後に特定の相手へデータを引き継げる「デジタル遺言」のようなスマホ機能(iPhoneの「故人アカウント連絡先」など)もありますので、これらを活用するのも一つの手です。

    完璧を目指す必要はありません。「自分がもし明日入院したら、家族は困らないかな?」という視点で、少しずつ整理を始めてみましょう。

    3.【重要】令和6年4月から「相続登記」が義務化されました

    これまでは、亡くなった方の名義のまま不動産(土地や建物)を放置していても、法律上の罰則はありませんでした。しかし、令和6年4月1日から「相続登記の義務化」がスタートし、ルールが大きく変わりました。

    新しいルールでは、不動産を相続したことを知った日から「3年以内」に名義変更の手続きを行わなければなりません。

    「実家は誰も住まないし、そのままでもいいだろう」 そう思って正当な理由なく放置してしまうと、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)を科せられる可能性があります。

    「昔から放置している物件があるけれど、どうすればいい?」と心配される方もいらっしゃるでしょう。実は、この義務化は「制度が始まる前に亡くなった方の不動産」にも適用されます。心当たりがある場合は、早めに専門家へ相談し、現状を確認しておくことをお勧めします。

    4.「負動産」にしないために。実家の名義変更をスムーズに進めるコツ

    名義変更を後回しにする最大のリスクは、罰金(過料)だけではありません。時間が経てば経つほど、本来の相続人が亡くなり、その子供たちへと「相続権」が枝分かれしてしまいます。

    これを「数珠つなぎ相続」と呼んだりしますが、いざ売却しようと思った時には、面識のない遠い親戚数十人のハンコが必要になる……というケースも珍しくありません。

    もし「管理が大変で、どうしても引き取り手がいない土地」がある場合は、新しく始まった「相続土地国庫帰属制度」という選択肢もあります。一定の審査や負担金は必要ですが、国に土地を返すことができる画期的な制度です。

    「負の遺産」を次の世代に残さないためにも、今のうちに名義を整え、出口戦略を立てておくことが大切です。

    おわりに:その「気がかり」、一つずつ紐解いていきましょう

    デジタル遺品に、義務化された相続登記。 「やらなければならないこと」が山積みのように感じて、ため息が出てしまうかもしれません。

    でも、ご安心ください。「何から手を付ければいいか分からない」と悩むのは、あなたがご家族のことを真剣に想っている証拠です。

    私たちは、法律の知識を使って、複雑に絡まった「手続きの糸」を皆さまと一緒に解きほぐす専門家です。

    まずは今の状況を、誰かに話してみる。それだけで、今夜の不安が少しだけ軽くなるはずです。当事務所では、初回のご相談を無料でお受けしております。

    「こんな小さなこと、聞いてもいいのかな?」 そう思われることこそ、ぜひお話しください。あなたの「これから」を、一緒に整えていきましょう。