第48回 【警告】認知症で「ハンコ」が押せない!資産凍結リスクと、目前に迫る「事業承継税制」の最終期限

「自分はまだ大丈夫」「物忘れくらいで会社は潰れない」——もしそうお考えなら、それは非常に危険な思い込みかもしれません。

法務の現場では、社長が認知症になったことで**「会社の全機能がストップする」**という悲劇が、今この瞬間も起きています。2026年現在、中小企業の経営者の平均年齢は上昇し続けており、認知症はもはや「万が一」の病気ではなく、経営における「最大のリスク」となりました。

本記事では、なぜ社長の認知症が「会社の死」に直結するのか、その恐ろしい3つの真実をお伝えします。


1. 認知症が「会社の死」に直結する3つの理由

社長の意思表示ができなくなるということは、法的には「経営のハンドルを握る人がいなくなる」ことを意味します。具体的には、以下の3つの機能不全が会社を襲います。

① 銀行口座の凍結:給与が払えない、決済ができない

銀行は、名義人の判断能力が不十分であると知った場合、預金者の財産を守るために口座を凍結します。

これは社長個人の預金口座だけではありません。社長が実質的な決定権を持つ法人口座においても、融資の実行や契約更新の際に「社長の意思確認」ができないと判断されれば、資金調達がストップする恐れがあります。 「手元にキャッシュはあるのに、引き出せない。従業員の給与が払えない。」 この状態に陥った会社が、その後どうなるかは想像に難くありません。

② 経営決定権の喪失:会社が「意思を持たない箱」になる

多くの中小企業では、社長が筆頭株主として「議決権」を握っています。しかし、認知症で判断能力を失うと、この議決権を行使することができなくなります。

  • 役員の選任・解任ができない: 後継者を役員に据えることも、引退することもできません。
  • 定款の変更ができない: 時代に合わせた組織改編や、事業承継のための準備がすべて止まります。
  • 重要資産の売却ができない: 会社の土地を売って資金繰りに充てる、といった経営判断も法的に無効となります。

つまり、会社が「何も決められない、動けない箱」と化してしまうのです。

③ 契約更新の停止:取引先・金融機関からの「信用失墜」

ビジネスは「信用」で成り立っています。取引先や銀行は、常に「この会社は将来も存続できるか?」を見ています。

もし、社長が認知症であることが対外的に知れ渡れば、**「この会社との契約を更新しても大丈夫か?」「誰が責任を持って判をついているのか?」**という疑念を抱かれます。最悪の場合、取引の停止や、銀行からの「債務の繰り上げ返済」を求められることすらあります。

認知症は、単なる健康問題ではありません。会社のブランドと信用を一瞬で崩壊させる「経営上の致命的なインシデント」なのです。

2. 【緊急】2026年3月末まで!「特例事業承継税制」の門が閉まります

認知症リスクという「いつ起こるかわからない不安」に加え、今すべての経営者が直面している「明確な期限」があります。

それが、「特例事業承継税制(特例承継計画)」の提出期限です。

あと2ヶ月の猶予:2026年3月31日が最終リミット

後継者が自社株を引き継ぐ際の贈与税・相続税が**「実質ゼロ」になるという、かつてない極めて有利なこの特例。その適用を受けるために必須となる「特例承継計画」の提出期限が、いよいよ2026年3月31日**に迫っています。

「まだ2ヶ月ある」と思われるかもしれません。しかし、法務・税務の手続きには、現状の株価評価、後継者の選定、遺言書の調整、そして認定経営革新等支援機関による確認など、膨大な準備が必要です。今すぐ着手しなければ、物理的に間に合わないタイミングに来ています。

認知症との「二重の罠」

ここで恐ろしいのが、第1章でお伝えした「認知症リスク」との兼ね合いです。 特例事業承継税制の活用を検討していても、提出期限までの間に社長が認知症を発症し、判断能力を失ってしまったらどうなるでしょうか?

  • 計画への同意ができない: 社長本人の意思確認ができなければ、手続きは進められません。
  • 贈与の実行ができない: 税制を活用するための「株の贈与」そのものが法的に不可能になります。

期限が迫る焦りの中で、社長の健康に異変が起きた瞬間、数千万〜数億円という莫大な節税チャンスが永遠に失われる。これが、今そこにあるリアルな危機なのです。

「知らなかった」では済まされない税負担の差

この期限を逃すと、従来からある「一般措置」しか使えなくなります。一般措置では納税猶予が全額ではなく、要件も格段に厳しくなります。

「うちはまだ先のことだから」と放置した結果、数年後に社長が倒れ、多額の相続税を支払うために会社を切り売りする……。そんな最悪の事態を防ぐためのラストチャンスが、この2026年3月31日なのです。

3. 【実録】「あの時やっておけば…」後悔する後継者たちの苦悩

「社長が認知症になっても、家族がなんとかすれば大丈夫だろう」 そう楽観視されている方は少なくありません。しかし、法治国家である日本では、家族であっても「法的な権限」がなければ、会社の資産や契約に触れることは一切許されません。

実際に当事務所に寄せられた、準備を後回しにしたために起きた悲劇の実例をご紹介します。

ケース1:銀行口座の凍結で「給与」が払えない

製造業を営むA社の社長(75歳)が、脳梗塞の後遺症で認知症を発症しました。 幸い命に別状はありませんでしたが、意思疎通が困難に。銀行がその事実を知った瞬間、社長名義の預金口座だけでなく、一部の法人口座も事実上の凍結状態となりました。

二代目の息子さんは「自分がサインするから」と必死に訴えましたが、銀行の回答は冷徹でした。「社長ご本人の意思確認ができない以上、出金は認められません」。 結果、毎月の従業員の給与支払いのために、息子さんは個人の貯金を切り崩し、親戚中から借金をして回るという地獄を味わうことになったのです。

ケース2:成年後見制度の罠。「経営を知らない他人」が介入してくる現実

不動産管理会社のB社長が認知症になった際、家族はやむを得ず「成年後見制度」を利用しました。 しかし、ここで大きな誤算が生じます。家庭裁判所が選任した「成年後見人」は、経営に詳しい親族ではなく、**全く面識のない専門家(弁護士や司法書士)**でした。

成年後見人の役割は、あくまで「本人の財産を守ること」です。 「新しい事業に投資したい」「節税のために資産を動かしたい」という二代目の提案に対し、後見人は**「リスクがあることは認められません」**とすべて却下。会社を成長させるための経営判断が一切できなくなり、B社は緩やかに衰退の道を辿ることになってしまいました。

4. 解決策:認知症対策×税制活用を両立させる「攻めの備え」

認知症による資産凍結を防ぎ、かつ3月31日までの税制優遇も逃さない。この二難を解決する最強のスキームが、「家族信託」を活用した事業承継です。

「経営権」と「財産権」を切り分ける

これまでの承継は「株を譲る(=経営権も財産価値も一度に移る)」という一択でした。しかし家族信託を使えば、これらを切り離して管理できます。

  • 経営権(議決権): 後継者に託す。これにより、社長がもしもの時も後継者がスムーズにハンコを押せます。
  • 財産権(株の価値): 社長が持ち続ける(または受益権として指定する)。

これにより、社長は「元気なうちは自分が実権を握り、認知症になった瞬間、自動的に後継者にバトンを渡す」という魔法のような設定が可能になります。成年後見制度のように、「経営を知らない外部の専門家」に会社をかき回される心配もありません。

事業承継税制との「同時並行」がカギ

2026年3月31日が期限の「特例事業承継税制」は、株を贈与することが前提ですが、実は**「信託」と組み合わせることも可能**です(※専門的な設計が必要です)。

  1. 特例承継計画の提出: まずは3月31日までに計画を出し、税制優遇の切符を確保する。
  2. 信託契約の締結: 認知症になっても計画が頓挫しないよう、法的なバックアップ(家族信託)を敷く。

この「二段構え」こそが、2026年現在、最も賢明な経営者が選んでいる選択肢です。

「まだ早い」が「もう遅い」に変わる前に

家族信託も事業承継税制も、共通する絶対条件が一つだけあります。それは、**「社長本人に、しっかりとした判断能力があること」**です。

一度でも「認知症」の診断が下り、判断能力が不十分とみなされれば、これらの高度な法的スキームは一切使えなくなります。そうなれば、残された家族や社員には、第3章で見たような「悲劇」を強いることになってしまうのです。

5. 2026年最新版!「うちの会社は間に合うか?」緊急チェックリスト

ここまでお読みいただき、「うちは大丈夫だろうか」と不安を感じられた方も多いはずです。

そこで、現在地を確認するための**「事業承継・認知症リスク診断」**を用意しました。以下の項目に1つでもチェックが入る場合は、今すぐ専門家への相談が必要です。

チェック項目リスクの内容
□ 社長の年齢が70歳を超えている統計上、認知症発症リスクが急増する年齢です。
□ 「特例承継計画」をまだ提出していない2026年3月31日で節税のチャンスが消滅します。
□ 後継者は決まっているが、株は渡していない社長が倒れた瞬間、経営権がロックされます。
□ 顧問税理士から「認知症対策」の話がない税務だけでなく「法務(信託・遺言)」の備えが漏れています。
□ 最近、同じ話を繰り返すことが増えた予兆を見逃すと、法的な契約が結べなくなります。

【診断結果】

チェックが1つ以上:**「黄色信号」です。今ならまだ間に合いますが、準備を急ぐ必要があります。

チェックが3つ以上:「赤信号」**です。一刻の猶予もありません。3月31日の期限、そして健康リスクの両面で「手遅れ」になる寸前です。


6. まとめ:経営者の最後の仕事は「自分がいない後」を整えること

経営者にとって、会社は人生そのものです。

これまで幾多の荒波を乗り越えてこられたことでしょう。しかし、**「自分自身の衰え(認知症)」と「法的な期限(3月31日)」**だけは、気合や根性で乗り越えることはできません。

もし、今あなたが対策を後回しにすれば、苦労するのは残されたご家族や、あなたを信じてついてきた従業員たちです。

  • 事業承継税制で、会社のお金を守る。
  • 家族信託で、会社の経営権を守る。

この2つを同時に進められる時間は、もう残りわずかです。

「あの時、相談しておけばよかった」と後悔する前に、まずはご相談ください。

第47回 1円でも売れない「負動産」を合法的に手放す方法 相続土地国庫帰属制度の落とし穴と、プロが教える現実的な解決策

「親が残してくれた土地だから、大切にしなければ……」

そう思っていたはずなのに、気づけば毎年の固定資産税や草むしりの管理費用、そして「もし何かあったら」という心理的な重荷に。

今、こうした**「負動産(ふどうさん)」**に悩む方が増えています。

特に2023年からスタートした**「相続土地国庫帰属制度」は、「いらない土地を国が引き取ってくれる」という夢のような制度として期待されました。しかし、いざ蓋を開けてみると、そこには一般の方が一人で突破するには高すぎる壁**がいくつも存在しています。

「国が引き取ってくれると思っていたのに、審査で落とされた」

「結局、手放すために数百万円の持ち出しが必要になった」

そんな後悔をしないために、まずはこの制度の「残酷な真実」を知ることから始めてください。


1. 「相続土地国庫帰属制度」は救世主か? 制度の基本を整理

これまで、一度相続した土地は「いらないから捨てる」という選択肢がありませんでした。それを、一定の条件を満たせば国に返還できる(所有権を移転できる)ようにしたのが、この制度です。

背景には、2024年4月から始まった**「相続登記の義務化」**があります。

「放置しておけばいい」という逃げ道が事実上なくなり、過料(罰金)のリスクが発生する中で、国もようやく「手放すための出口」を用意した形です。

2. 【衝撃の現実】なぜ、あなたの土地は「国に拒否」されるのか?

YouTubeやSNSでも話題になっていますが、この制度は**「どんな土地でも引き取ってくれる」わけではありません。** むしろ、国は「管理に手間がかかる土地」は徹底的に排除しようとしています。

特に注意すべき**「3つの拒絶理由」**がこちらです。

拒絶される主な理由内容の詳細
建物が立っている建物は100%NGです。古家がある場合は、自費で解体して更地にする必要があります。
境界が不明確隣地との境界がハッキリしていない土地は審査すら受けられません。確定測量には多額の費用がかかることも。
崖地・担保権の設定一定以上の勾配がある崖地や、抵当権などがついたままの土地は引き取ってもらえません。

3. 「お金を払って」引き取ってもらうという矛盾

「土地を国に譲るのだから、タダ、あるいは少しはプラスになるのでは?」

そう考える方も多いですが、現実は逆です。

この制度を利用するには、審査手数料に加え、国が今後10年間管理するための**「負担金」**を支払う必要があります。

  • 審査手数料: 土地1筆につき14,000円
  • 負担金: 原則として20万円〜(宅地、農地、山林など種別による)

つまり、「更地にする解体費用」+「測量費用」+「負担金」を合わせると、手放すために100万円単位の支出が必要になるケースも珍しくないのです。

4. 国庫帰属がダメならどうする? プロが教える「負動産処分」の代替案

「うちの土地は国に引き取ってもらえそうにない……」と肩を落とすのはまだ早いです。国庫帰属制度はあくまで「手段の一つ」。司法書士の現場では、他にもいくつかの解決ルートを組み合わせて検討します。

  • ① 隣地所有者への「寄付・譲渡」の打診 国は厳しくても、隣の土地の持ち主なら「格安(あるいはタダ)なら、自分の土地を広げるために欲しい」と考えるケースは意外と多いものです。個人間の交渉はトラブルになりやすいため、我々のような専門家が「法的な道筋」を立てて交渉をサポートします。
  • ② 「負動産」専門の買取・処分業者への相談 近年、一般の不動産屋が扱わないような「売れない土地」を専門に引き取る業者が現れています。処分費用を支払う形にはなりますが、国庫帰属の厳しい条件をクリアする手間と時間を考えれば、トータルで安く、確実に手放せる場合があります。
  • ③ 「相続土地管理命令制度」の活用 特定の相続人が管理しきれない場合、裁判所に申し立てて管理人に委ねる新しい制度も始まっています。どの制度が最適かは、土地の状況や相続人の構成によって全く異なります。

5. 「何もしない」が最大のリスク。2024年からの義務化に備える

最もやってはいけないのが、**「放置」**です。

2024年4月から相続登記が義務化されました。放置し続けると最高10万円の過料(罰金)が科される可能性があるだけでなく、時が経てば経つほど、隣地との境界が分からなくなったり、相続人が枝分かれして権利関係が複雑になったりと、処分コストは膨れ上がる一方です。

「いつか誰かがやるだろう」の「いつか」は、残念ながら勝手にはやってきません。

6. まとめ:あなたの代で「負の連鎖」を断ち切るために

相続土地国庫帰属制度は、決して魔法の杖ではありません。しかし、法改正によって「いらない土地を手放すための選択肢」が確実に増えているのも事実です。

当事務所では、単に書類を作成するだけでなく、「負動産」の御相談もお受けしております。

  • あなたの土地が「国庫帰属」できる可能性の判定
  • 更地にする費用と、そのまま持ち続ける費用のシミュレーション
  • 国庫帰属が難しい場合の、次なる解決策の提示

「固定資産税の通知書を見るたびに溜息が出る」 そんな毎日は、もう終わりにしませんか?

まずは一度、あなたの手元にある資料を持ってご相談ください。プロの視点で、あなたの家族が将来にわたって笑顔でいられるための「出口戦略」を一緒に描き出します。

第46回 【社長の終活】認知症で自社株が凍結?事業承継の「2027年期限」と家族信託で会社を守る全手法

はじめに:社長、その「平等」が会社を殺すかもしれません

司法書士の時任です。

2026年(令和8年)1月。

新年あけましておめでとうございます。

本年も宜しくお願い致します。

つくば市の寒さも厳しくなってきましたが、経営者の皆様にとっては、もっと背筋が凍るような「期限」が迫っていることをご存知でしょうか。

  • 「うちは息子が継ぐから大丈夫」
  • 「株は兄弟仲良く分ければいい」

もしそう思われているなら、この記事はあなたの会社を救うことになるかもしれません。

なぜなら、中小企業の廃業理由の多くは、業績不振ではなく、**「社長の老化(認知症)」「親子の対話不足」**による経営の麻痺だからです。

今日は、きれいごとは抜きにして、社長が元気なうちに打つべき3つのポイントを、現場のリアルな事例を交えて解説します。

  1. 「法務(家族信託)」
  2. 「税務(事業承継税制)」
  3. 一番難しい「親子の対話」

第1章:最大のリスクは「社長の認知症」による資産凍結

まず、個人の終活として絶対に避けていただきたいリスクがあります。 それは**「資産の凍結」**です。

社長がもし今日、脳梗塞や認知症で意思表示ができなくなったら、銀行口座が凍結されることはご存知かと思います。しかし、経営者にとっての悪夢はそこではありません。

「自社株の議決権」が凍結されるのです。

株主総会で誰も賛成の手を挙げられなくなります。 役員の選任も、銀行融資の担保設定も、定款変更も一切できなくなります。 会社は「植物状態」に陥ります。

既存の制度(遺言・後見)の限界

  • 「遺言があるから大丈夫」? 残念ながら、遺言は「死んでから」しか効力を発揮しません。認知症の期間中は無力です。
  • 「成年後見制度を使う」? これも経営者には劇薬です。後見人(弁護士等)がつくと、裁判所の管理下に入り、「株式の運用」や「積極的な投資」は財産保全の観点から制限されます。 つまり、経営の自由が失われます。

切り札としての「家族信託」

そこで今、最強の解決策となるのが**「家族信託(かぞくしんたく)」**です。 仕組みはシンプルです。

  • 委託者(社長): 財産を預ける
  • 受託者(後継者): 財産を管理・運用する
  • 受益者(社長): 利益を受け取る

この仕組みを使えば、**「名義(管理権限)は息子に移し、利益と指図権(実権)は社長が持ち続ける」**ことが可能です。

車に例えるなら、 「息子を運転席に座らせてハンドルを握らせ(受託者)、社長は後部座席から行き先を指示する(指図権)」 という状態を作れます。

これなら、もし社長が後部座席で居眠り(認知症)をしても、運転席の息子さんがそのまま会社を走らせることができます。資産凍結リスクを回避しつつ、権限移譲のトレーニング期間を作ることができるのです。


第2章:【緊急】あと2ヶ月!事業承継税制のラストチャンス

次に、「カネ(税金)」の話です。 自社株の評価額が高い会社にとって、贈与税・相続税は死活問題です。

現在、**「事業承継税制(特例措置)」という、自社株にかかる納税を実質100%猶予(ゼロに)**できる特例があります。

しかし、この制度を使うための「特例承継計画」の提出期限が、2026年(令和8年)3月31日に迫っています。

残り2ヶ月です。

この期限までに計画書を県に出しておかないと、将来この特例を使いたくても門前払いされます。

重要なのは、**「計画書を出したからといって、必ず制度を使わなくてもいい」**ということです。「とりあえず出しておいて、やっぱり使わない」という選択も可能です。

選択肢を消さないために、まずは顧問税理士に連絡し、計画書だけでも提出しておくことを強くお勧めします。


第3章:自社株は「分けるな」。集中させろ

冒頭で触れた「兄弟仲良く株を分ける」という考え方。 これは、会社経営においては**「悪」**です。

株が分散すると、後継者が何か新しい事業を始めようとした時、株を持つ他の兄弟や親戚から 「配当を出せ」 「そんな投資は認めない」 と反対され、何も決められない会社になってしまいます。

「後継者に株(議決権)を集中させる」。 これが鉄則です。

他の兄弟の遺留分(最低限の取り分)が問題になる場合は、「除外合意」や「固定合意」といった民法の特例を使って、経営用の資産を守る防波堤を築く必要があります。


第4章:泥沼の「親子ゲンカ」を防ぐ対話の技術

法務と税務が整っても、最後に立ちはだかる最大の壁があります。 **「感情」**です。

あるパネルディスカッションでの事例です。 建設会社を営む社長と息子さんが、事業承継を巡って毎日怒鳴り合いの喧嘩をしていました。父は「まだ早い、覚悟が足りない」と言い、息子は「古臭い、任せてくれない」と嘆く。

しかし、彼らは乗り越えました。 ポイントは3つありました。

  1. 第三者を入れる: 親子だと感情的になります。商工会や専門家を交えることで、冷静な「通訳」が可能になります。
  2. 期限(Xデー)を決める: 「いつか譲る」ではなく「65歳で譲る」と決めたことで、親には「教える覚悟」、子には「学ぶ覚悟」が生まれました。
  3. 経営指針(ビジョン)の共有: 過去の武勇伝ではなく、「なぜこの会社があるのか(理念)」を明文化し、共有しました。

後継者が本当に欲しいのは、株や金だけではありません。 **「親父が何を大切にしてきたか」という「見えない資産(知的資産)」**なのです。


結び:最後のラブレター「付言事項」

事業承継や相続において、法的な手続き(遺言書や信託契約)は「体」を守るものですが、「心」を守るものが必要です。

それが**「付言事項(ふげんじこう)」**です。 遺言書の最後に添える、法的な効力のないメッセージのことです。

「長男へ。お前に株を集中させたのは、会社と従業員を守る責任を託すためだ。苦労をかけるが頼んだぞ」

「次男へ。お前には株を渡せないが、その分、預貯金で配慮したつもりだ。兄を支えてやってくれ」

この数行があるだけで、残された家族の「納得感」は劇的に変わります。 争族を防ぐのは、法律ではなく**「言葉」**なのです。


追伸:その「一歩」をいつ踏み出しますか?

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。 「やらなきゃいけないのは分かったけど、何から始めれば……」 そう思われた社長のために、つくば市商工会の主催で私が講師を務めるセミナーを開催します。

つくば市商工会【社長のための終活と事業承継セミナー】

  • 日時: 2026年(令和8年)1月28日(水) 14:00〜16:00
  • 場所: つくば市大穂交流センター
  • 講師: 司法書士 時任 裕

当日は、以下の**「3つの配布ツール」**をプレゼントします。

  1. 社長のための終活セルフチェックシート(認知症リスク診断)
  2. 事業承継・自社株現状整理シート(Xデーの設定)
  3. 家族と話すためのきっかけ質問集(会話のドアノックツール)

特に「2027年問題」の期限は待ってくれません。家族信託の組成にも最短で3ヶ月はかかります。

会社と家族を守るために、まずはセミナーで情報を整理することから始めてみませんか? 会場でお会いできることを楽しみにしています。

司法書士事務所TOKITO 代表 時任 裕

第45回 つくば廃墟怪談の裏側~司法書士TOKITOの挑戦〜


【再生・X】

見捨てられた廃墟に命を吹き込め

茨城県つくば市谷田部。
かつて陣屋町として栄え、交通の要衝だったこの街に、
長年、人の手が入らないまま残されてきた建物があります。

昭和元年に建てられた
旧横田医院です。

外壁は剥がれ、窓は曇り、
診察室には古い医療器具が今も残っています。

地元では、
「廃墟」「いずれ壊される建物」
そんなふうに言われる存在でした。


相続相談から始まった話

2024年10月。
私の事務所に、一本の電話が入りました。

相談者は、東京に住む女性。
祖父の相続不動産についての相談でした。

「祖父が昔使っていた診療所が、
長年、空き家になっています。
相続対策として、どうしたらいいでしょうか」

祖父は99歳。
診療所は、すでに10年以上使われていませんでした。

私は現地を確認し、
不動産業者にも相談しました。

返ってくる答えは、どこも同じでした。

「解体して更地にするしかないですね」
「アパート用地が現実的です」

不動産として見れば、
それが正解なのだと思います。


それでも壊せなかった理由

何度か現地に足を運ぶうちに、
私はある違和感を覚えるようになりました。

室内に入ると、
まず天井に目を奪われました。

格天井。
屋久杉を使った天井材。
そして、うねるように歪んだガラス。

紫や黄色が溶け込んだ色ガラスは、
100年前の時間を、
そのまま閉じ込めているようでした。

単に古いのではなく、
当時の技術と美意識が、
手間を惜しまず注ぎ込まれている建物。

今の建築では、
コストや工期の制約を考えれば、
まず選ばれない素材や構造ばかりです。

その場に立つたび、
心の中で問いが浮かびました。

「本当に、
この建物は“役目を終えた”と
言い切ってしまっていいのだろうか」

そう考えながらも、
答えはすぐに出ませんでした。


買い取るという決断

最終的に、
私は所有者の方に提案しました。

「もし可能であれば、
私が買い取らせていただけませんか」

司法書士事務所として活用しながら、
時間をかけて手を入れ、
できる限り残していきたい。

医師として地域に貢献してきた
お祖父様の建物を、
形を変えて引き継ぎたいと考えたのです。

「解体せずに使ってもらえるなら、
祖父も喜ぶと思います」

そう言っていただき、
2024年12月27日、売買契約が成立しました。


想像以上に厳しかった現実

取得後、
すぐに現実に直面しました。

隣接する居宅部分は
司法書士事務所として整えられましたが、
医院棟は手付かずのまま。

改修の見積もりは高額で、
すぐに手を出せる状況ではありません。

試しに、
コスプレイヤー向けの撮影スタジオとして
貸し出してみました。

しかし、
暖房も冷房もなく、
半年間で利用は1件だけ。

正直、
「このまま持ち続けていけるのだろうか」
そう思うこともありました。


転機

転機になったのが、
つくば市周辺市街地で活動する人材を育成する
伴走支援プログラム Story.8 への参加でした。

そこで出会ったのが、
ディレクターの 南馬越一義 氏です。

スターバックスコーヒーや
スパメッツァおおたかなど、
数々のプロジェクトを手がけ、
「ビームス ディレクターズバンク」でも活躍する
クリエイティブのプロフェッショナルでした。

建物の話をすると、
南馬越氏は言いました。

「建物改修なんて、しなくていい」
「そのまま使いましょう」

「廃墟を、
観光資源として見てみませんか」
「ここは、お化け屋敷として
使えると思います」

正直、戸惑いました。

私が思い描いていたのは、
古き良き建物を活かした
落ち着いた空間だったからです。

「地域の人は受け入れてくれるだろうか」

そう思いながらも、
最終的に私は決断しました。

自分の理想を一度脇に置き、
プロの視点に委ねてみようと。


横田医院が動き出した

こうして始まったのが、
横田医院お化け屋敷プロジェクトです。

廃墟であることを隠さず、
その空間そのものを
体験として届ける。

都市ボーイズさん、
そして地元クリエイターの力を借りながら、
準備を進めました。

コンセプトは明確でした。

外壁は剥がれ落ち、
窓は曇り、
診察室には古い医療器具がそのまま残る。

まるで、
誰かが今も
ここで診察を続けているかのような空間。

廃墟であることを隠すのではなく、
その圧倒的な存在感を
そのまま作品にする。

恐怖と同時に、
言葉にできない魅力に引き込まれる
「異形の美」を目指しました。

関連グッズの開発も進めました。

グッズデザインは、
ヒッチコックの名作
『サイコ』へのオマージュ。

制作したTシャツやトートバッグは、
洗濯を重ねることで
プリントが擦れ、
より廃墟らしい風合いが増すように
設計されています。

退廃と美が同居する、
怪談的な風景。


そして、、、

2025年12月26日。
「つくば廃墟怪談 in 横田医院」 を開催しました。

告知と同時に、
ネット上は大きな反響を呼びました。

チケットは、
発売開始からわずか9分で完売。

かつて、
半年で1件しか利用されなかった建物に、
全国から注目が集まりました。


これからについて

旧横田医院は、
ようやくスタートラインに立ったばかりです。

改修も、活用も、
これから少しずつ進めていきます。

「壊すしかない」と言われた建物にも、
別の可能性がある。

この経験から、
私はそう感じています。


空地・空家で悩んでいる方へ

空地や空家について、

「どうせ売れない」
「解体するしかない」

そう感じている方は、
少なくないと思います。

ですが、
法律の整理と、
少し視点を変えることで、
別の道が見えることもあります。

空地・空家の相談を、
司法書士時任にしてみませんか。

不動産の背景にある
歴史や想いも含めて、
一緒に考えていけたらと思います。


第44回 親が元気な今だから考えたい相続対策|“まだ大丈夫”が一番危ない理由を司法書士が解

親が元気な今こそ、相続の話をしておく意味

「相続の話は、まだ早い気がする」
多くの方が、そう感じています。

親が元気に生活していて、大きな病気もない。
そんな状況で相続の話を切り出すのは、気が引けるものです。

ただ、司法書士として20年以上、相続や生前対策の相談を受けてきた立場から言えるのは、
“元気な今だからこそできること”が、実は一番多いという事実です。

相続対策は、「亡くなった後」の話だけではありません。

むしろ、本当に大切なのは、
生きている間の備えです。


「まだ大丈夫」が通用しなくなる瞬間

相続相談で多いのが、次のような声です。

  • 「もう少し元気なうちに話しておけばよかった」
  • 「判断能力が下がってからでは、何も決められなかった」

ここで重要なのが、判断能力という考え方です。

判断能力とは、
「自分の財産や契約内容を理解し、意思決定できる力」のことをいいます。

年齢に関係なく、
ある日突然、判断能力が十分とは言えない状態になることも珍しくありません。

そうなると、

  • 遺言を作る
  • 不動産を売る
  • 預金を動かす
  • 家族信託を始める

こうしたことが、
一気に難しくなる可能性があります。


相続は「家族の問題」になりやすい

相続トラブルというと、
「財産が多い家の話」と思われがちです。

しかし実際には、

  • 自宅不動産しかない
  • 預貯金がそれほど多くない

こうしたご家庭でも、
揉めるケースは少なくありません。

理由は、とてもシンプルです。

  • 誰が実家を引き継ぐのか
  • 介護をしてきた人の気持ちはどう扱うのか
  • 生前に渡したお金はどう考えるのか

家族それぞれの“思い”が食い違うからです。

そして、
話し合いができないまま相続が始まると、
感情のもつれが一気に表に出てしまいます。


生前にできる代表的な相続対策

「じゃあ、具体的に何をすればいいの?」
そう感じた方も多いと思います。

ここでは、
実務でよく使われる代表的な生前対策を紹介します。


遺言書で「意思」を残す

遺言書は、
誰に何を残したいのかを明確に伝える手段です。

特に、

  • 不動産がある
  • 子どもが複数いる
  • 再婚や相続人が複雑

こうした場合には、
遺言があるかどうかで結果が大きく変わります。

「きちんと書けば揉めない」というより、
話し合いの土台を作るというイメージが近いかもしれません。


家族信託という選択肢

最近、相談が増えているのが、家族信託です。

家族信託は、
元気なうちに信頼できる家族に、
財産管理を託す仕組みです。

  • 認知症への備え
  • 不動産の管理・処分
  • 生活費や介護費の確保

こうした点を、
柔軟に設計できるのが特徴です。

ただし、
誰にでも必要というわけではありません

家族関係や財産内容によって、
向き・不向きがあります。


家族で話すこと自体が最大の対策

制度以上に大切なのが、
家族で一度きちんと話すことです。

  • 親は何を大切にしているのか
  • 子どもたちは何を不安に感じているのか

完璧な結論が出なくても構いません。

「話したことがある」という事実そのものが、
将来のトラブルを大きく減らします。


司法書士が現場で感じる「後悔しがちなケース」

現場でよく感じるのは、
「もう少し早ければ、選択肢があったのに」という場面です。

  • 判断能力が低下してから相談に来られる
  • 家族の意見が対立してから初めて話し合う
  • 書類を整える時間が足りない

こうなると、
できる対策は、
どうしても限られてしまいます。

逆に、
早めに相談される方ほど、穏やかに準備が進む傾向があります。


今からでも遅くありません

ここまで読んで、

「うちはまだ大丈夫かな…」
「何から始めればいいのだろう…」

そう感じている方も、
多いと思います。

大切なのは、
完璧な準備を一気にやろうとしないことです。

  • 情報を知る
  • 家族で話す
  • 専門家に一度相談する

この一歩だけでも、
将来の安心感は大きく変わります。

相続や生前対策は、
家族を思う気持ちの延長線にあるものです。

「今から備えれば大丈夫」
その選択を、ぜひしていただきたいと思います。


司法書士としてお手伝いできること

司法書士は、

  • 相続手続き
  • 遺言書作成
  • 家族信託
  • 認知症への法的備え

こうした分野を、
中立的な立場で整理する専門家です。

「まだ具体的じゃないけど不安」
「家族にどう話せばいいか分からない」

そんな段階でも、
構いません。

一度、私たちと話すことで、
頭の中が整理され、
次の一歩が見えてくると思います。

第43回 都市ボーイズ つくば廃墟怪談in横田医院12/26

私が、ビームス ディレクターズバンク南馬越氏、つくば市と手がける周辺市街地復興プログラムの一環で開催する怪談イベント

「つくば廃墟怪談in横田医院

(都市ボーイズプロデュース)」

が配信決定しました。12/26金です。

アーカイブ視聴が1週間できます。

年末年始のお供にぜひ。皆さまのお申込みをお待ちしております。

https://peatix.com/event/4749003/view

監修

つくば市周辺市街地で活躍する人材を育成する伴走支援プログラム「Story.8」

ディレクター 南馬越一義
(株式会社ビームス ディレクターズバンク、クリエイティブディレクター)
ウィメンズレーベル「RayBEAMS」のバイヤーや「ビームス創造研究所」の所長を経て現職。
これまで、全国の伝統的なものづくりに現代的な要素を掛け合わせるコラボレーション企画などを行う。
三越伊勢丹、スターバックスジャパン、川島織物、竜泉寺の湯など、多種多様な企業とのプロジェクトを手がける。経済産業省「世界で活躍するトップクリエイター」認定。

第42回 自筆証書遺言と公正証書遺言、どう違う?

実務20年の司法書士が教える「失敗しない遺言の作り方」

「うちは揉めない」と思っていませんか?

「うちの家族は仲がいいから大丈夫」
「財産なんて大したものはないし、揉めるはずがない」

相続の現場では、そうおっしゃる方が本当に多いです。
しかし、20年以上にわたり相続の手続きをお手伝いしてきた中で感じるのは、
“揉める・揉めない”は財産の多寡ではなく、準備の有無で決まるということです。

実際、遺言がないまま相続が発生し、兄弟姉妹の間で話し合いが進まず
関係が壊れてしまうケースは少なくありません。
相続人全員が納得する形にまとめるのは、思っている以上に難しいものなのです。


遺言がないと何が起きるのか

遺言がない場合、法律に従って「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」を行います。
これは、相続人全員の合意がなければ成立しません。

たとえば――

  • 不動産を誰が相続するか決まらず、名義変更が何年も進まない
  • 預貯金の一部を引き出せず、葬儀費用の支払いに困る
  • 親の介護をしていた人が不公平だと感じ、兄弟間で口論になる

こうしたトラブルは、「誰が悪い」わけではなく、
あらかじめ意思を示す遺言がなかったことが原因です。
つまり、遺言は“争いを防ぐための準備書面”でもあるのです。


遺言が果たす本当の役割

遺言は「財産の分け方を決めるためのもの」と思われがちですが、
それだけではありません。

遺言とは、残された家族へのメッセージでもあります。

  • どのような形で感謝を伝えたいのか
  • 誰にどんな想いを託したいのか
  • 家族の生活が混乱しないようにどう配慮するか

こうした「心の整理」を形にできるのが遺言です。
“遺言=終わりの準備”ではなく、**“家族への思いやりの準備”**と考えてみてください。


遺言の種類と特徴

遺言にはいくつかの方式がありますが、代表的なのが次の2つです。

① 自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)
ご本人がすべて自筆で書く遺言書です。
費用はかからず、自宅で作成できるのが魅力ですが、形式を間違えると無効になるおそれがあります。

② 公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)
公証人が作成する公的な遺言書です。
公証役場で証人立会いのもとに作られるため、
内容の信頼性と保管の安全性が非常に高いのが特徴です。


自筆証書遺言のメリットと注意点

〈メリット〉
・自宅で簡単に作成できる
・費用がほとんどかからない
・内容を秘密にできる

〈注意点〉
・日付や署名、押印など形式を1つでも誤ると無効になる
・書き直しや訂正にルールがあり、誤るとトラブルの原因に
・相続開始後、家庭裁判所で「検認(けんにん)」という手続きが必要になる
・自宅保管だと紛失・改ざんのリスクがある

最近では「法務局での保管制度」も始まりましたが、
内容の正確性まではチェックされません
そのため、実務では「書いたけれど内容に誤りがあった」という例も珍しくありません。


公正証書遺言が選ばれる理由

公正証書遺言は、“失敗しない遺言”を作るための最も確実な方法です。

公証人(こうしょうにん)は法律の専門職であり、文面を法的に整えてくれます。
また、遺言は公証役場で保管されるため、紛失・改ざんの心配がありません

さらに、家庭裁判所での検認手続きが不要なので、
すぐに遺言を実行に移せるという大きなメリットもあります。

特に以下のような方には公正証書遺言をおすすめしています。

  • 不動産を持っている方
  • 相続人が複数いて、関係が複雑な方
  • 再婚などで家族構成が変わっている方
  • 会社経営や事業承継を考えている方

「費用が高いのでは?」と心配される方も多いですが、
遺言費用の相場は数万円から十数万円程度
家庭の平穏を守る“保険料”と考えれば、決して高いものではありません。


遺言の証人と遺言執行者についての誤解

公正証書遺言を作成する際には、2人の証人が必要です。
ただし、相続人やその配偶者は証人になれません。

「誰に頼めばいいの?」という声も多いですが、
司法書士などの専門職が立ち会うことも可能です。

また、遺言の内容を実際に実行する役割を担うのが
**遺言執行者(いごんしっこうしゃ)**です。

遺産分割や名義変更、銀行手続きなどをスムーズに行うための“実務担当者”と考えてください。
専門家が遺言執行者に指定されている場合、
相続人同士が直接やり取りせずに済むため、トラブルの予防にもつながります。


揉めない遺言に欠かせない「遺留分(いりゅうぶん)」の配慮

遺言を作るうえで見落とされがちなのが、**「遺留分」**です。
遺留分とは、法定相続人に法律上保証された「最低限の取り分」のこと。

たとえば「長男にすべてを相続させる」と書いたとしても、
他の相続人には遺留分の請求権が残ります。

この遺留分を無視した遺言は、かえってトラブルの火種になりかねません。
内容が偏りすぎていると、後で「取り戻したい」と訴えられることもあります。

したがって、「誰に何を残したいか」だけでなく、
法的なバランスをどう取るかを考慮した遺言作成が重要です。

そのためには、相続法や判例に精通した専門家によるアドバイスが欠かせません。
経験豊富な私たち司法書士にご相談いただければ、
ご家族の状況や財産の内容に合わせて、
揉めないための最適な遺言内容を一緒に設計いたします。


司法書士として伝えたい「遺言は最後の思いやり」

これまで数多くのご家族の相続に立ち会ってきましたが、
**「遺言があったおかげで、家族がもめずに済んだ」**という事例は本当に多いです。

反対に、わずかな誤解から兄弟が絶縁してしまったケースもあります。
どちらも「遺言ひとつ」で結果がまったく変わってしまうのです。

遺言とは、財産をどう分けるか以上に、
**“家族の心を守るための道しるべ”**です。

もしも「まだ早いかな」と思っている方も、
思い立った今が最適なタイミングです。


まとめ:遺言は“備え”であり“安心”です

相続は、いつか必ず訪れる現実です。
だからこそ、「まだ元気なうちに」準備することが、家族への何よりの贈り物になります。

  • 自筆証書遺言は気軽に書けるが、ミスのリスクがある
  • 公正証書遺言は手間はかかるが、確実で安心
  • 費用や証人、遺言執行者、そして遺留分も専門家に相談すればスムーズに進められる

司法書士として、私・時任がいつもお伝えしているのは、
**「遺言は争族を防ぐための“最後の思いやり”」**ということ。

ぜひ一度、遺留分を踏まえた上での公正証書遺言について、
私たち専門家にご相談ください。

準備を始めることで、安心が生まれてくると思います。

第41回 【相続のプロが直伝】「うちは仲が良い」が一番危ない?円満な老後と相続を実現する「家族会議」完全マニュアル

こんにちは。司法書士の時任(ときとう)です。
今回は、40代から70代の皆様に向けて、将来の「相続」や「老後の安心」のために非常に重要な**「家族会議」**についてお話しします。

「家族会議なんて大げさな…」「うちは仲が良いから大丈夫」と思っていませんか?
実は、そう思っているご家庭こそ、事前の話し合いが決定的に重要なのです。

なぜ今「家族会議」が必要なのか、そして失敗しないための具体的な進め方を、専門家の視点で分かりやすく解説します。


「相続なんて、まだ先の話」。そう思っていませんか?

しかし、日本は今、世界でも類を見ない超高齢社会を迎えています。
長生きは本来喜ばしいことですが、そこには**「長生きリスク」**という現実が潜んでいます。

現在、高齢者の4人に1人が認知症になると言われています。
もし、ご両親やご自身が認知症になり判断能力が低下してしまったら、どうなるでしょうか。

ご自身の財産管理、日々の消費活動、そして介護費用。
これらが突然、ストップしてしまう恐れがあります。

「誰が生活を支えるのか」「誰が財産を管理するのか」。
この指針がないまま事態が急変すると、たとえ仲の良い家族であっても混乱し、大きな負担を抱えることになります。

そうならないための唯一にして最大の防衛策――それが、元気なうちに開催する**「家族会議」**なのです。


第1章:なぜ「家族会議」が必要なのか?得られる2つのメリット

わざわざ家族全員で集まることには、明確なメリットが2つあります。
これを理解せずに進めると、ただの雑談で終わってしまいます。


メリット①:親の「想い」と子供の「思惑」のズレを解消する

相続トラブルの現場で私がよく目にするのは、親と子供の意識の決定的なズレです。

子供たちはどうしても、
「どうすれば自分の取り分が増えるか」
「自分の主張をどう通すか」
という、「数字(損得)」の議論に終始しがちです。

そこに「親がどうしたいか」という視点が抜け落ちてしまっているケースが非常に多いのです。

だからこそ、親御さん自身の口で
「これからの生活をどう送りたいか」「介護はどうしてほしいか」「財産をどう分けたいか」という方針(指針)
を語る必要があります。

もちろん遺言書を残すことも有効ですが、紙切れ一枚よりも、親の口から直接語られる「生の声」ほど、子供たちの心に深く響くものはありません。

この「想いの共有」こそが、将来の主導権争いや兄弟間の疑心暗鬼を未然に防ぐ最強の抑止力となります。


メリット②:財産の「見える化」で火種を消す

二つ目は、財産状況の共有です。
親が現在どれくらいの資産を持っているのか、毎月どれくらいの支出があり、収入があるのか。

これを家族全員に対してオープンにすることで、
「特定の兄弟が財産を使い込んだのではないか」
という疑いや、不公平感による無駄な争いを防ぐことができます。

「隠し事がない」という状態を作ることが、家族の信頼関係を盤石にするのです。


第2章:【最重要】誰が言い出すべきか?

家族会議の成功を左右する最初にして最大のハードル。
それは「誰が言い出すか」です。

結論から申し上げます。
招集は必ず「親(あなた)」から行ってください。

もし、子供側から「相続の話し合いをしよう」と持ちかけると、どうなるでしょうか。
親御さんは「俺の金が目当てか?」「早く死ねと言っているのか?」と、どうしてもネガティブな感情を抱いてしまいがちです。

これでは、話し合いのスタート地点に立つ前に心のシャッターが降りてしまいます。

円満に進めるためには、親御さん自身が
「家族のために話しておきたいことがある」
とリーダーシップを取ることが不可欠です。


第3章:失敗しないための「開催タイミング」と「メンバー構成」

では、具体的にいつ、誰と行うべきでしょうか。


タイミング:「早すぎる」がちょうどいい

開催のベストタイミングは、**「親が元気なうち」**です。
「まだ相続の話なんて早いかな?」と感じる時期こそが、実は絶好の機会なのです。

介護が必要になったり、相続が現実的な問題として顕在化したりしてからでは、冷静な判断や話し合いは難しくなります。

お盆、年末年始、ゴールデンウィークなど、家族が自然と集まるタイミングを利用して、リラックスした雰囲気で切り出してみてください。


メンバー構成:誰を呼ぶべきか

基本は「親」と「推定相続人(子供たち)」全員です。

ここで悩ましいのが、子供の配偶者(お嫁さんやお婿さん)や孫の参加です。

もちろん参加しても構いませんが、直接の相続権を持たない人が議論に加わることで、話が複雑になったり、スムーズに進まなくなったりするリスクもあります。

その場合は、あえて「今回は親子だけで話したい」と席を外してもらう配慮も必要かもしれません。

また、遠方に住んでいて集まれない家族がいる場合は、テレビ電話やWeb会議システムを使ってでも、必ず「全員」で情報を共有することを徹底してください。

誰か一人が蚊帳の外に置かれることが、後々の不満につながります。


エピローグ:専門家という「転ばぬ先の杖」

ここまで読んで、
「理屈はわかるけど、自分たちだけで冷静に話せるか不安だ」
と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

そんな時は、私たち司法書士や弁護士といった法律の専門家を同席させるのも一つの賢い選択です。

第三者が間に入ることで、感情的な対立を避け、法的に整理された建設的なアドバイスが可能になります。

家族会議は、単なる財産分けの相談ではありません。
親御さんの「人生の総仕上げ」を家族全員で支え、絆を深めるための大切な儀式です。

ぜひ、元気なうちに第一歩を踏み出してください。

第40回 アパート経営者必見!成年後見制度では守れない資産を「家族信託」で守る方法

司法書士の時任です。
ご自身の老後の備えや、ご両親の今後の資産管理について「そろそろ真剣に考えなければ」と思われている40代から70代の方は多いのではないでしょうか。

特に、ご両親がアパートなどの賃貸経営をされている場合、万が一、親御さんが認知症になってしまったら、その大切な資産はどうなってしまうのか、不安を感じるかもしれません。

今回は、**アパート経営者が認知症になっても、資産の管理や運用を円滑に継続するための画期的な対策、「家族信託」**について、具体的に解説いたします。


認知症で困る前に!アパート経営を円滑に引き継ぐ「家族信託」徹底解説


1. アパート経営者が「認知症」になると、なぜ困るのか?

賃貸経営者が認知症になると、経営に大きな支障が出ます。
なぜなら、重要な契約行為ができなくなるためです。

親御さんが認知症になると、以下のような問題が発生し、アパート経営が事実上ストップしてしまう可能性があります。

  • 預金口座からの引き出しができない
     → アパートの賃料が入る銀行口座からお金を下ろせなくなり、必要な経費や税金の支払いができなくなります。
  • 新しい入居者との契約が結べない
     → 入居希望者が現れても、賃貸借契約を結ぶことができません。
  • 大規模修繕やリフォームの契約ができない
     → 建物の維持管理に必要な修繕契約が締結できません。
  • 資産活用や売却ができない
     → 不動産の売却や建て替えといった資産活用ができなくなります。

こうした事態に備えずにいると、経営が滞り、資産価値が下落するリスクに直面します。


2. 成年後見制度では不十分な「資産活用」

認知症になってしまった場合の対策として「成年後見制度」がありますが、この制度にも限界があります。

成年後見制度を利用すれば、財産の管理や経費の支払いは可能になる場合もあります。
しかし、後見人はご本人の財産を「守る」ことを目的としているため、資産を積極的に活用する行為(投資)には制限がかかります。

例えば、

  • 大規模修繕やリフォーム → 投資と捉えられると実行できない可能性があります。
  • アパートの建設や投資用物件の購入 → 基本的にできません。
  • 相続税対策のための不動産売却 → これも難しくなります。

また、財産が多い方の場合は、弁護士や司法書士などの専門家が後見人に選任される可能性が高く、その場合、継続的に後見人への報酬が発生します。


3. 「家族信託」の仕組みと登場人物

そこで有効な対策となるのが「家族信託」です。

家族信託とは、ご本人の判断能力がしっかりしているうちに、信頼できる家族(主に子ども)との間で信託契約を結び、ご本人の財産管理・処分を託す仕組みです。

家族信託では、財産を巡る登場人物が3つの立場に分かれます。

立場役割具体例(アパート経営のケース)
委託者(いたくしゃ)元々財産を所有していた人親御さん(アパートの所有者)
受託者(じゅたくしゃ)財産を託され、管理・処分をする人お子さん(契約に基づきアパートを管理)
受益者(じゅえきしゃ)信託財産から利益(賃料)を受け取る人親御さん(アパート経営の利益を受け取る)

この場合、親御さんは「委託者」であり、「受益者」を兼ねることが一般的です。


4. 家族信託で「できること」を具体的に定める

親御さんとお子さんの間で信託契約を結び、アパートを子どもに信託(託す)します。

信託契約書の中では、お子さん(受託者)にどのような権限を与えるかを細かく定めておきます。

受託者に与えられる権限の例

  • 不動産を管理する権限
  • 入居者と賃貸借契約を結ぶ権限
  • 大規模修繕やリフォームを行う権限
  • 状況に応じて、不動産を売却・建て替えする権限
  • 新たな不動産を購入する権限(資産活用)

これにより、家族信託を組んだ後に親御さんが認知症になっても、お子さんが契約書に基づいて必要な手続きを問題なく進めることができます。
賃料の受け取りやリフォーム契約など、日常的な経営行為が滞りなく継続できます。


5. 信託財産の管理とお金の流れ

お子さんがアパートの管理を続け、入居者から賃料を受け取りますが、そのお金はお子さん個人のものではありません。

受託者であるお子さんは、受け取った賃料から必要な経費を支払い、賃貸経営を続けます。
そのお金は「信託専用の口座」で厳密に管理され、受益者である親御さんのために使われます。

具体的には、

  • 親御さんの生活費として渡す
  • 医療費や介護費の支払いに充てる

といった使い方が想定されます。


6. 相続発生時(二次相続)への備え

家族信託の大きなメリットの一つは、親御さん(委託者・受益者)が亡くなった後の資産の行方を、あらかじめ契約で指定できることです。

信託契約書に「信託の終了の仕方」や「帰属権利者(財産の承継者)」を定めておくことができます。

ケース1:親御さんの死亡で信託を終了する場合
信託を終了させ、残った信託財産を契約書で指定した帰属権利者(配偶者やお子さんなど)に引き継がせます。
受託者であるお子さんは、不動産の名義を帰属権利者に移転登記し、信託口座の残金を個人口座に振り込んで引き渡します。

ケース2:親御さんの死亡後も信託を継続する場合(二次相続対策)
信託を継続させ、引き続きお子さん(受託者)がアパートの管理を続けます。
この場合、信託契約書の中で次の受益者を定めておきます。

たとえば、次の受益者を配偶者(お子さんから見ればお母さん)とすれば、亡くなったお父様に代わり、その後の利益はお母様の生活費や医療費に充てることができます。

さらに、次の受益者(お母さん)が亡くなった後の財産の承継者についても指定可能です。
このように、家族信託は数代にわたる資産承継の設計を可能にする強力なツールなのです。


7. 家族信託を検討すべきタイミング

家族信託は、認知症対策としての財産管理に非常に有効です。
しかし、親御さんが信託の仕組みや契約内容を理解できない状態(認知症など)になってしまうと、家族信託を組むことはできません。

そのため、親御さんの判断能力がしっかりしているうちに、早めに専門家にご相談いただくことが重要です。

アパート経営という大切な資産を家族で守り、未来へ活かし続けるために、家族信託の活用をぜひ検討してみてください。

第39回 「まさか、知らない親族が?」40代からの相続準備!

面識のない相続人が現れたときの手続きと解決法

ご自身の相続、またはご両親の相続について考え始めた40代から70代の皆様。
相続手続きを進める中で、予期せぬ問題に直面することがあります。

特に多いのが、
「全く交流のない親族が、戸籍上は相続人になっていた」
というケースです。

「本当に連絡を取らないといけないの?」「トラブルになるのでは?」と不安に感じるかもしれません。
しかし、ご安心ください。司法書士として、このようなケースを現場でどのように進め、解決へと導いているのかを具体的に解説します。


1. なぜ「知らない相続人」が現れるのか?

相続の手続きは、亡くなられた方(被相続人)の「戸籍調査」から始まります。
これは、被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を集めて、法律上の相続人が誰なのかを確定させる作業です。

この戸籍調査の過程で、
「あら、こんなところに相続人がいたんだ」
という事態が発覚することは、実は珍しくありません。

特に、おじい様やおばあ様、あるいは伯父様・伯母様の相続手続きを進める際に、こうしたケースが起こりやすい傾向にあります。

背景にある事情

  • 昔の方は、現在よりもお子様の人数が多いことが一般的でした。
  • 「養子縁組」によって家を出ていかれた方も多くいらっしゃいました。

例えば、おばあ様の相続手続きを進める際、養子に出されたお子様がいた場合、その方も当然に法律上の相続人となります。
もしその方がすでに亡くなっている場合、さらにそのお子様(孫世代)に相続権が移り、結果として相続人の人数が予想以上に増えていることもあります。

交流が全くないとはいえ、遺産分割協議にはその方々の協力が欠かせません。


2. 知らない相続人への最初のコンタクトと5つの重要書類

「知らない相続人がいる」と判明した場合、実務上、私たちはまずその方へお手紙を書くところから手続きをスタートさせます。

相手の方は、見ず知らずの人間から突然「あなたが相続人です」と連絡を受けて、大きな不安を感じている可能性が高いからです。
単なる事務的な手続きとして進めるのではなく、人間的な配慮が必要です。

この最初のコンタクトにおいて、私たちでは信頼と安心感を持っていただくために、5つの重要な書類を同封して送付しています。

同封する5つの書類

  1. 事情説明書
     ご依頼を受け、相続人調査を行った結果、あなたが法律上の相続人であることが判明した旨を説明します。
     また、相続手続きの流れについても丁寧に説明します。
  2. 相続関係説明図
     被相続人を中心に、誰が相続人になり、それぞれの法定相続分がどれくらいかを一目で分かる家系図形式で作成します。
     これにより、ご自身の立場と全体像を理解していただけます。
  3. 財産目録
     今回手続きの対象となっている相続財産の一覧です。
     不動産であれば所在地や評価額、預貯金であれば金融機関名や残高など、詳細をまとめて透明性を確保します。
  4. 意向確認書
     相続手続きについて、
     「協力していただけるか」「それとも難しいか」
     という意向を確認するための重要な書類です。
  5. 依頼者様の「お気持ちを伝える手紙」(最も重要)
     事務的な書類だけでは不安や警戒を感じる方もいます。
     そこで最も大切にしているのが、ご家族の「お気持ちを伝える手紙」です。

 なぜ今この手続きを進めているのか、生前の被相続人がどのような方だったのか——そうした人間的な情報を伝えることで、書類に温かみが生まれます。
 この手紙があることで印象が変わり、協力的な姿勢へつながるケースが多くあります。


3. 相手の意向確認と手続きの3つの道筋

お手紙を送付した後、多くの場合、相手の方からお電話などで連絡があります。
意向確認書に記入・返送いただくか、電話で意向を伺います。

意向確認書では、「協力する」場合でも、具体的にどのような遺産分割を希望されるかを確認します。

  • 法定相続分通りに相続するか
  • 自分は何も相続しない意思か
  • 不動産はいらないが預貯金だけは欲しい、など特定の希望があるか

また、「協力は難しい」という場合には、相続放棄を希望されるかをお聞きします。
相続放棄をすれば、その方は相続人ではなくなります。

手続きの3つの道筋

道筋1:協力していただける場合
希望に沿って遺産分割協議書を作成します。
全員が署名・実印を押印し、印鑑証明書を添付して完成。
その後、不動産の名義変更や預貯金の分配を行います。

道筋2:相続放棄を希望された場合
家庭裁判所で相続放棄の手続きを行い、その方は「最初から相続人ではなかった」扱いになります。
残りの相続人で遺産分割を進めます。

道筋3:協力も放棄も難しい場合
合意形成が困難な場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。
調停委員を交えて話し合い、それでも決着しない場合は審判により裁判所が決定します。
その決定内容に基づき、最終的に名義変更を行います。


4. 諦めずに解決を目指すために

相続の手続きは複雑でも、最終的には必ず何らかの形で決着します。
ただし、その結果が「自分の望んだ形」とは限りません。

相続人の構成や財産内容によっては、柔軟な調整が必要なこともあります。
「知らない相続人」とのやり取りは精神的な負担も大きいものです。

そんな時こそ、専門家である司法書士に相談いただくことで、スムーズで円満な解決への道筋を描くことができます。


【最後に】

相続は、パズルのように複雑に絡み合った人間関係と法律を、一つひとつ解きほぐしていく作業だと言えるかもしれません。

特に交流のない方が相続人になった場合、最初のコンタクトでいかに信頼関係を築くかが非常に重要です。

このプロセスは、「見知らぬ人へ心を込めた手紙を送ること」から始まります。

まずは状況を正確に把握し、最善の解決策を見つけるために、どうぞお気軽にご相談ください。