第34回 40代・50代必見!親の認知症対策「法定後見」「任意後見」「家族信託」を徹底比較

相続や介護を見据える40代から70代の皆様、こんにちは。司法書士の時任です。

ご自身の老後や親御様の介護について考える際、もし親御様が認知症になったら、

「実家を売って介護費用に充てたい」
「親の預貯金を下ろして医療費を払いたい」

といった手続きができなくなるかもしれない、という不安はありませんか?

財産管理の手続きができなくなる事態に備えるために、**「法定後見」「任意後見」「家族信託」**という3つの対策が広く知られています。

しかし、

  • 「どれを選べばいいか分からない」
  • 「何がどう違うの?」

と感じる方も多いでしょう。

今回は、これらの制度が必要なケースと、それぞれの特徴・費用、そしてご家族にとって最適な選び方について、分かりやすさを重視して解説します。


なぜ事前の対策が必要なのか?

まず、これらの対策が不要なご家族もいます。

例えば、仮に親御様の財産(家や預貯金)が凍結してしまっても、特に困らないという場合は、対策は必須ではありません。

しかし、認知症などで判断能力が低下した際、親御様の財産(家や預貯金)を使って介護費用などを捻出する可能性がある方は、事前の準備を強くお勧めします。

準備を怠ると、万が一の際に家庭裁判所の関与なしには預貯金を下ろしたり、不動産を売却したりする手続きができなくなるためです。


【比較の軸】「元気なうちの準備」か「判断能力低下後の対処」か

これらの対策を比較する上で、最も重要な軸となるのが「利用するタイミング」です。

対策名利用するタイミング裁判所の関与財産管理の範囲
任意後見判断能力があるうち(元気なうち)に契約あり(監督人が選任される)すべての財産が原則
家族信託判断能力があるうち(元気なうち)に契約なし特定の財産のみ
法定後見判断能力が低下してからあり(後見人が選任される)すべての財産が原則

1. ご自身の希望を最大限に叶える「家族信託」

ご自身の意思が尊重されやすい形で、特定の財産管理を家族に託したい場合に最適なのが「家族信託」です。

特徴とメリット

  • 利用のタイミング:ご本人が元気で判断能力があるうちに行います。
  • 財産管理の範囲:法定後見や任意後見がすべての財産を対象とするのに対し、家族信託は信託する特定の財産のみを対象とします。
     例:実家と預貯金の一部だけを信託財産とするご家族が非常に多いです。
  • 裁判所の関与:法定後見や任意後見と違い、一切裁判所の関与がない点が最大の特徴です。そのため、財産管理を頼んだ人の希望が最も叶えられやすい仕組みといえます。
  • 報酬:後見人制度のように、裁判所の指示によって毎年報酬を支払う必要が原則としてありません。ただし、管理が複雑な場合は、将来的に事務処理を外部専門家に外注する可能性を見据えて、信託報酬を決めることも可能です。

費用(専門家に依頼した場合)

  • 信託組成を専門家に作成してもらう場合:信託する財産の1.5%~2%が目安

2. 信頼できる家族に「すべて」の財産を任せる「任意後見」

将来、万が一判断能力が低下した場合に、確実にご自身が信頼できる家族や友人に、すべての財産管理を任せたい場合に有効なのが「任意後見」です。

特徴とメリット

  • 利用のタイミング:ご本人が元気で判断能力があるうちに、将来の財産管理について契約を交わします。
  • 財産管理の範囲:原則として、すべての財産管理をお願いすることになります。
  • 受任者の選択:家族や友人など、信頼できる人を後見人に選ぶことができます。
  • 報酬:契約書作成後に判断能力が低下し、実際に財産管理が必要になると、後見人(家族がなることが多い)と、それを監督する監督人に対して、毎年報酬を払っていく必要があります。

費用(専門家に依頼した場合)

  • 公正証書の作成にかかる費用:2万円前後
  • 契約書の作成を専門家に頼む場合:20万円前後

3. 判断能力低下後の「最終手段」となる「法定後見」

法定後見は、ご本人の判断能力がすでに低下しており、上記のような事前の準備(任意後見や家族信託)をしていなかった場合に利用される**「最終手段」**という位置づけです。

特徴とデメリット

  • 利用のタイミング:判断能力が低下してから利用します。
  • 後見人の選任:裁判所への申立てにより手続きを開始しますが、誰が後見人に選ばれるかは分かりません。もしご家族以外(司法書士などの専門家)が後見人に選ばれた場合、財産管理の柔軟性が低下する可能性があります。
  • 報酬:専門家が後見人に選ばれた場合、毎年14万円から72万円程度の報酬を払い続ける必要があります。

費用(専門家に依頼した場合)

  • 裁判所への申立て費用:1万円前後
  • 申立ての書類作成を専門家に依頼した場合:10万円前後

司法書士からのアドバイス:どの対策を選ぶべきか

どの対策が「優れている」という話ではなく、ご自身やご家族の将来をしっかりと見据え、**「どの方法が合っているか」**という目線で検討することが重要です。

検討のポイント(3つ)

  1. そもそも対策は必要か?
     (親の認知症で財産を動かす必要性があるか?)
  2. 誰に財産管理を任せたいか?
     (信頼できる家族か、専門家でも構わないか?)
  3. 管理してもらいたい財産は全部か、特定の一部か?

これらの検討が難しい場合は、司法書士などの専門職に相談することで、ご家族の状況に最適な方法を見つけることができます。


親御様との会話を始めるきっかけ作り

親御様自身がまだお元気で、将来の話やお金の話がしにくい、という声をよく聞きます。

もし会話のきっかけが掴みにくいと感じるなら、親御様ご自身の経験を聞いてみるのはいかがでしょうか。

例えば、

  • 「おばあちゃんの介護の時はどうしたの?」
  • 「あの時、財産管理はどうしていたの?」

といった過去の経験をきっかけに話を聞き出してみると、ご自身の老後の計画についても具体的に話しやすくなることがあります。


当事務所では、ご家族の将来設計に関するご相談を承っております。
まずはお気軽にご連絡ください。

第33回 【40代から70代の方へ】家族が揉めない生前相続対策3ステップ!認知症・税金トラブルを防ぐために

こんにちは。司法書士の時任です。
このブログを読まれているあなたは、ご自身の将来、またはご両親の相続について、漠然とした不安を感じているのではないでしょうか。

特に40代から70代の現役世代にとって、**「家族が争わないこと」と「円満な継承」**は最大の関心事です。

実は、生前に対策を講じることは、財産を巡る「争続」を防ぎ、残されたご家族の負担を大きく軽減します。

この記事では、私が日々相続の現場で感じている教訓をもとに、今すぐ始めるべき生前対策を具体的な3つのステップに分けて解説します。財産額の大小に関わらず、ぜひ取り組んでいただきたい内容です。


はじめに:なぜ生前対策が必要なのか?3つのリスク

生前対策は、主に以下の3つのリスクに備えるために行います。

  1. 相続トラブルのリスク:家族間で遺産を巡る争いが発生する
  2. 認知症のリスク:ご本人の判断能力が低下し、財産管理ができなくなる
  3. 相続税のリスク:税金の負担が必要以上に大きくなる

これら3つのリスクに備える前に、まず最も重要な最初のステップから始めましょう。


ステップ1:現状を把握する(財産目録の作成)

相続対策のスタート地点は、**「ご自身の財産が一体どれだけあるのか」**を正確に把握することです。

財産状況がわからなければ、適切な対策を立てることはできません。

このステップで目指すのは、どんな書式でも構いませんので、**プラスの財産とマイナスの財産を一覧にした「財産目録」**の叩き台を作ることです。

1. プラスの財産の整理

まず、お手持ちのプラスの財産を分類し、整理・整頓していきましょう。

  • 預貯金:どの銀行に、いくつ口座があり、それぞれの口座にいくら入っているのかを具体的に分類します。
  • 不動産:自宅やマンション、その他の土地建物があれば、その所在地(住所・地番・家屋番号など)、マンションの場合は号室まで特定できるように把握します。
  • 株式:上場株式を持っている場合、どの会社の株かというよりも、どの証券会社で管理しているのかを特定することが重要になります。

2. マイナスの財産の整理(負債の確認)

プラスの財産だけでなく、負債の状況も必ず把握してください。

住宅ローンや借入金など、マイナスの財産がどれだけあるのかを知ることは非常に重要です。

負債があまりにも多く、相続人が「相続放棄」を検討しなければならない状況も起こり得るからです。

プラスとマイナスの財産を一覧にできれば、今後の対策を講じる準備が整います。


ステップ2:家族が争わないための対策(遺言書の活用)

「うちの家族は仲が良いから大丈夫」「財産は大した額じゃないから揉めないだろう」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、相続の現場で実際に起きている現実は異なります。

遺産分割調停事件の統計を見ると、なんと約8割のご家庭が、5,000万円以下の相続財産を巡って争っているのです。

特に1,000万円以下の財産で争うケースも全体の34%を占めており、遺産が少ないからこそトラブルが起きやすい傾向にあります。

家族が財産を巡って争わないよう、**「誰に、どれだけ遺産を相続させるか」**をあらかじめ話し合っておくことが絶対に大切です。

確実なトラブル回避策は「遺言書」

ご自身の意思を明確に反映させ、遺産分割を確実に行うための最も確実な方法は、遺言書を正式に残すことです。

遺言書があれば、原則として、遺産は遺言書の内容通りに分割されます。

これにより、相続人全員での話し合い(遺産分割協議)で、不必要に喧嘩が生じるのを防ぐことができます。

遺言書は**「法的効力が強い書面」**であり、遺産分割協議で全相続人が内容以外の分割方法に合意した場合を除き、遺言書の内容が最優先されるため、非常に強力な対策となります。


ステップ3:財産を「凍結」から守る対策(認知症対策)

日本人の高齢化は急速に進んでおり、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」ですが、75歳以上の方は1全人口の18%超になります。

現在、600万人以上の日本人が認知症を発症しているという現実があります。

認知症対策をなぜ急ぐ必要があるかというと、認知症になってしまうと、事実上、ほとんどの相続対策が行えなくなるからです。

  • 不動産の売却や購入ができなくなる
  • 生命保険への加入ができなくなる
  • 有効な遺言書を作成できなくなる

例えば、老人ホームの入居費用を捻出するために不動産を売却しようとしても、認知症発症後では売却できず、手元の資金でなんとかしなければならない事態に陥りかねません。

認知症対策の切り札「家族信託」

認知症で財産が凍結する事態を防ぐために、近年注目されているのが**「家族信託」**です。

家族信託とは、従来の認知症対策として活用されてきた成年後見制度に代わり、より柔軟な財産管理を行うことができる仕組みです。

財産を管理してもらう人(受託者)を指定し、**「どの財産を、誰に、いつ、どれくらい渡すか」**を事前に決めておくことができます。

ただし、家族信託を利用する上で絶対的な注意点があります。

それは、認知症発症後には家族信託を利用することはできないということです。

遺言書も家族信託も、ご本人の判断能力がしっかりしている「発症前」に組んでおくことがマストになります。


(番外編)もしも相続税がかかるなら(税金対策)

相続税の基礎控除額が引き下げられたことで、相続税の対象となる方は増えています。

特に都市部に不動産をお持ちの方は、相続税がかかる可能性が非常に高いので注意が必要です。

基礎控除額を必ず把握する

まず、ご自身の相続財産が基礎控除額を超えているかどうかを確認しましょう。

基礎控除額は以下の計算式で求められます。

3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

例えば、法定相続人が2人いる場合、
基礎控除額は 3,000万円 +(600万円 × 2人)= 4,200万円 となります。

つまり、財産が4,200万円以上ある場合、相続税が発生する可能性があるため、申告の義務が発生します。

特例や控除を最大限活用する

相続税には、配偶者控除や小規模宅地等の特例など、税額を大幅に減らせる特例・控除が多数存在します。

これらの特例を適切に活用すれば、相続税額がゼロになることも珍しくありません。

しかし、これらの特例控除を利用する場合でも、相続税の申告は必要になります。

税金に関する複雑な手続きや対策については、必ず相続専門の税理士に相談してください。


まとめ:相続対策は「家族全員の共同プロジェクト」

相続対策というと、「縁起でもない」「自分の金は自分で使う」といった考えから、なかなか進まない傾向がありますが、もし少しでもご家族に財産を相続させる意向があるなら、これはご家族全員で取り組むべき共同プロジェクトであると心得てください。

繰り返しになりますが、最も重要な生前対策は、財産額の多寡にかかわらず、ご家族が争うことなく相続を迎えられるようにすることです。

そのためにも、以下の3ステップをぜひ実行してください。

  1. 財産の現状を整理し、財産目録を作る
  2. ご自身の意思を反映させる遺言書を作成する
  3. 認知症になる前に家族信託などの対策を講じる

私たち司法書士事務所や相続専門の税理士事務所では、無料相談を行っているところが多くあります。

まずはお気軽に専門家にご相談いただき、不安を解消するところから始めることを強くお勧めします。


第32回 家の相続で失敗しないために|登記・費用・特例制度を司法書士がわかりやすく解説

司法書士の時任です。いつもブログをご覧いただきありがとうございます。

自分自身の相続、もしくはご両親からの相続に備える必要性を感じている40代から70代の皆様へ。

「家」を相続する場合、名義が変わるだけではないという事実をご存知でしょうか。特に不動産が絡む相続は金額が大きくなりやすく、また判断に迷う点も多いため、複雑に感じていらっしゃるかもしれません。

本日は、家を相続する際に必要な「手続きの全体像」と「実際にかかる費用」について、司法書士の視点から分かりやすく解説いたします。
2024年4月からは相続登記が義務化されていますので、その重要性も含め、ぜひ最後までご覧ください。


Ⅰ. まず知っておきたい!家の相続で発生する具体的な「費用」

家(不動産)を相続する際には、様々な種類の費用や税金が発生します。
あらかじめどのくらいの出費があるのかを把握しておくことが重要です。


1. 相続税と評価費用

相続財産の総額が「基礎控除額」を超える場合、相続税が課税されます。
この場合、亡くなった日から10ヶ月以内という期限内に申告と納税が必要です。

不動産の評価は複雑です。
土地は「路線価式」または「倍率方式」で、建物は「固定資産税評価額」で評価されます。
この評価によって相続税額が大きく変動するため、正確な評価を行うことが非常に重要です。

小規模宅地等の特例で最大80%減額も可能

亡くなった方が住んでいた土地を配偶者や同居の子どもなどが相続する場合、一定の条件を満たせば、最大80%の評価額減額を受けられる「小規模宅地等の特例」があります。
この特例を適用することで、相続税を大幅に軽減できる場合があります。

ただし、配偶者以外の方が適用を受けるには、

  • 「同居要件」
  • 「申告期限までの所有継続」

など様々な要件があり複雑です。
有利な申告につなげるためには、相続専門の税理士に相談することをお勧めします。


2. 相続登記にかかる費用(登録免許税など)

家の名義を亡くなった方から相続人へ変更する「相続登記」の手続きの際にも費用が発生します。

最も大きな費用の一つが登録免許税です。
これは、不動産の価格を基に算出される税金です。

現在、登録免許税については一部免除措置が設けられています(2027年3月31日まで)。
例えば、相続した土地の価格が100万円以下の場合は登録免許税が免除されます。


3. 家を所有し続ける限りかかる費用

相続手続きが完了し、家を所有し続ける限り、以下の費用が継続的に発生します。

  • 固定資産税
  • 都市計画税

これらの税率は地域によって異なる場合があります。


4. 売却を選択した場合にかかる費用

もし相続した家に住む予定がない場合、売却も選択肢の一つとなります。
売却する場合、以下の費用や税金がかかります。

費用・税金概要と注意点
仲介手数料不動産会社に成功報酬として支払う費用で、売却価格によっては数十万から100万円以上になることがあります。
印紙税売買契約書に課税される税金で、契約金額に応じて税額が決まっています。
譲渡所得税売却して得た利益(譲渡所得)に対して課税される税金(所得税と住民税)です。

空き家特例(最大3,000万円控除)の活用

被相続人(亡くなった方)が居住していた家屋やその土地を相続した後、一定期間内に売却し、定められた要件に当てはまる場合、**譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例(通称「空き家特例」)**があります。

この特例は非常に有利ですが、適用要件が複雑です。
適用をご希望の場合は、相続専門の税理士に相談することをお勧めします。


Ⅱ. 司法書士が解説する「家の相続」で踏むべき6つのステップ

家の相続手続きは段階的に進める必要があります。
慌てないよう、順序を確認しておきましょう。


ステップ1:遺言書の確認

まず最初に行うべきことは、亡くなった方が遺言書を残していないかを確認することです。
遺言書は、自宅だけでなく、銀行の貸金庫、法務局、公正役場などにも保管されている場合があります。

遺言書の内容は、他の手続きに優先して適用されます。
万が一、後から遺言書が発見された場合は、遺産分割をやり直すことになります。

【重要】自筆証書遺言の注意点

法務局に保管されていない自筆証書遺言を発見した場合、たとえ封がされていなかったとしても、家庭裁判所の検認を受ける必要があります。
発見した状態のまま保存し、勝手に開封せず、家庭裁判所に検認の申請を行ってください。


ステップ2:遺産の全体像の把握

家などの不動産だけでなく、預貯金、株式、借金(マイナスの財産)など、すべての財産を洗い出し、プラスとマイナスの財産を整理します。


ステップ3:相続人の調査と確定

法定相続人が誰であるかを確定するために、戸籍謄本などを取り寄せ、親族関係を明らかにします。

認知している子どもや前の配偶者の子どもなど、思わぬ人が法定相続人となるケースもあります。
ここで相続人を確定しておかないと、次の手続きに進むことができません。


ステップ4:遺産分割協議と協議書の作成

相続人が確定したら、誰がどの財産を引き継ぐのかを相続人全員で話し合います(遺産分割協議)。
もちろん、この話し合いの中で、家を誰が相続するのかも決定します。

全員の合意が得られたら、その内容を明記した「遺産分割協議書」を作成し、全員の署名と押印が必要になります。
ただし、遺言書があり、その内容に従う場合は、この協議は不要です。


ステップ5:相続税の申告と納税

ステップ2で把握した財産を基に、基礎控除額を超える場合は、亡くなった日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税を行います。
申告が必要かどうか確認を必ず行ってください。


ステップ6:相続登記(名義変更)

最後に、不動産の名義を相続人の名前に変更する「相続登記」を行います。
必要書類を揃えて法務局に提出する手続きです。

相続登記の義務化にご注意ください

2024年4月からは、相続登記が義務化されました。
手続きを怠ってしまうと、過料の対象になってしまうため、忘れずに進める必要があります。
この点については、登記の専門家である司法書士にお気軽にご相談ください。


Ⅲ. まとめ:複雑な相続手続きは専門家にご相談を

相続は、法的な手続き、不動産の評価、税金の計算など、様々な専門知識が求められ、非常に時間と労力がかかるものです。
特に不動産を含む場合、評価一つで納税額が大きく変わるため、正確で有利な申告には専門家のサポートが不可欠です。

少しでも不安な点があれば、無理をしてご自身で手探りで進めるよりも、専門家に相談いただくのが最も安心です。

当事務所では、登記手続きの専門家として、相続登記はもちろん、様々な手続きをサポートしております。
必要に応じて、相続税の申告に対応する税理士や、不動産の売却や活用を支援する不動産会社など、関連する専門家との連携も可能です。

無料相談も実施しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

第31回 40代・50代から始める!家族が揉めないための「生前相続対策」完全ロードマップ

こんにちは。司法書士の時任です。

ご自身やご両親の将来の相続について、「いつか備えないと」と思いつつ、何から手をつけて良いか分からないという方は多いのではないでしょうか。特に40代から70代の皆様にとって、相続は他人事ではない切実な問題です。

「相続争いなんて、お金持ちだけの話でしょう?」そう思われるかもしれません。しかし、近年の統計を見ると、遺産を巡る親族間の争い(調停や審判になったケース)は増加傾向にあり、実は遺産額が1,000万円以下のケースが相当数含まれています。

相続争いは、資産の多寡に関わらず、どの家庭にも起こり得るのです。

私たちが多くのお客様と接する中で、相続争いに発展してしまうご家庭には一つの共通点があります。
それは、生前におけるコミュニケーション不足です。

大切なご家族が相続発生後に困らないように、そして何よりも家族の絆を守るために、生前にできる具体的な対策を司法書士の視点から解説します。


家族の絆を守る!生前にできる5つの相続対策

今回は、家族間のトラブルを防ぎ、円満な相続を実現するための具体的な5つの対策を、実行しやすい順に解説します。


対策1:まず確認すべき「相続人」と「心の準備」

物理的な財産の対策を始める前に、最も重要であり、かつ根本的な対策となるのがコミュニケーションです。

  • 普段から頻繁に連絡を取り合っているご家庭では、相続発生時にも協力し合い、手続きをスムーズに進めやすい
  • 逆に、長年音信不通の親族がいる場合、相続時に自分の権利ばかり主張する人が現れ、手続きが滞ることが多い

相続争いを防ぐ第一歩は、推定相続人を正確に把握することです。

なかなか会う機会のない相続人がいるなら、まずはご自身から連絡を取ってみてください。焦る必要はありません。少しずつ相続について話し合う機会を増やし、お互いの考えを共有しておきましょう。

また、現在の家族以外に推定相続人となる人がいる場合(例:認知しているお子様など)は、その事実を家族に伝えておくことも非常に重要です。該当される方は、いつかは、、ではなく、直ちにすべきです。そのままに事実を伝えずにおくと、残された家族は非常に困惑するでしょう。


対策2:将来の不安を取り除く「財産目録」の作成

相続が発生すると、ご家族は故人の財産をゼロから調査する必要があります。

  • 財産の調査漏れは「隠していたのでは?」という疑念を生み、トラブルの火種に
  • 税務調査の対象となるリスクも

こうした事態を避けるために、生前に財産目録を作成しておきましょう。

特に近年は株式やネット銀行口座など「目に見えない財産」が増えています。専門家(司法書士・税理士など)への相談も有効です。

さらに、定額利用サービスの会員情報などもまとめておけば、ご家族がスムーズに解約できます。


対策3:あなたの意思を「確実」に伝える遺言書の作成

遺言書があれば、相続人は原則その内容に従って遺産分割を行います。

ただし注意点は遺留分です。

  • 遺留分を侵害すると、相続人から訴えられるリスクがある
  • 紛失や形式不備を防ぐためには、公証役場で公正証書遺言を作成するのが最善

対策4:分割しにくい財産は「整理・現金化」を検討する

不動産のように分割しにくい財産は相続争いの原因になります。

  • 使用していない不動産は、生前に売却して現金化するのも有効
  • 現金化すれば、遺産分割が容易になり、相続税の納税資金にも充てられる

ただし、税額が増える・安売りリスクもあるため、税理士への相談が不可欠です。


対策5:「生命保険」と「祭祀財産」を戦略的に活用する

  1. 生命保険を代償金に活用
    • 自宅を長男に相続 → 他の相続人には死亡保険金で調整
    • 死亡保険金は受取人固有の財産のため、遺産分割の対象外
  2. 祭祀財産を非課税で引き継ぐ
    • お墓や仏壇は相続税非課税
    • 生前購入で税負担を軽減できる
    • 管理困難なお墓は「墓じまい」も検討

まとめ

様々な対策をお伝えしましたが、何度でも繰り返します。
最も重要な対策は、日頃のコミュニケーションです。

ご自身の意思を伝えつつ、相続人の意見も取り入れて準備を進めることが、家族が揉めないための確実な道筋です。

私たちは相続の専門家として、皆様が円満な相続を迎えられるようサポートいたします。相続に関する不安やお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

相続には税務や不動産の売却・活用といった、司法書士の専門外となる分野の課題も多く含まれます。
私たちは税理士や不動産業者など信頼できる専門家と連携し、ご相談をすべて当事務所が窓口となってお受けし、ワンストップで解決できる体制を整えています

第30回 一般社団法人”相続太郎”に加入しました!

今回はお知らせです

この度、縁があり 一般社団法人相続太郎 に加入することになりました。

変わった団体名ですが、怪しい秘密結社などではなく、会員は司法書士と税理士だけの真面目な団体です。

一つの都道府県に一つの事務所限定で運営しているようで、なかなか狭き門です。

私たちを選んで頂いたことは光栄です。

全国の税理士さん・司法書士さんと連携して、皆さまに良質なサービスを提供できるよう、引き続き努めて参ります。


相続や遺言の準備は早めが安心

相続や遺言の準備、生前対策は「まだ早い」と思っているうちに、いざという時が突然やってきます。

当事務所では、以下のような幅広いサポートを行っております。

  • 相続手続き
  • 遺言書作成
  • 生前贈与
  • 家族信託
  • 空き家や不動産の相続対策

40代・50代の方は「親の相続」に備えて、60代・70代の方は「自分の相続」に備えて、早めのご相談が安心につながります。


ご相談はお気軽に

当事務所は つくば市を中心に、茨城県全域 の皆さまからご相談をいただいております。

  • 「突然の相続で何をしたらよいのか全く分からない」
  • 「相続の準備をどこから始めればよいかわからない」
  • 「遺言書を作成したい」
  • 「認知症による財産管理が心配」

このようなお悩みをお持ちの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

第29回 40代から始める賢い対策 「名義預金」はトラブルの元 預貯金相続に備える

ご自身の、あるいはご両親の相続について考え始めた40代から70代の皆様へ。

「名義預金」という言葉を聞いたことはありますでしょうか?
実は、多くのご家庭で無意識のうちに作られており、いざ相続が発生した際に思わぬトラブルの種となることがあります。

「まさか自分の家に限って」と思われるかもしれませんが、この「名義預金」に関する誤解や無知が原因で、家族間の亀裂や余計な税金が発生するケースは少なくありません。

今回は、この「名義預金」について、よくある疑問とその対策を分かりやすく解説します。
早めに知識を身につけ、賢く相続に備えましょう。


1. 「名義預金」とは? なぜ相続で問題になるのか

「名義預金」とは、預金名義は本人以外(例えば子供や孫、配偶者など)になっていても、実質的にはお金を拠出した人(亡くなった方)の財産であると見なされる預金のことです。

「預金通帳の名義がAになっているから、それはAの財産だ」と安易に考えていると、相続の際に大きな問題となることがあります。
例えば、亡くなったおじい様が、孫のためにと孫名義で貯めていた預金などが典型的なケースです。
しかし、この孫名義の預金は、法的にはおじい様の遺産として扱われる可能性が高いのです。


2. 名義預金は「遺産」になる?ならない?遺産分割協議書への記載の注意点

多くの方が疑問に思われるのが、「名義預金は遺産分割の対象になるのか」という点です。
結論から申し上げると、名義預金は、たとえ亡くなった方以外の方の名義であっても、実質的に故人の財産と見なされ、遺産分割の対象となります

では、遺産分割協議書にはどのように記載すれば良いのでしょうか?

遺産分割協議書に名義預金を記載する方法は、主に以下の2通りがあります。

  • 通常の預貯金と同様に記載する方法
  • 名義人に対する「預け金債権」として記載する方法

どちらの方法でも問題はないとされていますが、特に注意が必要なのは、相続人以外の方(例えば孫など)が名義人となっている預金や、名義人がその預金を相続しないケースです。
このような場合、通常の預貯金として記載すると、銀行での手続きが煩雑になる可能性があります。

例えば、孫名義の預金を銀行に持参して名義変更しようとしても、銀行側は「本当に亡くなった方の財産なのか」と調査する必要が生じ、手続きに時間がかかることがあります。
このような事態を避けるためには、名義預金を故人の「預け金債権」として遺産分割協議書に記載し、一旦相続人名義に振り替えるなどの対応を検討する方が、手続きをスムーズに進められることが多いでしょう。

ただし、故人が生前、その名義人に財産を残したいという遺言的な思いがあったと認められる場合は、例外的に名義人がその預金を取得するケースもあります。
しかし、相続税の申告上は、基本的に名義預金も相続税の対象となりますので、申告書には含めておくのが安全でしょう。


3. 「名義預金に時効はない」って本当?贈与税との関係

「名義預金には時効がある」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、これは正確ではありません。
実は、名義預金そのものに「時効」という概念は当てはまらないのです。

ここでいう「時効」とは、多くの場合「贈与税の時効」を指します。
贈与税の時効は、原則として贈与税の申告期限から6年間(悪質な場合は7年間)と定められています。
しかし、これは「贈与が法的に成立している場合」に適用されるものです。

名義預金の場合、お金を拠出した故人の意思として「預けているだけで、贈与ではない」と判断されることがほとんどです。
つまり、贈与が成立していないため、贈与税の時効が適用される余地がないのです。
結果として、名義預金は、いつまで経ってもお金を拠出した人の財産として扱われ、相続の対象となる可能性があるわけです。


4. 生前に名義を本来の所有者に戻すべきか?ケースごとの判断

「生前に名義預金を本来の所有者である自分(故人となる人)の名義に戻すべきか?」というご疑問もあるでしょう。

この問いに対する答えは、「案件ごとに判断する」ということになります。
もし名義預金を本来の所有者名義に戻したとしても、それは真の所有者に財産を戻す行為であるため、贈与税の対象となることはありません

しかし、いつ、いくらを戻すべきかという判断は、特に生前の段階では非常に難しいのが実情です。
計算が煩雑になることが多く、実務上は「無理に名義を戻さない」というケースも少なくありません。
特に夫婦間の名義預金などでは、計算が複雑になりすぎるため、あえて変更しない方が良い場合もあります。

ただし、明らかに贈与が成立していないと判断できる子供や孫名義の預金など、状況が明確な場合は、本来の所有者名義に戻すことを検討する価値はあります。実行する前に税理士や会計士にご相談することをお勧めします。


5. 見落としがち!「逆名義預金」の落とし穴

「逆名義預金」という言葉をご存じでしょうか?
これは、例えば夫が外で働き、その稼ぎを専業主婦である妻の名義で預金していたようなケースを指します。
妻名義の預金でも、実質的な拠出者は夫であるため、これも一種の名義預金と言えます。

ここで注意したいのは、もし妻が夫より先に亡くなった場合です。
通帳だけを見ると、妻名義の預金残高が多額(例えば1億円)に見えることがあります。
その金額だけで判断すると、相続税の基礎控除を超えるため、相続税の申告が必要だと考えるかもしれません。

しかし、実質的にこの預金が夫の稼ぎであり、妻の固有の財産はごく一部(例えば1,000万円程度)であると証明できれば、その金額は相続税の基礎控除以下となり、相続税の申告が不要となるケースがあります。

ただし、ここに大きな落とし穴があります。
もし、この「逆名義預金」を真の所有者である夫ではなく、子供などの他の相続人が相続してしまうと、夫から子供への贈与と見なされ、贈与税が発生してしまう可能性があるのです。
真の所有者が相続する分には問題ありませんが、それ以外の相続人が取得する際には、別の税金が発生しないよう細心の注意が必要です。


まとめ:名義預金は早めの対策が肝心

「名義預金」は、税務調査で指摘されることも多く、相続トラブルの原因となる典型的なケースの一つです。
ご自身の、あるいはご両親の相続財産の中に、ご紹介したような名義預金がないか、今一度確認してみることをお勧めします。

「自分たちの場合はどうなるのだろう?」「具体的な対策を知りたい」そうお考えになった方は、ぜひ一度、相続の専門家である司法書士にご相談ください。税務関係のご質問の場合には、最適な専門家をご紹介させて頂きますのでご安心ください。

第28回 「親の農地・空き家を相続したくない!生前贈与と相続放棄の意外なリスクと備え方」

実家が遠方にあり、親が多くの農地や不動産を持っている――。
その管理に不安を感じて、

「もしもの時、自分には引き継げないかもしれない…」

こんなお悩みはありませんか?

大切な親の財産が、管理しきれない「負動産」となってしまう不安はありませんか?

そのような中で

「生前贈与と相続放棄を組み合わせることで、プラスの財産だけを受け取り、いらない土地は手放せる」

という話を聞いたことがあるでしょうか。
一見すると、非常に魅力的な解決策に思えますよね。

しかし、残念ながらこの方法は一筋縄ではいきません。
安易な判断は、後々大きなトラブルや予期せぬ負担に繋がる可能性もあります。

今回は、相続に備えたい40代から70代の皆様に向けて、
生前贈与と相続放棄を組み合わせる際の具体的な仕組み、潜むリスク、
そして何より大切な「周囲に迷惑をかけない」ための賢い対策について、
詳しく解説します。


「生前贈与」と「相続放棄」の合わせ技、その仕組みとは?

親の財産のうち、プラスになるもの(預貯金・収益を生むアパートなど)は親が生きているうちに生前贈与で受け取り、
管理が難しい農地や山林、あるいは借金といったマイナスの財産は相続放棄で引き継がない――。

これが、生前贈与と相続放棄を組み合わせる基本的な考え方です。

具体的には、

  • 親御さんが生前に預貯金や収益物件を子に贈与し、名義変更を済ませておく
  • その後、親御さんが亡くなった際に子が相続放棄を行う

このスキームにより、不要な不動産や借金を相続せずに済む仕組みです。
贈与以外にも「家族信託」を使って財産管理を任せつつ、将来の相続放棄に備えるケースも存在します。

確かに、この方法で都合の良い財産だけを受け取れるなら、これほど良い話はないように思えるかもしれません。
しかし実際には、多くの「落とし穴」と「リスク」が潜んでいるため、慎重な検討が必要です。


見落としがちな「落とし穴」と「リスク」

生前贈与と相続放棄を組み合わせる際には、以下のリスクに十分注意しなければなりません。

1. 債権者からの「取り消し」の可能性
親御さんに借金がある場合、債権者(銀行など)は返済のあてにしていた財産が生前贈与で減ることを問題視します。
法律に基づき贈与を取り消し、贈与財産の返還を求められる制度があります。
その結果、せっかく受け取った財産を手放さざるを得ない可能性があります。

2. 相続放棄が「無効」となる危険性
「プラスの財産だけ受け取り、マイナスの財産は放棄する」という行為は、
「制度の濫用」とみなされる可能性があります。
裁判となれば、相続放棄自体を無効と判断されるケースも。
そうなれば、結局は農地や空き家なども引き継がざるを得ない最悪の事態もあり得ます。

3. 贈与税の負担
生前贈与には贈与税、不動産取得税が発生します。
多額の財産を贈与すれば、その分税負担も増えます。
税金を考慮せずに進めるのは危険です。

4. 「どこまでなら許される?」明確な基準がない
「贈与を受けてから相続放棄してはいけない」という明確な法律は存在しません。
しかし「どの程度なら問題ないか」という線引きは非常に曖昧です。
極端なケース(プラス財産すべてを贈与、マイナス財産すべてを放棄)は問題視されやすいですが、
その手前の「適度なライン」については専門家でも明言できません。


「迷惑をかけない」ための具体的な準備と心構え

さらに重要なのは、「自分だけ得をする」のではなく「周囲に迷惑をかけない」視点です。

1. 財産管理の費用を確保する
相続人全員が相続放棄すると、財産は裁判所が管理します。
この手続きには一般的に50万〜100万円程度の費用が必要です。

故人の財産に費用がなければ、誰かが立て替えることになります。
結果として、近隣住民や自治体が負担する事態になれば、迷惑や反感を招く原因となります。

最低限、この費用や固定資産税などの維持費は故人の財産として残しておくべきです。

2. 次の相続人への配慮を忘れない
相続放棄をすれば、権利は次順位の親族(親・兄弟姉妹・甥姪など)に移ります。
突然、固定資産税の通知や不動産処分の連絡が来れば、多くの人が困惑・憤慨します。

トラブルを避けるため、事前に事情を説明し、必要なら一緒に相続放棄を進める配慮が大切です。

3. 親とのコミュニケーションが大切
相続は法律だけでなく「感情」が絡むデリケートな問題です。
親御さんも「子に迷惑をかけたくない」と願っています。

お盆や年末年始の帰省時に「実家の土地や山、どうする?」と自然に話題にする、
災害時に「うちの土地や田んぼは大丈夫?」と切り出す――。

こうした会話をきっかけに、早めに資産状況や親戚関係を把握することが、スムーズな相続対策の第一歩です。


今すぐ始める「早期対策」のすすめ

相続問題、特に「負動産」化する可能性のある土地の扱いは、時間が経つほど解決が難しくなります

「10年・20年前にご相談いただければ、もっと選択肢があったのに…」と感じる専門家も少なくありません。
農地は高齢化で引き取り手が減り、空き家は老朽化する一方です。

「あと5年・10年放置すれば、さらに状況は悪化する」
――これは現実的な警告です。

親との話し合いは難しいと感じても、未来のトラブルを避けるためには、できるだけ早く始めることが重要です。


まとめ:一人で抱え込まず、司法書士へご相談を

生前贈与と相続放棄の組み合わせはリスクを伴うデリケートな問題であり、単純な「裏技」ではありません。

安易な自己判断や自己流の手続きは、思わぬトラブルや大きな負担につながります。

「周囲に迷惑をかけず、円満に相続問題を解決したい」と考えるなら、
まずは私たちにご相談ください。

当事務所では、お客様一人ひとりのご状況やご希望を丁寧に伺い、最適な相続対策をご提案いたします。

皆さまからのご連絡をお待ちしております。

第27回 40代~70代必見!親と自分の「もしも」に備える生前対策5選 ★完全版★

皆様、こんにちは。司法書士の時任です。

人生100年時代と言われる現代、ご自身の将来やご両親の今後について「相続」という言葉を意識し始める方も多いのではないでしょうか。特に40代から70代の方々にとって、親御様の相続はもちろん、ご自身の将来の相続についても、準備を進めておくことは非常に大切です。

「まだ早い」「何から手をつければいいか分からない」と感じているかもしれません。
しかし、適切な相続対策をせずにいると、残されたご家族が

  • 相続税の支払いに困る
  • 遺産を巡る深刻なトラブルに巻き込まれ

このような可能性が現実としてあります。

また、ご自身が認知症になった際、大切な財産が凍結され、必要な時に使えなくなるといった事態も想定されます。

そうならないために、元気なうちからできる限りの対策を講じておくことが、ご自身やご家族の安心につながります。
今回は、生前に準備すべき5つの対策について、分かりやすく解説いたします。


なぜ今、生前対策が必要なのか?3つの「もしも」に備える

相続対策と聞くと、「お金持ちがすること」や「亡くなった後のこと」と思われがちですが、決してそうではありません。
私たちに起こりうる3つの「もしも」に備えるために、生前対策は非常に重要です。

  1. もしも「遺産争い」が起きたら?【相続トラブル対策】
    遺産の分け方を巡って家族・親族間で争いが生じるケースは少なくありません。特に自宅などの不動産が遺産の大部分を占める場合、簡単に分割できないため、トラブルに発展しやすい傾向があります。事前の対策で、家族間の無用な争いを避けることができます。
  2. もしも「相続税が高額」だったら?【節税対策】
    相続が発生した際に、多額の相続税がかかることがあります。生前から計画的に対策を行うことで、相続税の負担を軽減し、より多くの財産を次世代に引き継ぐことが可能になります。
  3. もしも「相続税が払えない」状況になったら?【納税資金対策】
    相続税が発生しても、手元に現金や預金が十分になく、価値のある不動産ばかりという場合、相続税の支払いに困ってしまうことがあります。事前に納税資金を確保する対策をしておくことが重要です。
  4. もしも「認知症」になったら?【判断能力喪失対策】
    一般的に、認知症などで判断能力がなくなってしまうと、ご自身の意思に基づいた相続対策ができなくなります。銀行預金が引き出せなくなったり、介護施設の入居費用に充てるために不動産を売却しようとしても、そのままでは売れないといった問題が生じます。元気なうちからの対策が、結果手にご自身やご家族を助けることになります。

生前対策を始める上で押さえておきたい3つのポイント

相続対策を効果的に進めるためには、以下の3つのポイントを意識することが大切です。

  1. ご自身の「希望」を明確にする
    ご自身が老後をどのように過ごしたいか、残す財産をどのように相続させたいか、具体的な希望を明確にしましょう。この希望がなければ、適切な対策の方向性を見定めることができません。
  2. 様々な「対策」を検討し比較する
    相続対策には多種多様な方法があります。それぞれの方法のメリット・デメリットを事前に検討・比較し、ご自身の状況に最も適した対策を決定することが肝要です。
  3. 「元気なうち」から早めに始める
    認知症などで判断能力が低下してしまうと、できる対策が限られてしまいます。体が元気で判断能力があるうちに、余裕を持って計画をスタートさせることが重要です。
    また、ご自身やご家族の状況は変化する可能性があります。仕事のリタイア後や生活が落ち着いた時期、あるいは孫が生まれた時など、家族状況に変化があった時も対策を考える良いタイミングです。

具体的にどのような対策があるのか?今すぐできる生前対策5選

ここからは、具体的な生前対策を5つご紹介します。

1. 生前贈与

**「元気なうちに、少しずつ財産を家族に渡したい」**と考える方に有効な方法です。
生前に財産を贈与しておくことで、相続時にかかる相続税を減らす効果が期待できます。
また、あらかじめ相続人に財産を渡しておくことで、将来の相続人同士のトラブルを防ぐことにもつながります。

注意点: 贈与税がかかる場合があることや、後のトラブルに発展する可能性もあるため、必ず専門家にご相談の上、手続きを進めることをお勧めします。

2. 遺言書の作成

**「自分の意思で、誰に何を相続させるか明確にしたい」**という方に必須の対策です。
遺言書を作成しておけば、ご自身が亡くなった後、遺産は遺言書の内容に従って分けられます。
これにより、相続人全員による遺産分割協議が不要となり、相続トラブルを未然に防ぐことができます。

3. 資産の組み替え

「相続時のトラブルを減らし、節税もしたい」と考える方には、資産状況を見直すことが有効です。
よく活用されるのが生命保険
です。生命保険金は、原則として遺産には含まれないため、遺産分割協議の対象になりません。受取人が直接保険会社に請求できるため、万が一相続で揉めた場合でも、指定された受取人は単独で保険金を受け取ることができます。

4. 任意後見制度の利用

**「もし認知症になっても、信頼できる人に財産管理を任せたい」**と願う方のための制度です。
万が一、認知症などで判断能力がなくなってしまった場合に備え、**あらかじめご自身で選んだ「後見人」**に生活の世話や財産管理を任せることができます。
これにより、認知症になっても預金が引き出せないといった事態を避けることが可能です。

裁判所が後見人を選ぶ「法定後見制度」と異なり、ご自身で信頼できる人を選べる点が大きな違いです。

5. 家族信託の活用

**「財産を家族に託し、長期的な視点で柔軟に管理・運用したい」**と考える方に適した制度です。
信頼できるご家族に財産を託し、ご自身の代わりにその財産を管理・処分・運用してもらうことができます。

元気なうちから家族信託を設定しておけば、認知症などで判断能力が失われても、託した家族がご本人のために預金を引き出したり、不動産を売却して生活費に充てたりといった手続きが可能になります。

さらに、家族信託は遺言書と同様に、ご自身が亡くなった後の財産の引き継ぎ先を決められるだけでなく、次の相続、さらにはその先の相続まで、何世代にもわたる財産の承継先を指定できるという大きなメリットがあります。代々受け継いできた不動産がある場合など、柔軟な対策が可能です。


専門家への相談を強くお勧めします

これらの生前対策は、個々の状況に合わせて最適な方法を選ぶ必要があります。誤った対策は、かえって相続トラブルを引き起こす原因にもなりかねません。

当事務所では、親御さまの相続手続きやご自身の生前対策に関するご相談を数多くお受けしております。遺言や家族信託など、専門知識が必要となる分野についても、お客様一人ひとりに寄り添い、最適な解決策をご提案いたします。

お困りごとがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。



第26回 「警察です」その電話、その番号本物ですか?巧妙化するなりすまし詐欺から身を守るには

近年、特殊詐欺の手口はますます巧妙化し、私たちの身近に潜んでいます。
特に「警察を名乗る詐欺電話」による被害が急増しており、その手口は「自分は大丈夫」と思っている方でさえ騙されてしまうほど悪質化しています。

今回は、あなたの大切な財産を守るために、この新たな詐欺手口とその対策について詳しく解説します。


あなたを狙う新たな脅威:実在する警察署の番号からの電話

これまでの詐欺電話は、電話番号の冒頭に国際電話を示す「+」や国番号が表示されることが多く、不審な電話だと気づく手がかりがありました。

しかし、最近特に増えているのは、実在する警察署の代表電話番号がそのまま表示されるという、非常に悪質な手口です。

例えば、画面に「新宿警察署」の代表番号である「0110」などが現れるため、「警察からの電話だ」と信じ込んでしまい、冷静な判断ができなくなるケースが後を絶ちません。

実際の現役の警察官でさえ、電話を受けた際に「本物の警察官の可能性もある」と感じたと聞きました。東京都内の新宿警察署には、このような不審な電話に関する相談が、わずか7日間で約660件も寄せられています。


巧妙な詐欺の手口とは

このような警察を名乗る詐欺電話は、以下のような流れであなたを追い詰めます。

  1. 突然の連絡と脅迫
    電話口の人物は、**「あなたの口座が犯罪組織に悪用されている」「資金洗浄の疑いがある」「逮捕状が出ているため逮捕される可能性がある」**などと、いきなり強い言葉で脅してきます。
    彼らはあなたの氏名や住所といった個人情報を知っている場合もあり、その信憑性を高めようとします。
  2. 偽の証拠提示
    次に、あなたをSNSやビデオ通話に誘導し、**偽の「逮捕状」や「警察手帳」**を見せつけます。
    偽の逮捕状にはあなたの名前が記載されていることもあり、「本当に逮捕されるのでは」という強い不安を抱かせ、パニック状態に陥らせます。
  3. 金銭の要求
    最終的に「口座の調査が必要だ」「凍結を解除するためにはお金が必要だ」などと理由をつけ、あなたの財産を指定の口座へ振り込ませようと指示してきます。

警察を名乗る電話は、受けた方を極度の不安とパニック状態に陥らせるため、冷静な判断が非常に難しくなります。

この手口による昨年の東京都内での被害額は、特殊詐欺全体のおよそ108億円のうち、約70億円にも上ると報じられています。


なぜ本物の番号が表示されるのか?

この巧妙な手口の背景には、IP電話の技術を悪用した**発信者番号の偽装(スプーフィング)**があります。

特に海外には、登録のハードルが低く、契約者が指定した別の電話番号を相手に表示できるサービスを提供するインターネット会社が存在すると言われています。

詐欺グループはこうしたサービスを利用し、日本の実在する警察署の番号を装って電話をかけてくるのです。


あなたの身を守るための対策

では、このような巧妙な詐欺から身を守るために、私たちはどうすれば良いのでしょうか。
最も重要なのは、冷静になり、即座に行動しないことです。

  • 表示された電話番号を安易に信用しない
    電話番号は簡単に偽装できます。「警察からの電話だから本物だ」と鵜呑みにするのは危険です。
  • 一度電話を切り、正規の番号にかけ直す
    これが最も確実な対策です。相手の身元を少しでも疑ったら、**「一度電話を切って、こちらから正規の警察署の電話番号にかけ直します」**と伝えましょう。
    正規の番号は、ご自身でインターネット検索や電話帳などで確認してください。
  • 相手の情報を詳しく確認する
    不審な電話を受けた場合は、相手の氏名・所属部署・内線番号などを詳しく確認し、メモしておきましょう。
    本物の警察官であれば、これらの情報をためらわずに教えてくれるはずです。
  • 焦って答えない・個人情報を教えない
    警察官が電話でいきなり口座の情報や暗証番号を聞いたり、指定口座への送金を指示したりすることは絶対にありません。

たとえ相手が本物の警察官であっても、一度電話を切って確認することは決して失礼にあたりません。

今の時代は本物の警察官からの電話でさえ「疑うべき」だと思います。
むしろ、ご自身の財産と安全を守るために、当然取るべき行動です。


実は私にも詐欺電話が、、

実は、先日、私にも詐欺電話がかかってきました。

運転中だったため、ハンズフリーで出ましたが、「警視庁捜査二課の○○です」と若い女性の声で。

一瞬、ドキッとして、今運転なので折り返したい旨を伝えると「30分後にもう一度かけるので、絶対に出て下さい」と強い口調で。

そこで怪しいと気が付き、こちらから折り返すから電話番号を教えて欲しい旨を伝えると、そこで電話は切れました。

くれぐれもお気を付けください。


まとめ

巧妙化する警察なりすまし詐欺から身を守るためには、

  • 電話番号表示は安易に信用しない
  • 一度電話を切って、正規の番号にかけ直す

この二つのポイントを徹底することが重要です。

この記事が、皆様の詐欺被害防止の一助となれば幸いです。

第25回【司法書士が解説】賃貸VS持ち家論争に終止符!

老後を見据えた賢い住まい選びとは?

「家は買うべきか、借りるべきか」――
これは多くの方が一度は悩むテーマではないでしょうか。

インターネット上には様々な情報が溢れ、
どちらが正解なのか分からなくなってしまうことも少なくありません。

今回は、司法書士である私、時任が、この長年の論争に終止符を打ち、
皆さまが後悔しない住まい選びをするための真実を、多角的な視点から解説いたします。


経済的な視点から見る「持ち家」の優位性

まず、経済的な視点から見ていきましょう。

「賃貸の方が身軽で税金や修繕費の心配がない」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、実は賃貸の家賃には、

  • 固定資産税
  • オーナーの利益
  • 設備の修繕費用
  • 他の入居者の家賃滞納による損失分

まで、様々なコストが含まれています。

一方、**持ち家は、いわばご自身がオーナーとなる「最も確実で有利な賃貸経営」**と言えます。

賃貸に含まれるこれらの余分なコストがカットされるため、
必然的に持ち家の方が経済的に有利になるのです。


住宅ローンの賢い活用法

持ち家を検討する上で欠かせないのが住宅ローンです。

驚くべきことに、アパートローンに比べて住宅ローンの方が低金利に設定されています。
これは制度上の優遇であり、ぜひ活用すべき点です。

また、「多額のローンを抱えるのは不安」と感じる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、銀行があなたに住宅ローンを貸すということは、
「将来、その金額を返済する能力がある」と銀行がお墨付きを与えていることを意味します。

この「お金を借りる能力」は、個人の大切な資産の一つであり、最大限に活かすべきだと言えるでしょう。


リスクを最小化するローンの組み方

では、具体的にどのようにローンを組むのが賢いのでしょうか?

私は 「借りられるだけ借り、返済期間はできるだけ長く設定すること」 をおすすめします。

フィナンシャルプランナーの中には
「返済期間を短くして金利を抑えるべき」という意見もありますが、
これは毎月の返済額を圧迫し、不測の事態(病気やリストラなど)が起きた際のリスクを高める可能性があります。

毎月の支払いを抑え、手元に現金を残しておくことで、
万が一の事態にも対応できる流動性を確保できます。

これにより、全体の人生におけるリスクを最小限に抑えることができるのです。


「老後の安心」という大きなメリット

住宅ローンを完済した後の「アウトライト住宅(返済義務のない家)」も、持ち家の大きなメリットです。

人生100年時代と言われる現代において、ローンを完済した持ち家は、
「家賃のいらない個人年金」のような存在となります。

長生きする中で家賃の支払いに困る心配がなく、精神的な安定につながります。

これは、老後に生活保護に頼るなど、社会に負担をかけることを避けたいと考える日本人にとって、
特に重要な情緒的価値をもたらします。

また、住宅ローンには団体信用生命保険が付帯していることが多く
契約者が万一のことがあった場合、残されたご家族はローンの返済が免除され、
家を無償で受け継ぐことができます。

これは、お子様がいらっしゃるご家庭にとって、非常に大きな安心材料となるでしょう。


賃貸の課題と住む場所の重要性

一方で、賃貸には見過ごされがちな課題も存在します。

特に高齢になると、大家さんや不動産会社が高齢者との賃貸契約を敬遠する傾向があります。

これは、日本の借地借家法において賃貸借契約が相続されるため、
もしもの場合に手続きが複雑になることを避けるためです。

結果として、50代、60代を超えると賃貸の選択肢が狭まる可能性があります。

住まい選びは、私たちの主観的幸福度を構成する要素の約2割を占めるとも言われています。

単なる資産性だけでなく、

  • その場所での暮らしやすさ
  • 家族との思い出といった情緒的価値

も考慮し、長期的な視点での住まい選びが非常に重要です。

また、小学校高学年になると塾に通う子が増えるなど、

住む場所が学力に影響を与える実態があります。

人気の高い高額な不動産を選択することは、

子供の教育環境への投資とも捉えられます


まとめ:賢い選択のために

「買える人であれば持ち家が良い」という結論は、

  • 経済的な合理性
  • 人生のリスクヘッジ
  • 老後の安心
  • 家族への配慮

といった多角的な視点から導き出されます。

もちろん、ご自身のライフステージや経済状況、
そして「どんな暮らしがしたいか」という価値観によって最適な選択は異なります。

もし、住まいに関する法的なご相談や、不動産の登記、相続手続きなどでお困りのことがございましたら、
お気軽にご相談ください。

司法書士として、できる限りサポートさせていただきます。