こんにちは、司法書士の時任です。 「相続登記を自分でやりたいけれど、何だか難しそう……」と不安に思っていませんか? 今回は「詳しく丁寧に」をモットーに、一般の方でも迷わず完結できるよう、プロが現場で使っているノウハウを惜しみなく公開します。 読み終える頃には、あなたも自信を持って法務局へ向かえるはずです!
今回のケースは、亡くなられた方(被相続人)をAさん、法定相続人をBさん、Cさん、Dさんとして進めていきましょう。相続登記には全部で6つのステップがあります。順に解説していきます。
【ステップ1】書類を集める
まずは、手続きに必要な書類(A~D)を市役所等で取得します。
A:被相続人の生まれてから亡くなるまでの除籍謄本
新制度の活用: 2024年3月より、全国どこの市区町村窓口でも、他の市区町村の戸籍を請求できるようになりました(広域交付制度)。これにより、本籍地がバラバラでも、最寄りの役所一箇所でまとめて取得することが可能です。
本籍地が不明な場合: 従来通り、被相続人の最後の住所地で「本籍地記載」の住民票の除票を取得すれば確認できます 。
注意点
- 窓口での相談がおすすめ: 兄弟姉妹が相続人となるケースや、非常に古い戸籍(明治・大正時代など)が含まれる場合、またコンピュータ化されていない一部の戸籍については、広域交付では発行できない(各本籍地へ請求が必要な)ケースがあります。まずは窓口で「相続登記に使うため、出生から死亡まで揃えたい」と相談することをお勧めします。
- 本籍地が不明な場合: 被相続人の最後の住所地の役所で「本籍地を記載した住民票の除票」を取得すれば、正確な本籍地を確認できます 。
- 窓口での注意:広域交付を利用する場合、「本人が窓口に行くこと(郵送不可)」および「顔写真付きの身分証明書(マイナンバーカードや免許証)」が必須となります。また、発行に時間がかかる場合があるため、時間に余裕を持って行くといいと思います。
B:最新年度の課税明細書または評価証明書 課税明細書とは、毎年4月頃に市役所から送られてくる固定資産税の納税通知書に同封されている書類です。ここには不動産の評価額が載っており、この評価額が後の登記申請書作成で必要になります。非課税で評価額の記載がない場合は、市役所で評価証明書を発行してもらいましょう。なお、毎年4月1日で年度が切り替わるため、常に最新年度のものを用意するよう注意してください(例:令和6年3月31日までに申請する場合は、令和5年度の書類が必要です)。
C:被相続人の戸籍の附票 住所の履歴が一覧で記載されている書類で、戸籍と同じく本籍地の市役所で取れます。住所の移動を繰り返している場合、住民票の除票では記載が足りないことがあるため、戸籍の附票を取得する方がお勧めです。
D:相続人の方々の書類 配偶者やお子さんたちの戸籍謄本、印鑑証明書、そして不動産の名義を取得する方の住民票を用意します。全く同じ戸籍謄本が重複して必要になることはなく、未婚のお子さんが親と同じ戸籍にいる場合などは1通あれば十分です。
【ステップ2】不動産を把握する
ステップ1で用意した評価証明書や課税明細書に記載されている不動産について、現在の「登記簿謄本」に書かれている内容を調べます。これは、後のステップで登記申請書を作る際に、登記簿の記載通りに一言一句間違えずに作らないといけないからです。
不動産の把握には、インターネットの「登記情報提供サービス」が便利です。法務局へ行って登記簿謄本を取る方法もありますが、インターネットのほうが即座に取れて費用も安いためお勧めです(お支払いはクレジットカードになります)。登記情報提供サービス
利用の仕方としては、インターネットで検索していただき、サイトの中ほどにある「一時利用」をクリックします。ここで2つ注意点があります。
●「一時利用」を選択しますが、利用時間は平日(8:30〜23:00)土日祝日(8:30〜18:00)に限られている点に注意しましょう 。
●初回ログインから1日しか閲覧できないため、取得したらすぐにPDFで保存または印刷をしてください 。
【ステップ3】遺産分割協議書を作る
ステップ1、2で集めた情報をもとに、どの不動産をどなたが相続するかをご家族で決めていただき、それを文章にまとめます。
- 基本的な書き方:一番上に「遺産分割協議書」とタイトルを記載します。被相続人(亡くなられたAさん)の氏名と亡くなられた日付を書き、「最後の本籍」には亡くなった記載のある戸籍の通りに、「最後の住所」には戸籍の附票の通りに記載します。
- 不動産の書き方:登記簿を見ながら、一言一句その通りに記載してください。
- プロのワンポイントアドバイス:後から未知の財産が発見された場合に備えて、「誰が相続するか」を事前に決める一文を入れておくことをお勧めします。これにより、後から協議書を作り直す手間や、ご家族間のトラブルを回避できます。
- 署名と押印:作成できたら、相続人全員で署名し、「実印」を押します。印鑑証明書と見比べて、もし印影がかすれたり欠けたりした場合は、重ならないように近くに押し直せば大丈夫です。2ページ以上にまたがる場合はホッチキス止めをして、またがる部分に全員の実印で「契印」をします。
【ステップ4】登記申請書を作る
次に、法務省が公開している登記申請書の雛形に沿って、法務局へ提出する書類を作成します。ここでは、Aさんの不動産をBさんが単独で相続するケースを想定して解説します。
- 余白を忘れずに:申請書の一番上には、法務局が受付シールを貼るための「5〜6cm以上のスペース」を必ず空けておいてください。
- 登記の目的と原因:Aさんが単独で所有していた場合は「所有権移転」、もし道路の持分など他の方と共有していた場合は「A持分全部移転」と記載します。原因の欄には、亡くなられた日付を和暦で書き、「相続」と記載します。
- 相続人と連絡先:不動産を取得するBさんのお名前だけを書き、右横に「認印」を押します。書類に不備があった場合に法務局から平日日中に電話が来るため、携帯電話などの連絡先を記載してください。
- 権利証についての大切な注意:雛形の中に「登記識別情報の通知を希望しません」というチェック項目がある場合がありますが、これは将来不動産を売却する際に必要となる「権利証」のことなので、チェックを入れず、この項目ごと削除してしまうことをお勧めします。
- 課税価格と登録免許税の計算:ここが一番の山場です。
- 課税明細書や評価証明書を見ながら「評価額」や「価格」と書かれている金額(一番大きい金額)を合計し、下3桁を切り捨てた金額が「課税価格」です。
- その課税価格に「0.4%」を掛け、下2桁を切り捨てた金額が、収入印紙で納める税金「登録免許税」となります。
- ※例外として、令和9年3月31日までは評価額が100万円以下の土地は非課税となります。該当する場合は申請書にその旨を記載し、税金計算上は0円として計上してください。
登録免許税の計算式:
- 課税価格: 評価額の合計(1,000円未満切り捨て)
- 税額: 課税価格 ×0.4%(100円未満切り捨て)
- 特例: 土地の評価額が100万円以下の場合は、令和9年3月31日まで免税となります 。
- 印刷と製本:申請書は「片面印刷」にします。収入印紙を貼り付けるための「A4の白紙の台紙」を一番後ろに付け、左側をホッチキス止めします。2ページ以上になる場合は、ページがまたがる部分に認印で契印をしてください。
提出前の総仕上げである「付属書類の準備と印紙の貼り方」から、法務局への提出、そして完了書類の受け取りまでを解説いたします。
【提出前の総仕上げ】添付書面の準備と収入印紙 申請書には、集めた戸籍や遺産分割協議書、印鑑証明書などを「添付書面」として一緒に提出します。
- 原本を返してもらう方法(原本還付請求):提出した戸籍や遺産分割協議書は、希望すれば法務局から返却してもらえます。やり方は簡単で、コピーを取って余白に「原本と相違ありません」と手書きし、申請人のお名前を書いて認印を押します。複数枚になる場合は左側をホッチキス止めし、ページの間に認印で契印(割印)をしてください。「原本と相違ありません」という記載は最初のページだけで大丈夫です。なお、戸籍が大量でコピーが大変な場合は、「相続関係説明図」という書類を作れば戸籍のコピーを省略できます。
- 収入印紙の貼り方:前回計算した「登録免許税」は、収入印紙で納めます。郵便局か法務局で購入し、申請書の一番後ろに付けた白紙の台紙にのり付けしてください。ここでの最大の注意点は「絶対に消印(ハンコなどを上から押すこと)をしない」ことです。消印をしてしまうと無効になってしまいますので十分ご注意ください。 これらをすべてクリップでまとめれば、提出書類の完成です。
【ステップ5】書類を提出する
完成した書類を、いよいよ管轄の法務局へ提出します。提出方法は「直接持ち込む」か「郵送する」の2通りです。
- 郵送がお勧め:法務局は平日の午後5時15分までしか開いていないため、郵送での提出がお勧めです。郵送する場合は、無事に届いたか追跡ができる赤色の「レターパックプラス」を利用すると安心です。
- 完了までの期間:申請後、だいたい1週間から2週間程度で登記が完了します。目安となる完了予定日は法務局のホームページで公開されています。書類に不備(訂正)がある場合にのみ電話が来ますが、無事に終わったという連絡は法務局からは来ませんのでご注意ください。
【ステップ6】登記が完了して書類を受け取る 無事に登記が完了すると、法務局から大切な書類が発行されます。
- 受け取る書類:手続きが無事に終わったことを報告する「登記完了証」、そして不動産を売却する際などに必要となる権利証にあたる「登記識別情報通知」の2種類です。また、原本還付請求をした戸籍なども一緒に返却されます。
- 窓口で受け取る場合:法務局へ行く前に、念のため電話で登記が完了しているか確認することをお勧めします。受け取りの際は、申請書に押したのと同じ印鑑(認印)を必ず持参してください。
- 郵送で受け取る場合:申請時に「返信用封筒」を一緒に提出しておく必要があります。書類が折らずに入る大きめの封筒(角2封筒など)を用意し、郵便局で書類の重さを量ってもらい、正確な切手を貼って提出してください(新しく発行される書類の分、少し重さに余裕を持たせるのがコツです)。この返送は「本人限定受取郵便」となるため、郵便局で封筒にその旨のハンコを押してもらうとスムーズです。
【最後に】
完了書類を受け取ったら、ステップ2で利用したインターネットの「登記情報提供サービス」を使って、ご自身の目で正しく登記がされているか確認してみるのも良いでしょう。
なお、今回解説で使用した各書類の雛形は、当事務所のホームページ司法書士事務所TOKITOで公開しておりますので、ぜひご活用ください。 最後までご覧いただきありがとうございました。少しでもご自身での手続きの参考になれば幸いです。もし進めていく中で、「やっぱり自分では難しいかも…」と迷ったときは、無理をせずお気軽にご相談くださいね。
あなたのスムーズな相続手続きを、心より応援しております!
| ステップ | 概要 | ポイント |
| 1. 書類収集 | 戸籍や評価証明書の取得 | 広域交付を使って最寄りの役所で一括請求! |
| 2. 物件把握 | 登記情報の確認 | ネットサービスで一言一句違わぬよう確認 |
| 3. 遺産分割 | 協議書の作成と押印 | 全員の実印と契印を忘れずに |
| 4. 申請書作成 | 申請書類の製本 | 5~6cmの余白と消印禁止の印紙 |
| 5. 提出 | 法務局への持ち込み/郵送 | 追跡可能なレターパックプラス |
| 6. 完了 | 書類の受け取り | 返信用封筒は本人限定受取郵便 |