第35回 【司法書士が警告】「家族信託を自分でやる」は危険?

失敗しないための準備と費用を徹底解説

こんにちは。司法書士の時任です。

40代から70代の皆様、ご自身の老後やご両親の相続について「そろそろ対策を始めないと」と真剣にお考えではないでしょうか。

特に、認知症になった後の財産管理や、スムーズな相続を実現するための「家族信託」が今、非常に注目されています。

この家族信託について、「契約書さえ作れば自分でできるのでは?」と考える方もいらっしゃいます。

結論から申し上げますと、家族信託の契約自体は理論上、自力で作成することは可能です。

しかし、専門家として皆様にお伝えしたいのは、「できる」ことと「機能する」ことの間には大きな壁があるということです。

今回は、家族信託を自力で始めることの危険性と、安心確実な対策のために必要な知識、そして専門家に頼む際の費用対効果について、分かりやすく解説します。


家族信託とは?40代から始める安心の財産管理

まず、家族信託とはどのような制度でしょうか。

簡単に言えば、ご自身の財産(不動産や預金など)を、信頼できるご家族に託し、その管理や運用、そして処分までを任せる仕組みのことです。

この制度の最大のメリットは、ご自身が将来、認知症になって判断能力を失ってしまった場合でも、あらかじめ指定したご家族(受託者)が財産管理を継続できる点にあります。

これにより、いわゆる「資産凍結」のような状態を避け、大切な財産を未来にわたって守ることができます。

家族信託は、主に認知症対策として活用されますが、障害のあるお子様の将来を守る目的や、特定の相続対策としても利用が広がっています。


家族信託は契約行為!理論上は自力でできる

家族信託をスタートさせる方法はいくつかありますが、基本的にはご自身(財産を託す人=委託者)と、財産を託される家族(受託者)の間で「信託契約」を結ぶことによって始まります。

この契約行為には特に法令上の制限はありません。

そのため、契約書さえ整えば成立し、インターネット上のテンプレートや市販の書籍などを利用して、自力で契約書を作成する方も存在します。


家族信託を始めるために必須の準備

しかし、家族信託はただ契約書を作るだけで済むものではありません。

スタートさせるためには、主に以下の準備を正確に進める必要があります。

  1. 信託財産の決定:何を託すのか(不動産、金銭、預金など)を明確にします。
  2. 登場人物の決定:財産を託す人(委託者)、託される人(受託者)、そして信託した財産から利益を受ける人(受益者)の最低3名を決定します。
  3. 信託契約書の作成:契約内容を文書化します。
  4. 信託登記の手続き:信託財産に不動産が含まれる場合、名義を委託者から受託者へ変更する登記が必要です。
  5. 信託口口座の開設:金銭を信託する場合、金融機関と調整の上、信託専用の口座を開設しなければなりません。

【重要】自力で家族信託を進める4つの深刻なリスク

自力で家族信託の準備を進めることは可能ですが、その過程には専門家として看過できない多くのリスクが潜んでいます。

特に、40代から70代の大切な財産を守るための対策が、かえって将来の大きなトラブルにつながる可能性があるため、注意が必要です。


リスク1:契約書が「無効」となり、信託が機能しない

家族信託の仕組みは、一般的な民法上の契約(売買契約や贈与契約など)に比べて非常に複雑です。

もし自力で作成した契約書に不備があったり、法的要件が欠落していたりすると、契約自体が「無効」と判断されることがあります。

その結果、せっかく準備した信託が実際に機能しないという事態が発生する可能性があります。

テンプレートをそのまま利用したとしても、個別の事情に対応できず、結果的に機能不全に陥るケースもあります。


リスク2:思わぬ「税負担」が発生する

信託の内容や、委託者と受益者の設定を誤ってしまった場合、税務上それが**「贈与」と判断されてしまう**リスクがあります。

この場合、**想定外の多額の税金(贈与税など)**が突然発生し、大きな税負担を負うことになりかねません。

特に、受益権を連続させる特殊な信託行為(受益者連続型信託など)は複雑であり、ミスが生じやすい部分です。


リスク3:信託口口座が開設できない

信託専用の口座(信託口口座)を開設する場合、金融機関との調整が必須です。

しかし、金融機関によっては、専門家が関与していない契約書の場合、口座開設に応じてくれないケースが多々あります。

これは、素人の方が作成した契約書には法的要件の欠落や不備があり、そもそも信託自体が成立していない可能性があるためです。

金融機関側で契約書を詳細にチェック・修正する手間が発生するため、専門家の介入を求められるのが実情です。


リスク4:不動産登記手続きでミスが発生し、手続きがストップする

信託財産に不動産が含まれる場合に必要な信託登記は、通常の売買や贈与による名義変更よりも遥かに複雑です。

特に、信託目録といった特殊な書類を作成する必要があります。

この登記手続きは、専門家である司法書士の間でも、簡単には申請書が書けないほど難解な場合があり、申請にミスがあれば手続きがストップしてしまいます。


安心と確実性を手に入れる:専門家に依頼するメリット

大切なご家族の将来の財産を守るため、失敗のリスクを排除したいなら、専門家(司法書士など)に依頼することが最も確実です。

専門家に依頼する主なメリット

  1. 法律・税務の知識に基づいた適切な設計
     法律や税務の専門知識に基づいて、お客様の状況に最適な信託の仕組みを設計できます。
  2. 手続きの全面的なサポート
     複雑な登記手続きや契約書作成はもちろん、金融機関との調整も含め、必要な準備を全てサポートしてもらえます。
  3. 家族間の利害調整を支援
     信託設計や契約の過程で生じるご家族間の利害調整や話し合いの場面でも、第三者の立場として円滑な支援を受けることができます。

費用対効果を比較する:専門家依頼 vs. 成年後見制度

専門家に依頼する場合、費用が発生しますが、これは将来のトラブル回避や財産保護を目的とした**「投資」**として捉えるべきです。

専門家への初期費用目安

家族信託の設計や契約書作成にかかる司法書士報酬の目安は、40万円〜60万円前後(信託財産の価格によって変動)です。

これに、不動産が関わる場合の登記費用(司法書士報酬:5万〜15万円程度+登録免許税)や、公証役場での公正証書作成手数料などが加わります。

トータルで見ると、約50万円〜80万円程度が相場となることが多いです。もちろん信託する財産の価格や内容によって大きく変動します。


比較対象:成年後見制度のランニングコスト

家族信託を準備せずに認知症になってしまった場合、財産管理のために裁判所によって成年後見人が選任されます。

専門家が後見人となった場合、報酬が発生し、これは財産額によって増減しますが、平均して月々3万円程度の報酬がかかります。

  • 月々3万円 × 12ヶ月 = 年間36万円
  • 成年後見が10年間続けば、報酬の合計は360万円にもなります。

家族信託の経済的メリット

一方、家族信託では、ご家族を受託者に選定する場合、原則として受託者への報酬をゼロに設定できます。

家族信託の初期費用に仮に50万〜80万円かかったとしても、成年後見制度の長期的なランニングコスト(360万円など)と比較した場合、トータルで費用を抑えられる可能性が高いのです。

初期費用は数十万円かかりますが、長期的なコストや、何より「実際に機能する安心感」を考えると、専門家への依頼は決して高い投資ではないと言えるでしょう。


最後に

家族信託は、認知症や相続といった将来の不安に対する非常に有効な対策です。

しかし、自力で「できたつもり」になっていても、実際には機能しない信託になってしまうリスクがあることをご理解ください。

ご自身やご両親の大切な財産を確実に守るために、どの制度が最適なのか、そして専門家に頼むべきかどうかに迷われた際は、ぜひお気軽にご相談ください。

私たちが、皆様にとって適切な対策を一緒に検討させていただきます。

第34回 40代・50代必見!親の認知症対策「法定後見」「任意後見」「家族信託」を徹底比較

相続や介護を見据える40代から70代の皆様、こんにちは。司法書士の時任です。

ご自身の老後や親御様の介護について考える際、もし親御様が認知症になったら、

「実家を売って介護費用に充てたい」
「親の預貯金を下ろして医療費を払いたい」

といった手続きができなくなるかもしれない、という不安はありませんか?

財産管理の手続きができなくなる事態に備えるために、**「法定後見」「任意後見」「家族信託」**という3つの対策が広く知られています。

しかし、

  • 「どれを選べばいいか分からない」
  • 「何がどう違うの?」

と感じる方も多いでしょう。

今回は、これらの制度が必要なケースと、それぞれの特徴・費用、そしてご家族にとって最適な選び方について、分かりやすさを重視して解説します。


なぜ事前の対策が必要なのか?

まず、これらの対策が不要なご家族もいます。

例えば、仮に親御様の財産(家や預貯金)が凍結してしまっても、特に困らないという場合は、対策は必須ではありません。

しかし、認知症などで判断能力が低下した際、親御様の財産(家や預貯金)を使って介護費用などを捻出する可能性がある方は、事前の準備を強くお勧めします。

準備を怠ると、万が一の際に家庭裁判所の関与なしには預貯金を下ろしたり、不動産を売却したりする手続きができなくなるためです。


【比較の軸】「元気なうちの準備」か「判断能力低下後の対処」か

これらの対策を比較する上で、最も重要な軸となるのが「利用するタイミング」です。

対策名利用するタイミング裁判所の関与財産管理の範囲
任意後見判断能力があるうち(元気なうち)に契約あり(監督人が選任される)すべての財産が原則
家族信託判断能力があるうち(元気なうち)に契約なし特定の財産のみ
法定後見判断能力が低下してからあり(後見人が選任される)すべての財産が原則

1. ご自身の希望を最大限に叶える「家族信託」

ご自身の意思が尊重されやすい形で、特定の財産管理を家族に託したい場合に最適なのが「家族信託」です。

特徴とメリット

  • 利用のタイミング:ご本人が元気で判断能力があるうちに行います。
  • 財産管理の範囲:法定後見や任意後見がすべての財産を対象とするのに対し、家族信託は信託する特定の財産のみを対象とします。
     例:実家と預貯金の一部だけを信託財産とするご家族が非常に多いです。
  • 裁判所の関与:法定後見や任意後見と違い、一切裁判所の関与がない点が最大の特徴です。そのため、財産管理を頼んだ人の希望が最も叶えられやすい仕組みといえます。
  • 報酬:後見人制度のように、裁判所の指示によって毎年報酬を支払う必要が原則としてありません。ただし、管理が複雑な場合は、将来的に事務処理を外部専門家に外注する可能性を見据えて、信託報酬を決めることも可能です。

費用(専門家に依頼した場合)

  • 信託組成を専門家に作成してもらう場合:信託する財産の1.5%~2%が目安

2. 信頼できる家族に「すべて」の財産を任せる「任意後見」

将来、万が一判断能力が低下した場合に、確実にご自身が信頼できる家族や友人に、すべての財産管理を任せたい場合に有効なのが「任意後見」です。

特徴とメリット

  • 利用のタイミング:ご本人が元気で判断能力があるうちに、将来の財産管理について契約を交わします。
  • 財産管理の範囲:原則として、すべての財産管理をお願いすることになります。
  • 受任者の選択:家族や友人など、信頼できる人を後見人に選ぶことができます。
  • 報酬:契約書作成後に判断能力が低下し、実際に財産管理が必要になると、後見人(家族がなることが多い)と、それを監督する監督人に対して、毎年報酬を払っていく必要があります。

費用(専門家に依頼した場合)

  • 公正証書の作成にかかる費用:2万円前後
  • 契約書の作成を専門家に頼む場合:20万円前後

3. 判断能力低下後の「最終手段」となる「法定後見」

法定後見は、ご本人の判断能力がすでに低下しており、上記のような事前の準備(任意後見や家族信託)をしていなかった場合に利用される**「最終手段」**という位置づけです。

特徴とデメリット

  • 利用のタイミング:判断能力が低下してから利用します。
  • 後見人の選任:裁判所への申立てにより手続きを開始しますが、誰が後見人に選ばれるかは分かりません。もしご家族以外(司法書士などの専門家)が後見人に選ばれた場合、財産管理の柔軟性が低下する可能性があります。
  • 報酬:専門家が後見人に選ばれた場合、毎年14万円から72万円程度の報酬を払い続ける必要があります。

費用(専門家に依頼した場合)

  • 裁判所への申立て費用:1万円前後
  • 申立ての書類作成を専門家に依頼した場合:10万円前後

司法書士からのアドバイス:どの対策を選ぶべきか

どの対策が「優れている」という話ではなく、ご自身やご家族の将来をしっかりと見据え、**「どの方法が合っているか」**という目線で検討することが重要です。

検討のポイント(3つ)

  1. そもそも対策は必要か?
     (親の認知症で財産を動かす必要性があるか?)
  2. 誰に財産管理を任せたいか?
     (信頼できる家族か、専門家でも構わないか?)
  3. 管理してもらいたい財産は全部か、特定の一部か?

これらの検討が難しい場合は、司法書士などの専門職に相談することで、ご家族の状況に最適な方法を見つけることができます。


親御様との会話を始めるきっかけ作り

親御様自身がまだお元気で、将来の話やお金の話がしにくい、という声をよく聞きます。

もし会話のきっかけが掴みにくいと感じるなら、親御様ご自身の経験を聞いてみるのはいかがでしょうか。

例えば、

  • 「おばあちゃんの介護の時はどうしたの?」
  • 「あの時、財産管理はどうしていたの?」

といった過去の経験をきっかけに話を聞き出してみると、ご自身の老後の計画についても具体的に話しやすくなることがあります。


当事務所では、ご家族の将来設計に関するご相談を承っております。
まずはお気軽にご連絡ください。

第33回 【40代から70代の方へ】家族が揉めない生前相続対策3ステップ!認知症・税金トラブルを防ぐために

こんにちは。司法書士の時任です。
このブログを読まれているあなたは、ご自身の将来、またはご両親の相続について、漠然とした不安を感じているのではないでしょうか。

特に40代から70代の現役世代にとって、**「家族が争わないこと」と「円満な継承」**は最大の関心事です。

実は、生前に対策を講じることは、財産を巡る「争続」を防ぎ、残されたご家族の負担を大きく軽減します。

この記事では、私が日々相続の現場で感じている教訓をもとに、今すぐ始めるべき生前対策を具体的な3つのステップに分けて解説します。財産額の大小に関わらず、ぜひ取り組んでいただきたい内容です。


はじめに:なぜ生前対策が必要なのか?3つのリスク

生前対策は、主に以下の3つのリスクに備えるために行います。

  1. 相続トラブルのリスク:家族間で遺産を巡る争いが発生する
  2. 認知症のリスク:ご本人の判断能力が低下し、財産管理ができなくなる
  3. 相続税のリスク:税金の負担が必要以上に大きくなる

これら3つのリスクに備える前に、まず最も重要な最初のステップから始めましょう。


ステップ1:現状を把握する(財産目録の作成)

相続対策のスタート地点は、**「ご自身の財産が一体どれだけあるのか」**を正確に把握することです。

財産状況がわからなければ、適切な対策を立てることはできません。

このステップで目指すのは、どんな書式でも構いませんので、**プラスの財産とマイナスの財産を一覧にした「財産目録」**の叩き台を作ることです。

1. プラスの財産の整理

まず、お手持ちのプラスの財産を分類し、整理・整頓していきましょう。

  • 預貯金:どの銀行に、いくつ口座があり、それぞれの口座にいくら入っているのかを具体的に分類します。
  • 不動産:自宅やマンション、その他の土地建物があれば、その所在地(住所・地番・家屋番号など)、マンションの場合は号室まで特定できるように把握します。
  • 株式:上場株式を持っている場合、どの会社の株かというよりも、どの証券会社で管理しているのかを特定することが重要になります。

2. マイナスの財産の整理(負債の確認)

プラスの財産だけでなく、負債の状況も必ず把握してください。

住宅ローンや借入金など、マイナスの財産がどれだけあるのかを知ることは非常に重要です。

負債があまりにも多く、相続人が「相続放棄」を検討しなければならない状況も起こり得るからです。

プラスとマイナスの財産を一覧にできれば、今後の対策を講じる準備が整います。


ステップ2:家族が争わないための対策(遺言書の活用)

「うちの家族は仲が良いから大丈夫」「財産は大した額じゃないから揉めないだろう」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、相続の現場で実際に起きている現実は異なります。

遺産分割調停事件の統計を見ると、なんと約8割のご家庭が、5,000万円以下の相続財産を巡って争っているのです。

特に1,000万円以下の財産で争うケースも全体の34%を占めており、遺産が少ないからこそトラブルが起きやすい傾向にあります。

家族が財産を巡って争わないよう、**「誰に、どれだけ遺産を相続させるか」**をあらかじめ話し合っておくことが絶対に大切です。

確実なトラブル回避策は「遺言書」

ご自身の意思を明確に反映させ、遺産分割を確実に行うための最も確実な方法は、遺言書を正式に残すことです。

遺言書があれば、原則として、遺産は遺言書の内容通りに分割されます。

これにより、相続人全員での話し合い(遺産分割協議)で、不必要に喧嘩が生じるのを防ぐことができます。

遺言書は**「法的効力が強い書面」**であり、遺産分割協議で全相続人が内容以外の分割方法に合意した場合を除き、遺言書の内容が最優先されるため、非常に強力な対策となります。


ステップ3:財産を「凍結」から守る対策(認知症対策)

日本人の高齢化は急速に進んでおり、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」ですが、75歳以上の方は1全人口の18%超になります。

現在、600万人以上の日本人が認知症を発症しているという現実があります。

認知症対策をなぜ急ぐ必要があるかというと、認知症になってしまうと、事実上、ほとんどの相続対策が行えなくなるからです。

  • 不動産の売却や購入ができなくなる
  • 生命保険への加入ができなくなる
  • 有効な遺言書を作成できなくなる

例えば、老人ホームの入居費用を捻出するために不動産を売却しようとしても、認知症発症後では売却できず、手元の資金でなんとかしなければならない事態に陥りかねません。

認知症対策の切り札「家族信託」

認知症で財産が凍結する事態を防ぐために、近年注目されているのが**「家族信託」**です。

家族信託とは、従来の認知症対策として活用されてきた成年後見制度に代わり、より柔軟な財産管理を行うことができる仕組みです。

財産を管理してもらう人(受託者)を指定し、**「どの財産を、誰に、いつ、どれくらい渡すか」**を事前に決めておくことができます。

ただし、家族信託を利用する上で絶対的な注意点があります。

それは、認知症発症後には家族信託を利用することはできないということです。

遺言書も家族信託も、ご本人の判断能力がしっかりしている「発症前」に組んでおくことがマストになります。


(番外編)もしも相続税がかかるなら(税金対策)

相続税の基礎控除額が引き下げられたことで、相続税の対象となる方は増えています。

特に都市部に不動産をお持ちの方は、相続税がかかる可能性が非常に高いので注意が必要です。

基礎控除額を必ず把握する

まず、ご自身の相続財産が基礎控除額を超えているかどうかを確認しましょう。

基礎控除額は以下の計算式で求められます。

3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

例えば、法定相続人が2人いる場合、
基礎控除額は 3,000万円 +(600万円 × 2人)= 4,200万円 となります。

つまり、財産が4,200万円以上ある場合、相続税が発生する可能性があるため、申告の義務が発生します。

特例や控除を最大限活用する

相続税には、配偶者控除や小規模宅地等の特例など、税額を大幅に減らせる特例・控除が多数存在します。

これらの特例を適切に活用すれば、相続税額がゼロになることも珍しくありません。

しかし、これらの特例控除を利用する場合でも、相続税の申告は必要になります。

税金に関する複雑な手続きや対策については、必ず相続専門の税理士に相談してください。


まとめ:相続対策は「家族全員の共同プロジェクト」

相続対策というと、「縁起でもない」「自分の金は自分で使う」といった考えから、なかなか進まない傾向がありますが、もし少しでもご家族に財産を相続させる意向があるなら、これはご家族全員で取り組むべき共同プロジェクトであると心得てください。

繰り返しになりますが、最も重要な生前対策は、財産額の多寡にかかわらず、ご家族が争うことなく相続を迎えられるようにすることです。

そのためにも、以下の3ステップをぜひ実行してください。

  1. 財産の現状を整理し、財産目録を作る
  2. ご自身の意思を反映させる遺言書を作成する
  3. 認知症になる前に家族信託などの対策を講じる

私たち司法書士事務所や相続専門の税理士事務所では、無料相談を行っているところが多くあります。

まずはお気軽に専門家にご相談いただき、不安を解消するところから始めることを強くお勧めします。


第32回 家の相続で失敗しないために|登記・費用・特例制度を司法書士がわかりやすく解説

司法書士の時任です。いつもブログをご覧いただきありがとうございます。

自分自身の相続、もしくはご両親からの相続に備える必要性を感じている40代から70代の皆様へ。

「家」を相続する場合、名義が変わるだけではないという事実をご存知でしょうか。特に不動産が絡む相続は金額が大きくなりやすく、また判断に迷う点も多いため、複雑に感じていらっしゃるかもしれません。

本日は、家を相続する際に必要な「手続きの全体像」と「実際にかかる費用」について、司法書士の視点から分かりやすく解説いたします。
2024年4月からは相続登記が義務化されていますので、その重要性も含め、ぜひ最後までご覧ください。


Ⅰ. まず知っておきたい!家の相続で発生する具体的な「費用」

家(不動産)を相続する際には、様々な種類の費用や税金が発生します。
あらかじめどのくらいの出費があるのかを把握しておくことが重要です。


1. 相続税と評価費用

相続財産の総額が「基礎控除額」を超える場合、相続税が課税されます。
この場合、亡くなった日から10ヶ月以内という期限内に申告と納税が必要です。

不動産の評価は複雑です。
土地は「路線価式」または「倍率方式」で、建物は「固定資産税評価額」で評価されます。
この評価によって相続税額が大きく変動するため、正確な評価を行うことが非常に重要です。

小規模宅地等の特例で最大80%減額も可能

亡くなった方が住んでいた土地を配偶者や同居の子どもなどが相続する場合、一定の条件を満たせば、最大80%の評価額減額を受けられる「小規模宅地等の特例」があります。
この特例を適用することで、相続税を大幅に軽減できる場合があります。

ただし、配偶者以外の方が適用を受けるには、

  • 「同居要件」
  • 「申告期限までの所有継続」

など様々な要件があり複雑です。
有利な申告につなげるためには、相続専門の税理士に相談することをお勧めします。


2. 相続登記にかかる費用(登録免許税など)

家の名義を亡くなった方から相続人へ変更する「相続登記」の手続きの際にも費用が発生します。

最も大きな費用の一つが登録免許税です。
これは、不動産の価格を基に算出される税金です。

現在、登録免許税については一部免除措置が設けられています(2027年3月31日まで)。
例えば、相続した土地の価格が100万円以下の場合は登録免許税が免除されます。


3. 家を所有し続ける限りかかる費用

相続手続きが完了し、家を所有し続ける限り、以下の費用が継続的に発生します。

  • 固定資産税
  • 都市計画税

これらの税率は地域によって異なる場合があります。


4. 売却を選択した場合にかかる費用

もし相続した家に住む予定がない場合、売却も選択肢の一つとなります。
売却する場合、以下の費用や税金がかかります。

費用・税金概要と注意点
仲介手数料不動産会社に成功報酬として支払う費用で、売却価格によっては数十万から100万円以上になることがあります。
印紙税売買契約書に課税される税金で、契約金額に応じて税額が決まっています。
譲渡所得税売却して得た利益(譲渡所得)に対して課税される税金(所得税と住民税)です。

空き家特例(最大3,000万円控除)の活用

被相続人(亡くなった方)が居住していた家屋やその土地を相続した後、一定期間内に売却し、定められた要件に当てはまる場合、**譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例(通称「空き家特例」)**があります。

この特例は非常に有利ですが、適用要件が複雑です。
適用をご希望の場合は、相続専門の税理士に相談することをお勧めします。


Ⅱ. 司法書士が解説する「家の相続」で踏むべき6つのステップ

家の相続手続きは段階的に進める必要があります。
慌てないよう、順序を確認しておきましょう。


ステップ1:遺言書の確認

まず最初に行うべきことは、亡くなった方が遺言書を残していないかを確認することです。
遺言書は、自宅だけでなく、銀行の貸金庫、法務局、公正役場などにも保管されている場合があります。

遺言書の内容は、他の手続きに優先して適用されます。
万が一、後から遺言書が発見された場合は、遺産分割をやり直すことになります。

【重要】自筆証書遺言の注意点

法務局に保管されていない自筆証書遺言を発見した場合、たとえ封がされていなかったとしても、家庭裁判所の検認を受ける必要があります。
発見した状態のまま保存し、勝手に開封せず、家庭裁判所に検認の申請を行ってください。


ステップ2:遺産の全体像の把握

家などの不動産だけでなく、預貯金、株式、借金(マイナスの財産)など、すべての財産を洗い出し、プラスとマイナスの財産を整理します。


ステップ3:相続人の調査と確定

法定相続人が誰であるかを確定するために、戸籍謄本などを取り寄せ、親族関係を明らかにします。

認知している子どもや前の配偶者の子どもなど、思わぬ人が法定相続人となるケースもあります。
ここで相続人を確定しておかないと、次の手続きに進むことができません。


ステップ4:遺産分割協議と協議書の作成

相続人が確定したら、誰がどの財産を引き継ぐのかを相続人全員で話し合います(遺産分割協議)。
もちろん、この話し合いの中で、家を誰が相続するのかも決定します。

全員の合意が得られたら、その内容を明記した「遺産分割協議書」を作成し、全員の署名と押印が必要になります。
ただし、遺言書があり、その内容に従う場合は、この協議は不要です。


ステップ5:相続税の申告と納税

ステップ2で把握した財産を基に、基礎控除額を超える場合は、亡くなった日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税を行います。
申告が必要かどうか確認を必ず行ってください。


ステップ6:相続登記(名義変更)

最後に、不動産の名義を相続人の名前に変更する「相続登記」を行います。
必要書類を揃えて法務局に提出する手続きです。

相続登記の義務化にご注意ください

2024年4月からは、相続登記が義務化されました。
手続きを怠ってしまうと、過料の対象になってしまうため、忘れずに進める必要があります。
この点については、登記の専門家である司法書士にお気軽にご相談ください。


Ⅲ. まとめ:複雑な相続手続きは専門家にご相談を

相続は、法的な手続き、不動産の評価、税金の計算など、様々な専門知識が求められ、非常に時間と労力がかかるものです。
特に不動産を含む場合、評価一つで納税額が大きく変わるため、正確で有利な申告には専門家のサポートが不可欠です。

少しでも不安な点があれば、無理をしてご自身で手探りで進めるよりも、専門家に相談いただくのが最も安心です。

当事務所では、登記手続きの専門家として、相続登記はもちろん、様々な手続きをサポートしております。
必要に応じて、相続税の申告に対応する税理士や、不動産の売却や活用を支援する不動産会社など、関連する専門家との連携も可能です。

無料相談も実施しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。