第31回 40代・50代から始める!家族が揉めないための「生前相続対策」完全ロードマップ

こんにちは。司法書士の時任です。

ご自身やご両親の将来の相続について、「いつか備えないと」と思いつつ、何から手をつけて良いか分からないという方は多いのではないでしょうか。特に40代から70代の皆様にとって、相続は他人事ではない切実な問題です。

「相続争いなんて、お金持ちだけの話でしょう?」そう思われるかもしれません。しかし、近年の統計を見ると、遺産を巡る親族間の争い(調停や審判になったケース)は増加傾向にあり、実は遺産額が1,000万円以下のケースが相当数含まれています。

相続争いは、資産の多寡に関わらず、どの家庭にも起こり得るのです。

私たちが多くのお客様と接する中で、相続争いに発展してしまうご家庭には一つの共通点があります。
それは、生前におけるコミュニケーション不足です。

大切なご家族が相続発生後に困らないように、そして何よりも家族の絆を守るために、生前にできる具体的な対策を司法書士の視点から解説します。


家族の絆を守る!生前にできる5つの相続対策

今回は、家族間のトラブルを防ぎ、円満な相続を実現するための具体的な5つの対策を、実行しやすい順に解説します。


対策1:まず確認すべき「相続人」と「心の準備」

物理的な財産の対策を始める前に、最も重要であり、かつ根本的な対策となるのがコミュニケーションです。

  • 普段から頻繁に連絡を取り合っているご家庭では、相続発生時にも協力し合い、手続きをスムーズに進めやすい
  • 逆に、長年音信不通の親族がいる場合、相続時に自分の権利ばかり主張する人が現れ、手続きが滞ることが多い

相続争いを防ぐ第一歩は、推定相続人を正確に把握することです。

なかなか会う機会のない相続人がいるなら、まずはご自身から連絡を取ってみてください。焦る必要はありません。少しずつ相続について話し合う機会を増やし、お互いの考えを共有しておきましょう。

また、現在の家族以外に推定相続人となる人がいる場合(例:認知しているお子様など)は、その事実を家族に伝えておくことも非常に重要です。該当される方は、いつかは、、ではなく、直ちにすべきです。そのままに事実を伝えずにおくと、残された家族は非常に困惑するでしょう。


対策2:将来の不安を取り除く「財産目録」の作成

相続が発生すると、ご家族は故人の財産をゼロから調査する必要があります。

  • 財産の調査漏れは「隠していたのでは?」という疑念を生み、トラブルの火種に
  • 税務調査の対象となるリスクも

こうした事態を避けるために、生前に財産目録を作成しておきましょう。

特に近年は株式やネット銀行口座など「目に見えない財産」が増えています。専門家(司法書士・税理士など)への相談も有効です。

さらに、定額利用サービスの会員情報などもまとめておけば、ご家族がスムーズに解約できます。


対策3:あなたの意思を「確実」に伝える遺言書の作成

遺言書があれば、相続人は原則その内容に従って遺産分割を行います。

ただし注意点は遺留分です。

  • 遺留分を侵害すると、相続人から訴えられるリスクがある
  • 紛失や形式不備を防ぐためには、公証役場で公正証書遺言を作成するのが最善

対策4:分割しにくい財産は「整理・現金化」を検討する

不動産のように分割しにくい財産は相続争いの原因になります。

  • 使用していない不動産は、生前に売却して現金化するのも有効
  • 現金化すれば、遺産分割が容易になり、相続税の納税資金にも充てられる

ただし、税額が増える・安売りリスクもあるため、税理士への相談が不可欠です。


対策5:「生命保険」と「祭祀財産」を戦略的に活用する

  1. 生命保険を代償金に活用
    • 自宅を長男に相続 → 他の相続人には死亡保険金で調整
    • 死亡保険金は受取人固有の財産のため、遺産分割の対象外
  2. 祭祀財産を非課税で引き継ぐ
    • お墓や仏壇は相続税非課税
    • 生前購入で税負担を軽減できる
    • 管理困難なお墓は「墓じまい」も検討

まとめ

様々な対策をお伝えしましたが、何度でも繰り返します。
最も重要な対策は、日頃のコミュニケーションです。

ご自身の意思を伝えつつ、相続人の意見も取り入れて準備を進めることが、家族が揉めないための確実な道筋です。

私たちは相続の専門家として、皆様が円満な相続を迎えられるようサポートいたします。相続に関する不安やお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

相続には税務や不動産の売却・活用といった、司法書士の専門外となる分野の課題も多く含まれます。
私たちは税理士や不動産業者など信頼できる専門家と連携し、ご相談をすべて当事務所が窓口となってお受けし、ワンストップで解決できる体制を整えています

第30回 一般社団法人”相続太郎”に加入しました!

今回はお知らせです

この度、縁があり 一般社団法人相続太郎 に加入することになりました。

変わった団体名ですが、怪しい秘密結社などではなく、会員は司法書士と税理士だけの真面目な団体です。

一つの都道府県に一つの事務所限定で運営しているようで、なかなか狭き門です。

私たちを選んで頂いたことは光栄です。

全国の税理士さん・司法書士さんと連携して、皆さまに良質なサービスを提供できるよう、引き続き努めて参ります。


相続や遺言の準備は早めが安心

相続や遺言の準備、生前対策は「まだ早い」と思っているうちに、いざという時が突然やってきます。

当事務所では、以下のような幅広いサポートを行っております。

  • 相続手続き
  • 遺言書作成
  • 生前贈与
  • 家族信託
  • 空き家や不動産の相続対策

40代・50代の方は「親の相続」に備えて、60代・70代の方は「自分の相続」に備えて、早めのご相談が安心につながります。


ご相談はお気軽に

当事務所は つくば市を中心に、茨城県全域 の皆さまからご相談をいただいております。

  • 「突然の相続で何をしたらよいのか全く分からない」
  • 「相続の準備をどこから始めればよいかわからない」
  • 「遺言書を作成したい」
  • 「認知症による財産管理が心配」

このようなお悩みをお持ちの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

第29回 40代から始める賢い対策 「名義預金」はトラブルの元 預貯金相続に備える

ご自身の、あるいはご両親の相続について考え始めた40代から70代の皆様へ。

「名義預金」という言葉を聞いたことはありますでしょうか?
実は、多くのご家庭で無意識のうちに作られており、いざ相続が発生した際に思わぬトラブルの種となることがあります。

「まさか自分の家に限って」と思われるかもしれませんが、この「名義預金」に関する誤解や無知が原因で、家族間の亀裂や余計な税金が発生するケースは少なくありません。

今回は、この「名義預金」について、よくある疑問とその対策を分かりやすく解説します。
早めに知識を身につけ、賢く相続に備えましょう。


1. 「名義預金」とは? なぜ相続で問題になるのか

「名義預金」とは、預金名義は本人以外(例えば子供や孫、配偶者など)になっていても、実質的にはお金を拠出した人(亡くなった方)の財産であると見なされる預金のことです。

「預金通帳の名義がAになっているから、それはAの財産だ」と安易に考えていると、相続の際に大きな問題となることがあります。
例えば、亡くなったおじい様が、孫のためにと孫名義で貯めていた預金などが典型的なケースです。
しかし、この孫名義の預金は、法的にはおじい様の遺産として扱われる可能性が高いのです。


2. 名義預金は「遺産」になる?ならない?遺産分割協議書への記載の注意点

多くの方が疑問に思われるのが、「名義預金は遺産分割の対象になるのか」という点です。
結論から申し上げると、名義預金は、たとえ亡くなった方以外の方の名義であっても、実質的に故人の財産と見なされ、遺産分割の対象となります

では、遺産分割協議書にはどのように記載すれば良いのでしょうか?

遺産分割協議書に名義預金を記載する方法は、主に以下の2通りがあります。

  • 通常の預貯金と同様に記載する方法
  • 名義人に対する「預け金債権」として記載する方法

どちらの方法でも問題はないとされていますが、特に注意が必要なのは、相続人以外の方(例えば孫など)が名義人となっている預金や、名義人がその預金を相続しないケースです。
このような場合、通常の預貯金として記載すると、銀行での手続きが煩雑になる可能性があります。

例えば、孫名義の預金を銀行に持参して名義変更しようとしても、銀行側は「本当に亡くなった方の財産なのか」と調査する必要が生じ、手続きに時間がかかることがあります。
このような事態を避けるためには、名義預金を故人の「預け金債権」として遺産分割協議書に記載し、一旦相続人名義に振り替えるなどの対応を検討する方が、手続きをスムーズに進められることが多いでしょう。

ただし、故人が生前、その名義人に財産を残したいという遺言的な思いがあったと認められる場合は、例外的に名義人がその預金を取得するケースもあります。
しかし、相続税の申告上は、基本的に名義預金も相続税の対象となりますので、申告書には含めておくのが安全でしょう。


3. 「名義預金に時効はない」って本当?贈与税との関係

「名義預金には時効がある」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、これは正確ではありません。
実は、名義預金そのものに「時効」という概念は当てはまらないのです。

ここでいう「時効」とは、多くの場合「贈与税の時効」を指します。
贈与税の時効は、原則として贈与税の申告期限から6年間(悪質な場合は7年間)と定められています。
しかし、これは「贈与が法的に成立している場合」に適用されるものです。

名義預金の場合、お金を拠出した故人の意思として「預けているだけで、贈与ではない」と判断されることがほとんどです。
つまり、贈与が成立していないため、贈与税の時効が適用される余地がないのです。
結果として、名義預金は、いつまで経ってもお金を拠出した人の財産として扱われ、相続の対象となる可能性があるわけです。


4. 生前に名義を本来の所有者に戻すべきか?ケースごとの判断

「生前に名義預金を本来の所有者である自分(故人となる人)の名義に戻すべきか?」というご疑問もあるでしょう。

この問いに対する答えは、「案件ごとに判断する」ということになります。
もし名義預金を本来の所有者名義に戻したとしても、それは真の所有者に財産を戻す行為であるため、贈与税の対象となることはありません

しかし、いつ、いくらを戻すべきかという判断は、特に生前の段階では非常に難しいのが実情です。
計算が煩雑になることが多く、実務上は「無理に名義を戻さない」というケースも少なくありません。
特に夫婦間の名義預金などでは、計算が複雑になりすぎるため、あえて変更しない方が良い場合もあります。

ただし、明らかに贈与が成立していないと判断できる子供や孫名義の預金など、状況が明確な場合は、本来の所有者名義に戻すことを検討する価値はあります。実行する前に税理士や会計士にご相談することをお勧めします。


5. 見落としがち!「逆名義預金」の落とし穴

「逆名義預金」という言葉をご存じでしょうか?
これは、例えば夫が外で働き、その稼ぎを専業主婦である妻の名義で預金していたようなケースを指します。
妻名義の預金でも、実質的な拠出者は夫であるため、これも一種の名義預金と言えます。

ここで注意したいのは、もし妻が夫より先に亡くなった場合です。
通帳だけを見ると、妻名義の預金残高が多額(例えば1億円)に見えることがあります。
その金額だけで判断すると、相続税の基礎控除を超えるため、相続税の申告が必要だと考えるかもしれません。

しかし、実質的にこの預金が夫の稼ぎであり、妻の固有の財産はごく一部(例えば1,000万円程度)であると証明できれば、その金額は相続税の基礎控除以下となり、相続税の申告が不要となるケースがあります。

ただし、ここに大きな落とし穴があります。
もし、この「逆名義預金」を真の所有者である夫ではなく、子供などの他の相続人が相続してしまうと、夫から子供への贈与と見なされ、贈与税が発生してしまう可能性があるのです。
真の所有者が相続する分には問題ありませんが、それ以外の相続人が取得する際には、別の税金が発生しないよう細心の注意が必要です。


まとめ:名義預金は早めの対策が肝心

「名義預金」は、税務調査で指摘されることも多く、相続トラブルの原因となる典型的なケースの一つです。
ご自身の、あるいはご両親の相続財産の中に、ご紹介したような名義預金がないか、今一度確認してみることをお勧めします。

「自分たちの場合はどうなるのだろう?」「具体的な対策を知りたい」そうお考えになった方は、ぜひ一度、相続の専門家である司法書士にご相談ください。税務関係のご質問の場合には、最適な専門家をご紹介させて頂きますのでご安心ください。

第28回 「親の農地・空き家を相続したくない!生前贈与と相続放棄の意外なリスクと備え方」

実家が遠方にあり、親が多くの農地や不動産を持っている――。
その管理に不安を感じて、

「もしもの時、自分には引き継げないかもしれない…」

こんなお悩みはありませんか?

大切な親の財産が、管理しきれない「負動産」となってしまう不安はありませんか?

そのような中で

「生前贈与と相続放棄を組み合わせることで、プラスの財産だけを受け取り、いらない土地は手放せる」

という話を聞いたことがあるでしょうか。
一見すると、非常に魅力的な解決策に思えますよね。

しかし、残念ながらこの方法は一筋縄ではいきません。
安易な判断は、後々大きなトラブルや予期せぬ負担に繋がる可能性もあります。

今回は、相続に備えたい40代から70代の皆様に向けて、
生前贈与と相続放棄を組み合わせる際の具体的な仕組み、潜むリスク、
そして何より大切な「周囲に迷惑をかけない」ための賢い対策について、
詳しく解説します。


「生前贈与」と「相続放棄」の合わせ技、その仕組みとは?

親の財産のうち、プラスになるもの(預貯金・収益を生むアパートなど)は親が生きているうちに生前贈与で受け取り、
管理が難しい農地や山林、あるいは借金といったマイナスの財産は相続放棄で引き継がない――。

これが、生前贈与と相続放棄を組み合わせる基本的な考え方です。

具体的には、

  • 親御さんが生前に預貯金や収益物件を子に贈与し、名義変更を済ませておく
  • その後、親御さんが亡くなった際に子が相続放棄を行う

このスキームにより、不要な不動産や借金を相続せずに済む仕組みです。
贈与以外にも「家族信託」を使って財産管理を任せつつ、将来の相続放棄に備えるケースも存在します。

確かに、この方法で都合の良い財産だけを受け取れるなら、これほど良い話はないように思えるかもしれません。
しかし実際には、多くの「落とし穴」と「リスク」が潜んでいるため、慎重な検討が必要です。


見落としがちな「落とし穴」と「リスク」

生前贈与と相続放棄を組み合わせる際には、以下のリスクに十分注意しなければなりません。

1. 債権者からの「取り消し」の可能性
親御さんに借金がある場合、債権者(銀行など)は返済のあてにしていた財産が生前贈与で減ることを問題視します。
法律に基づき贈与を取り消し、贈与財産の返還を求められる制度があります。
その結果、せっかく受け取った財産を手放さざるを得ない可能性があります。

2. 相続放棄が「無効」となる危険性
「プラスの財産だけ受け取り、マイナスの財産は放棄する」という行為は、
「制度の濫用」とみなされる可能性があります。
裁判となれば、相続放棄自体を無効と判断されるケースも。
そうなれば、結局は農地や空き家なども引き継がざるを得ない最悪の事態もあり得ます。

3. 贈与税の負担
生前贈与には贈与税、不動産取得税が発生します。
多額の財産を贈与すれば、その分税負担も増えます。
税金を考慮せずに進めるのは危険です。

4. 「どこまでなら許される?」明確な基準がない
「贈与を受けてから相続放棄してはいけない」という明確な法律は存在しません。
しかし「どの程度なら問題ないか」という線引きは非常に曖昧です。
極端なケース(プラス財産すべてを贈与、マイナス財産すべてを放棄)は問題視されやすいですが、
その手前の「適度なライン」については専門家でも明言できません。


「迷惑をかけない」ための具体的な準備と心構え

さらに重要なのは、「自分だけ得をする」のではなく「周囲に迷惑をかけない」視点です。

1. 財産管理の費用を確保する
相続人全員が相続放棄すると、財産は裁判所が管理します。
この手続きには一般的に50万〜100万円程度の費用が必要です。

故人の財産に費用がなければ、誰かが立て替えることになります。
結果として、近隣住民や自治体が負担する事態になれば、迷惑や反感を招く原因となります。

最低限、この費用や固定資産税などの維持費は故人の財産として残しておくべきです。

2. 次の相続人への配慮を忘れない
相続放棄をすれば、権利は次順位の親族(親・兄弟姉妹・甥姪など)に移ります。
突然、固定資産税の通知や不動産処分の連絡が来れば、多くの人が困惑・憤慨します。

トラブルを避けるため、事前に事情を説明し、必要なら一緒に相続放棄を進める配慮が大切です。

3. 親とのコミュニケーションが大切
相続は法律だけでなく「感情」が絡むデリケートな問題です。
親御さんも「子に迷惑をかけたくない」と願っています。

お盆や年末年始の帰省時に「実家の土地や山、どうする?」と自然に話題にする、
災害時に「うちの土地や田んぼは大丈夫?」と切り出す――。

こうした会話をきっかけに、早めに資産状況や親戚関係を把握することが、スムーズな相続対策の第一歩です。


今すぐ始める「早期対策」のすすめ

相続問題、特に「負動産」化する可能性のある土地の扱いは、時間が経つほど解決が難しくなります

「10年・20年前にご相談いただければ、もっと選択肢があったのに…」と感じる専門家も少なくありません。
農地は高齢化で引き取り手が減り、空き家は老朽化する一方です。

「あと5年・10年放置すれば、さらに状況は悪化する」
――これは現実的な警告です。

親との話し合いは難しいと感じても、未来のトラブルを避けるためには、できるだけ早く始めることが重要です。


まとめ:一人で抱え込まず、司法書士へご相談を

生前贈与と相続放棄の組み合わせはリスクを伴うデリケートな問題であり、単純な「裏技」ではありません。

安易な自己判断や自己流の手続きは、思わぬトラブルや大きな負担につながります。

「周囲に迷惑をかけず、円満に相続問題を解決したい」と考えるなら、
まずは私たちにご相談ください。

当事務所では、お客様一人ひとりのご状況やご希望を丁寧に伺い、最適な相続対策をご提案いたします。

皆さまからのご連絡をお待ちしております。