皆様、こんにちは。司法書士の時任です。
人生100年時代と言われる現代、ご自身の将来やご両親の今後について「相続」という言葉を意識し始める方も多いのではないでしょうか。特に40代から70代の方々にとって、親御様の相続はもちろん、ご自身の将来の相続についても、準備を進めておくことは非常に大切です。
「まだ早い」「何から手をつければいいか分からない」と感じているかもしれません。
しかし、適切な相続対策をせずにいると、残されたご家族が
- 相続税の支払いに困る
- 遺産を巡る深刻なトラブルに巻き込まれる
このような可能性が現実としてあります。
また、ご自身が認知症になった際、大切な財産が凍結され、必要な時に使えなくなるといった事態も想定されます。
そうならないために、元気なうちからできる限りの対策を講じておくことが、ご自身やご家族の安心につながります。
今回は、生前に準備すべき5つの対策について、分かりやすく解説いたします。
なぜ今、生前対策が必要なのか?3つの「もしも」に備える
相続対策と聞くと、「お金持ちがすること」や「亡くなった後のこと」と思われがちですが、決してそうではありません。
私たちに起こりうる3つの「もしも」に備えるために、生前対策は非常に重要です。
- もしも「遺産争い」が起きたら?【相続トラブル対策】
遺産の分け方を巡って家族・親族間で争いが生じるケースは少なくありません。特に自宅などの不動産が遺産の大部分を占める場合、簡単に分割できないため、トラブルに発展しやすい傾向があります。事前の対策で、家族間の無用な争いを避けることができます。 - もしも「相続税が高額」だったら?【節税対策】
相続が発生した際に、多額の相続税がかかることがあります。生前から計画的に対策を行うことで、相続税の負担を軽減し、より多くの財産を次世代に引き継ぐことが可能になります。 - もしも「相続税が払えない」状況になったら?【納税資金対策】
相続税が発生しても、手元に現金や預金が十分になく、価値のある不動産ばかりという場合、相続税の支払いに困ってしまうことがあります。事前に納税資金を確保する対策をしておくことが重要です。 - もしも「認知症」になったら?【判断能力喪失対策】
一般的に、認知症などで判断能力がなくなってしまうと、ご自身の意思に基づいた相続対策ができなくなります。銀行預金が引き出せなくなったり、介護施設の入居費用に充てるために不動産を売却しようとしても、そのままでは売れないといった問題が生じます。元気なうちからの対策が、結果手にご自身やご家族を助けることになります。
生前対策を始める上で押さえておきたい3つのポイント
相続対策を効果的に進めるためには、以下の3つのポイントを意識することが大切です。
- ご自身の「希望」を明確にする
ご自身が老後をどのように過ごしたいか、残す財産をどのように相続させたいか、具体的な希望を明確にしましょう。この希望がなければ、適切な対策の方向性を見定めることができません。 - 様々な「対策」を検討し比較する
相続対策には多種多様な方法があります。それぞれの方法のメリット・デメリットを事前に検討・比較し、ご自身の状況に最も適した対策を決定することが肝要です。 - 「元気なうち」から早めに始める
認知症などで判断能力が低下してしまうと、できる対策が限られてしまいます。体が元気で判断能力があるうちに、余裕を持って計画をスタートさせることが重要です。
また、ご自身やご家族の状況は変化する可能性があります。仕事のリタイア後や生活が落ち着いた時期、あるいは孫が生まれた時など、家族状況に変化があった時も対策を考える良いタイミングです。
具体的にどのような対策があるのか?今すぐできる生前対策5選
ここからは、具体的な生前対策を5つご紹介します。
1. 生前贈与
**「元気なうちに、少しずつ財産を家族に渡したい」**と考える方に有効な方法です。
生前に財産を贈与しておくことで、相続時にかかる相続税を減らす効果が期待できます。
また、あらかじめ相続人に財産を渡しておくことで、将来の相続人同士のトラブルを防ぐことにもつながります。
注意点: 贈与税がかかる場合があることや、後のトラブルに発展する可能性もあるため、必ず専門家にご相談の上、手続きを進めることをお勧めします。
2. 遺言書の作成
**「自分の意思で、誰に何を相続させるか明確にしたい」**という方に必須の対策です。
遺言書を作成しておけば、ご自身が亡くなった後、遺産は遺言書の内容に従って分けられます。
これにより、相続人全員による遺産分割協議が不要となり、相続トラブルを未然に防ぐことができます。
3. 資産の組み替え
「相続時のトラブルを減らし、節税もしたい」と考える方には、資産状況を見直すことが有効です。
よく活用されるのが生命保険です。生命保険金は、原則として遺産には含まれないため、遺産分割協議の対象になりません。受取人が直接保険会社に請求できるため、万が一相続で揉めた場合でも、指定された受取人は単独で保険金を受け取ることができます。
4. 任意後見制度の利用
**「もし認知症になっても、信頼できる人に財産管理を任せたい」**と願う方のための制度です。
万が一、認知症などで判断能力がなくなってしまった場合に備え、**あらかじめご自身で選んだ「後見人」**に生活の世話や財産管理を任せることができます。
これにより、認知症になっても預金が引き出せないといった事態を避けることが可能です。
裁判所が後見人を選ぶ「法定後見制度」と異なり、ご自身で信頼できる人を選べる点が大きな違いです。
5. 家族信託の活用
**「財産を家族に託し、長期的な視点で柔軟に管理・運用したい」**と考える方に適した制度です。
信頼できるご家族に財産を託し、ご自身の代わりにその財産を管理・処分・運用してもらうことができます。
元気なうちから家族信託を設定しておけば、認知症などで判断能力が失われても、託した家族がご本人のために預金を引き出したり、不動産を売却して生活費に充てたりといった手続きが可能になります。
さらに、家族信託は遺言書と同様に、ご自身が亡くなった後の財産の引き継ぎ先を決められるだけでなく、次の相続、さらにはその先の相続まで、何世代にもわたる財産の承継先を指定できるという大きなメリットがあります。代々受け継いできた不動産がある場合など、柔軟な対策が可能です。
専門家への相談を強くお勧めします
これらの生前対策は、個々の状況に合わせて最適な方法を選ぶ必要があります。誤った対策は、かえって相続トラブルを引き起こす原因にもなりかねません。
当事務所では、親御さまの相続手続きやご自身の生前対策に関するご相談を数多くお受けしております。遺言や家族信託など、専門知識が必要となる分野についても、お客様一人ひとりに寄り添い、最適な解決策をご提案いたします。
お困りごとがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。