司法書士の時任です。今回は、身内が亡くなられたときの相続の手続きについて解説していきます。
大切なご家族を亡くした場合、悲しみと同時に様々な手続きに直面することになります。特に、初めて経験する相続手続きは複雑で戸惑うことも多いでしょう。大切な人を失った直後は、悲しみと喪失感に包まれ、先のことを考える余裕もないかもしれません。それは当然のことです。大切な人を失った直後は故人に寄り添う時間をもってください。それから故人を見送る準備をしても遅くはないと思います。
それでは、身内が亡くなった時の相続手続きを、臨終当日から順を追って解説します。
1:臨終の当日から1週間に行う相続手続き
1-1:訃報連絡
まず、関係の深い家族や親族(目安は3親等)に訃報を伝える必要があります。家族等の身内にはどんな時間帯であっても早く知らせることが基本です。それ以外の友人や縁戚には、葬儀の日取りが決まった時点でお知らせします。
1-2:ご遺体の搬送、安置
病院で亡くなった場合、病室から病院の霊安室へ移動します。その間にご遺体の安置場所を決めます。自宅か葬儀社や火葬場の霊安室などです。都心部に限り、火葬までの間、故人を宿泊させることができる「遺体ホテル」というサービスもあります。ご遺体の搬送は、病院提携の葬儀社に依頼することもできます。その場合でも、その後の葬儀は別の葬儀社に依頼しても問題はありません。
1-3:死亡診断書の受取
医師から死亡診断書を受け取ります。死亡診断書は、火葬や埋葬の際に必要となる書類です。
1-3:通夜、葬儀、告別式
故人を偲ぶために、通夜、葬儀、告別式を行います。形式や内容は、宗派や地域によって異なります。
- 葬儀社に依頼する場合は、希望に合わせてプランを選ぶことができます。
- 家族だけで行うことも可能です。
1-5:遺言書の確認
故人が遺言書を残していないか確認します。遺言書があれば、その内容に従って遺産を分配する必要があります。
- 遺言書は、自宅や銀行の貸金庫など、様々な場所に保管されている可能性があります。
- 公正証書遺言の場合は、公証役場で原本を確認することができます。あるかないか分からない時でも調べることができます。
1-6:初七日法要
故人の冥福を祈るために、初七日法要を行います。初七日法要は、亡くなってから7日目の法要です。
- 初七日法要は、自宅や寺院で行うことができます。
- 僧侶を招いて読経を行うこともできます。
1-7:お墓を考える
故人の遺骨を安置するためのお墓について考えます。お墓の種類や費用は様々です。
- 既存のお墓に入る場合と、新しいお墓を購入する場合があります。
- 費用は、墓地の種類や石材の種類によって異なります。
1-8:死亡届出の提出
市区町村役場に死亡届を提出します。死亡届は、亡くなってから7日以内に出す必要があります。
- 死亡届には、故人の氏名、住所、死亡日時などが必要です。
- 死亡診断書が必要です。
1-9:埋火葬許可証の申請と提出
火葬場や埋葬場へ、埋火葬許可証を申請します。埋火葬許可証は、市区町村役場で発行されます。
- 埋火葬許可証には、故人の氏名、住所、死亡日時などが必要です。
- 死亡届が必要です。
2:臨終から14日以内に行う相続手続き
2-1:年金受給停止と未支給年金請求(10日以内)
公的年金の受給者が亡くなった場合、国民年金は14日以内、厚生年金は10日以内に年金事務所等に年金受給権者死亡届を提出します。死亡届が提出されないと年金が支給され続け、あとで返さなければならなくなるので注意しましょう。
また、年金は亡くなった月の分まで受け取ることができます。受け取っていない年金については未支給金として請求できます。
2-2:健康保険資格喪失届
資格喪失の届出をして、保険証を返納します。世帯主が亡くなった場合は世帯主を変更して新しい保険証の発行が必要となります。
2-3:介護保険資格喪失届
介護保険を利用していた場合は届け出が必要になります。14日以内に資格喪失届を役所に提出し保険証を返却します。
2-4:世帯主変更届
亡くなった方が世帯主だった場合は世帯主変更届を市町村に提出します。変更後の世帯主には15歳以上であれば誰でもなることができます。
2-5:公共料金などの各種契約の名義変更や解約
名義を変更するか、契約を解約します。利用料金の引き落とし口座も変更が必要です。
3:臨終から3か月以内に行う相続手続き
3-1:相続人の特定
遺産分割協議に参加する相続人の確定が必要です。戸籍を調査して、相続人を全員もれなく把握することが必要です。
3-2:相続財産の特定
現金、預貯金、有価証券、不動産、車や貴金属、金銭的価値があるものは基本的にすべて相続の対象となります。
相続財産に漏れがあると、あとで遺産分割がやり直しになってしまう可能性もあるので慎重に調査をしましょう。
3-3:遺産分割協議
相続財産を分けるときには、全ての相続人で話し合う遺産分割を行います。遺産はさまざまな分け方ができますが、相続人全員の合意がなければ分割することができません。遺言書があればその内容に従うことになります。
3-4:相続放棄と限定承認
被相続人の借金や債務などマイナスの財産があった場合、財産放棄と限定承認の2つの選択肢があります。
3-5:四十九日法要
法要を執り行う際には、お坊さんのスケジュールを押さえたり、親族や友人などの都合もあるためにも、事前に日取りを決めておかなければなりません。日程は一般的に49日前の土日祝日で調整します(49日よりあとにはしません)
3-6:納骨
骨壺をお墓に納める納骨法要を行います。これは49日法要とあわせて実施されるのが一般的です。
4:4か月以内に行う相続手続き
4-1:個人の方の所得税準確定申告と納税
年の途中で亡くなった故人の所得の申告と納税を相続人が代わって行うことを準確定申告といいます。申告することで高額医療費の還付を受けられることもあります。不慣れな人にとっては大変な作業です、専門家に相談してもよいでしょう。
4-2:遺産分割協議書作成
相続人全員で分割案がまとまれば合意の証拠として書面を作成し、全員が実印を押印します。
手書きやパソコンでの作成でもOKですが、亡くなった方とその相続人が誰で相続人が何をどれだけ相続するのかが明確に記入されていなければなりません。
5:10か月以内に行う相続手続き
5-1相続税の申告と納税
相続税の申告と納付の期限は、被相続人の死亡した翌日から10か月以内です。期限を過ぎると延滞税が発生することもあります。
5-2:預貯金、車、不動産有価証券などの相続
- 金融機関に口座名義人の死亡を連絡するとすぐに口座が凍結され、引き落としができなくなります。
- 預貯金、の継承者が決まったら被相続人の口座を解約して払い戻しの手続きをします。金融機関によっては書類の提出から数週間かかる場合もあるので早めに手続きをしましょう。
- 不動産の分割には家や土地を売却したお金を遺産として分け合う「換価分割」と家や土地を相続した人がほかの相続人に相応のお金を支払う「代償分割」があります。
- 家や不動産を相続したら法務局で登記申請を行いないます。専門的な知識が必要な場合もあるので司法書士に依頼することも検討してください。
- 有価証券を相続した場合も相続手続きが必要です。解約や売却する場合でも相続人に名義変更をしてからの手続きになります。
- 自動車は売却や廃車、又はそのまま乗り続けるかによって手続き方法が違います。
- また、税金や保険、駐車場のこともあります。なるべく早く手続きをしましょう。
5-3:生命保険の受取
保険契約者または保険金受取人が保険会社に連絡します。必要書類が届いたら保険金の受取人が記入します。その後、保険会社による支払い可否判断があり決済になれば振込されます。
6:1年以降および5年以内にする手続き
6-1:一周忌法(1年後)
死去後1年目の祥月命日に行う法要です。一周忌法要をもって喪明けとなり親族、知人・友人を招いて寺院などで行います。
6-2:葬祭費と埋葬費の申請(2年以内)
国民健康保険や後期高齢者医療保険に加入していた場合に葬祭費用の一部として葬祭費が、また健康保険に加入していた場合は埋葬費が支払われます。
期限はそれぞれ2年以内ですが、健康保険資格喪失届提出時にあわせて申請するとよいでしょう。
6-3:高額療養費の払い戻し(2年以内)
保険の加入者が自己負担額を超えて支払った高額な医療費をあとから払い戻す制度があります。亡くなってから2年以内なら故人も適用されます。払い戻金は故人の財産に含まれます。
6-4:遺族年金の受給(2~5年以内)
故人の加入していた年金や支払っていた保険料、払い込み期間により受給できる遺族年金の金額が異なります。故人がどの年金の加入者であったかを確認してください。
また、書類提出から裁定までに約2か月くらい時間がかかります。
手続き先は市役所や年金事務所で遺族基礎年金の場合提出期限は5年となります。
以上になります。
相続の際には、大切な人の最期を看取った直後から、悲しみの中でも故人を見送る弔いの儀式を進めなければなりません。
次々に判断をせまられる状況に戸惑うかもしれません。だからこそ「その時」に備えて、 ものごとの流れやすべきことを把握しておく
ことは大切です。
当事務所では
ご遺族の皆様のご負担を軽減するために相続手続きの丸投げのサービスも承っております。
皆様の一助となれば幸いです。